Yahoo!JapanがYSTからGoogleの検索エンジンに切り替えるという。米Yahoo!はYSTの開発を中止し、マイクロソフトのBingとの提携に踏み切っているから、当然ながら、日本のYahoo!もBingかと思われていたのだが、日本語検索の適応状況などを踏まえて、Googleとの提携を選択したという。
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Yahoo!Japanにとっては、米Yahoo!は大口の株主ではあるが親会社/子会社の関係ではない。親会社はあくまでソフトバンク。そういった意味では、独自の判断を行ったということだろう。
日本の検索シェアは、Y!が約50%、Googleが40%~50%とほぼこの2つが独占している。ポータルサイトという意味では、gooもあるしMSNもあるしinfoseekもある。ISPのトップページを利用している人もいるだろう。それらのサイトでも検索はあるのだけれど、裏側で「Google」のエンジンが使われている場合がほとんど(MSNはbing)。インターネットが社会インフラとなり、「目的」の情報にたどり着くためには「検索」が必要不可欠のものとなったにもかかわらず、和製「検索エンジン」は事実上存在しないのだ。
そういう意味では、今回の提携によって、日本の「検索技術」に何か影響があるかといえば何もない。社会インフラを担う基盤技術はアメリカに握られたままだし、それで何かを失ったわけでもない。ただしこれによって日本の検索のほぼ全てが「Google」の影響下にあるということ理解しておかねばならない。
インターネット上で僕らが何かの情報を探す時、多くの場合、「検索」を利用するだろう。そして多くの場合、その検索結果の上位に表示されているサイトから情報を得ようとする。しかしこの検索順位は「公正」な結果ではない。あくまでGoogleのアルゴリズム・判断ロジックに基づいたものだ。
つまり僕らが何かの情報にアクセスしようとする時、Googleの「判断基準」が介在することになる。
こうしたGoogleが知的情報へのアクセスを独占することに対して、日本人はあまりにも無自覚なのだと思う。この状況は、極端にいうと、Googleの気分次第で特定のサイトへのアクセスが遮断され、あるいは特定のサイトに誘導されることになる。一種の検閲の権限をGoogleが握ることになる。
これがアメリカであればこの提携は「独占禁止」としてNGとなっていることだろう。
では、何故、国産の検索エンジンが存在しないのだろうか。
理由は単純でビジネスとして成立しないのだ。検索エンジンを提供するためには世界中のサイトのインデックス情報をDBに保存する必要がある。しかもこれらのサイトは常に更新されている(当然、更新された情報を追いかける必要がある)。膨大なサーバを維持し、それらを運用し続けねばならない。
しかしユーザーは検索エンジンは「無料」だと思っている。
結局、今のGoogleを作り出したのは、検索アルゴリズムの優秀さもさることながら、検索連動広告というビジネスモデルを作り上げたからだ。こうして検索精度と収入が結びつき、株価があがり、再投資され、より強力な検索エンジンへと成長していったのだ。
日本ではもう国産検索エンジンの可能性はないのだろうか。
正直、インターネット全体を網羅するような検索エンジンを生み出すためには、検索精度を飛躍的に高めるためのアイデアと莫大な資金が必要だろうから、相当難しいだろう。
しかしインターネット全体が膨大になりすぎたからこそ、あるいはインターネットを利用するデバイスがPC以外にも広がったことで、必ずしもGoogleが最適な検索エンジンでなくなってきているのも事実だ。
そういった意味で、1)ケータイやテレビといったPC以外のデバイスによる検索、2)特定分野やSNSなど閉じた系向けの検索では、独自の検索エンジン・検索アルゴリズムを開発する可能性はある。
1)について言うなら、ケータイやテレビというのは利用者とデバイスの距離や表示領域、操作性などが全く異なることから、PC向けにつくられたサイトをそのまま利用できるわけではない。またiモードの公式サイトでは、公式サイト内や外部サイトに対してのリンクに制約があることから、Googleのアルゴリズムのように「リンク数」や「ランク」という概念で検索結果の最適化をはかれるものでもない。
ある意味、こうしたガラパゴスの環境だからこそ、国産の技術が活かせる可能性はある。
2)については、画像や動画、音声といった素材の解析が絡むような分野では、そもそも必要となる技術が異なるし、その分野に特化することで「汎用的でない」使い方が可能になる。そうなるとGoogleのメリットをそのまま活かすということはできなくなる。またSNSのように「閉じた世界」に対する検索であれば、やはりそれようにカスタマイズするほうがユーザーエクスペリエンスは高くなる。
