すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【U-17アジアカップ決勝】評価が難しい雨中の「凡戦」だった 〜U-17日本 3-0 U-17韓国

2023-07-03 09:32:43 | サッカー日本代表
球際で競らない日本

 雨でボールが走らない上に、対戦相手に退場者が出るーー。評価が難しいゲームだった。それらの要素を差っ引いても、日本は立ち上がりから内容が最悪だった。

 球際で競らない。パスコースを作る動きがない。ゆえにパスが繋がらない。ないないづくしだった。前半終了間際に韓国に退場者が出るまでは、明らかに勝者にふさわしいのは韓国だった。

 だが43分に韓国が1人退場になり風向きが変わる。日本は得た直接FKを直後の45分にゴールして先制。その後、2点を加えて試合を終えた。

 これで日本は大会史上初の連覇で4度目の優勝だ。肩書だけは立派である。だが日本は単に優勝した「だけ」の試合だ。特に11対11で戦った前半の内容はひどかった。

 U-17日本代表は、デキ不出来の差が非常に激しいチームだ。決勝とは5人スタメンが違う、ひとつ前の準決勝・イラン戦では(何でもかんでも遅攻にしてしまう以外は)文句のつけようがないデキだった。その次の試合が「これ」である。

 球際で激しく競らない。パスが繋がらない。パスコースを作る動きをしない。1人多かったから3点取れた、というだけの試合だ。10人になるまでは、明らかに韓国が演じるプレッシング・フットボールの方が優れていた。

 ちなみにフリーライターの川端暁彦氏はこの記事のなかで、「終わってみれば、このデュエルの勝率は日本59.3%、韓国40.7%と約20%上回ることに」と記述され、「デュエルは日本が勝っていた」とする。

 だがこの数字は「一試合を通して」のものだ。後半は韓国が1人少ないのだから、1試合通してならデュエルで劣勢にもなるだろう。これに対して私が「日本は球際で激しく競らない」と書いているのは、まだ11対11のイーブンだった「前半の話」だ。

 韓国は退場者を出す44分までは日本を圧倒していた。だが退場のほんの2分後に日本が先制点を取り、事実上、これで試合が決まった。あとは11人対10人なので「参考外」だ。

 日本のフォーメーションは4-4-2。スタメンはGKが後藤亘。最終ラインは右から柴田翔太郎、本多康太郎、土屋櫂大、小杉啓太。セントラルMFは中島洋太朗と矢田龍之介。右SHは佐藤龍之介、左SHは吉永夢希。2トップは道脇豊と名和田我空。韓国のフォーメーションは4-3-3だ。

10人相手に取った3点の重みは?

 44分、左SBの小杉が出したダイアゴナルなパスを前線で道脇がキープしたが、そのときチャージした韓国CBコ・ジョンヒョンが2枚目のイエローカードを受け退場になる。

 この局面で得た直接FKを名和田が右足で蹴る。ボールは美しい曲線を描きながら、韓国GKホン・ソンミンの手を弾きゴール左スミに飛び込んだ。

 66分、佐藤がきれいな縦パスを入れる。密集の中で受けた望月が絵に描いたような密着ワントラップから、ボールを前に送る。最後は飛び込んだ名和田がGKを見ながらきっちり決めた。

 そして試合終了間際の96分だ。佐藤が送ったライン裏へのスルーパスを受けた道脇が、ワンフェイク入れて右足でシュートを決めた。これで3-0だ。

 MVPと得点王に輝いたFW名和田我空が2ゴール。1ゴールしたFW道脇豊のパフォーマンスも光っていた。

 日本は欠点だらけだが、決定力だけはあるのが救いだ。

 ただし日本の全得点は退場を受けてのFKと、後半に韓国が10人になりスペースができてからの2点だ。絵に描いたように、11対11では無得点だった前半の日本はデキが悪かったことを示している。

 世間は、1人少ない韓国を相手に躍動した「後半の日本」を見て錯覚しているのだ。

韓国に前プレを受けてタジタジの日本

 日本は立ち上がりから、最終ライン発のビルドアップや中盤での要所など、「ここ」というところでボールが繋がらない。あるいは前にパスコースがあるのにバックパスしている。見えてない。「バックパス症候群」だ。

 前半の日本は韓国に前からプレスをかけられ、最終ラインからビルドアップできない。パスコースがなく、ロングボールを放り込んでばかりいた(これは雨中のゲームでのセオリーという側面もあるが)。日本の最終ラインに対するプレッシングは、明らかに韓国の方が優れていた。

