高辻役員は何度目かのタバコを灰皿にねじ込みました。チェーンスモーカーとは正にこの事をいうのでしょうか。大きなガラスの灰皿には鬼塚専務と合わせて既に山のようになっていました。
『…』高辻役員は時計をチラッと見ました。時刻はもう十時になります。二人はどこから手を付けてよいのか迷っていました。 昨晩あれだけ飲んだ酒が残っていても例年ならこんなに苦戦するはずはありません。
理由は黒田社長にありました。
…と言いましても元の起因はこちらにあります、まして抗議が通用する相手ではありません。
『この辺りからやるか…』
鬼塚専務が指を叩きながらおっしゃいます。
見れば総務部です。
のぞき込んで高辻役員は苦笑しました。
こんな毒にも薬にもならない部署は… 後でもいいじゃあないですか…そう思いました(笑)
『肩慣らしだよ…』高辻役員の横顔に言い訳するように鬼塚専務は言います…
(まっいいか!)高辻役員も結論をできるだけ先に送りたい心境でした。
『じゃあやるか!』『はい!』総務は簡単に終わりました(笑)
次は…そんな風に辺りをながめる高辻役員を励ますように『次営業だね』
『営業をやりますか!』
『うん…』 『じゃあ手始めに…』
言いかけて高辻役員の手が止まりました。
問題の第三部の資料がまず手にふれていたからです。
営業第三部…
例のお得意の事業撤退に揺れている担当部署です。現在亀田部長以下久保課長を含めて五名が在籍していました。
『亀田はかわいそうだな…』
『はい』
『あいつここは何年になっているかなぁ…』
亀田部長は鬼塚専務、高辻役員の子飼いです。特に高辻役員がまだ部長だった時代に部下として一人前に育て上げた人材でした。
それで鬼塚専務は気を回したのです。
『う~ん三年ですねぇ』
資料にはここの在籍年数まで記載されていました。
『久保課長が五年ですね』
『う~ん』再び高辻役員はうなりました。課長より在籍年数が浅くて先に替えられるのかなぁ~
営業第三部は元々お得意が少ない部署でした。 主となるお得意先は件(くだん)の事業撤退であります。 来期の売り上げが激変するのは火を見るより明らかです。今まで好調に出世してきた亀田部長には大きなマイナスポイントになります。
なんとしてもそれだけは避けなくてはなりません。
これは亀田一人の問題ではなく鬼塚専務や高辻役員の沽券にもかかって来ます。
『いい奴いないかなぁ』
つぶやく鬼塚専務はなんとしても亀田部長に泥をかぶらせたくない気持ちがあふれていました。
長年付き合ってきた高辻役員にはその気持ちがすぐに判りました。
『高城はどうでしょうか』
資料からチラッと見えた名前がたまたま高城課長でした。
『高城か…』つぶやくと鬼塚専務は天を仰ぎました。 口に出した高辻役員も思わず息を飲みました。
えらいこと言ったよな…
高城課長は押しが弱く営業のタイプとは言えません。唯一気配りが優れているのが長所でしょうか。。
『…』高辻役員は時計をチラッと見ました。時刻はもう十時になります。二人はどこから手を付けてよいのか迷っていました。 昨晩あれだけ飲んだ酒が残っていても例年ならこんなに苦戦するはずはありません。
理由は黒田社長にありました。
…と言いましても元の起因はこちらにあります、まして抗議が通用する相手ではありません。
『この辺りからやるか…』
鬼塚専務が指を叩きながらおっしゃいます。
見れば総務部です。
のぞき込んで高辻役員は苦笑しました。
こんな毒にも薬にもならない部署は… 後でもいいじゃあないですか…そう思いました(笑)
『肩慣らしだよ…』高辻役員の横顔に言い訳するように鬼塚専務は言います…
(まっいいか!)高辻役員も結論をできるだけ先に送りたい心境でした。
『じゃあやるか!』『はい!』総務は簡単に終わりました(笑)
次は…そんな風に辺りをながめる高辻役員を励ますように『次営業だね』
『営業をやりますか!』
『うん…』 『じゃあ手始めに…』
言いかけて高辻役員の手が止まりました。
問題の第三部の資料がまず手にふれていたからです。
営業第三部…
例のお得意の事業撤退に揺れている担当部署です。現在亀田部長以下久保課長を含めて五名が在籍していました。
『亀田はかわいそうだな…』
『はい』
『あいつここは何年になっているかなぁ…』
亀田部長は鬼塚専務、高辻役員の子飼いです。特に高辻役員がまだ部長だった時代に部下として一人前に育て上げた人材でした。
それで鬼塚専務は気を回したのです。
『う~ん三年ですねぇ』
資料にはここの在籍年数まで記載されていました。
『久保課長が五年ですね』
『う~ん』再び高辻役員はうなりました。課長より在籍年数が浅くて先に替えられるのかなぁ~
営業第三部は元々お得意が少ない部署でした。 主となるお得意先は件(くだん)の事業撤退であります。 来期の売り上げが激変するのは火を見るより明らかです。今まで好調に出世してきた亀田部長には大きなマイナスポイントになります。
なんとしてもそれだけは避けなくてはなりません。
これは亀田一人の問題ではなく鬼塚専務や高辻役員の沽券にもかかって来ます。
『いい奴いないかなぁ』
つぶやく鬼塚専務はなんとしても亀田部長に泥をかぶらせたくない気持ちがあふれていました。
長年付き合ってきた高辻役員にはその気持ちがすぐに判りました。
『高城はどうでしょうか』
資料からチラッと見えた名前がたまたま高城課長でした。
『高城か…』つぶやくと鬼塚専務は天を仰ぎました。 口に出した高辻役員も思わず息を飲みました。
えらいこと言ったよな…
高城課長は押しが弱く営業のタイプとは言えません。唯一気配りが優れているのが長所でしょうか。。