車中の空気は高揚した高城課長に当てられたように熱くなっていました。『なぁ、課長代理で一生を終わるより部長になれるんだから頑張らなとなぁ!』車が発進した直後の高辻役員のお言葉でした。
『はい!』酔っているはずの高城課長からうわずりながら緊張した返事がありました。
『はは~ん』私はピンときましたね(笑)
高城課長が部長に上がるんだってね。
『どうや、誰にもチャンスは与えられるんだよ』
『はい』
『わしらはみんなを公平に俎上(そじょう)に上げてやる、そこまでだ、あとはどう跳ねるかは本人次第だよ…』
『はいっ!』
高辻役員はチャンスはやる、あとはお前次第だよ。と教えていらっしゃるのです。
高城課長はうなずきながら返事をしました。
私はその姿を見て一種の宗教儀式を連想しました。 …酔わされている…酒に酔っているのは無論ですが、それよりも高辻役員のオーラに酩酊していました。恐らくは『真面目にやっていれば課長まではなれるよ』とおっしゃった佐川本部長の言葉を借りるまでもなく高城課長は自分の能力の限界を自覚していたでしょう。
地方出身、普通の大学、口下手で小心者、気を使うがよいしょ(上役に胡麻をする)は下手…まさに平凡な課長代理で定年を迎える典型でした。
佐川本部長は続きに゛課長からは運だね″…と語ったように高城課長は″運゛についていたのでしょうか。
私には運とは思えませんでした。
運があるとすればそれを誰に与えるかを選ぶ神様がいるはずです。仏様でもいいですが… しかし私には神や仏は見えません。 見えるのは高辻役員です。
この方が゛運″を授けたのですよ。 (とても神様や仏様には見えませんが…)運でないとしたら高城課長の技量をかったのでしょうか。
私ははっとしました。高城課長が売上げの激減する部署に配置される… すると今の部長は? 確か亀田部長です。
これは言わずと知れた一本のラインでした。
この事業本部を牛耳っている鬼塚専務・高辻役員の派閥にいる円山本部長→亀田部長です。
そうか!部署が主力得意先の撤退で売上げが激減するのは火を見るより明らかでした。
そこに自分の派の可愛い部下がいてはマズいのです。
亀田部長が泣きついたのか、高辻役員が配慮したかはわかりませんが、まずは泥をかぶるべき人物に高城課長が指名を受けたのは間違いありません。
どうりで高城課長の手腕を褒める言葉なんか出なかった訳です。
…やがて車は高辻役員のご自宅に着きました。
あれほどへべれけに酔っておられた高辻役員は車を降りられますと意外にしっかりした足取りです。
『じゃあ』
右手を上げて自宅に入られたあと橋村さんはちゃっかり後部座席へと移り込みます。
(しっかりした奴だね(笑)
私は苦笑しながらアクセルを踏みます。
運転士はいかなる場合でも冷静に対処できるようにハンドルをにぎらなければならない。 テキストの項目を腹の中で復唱しています(笑)
…で高城課長ですが、橋村さんは高城課長が大ピンチと知ってか知らずか相変わらず脳天機でした。
『高城課長~昇進祝いしましょうね』
『ああ…』気のない返事です『私一度祇園のお茶屋さん行って見たい~』
おいおい三十路のおばさんが何言ってるんだよ~
少しは遠慮しろよ私は厚かましい態度に呆れ返りました。。
『そうじゃあないんだよ』
怒った感じで高城課長は言います。 『えっでも凄く上がるんでしょ』
先程の給料のことでしょう…
『役員のおっしゃっているのは昔の話だよ』
『む・か・し…』女の酔った姿は色っぽい…とは言いますが、この酔っ払いは頭に来るだけですよ(笑)
それでも高城課長は性格なのでしょうね『今はね給料はオープンになっていてね』丁寧に説明をし始めたした。
『それで……』
この高城課長の話が本当としたら高辻役員の話しはなんだったんでしょうか。
課長と部長…給料・役職手当その他全てを合わせても10万円どころか半分にもなりません(笑)
ボーナスは実績が加味されますから返って下がる可能性すらあるのです。
『高城課長いつからそのシステムを知ってるんですか』
おいおい傷口に塩を擦り込むみたいなこと止めろよ…
『あぁ前から知っていたよ』
高城課長は静かに言い切ります(笑) 『ふ~ん』
酔いぼけの頭でも少しは理解できたのか橋村さんが神妙になりました(笑)
高城課長は高辻役員から打診を(たぶんあった筈です)受けた時全てを呑んで受けたのでしょうか…
たとえ違う部署でも撤退の話は有名なはなしですから…
私は改めてバックミラをうかがいました。
そこには相変わらずテンションの高い高城課長の真っ赤な顔がありました。
よく二つを選ぶ時プラスとマイナスを箇条書きにして見比べる方法がありますが、どう見たって答えは決まっているのですが…
高城課長は高辻役員からにらまれるのを怖がったのか一か八かでいったのか私には分かりませんが、゛部長と打診を受けたからはここは一番やってやるぜ″そんな心意気でしょう。無論水面下の俗な話も承知でしょう。こんなに心優しい高城課長をここまで踏ん切らせる゛部長の席″しかしこの席はいつまで座れるのか、誰にも分かりません。。。