 それに対し、韓国の最終ラインがボールを保持した時の日本のプレスは効いてない。ただ立ってるだけだ。意図を持ち、どのコースを切るのかの判断ができてない。日本は内容では劣っているので、あとは求めるのは「結果」だけだ。

 36分。韓国がチャンスで前がかりになり、日本のゴール前に殺到した。そこで日本がボールを取り返す。韓国の選手は前にかかっているため、韓国陣はスカスカで人がいない。日本は速いカウンターを打つ絶好のチャンスだ。

 この場面で、日本はなんと横にボールを繋いだ。その間に上がっていた韓国の選手がすべて自陣に戻りチャンスは潰えた。U-17日本は典型的な遅攻のチームであり、遅攻しかできない。勝負の勘所をわかってない。ただ漫然と10人の相手から点を取っただけだ。

数多い日本の課題はこれだ

 前半の韓国が伸び伸びやっているのに対し、日本は「受けて立って」しまっていた。メンタルが弱い。韓国のプレッシングに圧倒され、気圧されて縮んでしまっていた。少なくとも相手が10人に減るまでは。

 そして44分に韓国のDFコ・ジョンヒョンに2枚目のイエローカードが出て退場になる。これで名和田が直接FKをゴール左スミに決めて先制。日本は1人多い上に先制できた。この時点で勝負は決まった。あとは「どういう勝ち方をするか?」だけだ。

 そんな問いかけに応えるように、日本は10人を相手に後半2点を追加した。そして優勝だ。

 この優勝で日本の御用メディアはハデに日本賛美を報じるだろう。そして私がこの記事に書いたような日本の深刻な問題点は覆い隠され、戦勝ムードのなか消えて行くのだ。

 最後にもう一度、日本の課題を書く。

 球際での激しい競りのなさ。守備の粘りの欠如。判断ミスの多さ。プレーのミスの多さ。インテンシティ高く闘うことの欠如。敵のパスコースを切るポジショニングのなさ。味方のパスコースを作る動きと受けるための動きがない。

 遅攻ばかりになる体質を改善すること。速いカウンターが効く場面では、素早いポジティブ・トランジションから速攻を打つこと。常に「自分たちのサッカー」をするのでなく、局面に応じた臨機応変なプレーをすること。

 日本は得点力だけはあるように見えるが、足りない部分が実に多い。

 U-17日本代表はこれらの問題点を改善しない限り、11月にインドネシアで開かれるU-17ワールドカップでの健闘は期待できないだろう。

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【サッカー攻守4局面】いまや「0局」の時代に突入している?

2023-07-02 07:00:27 | サッカー戦術論
現代サッカーは保持・非保持に関係なく常にボールに関わる

 例によってサッカー・サイトを散歩していたら、すごい珍説にめぐり合った。

 ケルン体育大学サッカー専門科を経てアナリストの庄司悟氏による言説だ。それは以下の通りである。

『現代サッカーは、ボール保持・ネガティブトランジション・ボール非保持・ポジティブトランジションという「4局」の循環ではなく、ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く「0局」の時代に入り始めている(図2)。

「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」という現象を、単なる汗かき仕事のように分類し、とらえる時代はもはや過ぎ去っているのだ』(『マリノスとFC東京に共通する「0局」の概念。4局面では説明できない現象とは【Jの十字架】』フットボールチャンネル)より

 サッカーを「0局」なるユニークな視点で論説しておられる。

 まず庄司氏のおっしゃる「ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く」のは、いうまでもなく現代サッカーでは常識だ。

 それを言葉で言い表せば「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」などとなる。そしてこれらの行為を「単なる汗かき仕事のように分類」し、とらえている人は今でもけっこういる。

 しかし逆に「汗かき仕事だ」と思ってない、「それが普通だ」という人だって多い。単に「汗かき仕事だ」と思っている人がいるからといって、現状を「0局」と言ってしまうのは違う気がする。

 あえて4局面に引き付けていえば、確かに60年代とか大昔のサッカーは、攻撃の選手がボールに関わるのは「ポジティブトランジションとボール保持の間だけ」だった。それ以外の時間はウインガーとかCFは、ピッチをのんびり歩いてボールのゆくえをただ眺めていた。

 だが、いまは4局面すべてでプレイヤ―がボールに関わるのは常識だ。「ネガティブトランジション」時にボールを取り戻そうとしたり、カバーシャドウで敵のパスコースになりうるルートを切るのは当たり前だ。また「ボール非保持」時にボールに対しプレスしないなんてありえない。