もちろんGoogleだって個別に最適化された検索エンジンを作ることなんて簡単にできるだろう。ただしそれは現状のメリットをそのまま活かせるわけではない。より多くの利用者に対して最適化させるということは、全ての人に最適化できているということではない。巨大になりすぎた企業のほころびはいつも小さなところから始まるのだ。
こうした国産検索エンジンが活躍出来る分野を見つけ出すこと、そして(当然)その分野の利用者に優れた経験を提供できるような技術やコンセプトを作り出せること、この2つが国産検索エンジン復活のために必要なことなのだろう。
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そういう意味では、今回の提携によって、日本の「検索技術」に何か影響があるかといえば何もない。社会インフラを担う基盤技術はアメリカに握られたままだし、それで何かを失ったわけでもない。ただしこれによって日本の検索のほぼ全てが「Google」の影響下にあるということ理解しておかねばならない。
インターネット上で僕らが何かの情報を探す時、多くの場合、「検索」を利用するだろう。そして多くの場合、その検索結果の上位に表示されているサイトから情報を得ようとする。しかしこの検索順位は「公正」な結果ではない。あくまでGoogleのアルゴリズム・判断ロジックに基づいたものだ。
つまり僕らが何かの情報にアクセスしようとする時、Googleの「判断基準」が介在することになる。
こうしたGoogleが知的情報へのアクセスを独占することに対して、日本人はあまりにも無自覚なのだと思う。この状況は、極端にいうと、Googleの気分次第で特定のサイトへのアクセスが遮断され、あるいは特定のサイトに誘導されることになる。一種の検閲の権限をGoogleが握ることになる。
これがアメリカであればこの提携は「独占禁止」としてNGとなっていることだろう。
では、何故、国産の検索エンジンが存在しないのだろうか。
理由は単純でビジネスとして成立しないのだ。検索エンジンを提供するためには世界中のサイトのインデックス情報をDBに保存する必要がある。しかもこれらのサイトは常に更新されている(当然、更新された情報を追いかける必要がある)。膨大なサーバを維持し、それらを運用し続けねばならない。
しかしユーザーは検索エンジンは「無料」だと思っている。
結局、今のGoogleを作り出したのは、検索アルゴリズムの優秀さもさることながら、検索連動広告というビジネスモデルを作り上げたからだ。こうして検索精度と収入が結びつき、株価があがり、再投資され、より強力な検索エンジンへと成長していったのだ。
日本ではもう国産検索エンジンの可能性はないのだろうか。
正直、インターネット全体を網羅するような検索エンジンを生み出すためには、検索精度を飛躍的に高めるためのアイデアと莫大な資金が必要だろうから、相当難しいだろう。
しかしインターネット全体が膨大になりすぎたからこそ、あるいはインターネットを利用するデバイスがPC以外にも広がったことで、必ずしもGoogleが最適な検索エンジンでなくなってきているのも事実だ。
そういった意味で、1)ケータイやテレビといったPC以外のデバイスによる検索、2)特定分野やSNSなど閉じた系向けの検索では、独自の検索エンジン・検索アルゴリズムを開発する可能性はある。
1)について言うなら、ケータイやテレビというのは利用者とデバイスの距離や表示領域、操作性などが全く異なることから、PC向けにつくられたサイトをそのまま利用できるわけではない。またiモードの公式サイトでは、公式サイト内や外部サイトに対してのリンクに制約があることから、Googleのアルゴリズムのように「リンク数」や「ランク」という概念で検索結果の最適化をはかれるものでもない。
ある意味、こうしたガラパゴスの環境だからこそ、国産の技術が活かせる可能性はある。
2)については、画像や動画、音声といった素材の解析が絡むような分野では、そもそも必要となる技術が異なるし、その分野に特化することで「汎用的でない」使い方が可能になる。そうなるとGoogleのメリットをそのまま活かすということはできなくなる。またSNSのように「閉じた世界」に対する検索であれば、やはりそれようにカスタマイズするほうがユーザーエクスペリエンスは高くなる。
もちろんGoogleだって個別に最適化された検索エンジンを作ることなんて簡単にできるだろう。ただしそれは現状のメリットをそのまま活かせるわけではない。より多くの利用者に対して最適化させるということは、全ての人に最適化できているということではない。巨大になりすぎた企業のほころびはいつも小さなところから始まるのだ。
こうした国産検索エンジンが活躍出来る分野を見つけ出すこと、そして(当然)その分野の利用者に優れた経験を提供できるような技術やコンセプトを作り出せること、この2つが国産検索エンジン復活のために必要なことなのだろう。
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