『はい!』酔っているはずの高城課長からうわずりながら緊張した返事がありました。
『はは~ん』私はピンときましたね(笑)
高城課長が部長に上がるんだってね。
『どうや、誰にもチャンスは与えられるんだよ』
『はい』
『わしらはみんなを公平に俎上(そじょう)に上げてやる、そこまでだ、あとはどう跳ねるかは本人次第だよ…』
『はいっ!』
高辻役員はチャンスはやる、あとはお前次第だよ。と教えていらっしゃるのです。
高城課長はうなずきながら返事をしました。
私はその姿を見て一種の宗教儀式を連想しました。 …酔わされている…酒に酔っているのは無論ですが、それよりも高辻役員のオーラに酩酊していました。恐らくは『真面目にやっていれば課長まではなれるよ』とおっしゃった佐川本部長の言葉を借りるまでもなく高城課長は自分の能力の限界を自覚していたでしょう。
地方出身、普通の大学、口下手で小心者、気を使うがよいしょ(上役に胡麻をする)は下手…まさに平凡な課長代理で定年を迎える典型でした。
佐川本部長は続きに゛課長からは運だね″…と語ったように高城課長は″運゛についていたのでしょうか。
私には運とは思えませんでした。
運があるとすればそれを誰に与えるかを選ぶ神様がいるはずです。仏様でもいいですが… しかし私には神や仏は見えません。 見えるのは高辻役員です。
この方が゛運″を授けたのですよ。 (とても神様や仏様には見えませんが…)運でないとしたら高城課長の技量をかったのでしょうか。
私ははっとしました。高城課長が売上げの激減する部署に配置される… すると今の部長は? 確か亀田部長です。
これは言わずと知れた一本のラインでした。
この事業本部を牛耳っている鬼塚専務・高辻役員の派閥にいる円山本部長→亀田部長です。
そうか!部署が主力得意先の撤退で売上げが激減するのは火を見るより明らかでした。
そこに自分の派の可愛い部下がいてはマズいのです。
亀田部長が泣きついたのか、高辻役員が配慮したかはわかりませんが、まずは泥をかぶるべき人物に高城課長が指名を受けたのは間違いありません。
どうりで高城課長の手腕を褒める言葉なんか出なかった訳です。
…やがて車は高辻役員のご自宅に着きました。
あれほどへべれけに酔っておられた高辻役員は車を降りられますと意外にしっかりした足取りです。
『じゃあ』
右手を上げて自宅に入られたあと橋村さんはちゃっかり後部座席へと移り込みます。
(しっかりした奴だね(笑)
私は苦笑しながらアクセルを踏みます。
運転士はいかなる場合でも冷静に対処できるようにハンドルをにぎらなければならない。 テキストの項目を腹の中で復唱しています(笑)
…で高城課長ですが、橋村さんは高城課長が大ピンチと知ってか知らずか相変わらず脳天機でした。
『高城課長~昇進祝いしましょうね』
『ああ…』気のない返事です『私一度祇園のお茶屋さん行って見たい~』
おいおい三十路のおばさんが何言ってるんだよ~
少しは遠慮しろよ私は厚かましい態度に呆れ返りました。。
『そうじゃあないんだよ』
怒った感じで高城課長は言います。 『えっでも凄く上がるんでしょ』
先程の給料のことでしょう…
『役員のおっしゃっているのは昔の話だよ』
『む・か・し…』女の酔った姿は色っぽい…とは言いますが、この酔っ払いは頭に来るだけですよ(笑)
それでも高城課長は性格なのでしょうね『今はね給料はオープンになっていてね』丁寧に説明をし始めたした。
『それで……』
この高城課長の話が本当としたら高辻役員の話しはなんだったんでしょうか。
課長と部長…給料・役職手当その他全てを合わせても10万円どころか半分にもなりません(笑)
ボーナスは実績が加味されますから返って下がる可能性すらあるのです。
『高城課長いつからそのシステムを知ってるんですか』
おいおい傷口に塩を擦り込むみたいなこと止めろよ…
『あぁ前から知っていたよ』
高城課長は静かに言い切ります(笑) 『ふ~ん』
酔いぼけの頭でも少しは理解できたのか橋村さんが神妙になりました(笑)
高城課長は高辻役員から打診を(たぶんあった筈です)受けた時全てを呑んで受けたのでしょうか…
たとえ違う部署でも撤退の話は有名なはなしですから…
私は改めてバックミラをうかがいました。
そこには相変わらずテンションの高い高城課長の真っ赤な顔がありました。
よく二つを選ぶ時プラスとマイナスを箇条書きにして見比べる方法がありますが、どう見たって答えは決まっているのですが…
高城課長は高辻役員からにらまれるのを怖がったのか一か八かでいったのか私には分かりませんが、゛部長と打診を受けたからはここは一番やってやるぜ″そんな心意気でしょう。無論水面下の俗な話も承知でしょう。こんなに心優しい高城課長をここまで踏ん切らせる゛部長の席″しかしこの席はいつまで座れるのか、誰にも分かりません。。。