 そんなことは4局面があろうとなかろうと関係ない。

 いまや4局面の有無にかかわらず、現代のセントラルMFはボックス・トゥ・ボックスで活動するし、それ以外の選手もボールに対してハードワークする。ただそれだけのことだ。

 そもそも4局面というのは、あくまでサッカーの試合におけるプレーの変遷・移行を言葉で示しただけのものだ。特に「ボールとの関係」をどうこう言ってるわけじゃない。

 それなのに「今のサッカーは常にボールに関わるのだから『0局』だ」などと言い始めるから、おかしくなるのだ。

 おそらくだが、4局面を庄司氏は「ボールとの相関関係」か何かだと誤解されているのだと思う。

 いや、「ボール非保持のときもやるのが当たり前だからハードワークじゃない」といえば、それはその通りなのだが。

 しかしそのことと4局面なる表現の「存在価値」とは関係ないし、「0局」などと言ってしまうとプレーの遷移が言い表せなくなる。単に不便だろう。

 だって「素早いポジティブトランジションからのショートカウンター」という表現って、「切り替えが速かったんだなぁ」ってアリアリと目に見えるようじゃありませんか?

 アナリストにとっては「0局」でも、言葉をあやつる表現者にとってこういう表現をできなくなるのは致命的なのだ。

【補稿】

 例えば「素速いポジティブ・トランジションからのショートカウンター」という言葉がある。

 これは、ボールを奪ってからダラダラとバックパスしたり、ボールを受けられる位置に素早く移動せずのんびり歩いていたりするのでなく、「切り替え速くカウンターを打った」ということを「ひとこと」であらわしている。

 それを上記のように長くだらだら説明するのでなく、「たったひとこと」で言いあらわすには「素速いポジティブ・トランジションからのショートカウンター」という表現以外にないのだ。

 ゆえに表現者にとって、4局面の遷移をあらわす言葉は必要なのである。

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【政治】小沢氏は「マイナ保険証」廃止を公約に政権交代せよ

2023-07-01 06:00:50 | 政治経済
総理は泉房穂、副総理には山本太郎を

 小沢一郎氏らは「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を立ち上げ、立民衆院議員(97人)の半数以上を占める53人の署名を集めた。その後も増えている。

 この動きを政権交代にもっていくべきだ。

 最大公約は「マイナンバー保険証の廃止」だ。マイナンバーカードの返納が相次ぐ中、この公約なら120%、国民大多数の賛同を得られる。新規で立てる候補者も続々、当選するだろう。

 なんせ世論調査では、国民の70%がマイナ保険証に反対しているのだから。

 基本戦略は小泉純一郎式の「郵政選挙」と同じく、マイナ保険証廃止の「シングル・イシュー戦略」(1つの争点)選挙にし、そのぶん広く賛同を募りたい。だが必要なら、補足的に積極財政や少子高齢化対策、社会保障、食糧自給などの政策も挙げる。

選挙を棄権する有権者の50%もこぞって選挙に行く

 総理大臣にはカリスマ・泉房穂氏を掲げる。積極財政や少子高齢化対策に八面六臂の活躍をするだろう。副総理は山本太郎氏だ。もちろん事前にそれぞれ話を通しておく。

 立憲民主党の泉健太や野田佳彦、枝野幸男、安住淳ら「自民・財務省と通じているメンバー」は除き、広く立民議員に参加を呼び掛ける。

 またれいわ新選組と共産党、社民党も糾合する。ひとまずこれらのグループをひと単位とし、その他、外部にも協力を呼び掛ける。

 いま「マイナ保険証の廃止」を公約に掲げれば、絶対に政権が取れる。保証しよう。これまで選挙を棄権していた有権者の残り50%も、こぞって選挙に行くだろう。

 つまり浮動票も大いに期待できる。

 小沢氏には、この「最後の戦い」をぜひ期待したい。

【関連記事】

政権交代が起きない日本というシステム──自民と民主の「新・55年体制」が始まる

投票率の増えた分はほとんどが政権交代への期待票になる』(デイリー新潮)

立民 小沢一郎氏中心の新グループ「一清会」発足』(NHK)

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【U-17アジアカップ】本大会最高のデキで日本が勝つ 〜日本 3-0 イラン

