オーストラリアThe University of SydneyのNicholas Fuller氏

 糖尿病患者を、を週に12個摂取するグループと週に2個未満とするグループに分け、3カ月後の脂質プロファイルを比較したところ、両群に有意な差は認められず、むしろ卵を多く摂取した群でHDL-コレステロール(HDL-C)値が改善したことが示された。オーストラリアThe University of SydneyのNicholas Fuller氏が、第50回欧州糖尿病学会(EASD2014、9月16~19日、ウィーン開催)で発表した。

 現在、卵の消費と食事による総コレステロール摂取量に関するガイドラインは各国で異なっている。オーストラリアでは、卵は飽和脂肪酸が少ない食材の1つだとして、健康的な人も2型糖尿病患者も、週に最大6個まで卵を摂取することを推奨している。米国では食事性コレステロールを1日300mg未満に抑えるよう推奨している(卵1個には約200mgのコレステロールが含まれている)。ただし、米国のガイドラインでは2型糖尿病患者に対し、低脂肪・高炭水化物食の代替として週4個未満の卵を摂取することを含む地中海食を推奨している。一方、英国では卵の消費数に対する制限は提案していないが、食事の飽和脂肪酸を減らすよう強調している。卵の消費量と2型糖尿病患者の心血管疾患発症数が関連することは疫学的なエビデンスで示されているが、因果関係や隠れた交絡因子の影響などが明らかではない。そこで今回Fuller氏らは、高卵食が前糖尿病状態および2型糖尿病患者の健康に与える影響を検討した。

 対象は、年齢が18歳以上、BMIが25kg/m2以上の前糖尿病状態および2型糖尿病患者140人とした。週に6日、朝食時に2個の卵(週に12個の卵)を食べる高卵食群(72人)と、週に卵を2個未満しか食べない低卵食群(68人)に振り分け、3カ月続けた。低卵食群と高卵食群とタンパク質の摂取量を一致させるため、低卵食群の朝食時には赤身の動物性タンパク質など豊富な選択肢の中から10gのタンパク質を摂取してもらった。食事は主要栄養素と熱量を一致させ、体重が維持されるものにした。

 3カ月後に検査した結果、主要評価項目としたHDL-C値は高卵食群と低卵食群間で有意な差を認めなかった(P=0.38)。ただし、高卵食群内で登録時と3カ月後を比較すると、HDL-C値が0.034mmoL/L増加しており、改善傾向が認められた(P=0.07)。総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、血糖コントロールは、2群間で差が認められなかった。また、対象は初期体重から1kg以内の変動のみと、一定の体重を維持した。

 これらの結果からFuller氏は、「卵の摂取量が多くても、2型糖尿病患者の脂質プロファイルには悪影響を及ぼさないため、食事療法の一部に加えても安全であることが示唆される」と結論した。また、高卵食群があまり空腹を感じなかったことや朝食後に満腹感を得られていたという報告がされたことについて、「高卵食は、より大きな満腹感を提供することも可能かもしれない」などと考察した。