ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

電通が仕掛ける動画配信は成功するか

2005年11月28日 | コンテンツビジネス
休日に飛び込んできた驚きのニュース。「在京のテレビ民放5社と電通が共同で番組のインターネット配信事業に来春から乗り出す」とのこと。「民放各社の提供番組に電通が広告をつけ、定時配信する」という無料広告モデルの動画配信サービスということになりそうとのことだが、「定時配信」とのことで、正直、意味がわからない。


電通と在京民放5社、共同で番組ネット配信 インターネット-最新ニュース:IT-PLUS


電通と民放5社、ネットで映像配信へ (朝日新聞) - goo ニュース

電通と民放5社、ネット映像配信会社の設立を検討--無料放送も予定

このニュースを中心となる部分を整理すると、

1)電通の呼びかけに対して、TBSが出資で大筋合意。フジ、日本テレ、テレ朝、テレ東の4社は出資に関しては検討中とのことで、5社ではない。
2)博報堂DYホールディングスなど他の広告代理店にも呼びかけている
3)民放の番組にCMをつける無料広告モデルである
4)定時配信である

という4点がある。

で、1)にのみ注目するならば、TBSの楽天対策の一環であり、「第2日テレ」をはじめ各社のきなみ失敗している動画配信事業を考えると本気ではない、と考えることもできるのだけれど、GyaOの話題性などもあり、また2)のような動きも考えると、既存の広告代理店×コンテンツホルダーとしての放送局が既得権益保持のために動き出したと考える方が自然だろう。

もちろんこのモデルが成功するかどうかは不明である。事実、あれだけ会員を集め喧伝を繰り返しているものの、同じような広告無料モデルを展開しているGyaOも実体は火の車だ(しかもあれも電通が絡んでいるはず)。ただし、今回、放送局がコンテンツホルダーとして参画するということで、GyaOとは若干位置付けが違う。

GyaOが失敗した理由としては、i)顧客誘引力の高いメジャーコンテンツ(完パケ系)を揃えるためには想定以上に「金」がかかるということ、ii)顧客が増えれば増えるほどネットワークコスト・運用コストがかかること、iii)登録ID数に比べて実利用数がすくないこと(継続的に利用する会員が意外と少ないこと)などが大きな理由だろう。

それに対して、放送局が参画した場合、まずi)の問題が解決される。もちろん映画などの配信については放送用とネット配信用で権利が異なるので難しいだろうが、自社で製作している番組であれば、少なくとも今後製作するものについてはネット配信を含めて権利処理をすればいいだけの話なので、(安定収入が見込める)放送用として番組を制作しそれの2次利用としてネットで使えばコストを抑えることができる。

ii)に対しては、ある種仕方がない問題なのだけれど、「定時配信」というものが仮に時間軸で設定されるのだとしたら、ある程度ネットワーク負荷をコントロールすることも可能だろう。もっとも時間軸にあわせて編成されるのだとしたら、VODとしてのメリットは全くないのだが。まぁ、ここは自社で配信プラットフォームを持つのであれば必要コストだし、まぁ、ISPなどのプラットフォームを利用するという方法もある。

iii)については、これはなかなか微妙な問題。GyaOやあるいは有料VOD配信を行っているサイトなどでも共通の問題なのだろうが、VODをベースとした場合、ユーザーは興味のあるコンテンツしか見ない傾向がある。GyaOの用にある程度の期間を限定し編成を行うという形式をとったとしてもこの問題はなかなか改善されるものではない。ユーザーは無料だったら何でも見るというわけではない。

仮にTVの場合は、一家の中心に必ずといっていいほど設置され、始めから限られた選択肢の中で放送局が番組を垂れ流しにするという、極めて閉鎖的な世界だ。この閉鎖性ととりあえずテレビをつけるという習慣化によって今の放送番組は見られているといっても過言ではない。つまり選択肢がないから見てるのだ。これに対してインターネットはオープンな世界だ。検索エンジンを使えば、世界中の個人が配信しているような映像だって見れてしまう。仮に放送局という最強のコンテンツホルダーが定時配信を行ったとしても、Web2.0的な世界観からすれば相容れない。

しかしその一方で、テレビと連携がとられるようになると、テレビの視聴者がネットに流れるということがあるかもしれない。今でもテレビで注目のワードが流れると、それは即座にネット検索にも跳ね返る。テレビ放送と同じ番組をVODで配信します程度のものであれば期待ほど見られることもないかもしれないが、ネットでなら参加できるクイズ番組をテレビで放送しているとか、テレビから明らかにネットへの誘導が行われると、集客というのも行われるかもしれない。少なくともテレビで視聴率10%の番組の場合480万世帯が見ているわけで、その5%がネットに接続したとしても24万世帯が接続することになる。

これは現状のネット配信事業者からすれば驚異的な数字だ。

ここまで来ることはないだろうが、インパクト、潜在的な可能性はこれまでのネット配信とは全く違う。GyaOの抱えた問題の幾つかは改善されたモデルになるのだ。

このあたりが成功の分水嶺になるのだろう。





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