2023-06-30 06:13:46 | サッカー日本代表
次の決勝は日韓戦だ

 AFC U-17アジアカップ準決勝でU-17日本代表は29日、U-17イラン代表と対戦した。3-0で日本が圧勝した。次の決勝は奇しくも「日韓戦」となった。

 イランのビルドアップはダイレクトなやり方だ。単純にアバウトなロングボールを放り込んでくる。

 イランのスキルは高くはなく、日本はとにかくグラウンダーのボールさえしっかり転がせばイランに奪われることはない展開だ。

 イラン選手のトラップは雑で、大きく弾く。ゆえに日本は簡単にボールを奪える。敵がボールを弾いたら、すぐに寄せて行くこと。ここが肝心だ。

相手に時間を与える日本の戦い方は「あえて」か?

 日本はイランのロングボールを簡単にマイボールにすると、まるで相手に時間を与えるかのように横パスとバックパスを繋ぎながらゆっくり前進して行く。

 するとその間にイランの選手は自陣にスーッとリトリートし、ディフェンディング・サードに守備ブロックを作る。その上で日本が攻める展開だ。

 日本は相手が自陣に引くのを待つのでなく、ロングボールを支配下に収めたら切り替え速くすぐ縦パスを入れて攻めるテもあった。そうすればイランの最終ラインがまだ高いうちに攻められる。そこだけが疑問だった。

 いや、リードしてから「うまく時間を使うため」に横パスやバックパスを使うならわかる。だが彼らは0-0のときからそうしていた。単に遅攻のチームだからだろうか?

 日本のフォーメーションは4-4-2。スタメンはGKが後藤亘(FC東京U-18)。最終ラインは右から松本遥翔(鹿島ユース)、土屋櫂大(川崎F U-18)、永野修都(FC東京U-18)、小杉啓太(湘南U-18)だ。

 一方、中盤は矢田龍之介(清水ユース)と山本丈偉(東京Vユース)、川村楽人(東京Vユース)、佐藤龍之介(FC東京U-18)。FWは望月耕平(横浜F・マリノスユース)と道脇豊(熊本)だ。

74分にはFKから3点目を取る

 まず日本は10分に左から川村が折り返しを入れ、ボックス内でこぼれ球になる。その場面で矢田がボックス内から左足でミドルシュートを振り抜いた。先制点だ。

 20分にはGK後藤が敵のプレスを受けながら低いパスを出し、目の前でカットされる。危ないシーンだった。後藤はフィードがやや怪しくミスになるケースがある。要注意だ。

 そして25分。矢田が縦パスを入れ、佐藤がミドルシュートを放つ。このシュートのリバウンドを拾い、組み立て直してから望月がゴールに押し込んだ。2-0だ。

 今日の日本は秩序があり、やることがハッキリしている。局面で最善のプレーを選んでいる。本大会最高のデキだろう。

昔の「A代表」とはまるで違う

  後半に入るとほとんどの時間、日本がボールをキープした。カタールW杯コスタリカ戦でのA代表などと違い、ボールを「持たされて」おかしくなる、ということはない。しっかり能動的にボールを回した。

 そして最後は74分。デザインされたFKから2人がフェイクを入れ、3人目の佐藤が壁の下からゴール左に右足でシュートを決めた。日本の勝利だ。

 この日の日本はオーストラリアにロングボールを放り込まれ、メロメロにやられていた昔のA代表などとはまるで違った。

 敵のロングボールを一度コントロールしてボールをしっかり支配下に置き、自分たちのプレイをしていた。隔世の感がある。

 待ちに待った決勝は、韓国との「日韓戦」になった。7月2日に決戦だ。

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【U-17アジアカップ】準決勝、イラン相手にカッチリ無失点試合を

2023-06-29 06:00:17 | サッカー日本代表
浮き沈みが激しいU-17日本代表

 26日のAFC U-17アジアカップ準々決勝。オーストラリアを3-1で下し、U-17W杯出場権を得た日本代表が本日29日、準決勝でイランと対戦する。

 日本代表は見るからに得点力がある。ただ一方、インドに4失点するなど守備力が見劣りする。

 日本は何らかのコンセプトを共有している感じがなく、一体感に欠ける。集まる機会が少ない代表では仕方ないが、「個」の力まかせのバラバラ集団で一定の意図が感じられない。

