結局、いったん後塵を拝した企業に必要なのは「技術」でも「シェア」でも「お金」でもなく、それら個々の要素を活かすための「新しいビジョン」「コンセプト」なのだろう。そのことに気付いていないのだとしたらマイクロソフトには気の毒だけど、Yahoo!は高い買い物になるだろう。
マイクロソフト、米ヤフーに総額446億ドルの買収提案:ニュース - CNET Japan
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Microsoft、Yahoo!に買収提案 総額446億ドル - ITmedia News
米Microsoft,迷走の末の「Yahoo!買収」提案:ITpro
マイクロソフトが米Yahoo!に対して4.75兆円にも及ぶ買収提案をしたこと自体も、ソフトバンクがボーダフォンを買収した時の費用が2兆円であることと比べても、日本の感覚ではちょっと信じられないのだけれど、それだけ日米の広告市場の大きさに違いがあるということだ。
2005年のインターネット広告額を比べると、日本の2,808億円に対してアメリカは13,816億円と4倍弱の差がある。これはともに広告費総額の4.7%であり、インターネット広告がこれからもますます伸びていくであろうことを考えると、ここでどれだけのシェアがとれるかというのは大きな問題なのだろう。
とはいえ4.75兆円とは決して小さな金額ではない。マイクロソフトはMSNを持っているにも関わらず、何故そこまでする必要があったのか。
そうした視点で見たとき、ITpro「【解説】米Microsoft,迷走の末の「Yahoo!買収」提案」の記事はなかなか示唆に富んでいる。つまり単純に検索サイトとしてのシェアや検索連動型広告におけるGoogleの脅威だけでなく、ディプレイ広告での脅威(googleに買収された米Double Click vs マイクロソフトが買収した米aQuantive)、スマートフォン向けOS「Windows Mobile」に対する脅威(vs 携帯電話プラットフォーム「Android」)、ドル箱商品MS officeに対する脅威(vs google doc)など、マイクロソフトのビジネス領域の多くが今後googleの脅威にさらされるのだ。マイクロソフトとしては、とにもかくにもgoogleへの対抗・これ以上の拡大を阻止する必要があったのだろう。
しかしここにマイクロソフトの難しさがある。
googleがやろうとしていることは単純だ。多少単純化して言うならば、ネットにさえ接続していればあらゆるサービスを無料で提供できるモデルを構築することであり、あらゆる情報にアクセスできるようにすることだ。全てはネットの「あちら側」にあるのだ。
しかしマイクロソフトはどうか。OSの多くはデバイスにインストールされている必要があり、当然のことながら有料で提供されている。Live!という試みはあったもののoffice商品の多くは有料モデルだ。クラウドコンピューティングへの移行やSaaSモデルの台頭も分かってはいる。しかし1/0で切り替えられるほどことは単純ではない。
MSNに目をやれば検索としての機能は向上しているのかもしれないが、全体的な印象は未だWEB1.0的なポータルサイトだ。既存サービスの利用者がいる限り、明日から急にWeb2.0だけCGMだけというわけにもいかないだろう。しかも世界はOPEN化・オープンソース化へと流れている。1つの(ポータル)サイトがユーザーを囲い込むために全てのサービスを用意する必要はなくなりつつある。
またマイクロソフトのライバルはgoogleだけではない。appleはiTune/iPodを軸に音楽分野で垂直統合モデルでの成功を収めているし、xboxはPS3には勝ったものの任天堂のWiiに勢いでは追い越されている。本来はソフトウェア会社であるマイクロソフトにとって、これらの競合と戦うためにはハードウェアとの一体となったサービスを展開する必要がある。
一方ではマイクロソフトが築き上げた成功モデルが対googleでは足を引っ張る形となり、それ以外との競合との関係を含めれば、それぞれの領域で異なるビジネスモデルを構築する必要が発生している。マイクロソフトが世界制覇のために追い求めた「総合力」故に、明確な戦略が描き出せていないのだ。
いやきっとそれだけではないだろう。
何よりも先行した競争相手を追いかけるためにあまり、本来、自身が「何を」提供していくかではなく、「相手が提供しようとしているもの」を提供しようとしているのではないか。マイクロソフトほどの企業だ。相手が提供しているもの、相手が支持を受けているものを自社で開発し、あるいは買収し、展開していくことはそう難しいものではないだろう。
とはいえ、そうした態度は結局、他社の土俵で戦ってしまっているだけだ。結局、googleにしろappleにしろ任天堂にしろ、単にそれぞれの企業が提供しているサービスだけが評価されているわけではない。それら企業の提示した「ビジョン」「コンセプト」「メッセージ」こそが共感され、支持を受けているのだ。モノマネは所詮モノマネでしかない。
