一度、ご紹介させていただきましたが、セイコーエプソンは、2050年までに商品とサービスのライフサイクルにわたるCO2排出量を10分の1とし、地域社会とともに生物多様性の修復と保全を行うなどの「環境ビジョン2050」を策定し、2008年6月2日にベルギーのブリュッセルにおいて発表しました。
同ビジョンでは、「CO2の排出量は自然界の吸収能力の範囲内に抑えられ、人々が平等に排出でき、同時に全員が排出量を削減する努力をしなくてはならない」とし、この考えに基づき、同社が目指すべき排出量を2050年の予測人口比率に鑑みて策定しています。
今後、製品の小型・省エネ化、再使用・再利用による「資源循環の環」の仕組みづくり、生産施設の規模適正化などを通じてこの目標を実現していく方針とのことです。
詳しくは是非同社のHPをご覧下さい。とてもわかりやすく説明されています。
さて、同社の2007年度のCO2総排出量は90.7万トンです。
総量ではこの4年間で20万トン以上の削減が図られています。この数字そのものは素晴らしいものだと私は思いますが、しかし、この努力、実績をもってしても、いまのこの延長線上で、同ビジョンの目標到達は非常に難しいのです。
それでは、なぜこのようなビジョンを、セイコーエプソンは掲げたのでしょうか?
同ビジョンでは、「企業としてのあるべき姿」をまず描き、そこへ向けての方策を考える
バックキャスティングという視点・手法をとっています。
バックキャスティングの反対はフォアキャスティングです。これは、現状からスタートする「現状立脚型」です。現在、日本の多くの企業はこの現状立脚型で経営をしているかと思います。
「いま、こういう状況だから」
「いまこの課題があるから」
「いまこれができないから」……。
そうやって、「いまできること」を積み上げて目標をつくる。それがフォアキャスティングです。
いっけん、現時的でビジネスに適しているように思われるフォアキャスティングですが、このやり方では現状の延長線上にしか、目標がつくれません。
さらに、現状が変わってくると、目標そのものがぶれてしまうという特徴を持ちます。
それに対して、バックキャスティングでビジョンをつくるというのは、
「いまの問題がどう」とか、
「現状がどう」とか、
「お金がない」とか、
そんなことは、とりあえず、棚にあげておきます。
そして「あるべき姿は何なの?」と理想像を考えます。
そしてその理想像からいまを振り返って(バックキャスティングというのは「振り返る」という意味)足りないとこを埋めていく。
そうすれば、最短距離でビジョンに向かって進んでいけますし、大きな目標、ビジョンが揺るぐことがありませんから、迷うことなく、心をひとつにして進んでいくことができるのです。
「あるべき姿」を目標にかかげるのには、ある意味勇気がいります。
実際、セイコーエプソンが目標達成するためには、技術的なブレークスルーが必要だと思います。
しかし、現状立脚型のビジョンではブレークスルーはおこりにくいと思います。
「あるべき姿」を目指すからこそ、ブレークスルーが起こる、のではないでしょうか?私にはそう思われてならないのです。
■セイコーエプソンリリース
http://www.epson.jp/osirase/info080616.htm
■セイコーエプソンの環境活動に関してはこちら
http://www.epson.jp/ecology/next/