 中盤で試合を作るような気配もない。

 またメンタルの制御にも難がある。そのためムラがありプレーの浮き沈みが激しい。

 他方、ウズベキスタンと1-1で引き分けるなど、攻撃は水物だ。

 CBの本多康太郎(湘南U-18)と永野修都(FC東京U-18)は試合をしっかりコントロールし、カッチリ無失点試合を成し遂げてほしい。

 アジアでの優勝はマスト(must)だ。

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【第2次森保ジャパン】日本人の「カウンター嫌悪症」は解消されたか【6月シリーズ】

2023-06-28 09:15:51 | サッカー日本代表
人々に支持された6月シリーズ

 日本代表がエルサルバドル、ペルーと対戦した6月シリーズを観て、大御所サッカージャーナリストから一般人までがこぞって「いままでの日本代表の中でいちばんいい」と感嘆の声を上げていた。

 これは日本がボールを奪ってからの、パスの繋ぎとフィニッシュが鮮やかだったからだ。

 逆にいえばそこに目を奪われ、そのプレーの多くがショートカウンターだったことを人々は忘れている。もしくは認知していなかった。

 ひとことでいえば、これは日本人の「カウンター嫌悪症」が直ったことを意味しているのだろうか?

意味のない二元論があったが……

 ひと昔前には、「カウンターか? ポゼッションか?」などという意味のない二元論の議論がエンエンと成された。

 そこで頑強に主張されたのが、「日本はポゼッションサッカーを目ざすべきだ」という意見だった。

 そして、かつてハリルホジッチ氏が監督になり、いまの森保監督とまったく同じく「縦に速く」と主張してカウンターサッカーを推進した。そのときには、ショートカウンターにアレルギー反応を示す人々が結構いた。

 それがいま、第2次森保ジャパンのショートカウンターで勝つサッカーを観て、快哉を叫んでいる。

 不思議な現象だ。

カウンターを観て快哉を叫ぶ理由とは?

 いったいなぜか?

 それは日本代表のボールを奪ってからのパスの繋ぎが見事だったこと。そしてフィニッシュが鮮烈だったからだろう。

 またポジティブ・トランジションが素晴らしく速かった点(だから「カウンターであること」を意識させなかった)。加えて監督が日本人だったことも一因だろう。

 つまり大きくはカウンターか? ポゼッションか? で主張は割れていても、実はパスを繋ぐことでは意見は一致していたのだ、と見ることもできる。

 要は攻撃のきっかけがプレッシングからボールを奪ったこと、つまりカウンターだったとしても、その後のパスの繋ぎとフィニッシュが素晴らしければ人々は「イエス」と言うのだ。

 表面的にはカウンターか? ポゼッションか? などと議論していても、後者のポゼッションとは単に「ボールを保持せよ」という意味ではなく、むしろ「意味のあるパスを鮮やかに繋ぐこと」だと解釈すれば合点が行く。

 ゆえに第2次森保ジャパンがショートカウンターからパスを繋いで勝っても、人々は賛意を示すのだろう。

 そういうことなのだ。

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【第2次森保ジャパン】旗手や相馬のSB化はレジスタになり得る

2023-06-27 05:11:40 | サッカー日本代表
旗手のSB起用はどういう意味か?

 巷間、旗手怜央の左SB起用が言われたりしていたが、これは「あえて」の相馬勇紀の右SB起用と同じ意味だ。

 最近のサッカー・トレンドである、SBのレジスタ化である。

 すなわち昔のサッカーと言えば、トップ下がレジスタだった。それが次にアンカーのレジスタ化に変わり、そしてSBのレジスタ化に変遷した。

 つまり「レジスタ」なるものが、どんどん後ろのポジション、昔は守備的だったポジションに降りてきているのだ。

 要は、チーム全体でレジスタを何人も抱える形に変わっている。

 そのぶんチーム全体で言えば、「よりサッカーは攻撃的になっている」ということ。

 そうなのである。

 なお、相馬は代表でSB起用されたのを受け、「ならば自チームでも考えた方がいいのだろうか?」などと発言していた。

 相馬は素直だなぁ。

 代表に合わせて自チームでまで「生き方」を変えるなんて。そこまで行くと本末転倒な感じはするが。

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【第2次森保ジャパン】日本はバックパス症候群から脱した【6月シリーズ】