仮にYahoo!を買収できたとして、果たしてマイクロソフトはどんなビジョンを提示できるのだろうか。単にスケールメリットの追求だけでは、googleに追いつくことはできないだろう。
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マイクロソフトが米Yahoo!に対して4.75兆円にも及ぶ買収提案をしたこと自体も、ソフトバンクがボーダフォンを買収した時の費用が2兆円であることと比べても、日本の感覚ではちょっと信じられないのだけれど、それだけ日米の広告市場の大きさに違いがあるということだ。
2005年のインターネット広告額を比べると、日本の2,808億円に対してアメリカは13,816億円と4倍弱の差がある。これはともに広告費総額の4.7%であり、インターネット広告がこれからもますます伸びていくであろうことを考えると、ここでどれだけのシェアがとれるかというのは大きな問題なのだろう。
とはいえ4.75兆円とは決して小さな金額ではない。マイクロソフトはMSNを持っているにも関わらず、何故そこまでする必要があったのか。
そうした視点で見たとき、ITpro「【解説】米Microsoft,迷走の末の「Yahoo!買収」提案」の記事はなかなか示唆に富んでいる。つまり単純に検索サイトとしてのシェアや検索連動型広告におけるGoogleの脅威だけでなく、ディプレイ広告での脅威(googleに買収された米Double Click vs マイクロソフトが買収した米aQuantive)、スマートフォン向けOS「Windows Mobile」に対する脅威(vs 携帯電話プラットフォーム「Android」)、ドル箱商品MS officeに対する脅威(vs google doc)など、マイクロソフトのビジネス領域の多くが今後googleの脅威にさらされるのだ。マイクロソフトとしては、とにもかくにもgoogleへの対抗・これ以上の拡大を阻止する必要があったのだろう。
しかしここにマイクロソフトの難しさがある。
googleがやろうとしていることは単純だ。多少単純化して言うならば、ネットにさえ接続していればあらゆるサービスを無料で提供できるモデルを構築することであり、あらゆる情報にアクセスできるようにすることだ。全てはネットの「あちら側」にあるのだ。
しかしマイクロソフトはどうか。OSの多くはデバイスにインストールされている必要があり、当然のことながら有料で提供されている。Live!という試みはあったもののoffice商品の多くは有料モデルだ。クラウドコンピューティングへの移行やSaaSモデルの台頭も分かってはいる。しかし1/0で切り替えられるほどことは単純ではない。
MSNに目をやれば検索としての機能は向上しているのかもしれないが、全体的な印象は未だWEB1.0的なポータルサイトだ。既存サービスの利用者がいる限り、明日から急にWeb2.0だけCGMだけというわけにもいかないだろう。しかも世界はOPEN化・オープンソース化へと流れている。1つの(ポータル)サイトがユーザーを囲い込むために全てのサービスを用意する必要はなくなりつつある。
またマイクロソフトのライバルはgoogleだけではない。appleはiTune/iPodを軸に音楽分野で垂直統合モデルでの成功を収めているし、xboxはPS3には勝ったものの任天堂のWiiに勢いでは追い越されている。本来はソフトウェア会社であるマイクロソフトにとって、これらの競合と戦うためにはハードウェアとの一体となったサービスを展開する必要がある。
一方ではマイクロソフトが築き上げた成功モデルが対googleでは足を引っ張る形となり、それ以外との競合との関係を含めれば、それぞれの領域で異なるビジネスモデルを構築する必要が発生している。マイクロソフトが世界制覇のために追い求めた「総合力」故に、明確な戦略が描き出せていないのだ。
いやきっとそれだけではないだろう。
何よりも先行した競争相手を追いかけるためにあまり、本来、自身が「何を」提供していくかではなく、「相手が提供しようとしているもの」を提供しようとしているのではないか。マイクロソフトほどの企業だ。相手が提供しているもの、相手が支持を受けているものを自社で開発し、あるいは買収し、展開していくことはそう難しいものではないだろう。
とはいえ、そうした態度は結局、他社の土俵で戦ってしまっているだけだ。結局、googleにしろappleにしろ任天堂にしろ、単にそれぞれの企業が提供しているサービスだけが評価されているわけではない。それら企業の提示した「ビジョン」「コンセプト」「メッセージ」こそが共感され、支持を受けているのだ。モノマネは所詮モノマネでしかない。
仮にYahoo!を買収できたとして、果たしてマイクロソフトはどんなビジョンを提示できるのだろうか。単にスケールメリットの追求だけでは、googleに追いつくことはできないだろう。
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