2023-06-26 05:01:46 | サッカー日本代表
カウンターとビルドアップで組み上げる

 エルサルバドル、ペルーと対戦した6月シリーズで、いちばん大きい収穫は日本がすっかり「バックパス症候群」から脱した点だ。

 従来の日本人選手はJリーグも含め、なにかといえばバックパスだった。バックパスしておけばひと安心、とばかりにボールをうしろに戻して逃げていた。

 ひどいときには敵に詰められ、プレスをかけられた危急の場面でバックパスし、それがモロに失点につながったりしていた。例えば冨安と柴崎だ。

 個人的には、これは「ポゼッション病」の一類型ではないかと考えている。

「いまは前に繋げない。だからバックパスしてボールを保持しよう」。この繰り返しでポゼッション率は高まり、結果的にボール保持する時間が長くなる。

縦に速かった6月シリーズ

 いや、上に挙げたケースならまだマシだ。ひどいときには前にボールを繋げられる局面でもバックパスするケースまである。「見えてない」からだ。これがバックパス症候群の典型である。

 日本人にはこの「必要もないのにバックパスや横パスをする」というクセがある。これが今までなかなか治らなかった。

 例えば日本代表の3月シリーズでは、最終ラインで横パスばかり繋いでボールが前進しなかった。慣れない偽SBをやらされたことと、「ボール保持する時間を高める」と森保監督が発言していたのも一因だろう。

 で、ボールの動きは沈滞し、縦に進まなかった。

 それを吹っ飛ばしたのが、6月シリーズである。

 エルサルバドル戦とペルー戦での日本は「前へ、前へ」「縦へ、縦へ」。ベクトルが完全に相手ゴールの方を向いていた。

 だからあの2試合は、あれだけ爽快でワクワク感に満ちていたのだ。

カウンターとポゼッションが両立していた

 日本代表は確かに、カタールW杯時よりはポゼッション率を上げる必要がある。だが過度にボール保持にこだわることはない。

 今までよりボールを持つ時間が長ければそれでOKだ。

 特に6月シリーズでは、プレスしボールを奪ってからの速いショートカウンターと、最終ラインからビルドアップしてのポゼッション攻撃が見事に両立していた。

 配分もちょうどあれでいい。

 日本の最大の武器はあくまで速いポジティブ・トランジションからのショートカウンターだ。

(W杯アジア予選など)格下とやるときはボールを持たされるからといって、ポゼッションの練習を必要以上にやることもないだろう。

 6月シリーズにおけるカウンターとポゼッションの配分でいい。

 これが結論だ。

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【J1 第18節】緊迫したムードのなか両者無得点引き分け ~柏 0-0 新潟

2023-06-25 07:58:50 | Jリーグ
伊藤涼太郎が巣立った新潟の現在地は?

 アルビレックス新潟はエースの伊藤涼太郎がシントトロイデンへの移籍で抜け、いったいどうなるんだろうと思って観た。

 だが、むしろ全員が以前よりイキイキしてプレイしているのが印象的だった。熱気がひしひしと伝わってきた。

 みんなボールを蹴る一挙手一投足に意志とエネルギーがこもり、「やってやるぞ」という雰囲気が手に取るようにわかる。力強い。

 フォーメーションは以前の4-2-3-1から、4-4-2に変えた。

 スタメンは三戸舜介が鈴木孝司と2トップを組み、右SHにダニーロ・ゴメス、左SHに小見洋太を置いた。また2CMFは高宇洋と星雄次。最終ラインは右から藤原奏哉、トーマス・デン、渡邊泰基、新井直人だ。

ひとまわり大きくなった三戸舜介

 特に2トップの一角として起用された三戸舜介は、いつものようにキレキレで俊敏だった。ボールスピードとプレイスピードがすばらしく速い。

 彼はメンタル面でもひとまわり大きくなった感じがした。エースの伊藤がいなくなり、「オレがやらなきゃ」という自覚が強く芽生えたのだろう。それがプレイに表れていた。

 いつもより一歩足を出す。いつもより気合いを入れてダッシュするーー。そんな三戸には輝くような未来が見えた。

 彼はパリ五輪をめざすU-22日本代表に選ばれている。6月4日から始まった欧州遠征に帯同し、10日にはU-22イングランド代表と、14日にはU-22オランダ代表と対戦した。

 イングランド戦では右サイドのライン際でボールを受け、リズミカルにパス交換しながら左サイドまで移動。エリア内に侵入し、彼がシュートを放ったあとのこぼれ球に味方が反応して詰めた。

 またオランダ戦でもスタメン出場し、積極的にシュートやセンタリングを放っている。

 どう見ても将来のA代表候補だろう。

新潟はいつものパスサッカーだった

 ゲームの前半は、6-4から7-3で新潟がよかった。いつもの強くて速いグラウンダーのボールを2タッチ以内でつなぐサッカーが冴え渡った。

 かたや柏レイソルはパスワークが鈍く、なかなかうまく行かない。シュートにも結実しない。ないないづくしだった。

 これが後半になると逆転し、柏優勢になった。

 一方の新潟はスムーズにパスは繋いでも、それがフィニッシュにつながらない。まるで「パスを回すゲーム」をやっているかのような状態だった。

 後半の柏も同じ。

 かくて試合は両者無得点の引き分けに終わってしまった。

 新潟は展開はいいのだから、あきらかにフィニッシュを強化する必要がある。場合によっては選手の補強も必要なのではないか?

新潟CBトーマス・デンに注目した

 選手別では、新潟はCBトーマス・デンの力強いインサイドキックと展開力が光った。

 ほかの日本人選手と同じようにインサイドで蹴っているのに、彼だけは「グン!」とパスが力強く伸び、ボールが生きている。腰の使い方や筋力が違うのだろう。

 一方、柏はスタメンのなかで、マテウス・サヴィオだけが「別の世界」でプレイしているような感じだった。彼だけがシャープで鋭くチャンスを作り出していた。

 ただ途中出場した仙頭啓矢もいいプレイをした。彼はサガン鳥栖時代から目についていた選手で、なぜスタメンで使われないのかよくわからない。不思議だ。

 いかにも「下位同士の戦い」という感じのこのゲーム。どちらも決定力がなく、両者無得点で引き分けというのも頷ける内容だった。

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【U-17アジアカップ】点を取り合う大味な試合を制す ~日本 8-4 インド

2023-06-24 08:50:14 | サッカー日本代表
U-17W杯への出場権まであと1勝だ

 11月に開かれる「FIFA U-17W杯ペルー大会」への出場権をかけ、タイで「AFC U-17アジアカップ2023」が開かれている。U-17日本代表は6月23日、グループステージ第3節でU-17インド代表と対戦した。

 この試合、日本は8-4で乱打戦を制し、グループ首位で決勝トーナメントへの進出を決めた。U-17W杯への出場権まで、あと1勝だ。日本はベスト4をかけ、26日にオーストラリア(C組2位)と対戦する。

 まるで安物のビーフステーキのような、大味な試合だった。日本は立ち上がりから連続得点でそのまま押し切るかと思われたが、インドに思わぬ反撃を許す。

 そしてハデな点の取り合いになり、最後は日本が押し切った。「この年代はメンタルで決まるのかな」と思わせるゲームだった。

攻めた方が点を取るシーソ-ゲーム

 日本は13分にMF矢田龍之介の折り返しから、MF川村楽人が右足で強烈なシュートを放ち先制した。そしてFW名和田我空が、41分、45分と立て続けに2ゴールを上げる。

 これは3-0で終わったかなと思いきや、そうではなかった。後半はなんと打ち合いになる。

 47分にセットプレーでゴールを奪われ、インドの意気が上がった。それでも52分にこぼれ球をDF永野修都がゴールし、54分には望月耕平が追加点を挙げて突き放した。

 だが大量リードで気が緩んだか、62分と69分に失点してしまう。これでもはや「攻めた方に点が入る」展開になり、両チームの守備がすっかり緩んでしまう。

 そして74分にMF中島洋太朗が6点目を挙げると、79分の失点をはさんで後半アディショナルタイムにMF山口豪太とMF杉浦駿吾がゴールし、日本が8-4で勝利した。

技術よりメンタルが左右する試合のゆくえ

 技術的にはトラップも緩いし、ボールスピードも遅い。「そこでサイドに開けばいいのに」という場面で中央へ無理やり突っ込んだりする。

 だがそんな技術的なことより、試合を決めたと思われるのはメンタルだ。

 印象的だったのは、日本は1ゴール上げるたびにベンチも含め飛びあがって喜ぶ点だ。「3点も4点も取られているのに、よくあんなに喜ぶ気になるなあ」と感じた。

 失点の重みや責任を感じてない雰囲気なのだ。単に点を取って喜んでいる。「あの失点の原因は〇〇だった」などという反省や思考が試合中にない。まるでネットゲームをやっているような感覚だった。

 だから敵に攻められればモロ失点につながる。この年代はメンタルで試合が決まるのかな、と思わされた試合だった。

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【第2次森保ジャパン】課題は「ワントップ問題」だ【再検証】

2023-06-23 12:46:46 | サッカー日本代表
古橋と上田、前田の得点力は淋しい

 6月シリーズ、エルサルバドル戦は相手に退場者が出て参考外なので、主にペルー戦での「得点シーン以外」の日本代表を再検証してみた。課題と収穫だ。

 まず日本は中盤で点を取るチームである。その中盤はいいが、問題はワントップだ。たとえば6月シリーズで古橋亨梧は1ゴール、上田綺世はPKの1ゴール、前田大然は1ゴール。まったく貧弱だ。

 バイクでいえば中盤が「ナナハン」なのに対し、ワントップは「原付」。中盤の豪華さに比してCFが劣る。古橋はペルー戦では2点取るチャンスがあった。

 ペルー戦の前半13分、伊東純也からのアーリークロスを受けた古橋はあれをヘッドで決めていれば、圧倒的なインパクトを残せたはずだ。前半30分の三笘薫からの折り返しにもタイミングが合わず、決められなかった。厳しいようだが、この時点で失格だ。

 得点力が同じなら、強度の高いプレスが利くぶん前田のほうがベターだ。ただ、もしあの破壊的な中盤に加え、あそこにいま絶好調のFW大迫勇也がいれば、いったい何点入っていたかわからないだろう。「超絶的」なポストプレイでも大迫は図抜けている。

 そしてもうひとつの問題はプレッシングだ。日本は前がかりになった攻撃の直後で、ゴール前に5人いたケースがあった。なのにペルーの最終ラインが保持したボールに、だれもプレスに行かない。仮に行っても足ひとつ出さない。ネガティヴ・トランジションが遅い。

 ボールは敵ゴール前にあるのだ。対してプレスの駒は5人。カウンタープレスをかけるべきだ。あそこで複数人がプレスをかけてボールを奪えばゴールになった確率は高い。

鎌田と伊藤洋輝が致命的なミス

 そのほか主だったピンチの場面を挙げてみよう。

 前半23分に最終ラインからボールをもらった鎌田大地が、どフリーの状態で強い縦パスを出したがモロにカットされた。そのあとの味方の守備対応がよく大事には至らなかったが、あれは絶体絶命のピンチだった。

 また前半31分。伊東と菅原由勢が上がり切って前残りしている場面で、鎌田と遠藤航が前から相手ボールにプレスに行った。だが彼ら2人の頭を越して背後のスペースを突くパスを出された。ペルーにビルドアップされ見事にシュートまで行かれた。あれは危なかった。

 このほか後半1分。日本の最終ラインがボールを保持し、ペルーにプレスをかけられた危急の場面だ。このとき横パスをもらってあわてた伊藤洋輝は、まるで敵のセンタリングのような低い横パスを右方向に出した。敵に取り囲まれているというのに。

 たまたま逆サイドの菅原にボールが達して事なきを得たが、絶対にやってはいけないミスだった。ほかにも伊藤洋輝は1対1の守備対応で致命的なミスがあった。

瀬古のポジショニングで失点は防げた

 続く後半13分だ。菅原が矢のようなボールスピードの縦パスを古橋に入れたが、古橋はトラップミス。一発でチャンスになるケースだっただけに惜しかった。

 同26分。相手ボール時、前田の右脇にぽっかりスペースが空き、ミドルシュートを打たれた。瞬間的に遠藤が前に出てボールをカラダに当てたためゴールにならなかった。コース的には入っていてもおかしくなかった。

 最後は同37分の失点シーンだ。ペルーがゴール前に放り込んだボールを谷口がヘディングでクリアした瞬間、ボールが途中出場の瀬古と相馬の中間のスペースに落ちた。一瞬、瀬古が足を止めたため、敵に飛び込まれてシュートされゴールを決められた。

 谷口がヘディングしたと同時に瀬古が走り出していれば防げた可能性は高い。またはボールを放り込まれた瞬間に(あらかじめスペースを埋めるため)瀬古がゴール方向に同時に走り出していれば、あの場面はなかったかもしれない。

 このほか守備面では、前半のプレスは緩かった。ブロック守備でコースを切るだけ。打って変わって後半になり、日本は急に球際に厳しく行くようになった。全体にもっと強度を高めたい。守備と攻撃にプレー強度を落とさず、インテンシティ高くゲームを進めたい。

収穫は中盤の頭脳的プレイだ

 では収穫を見て行こう。

 旗手怜央と守田英正、鎌田、遠藤は自分の頭で考えて、中央で守備のバランスを取りながらプレイできる。インサイドMF1枚がアンカー脇を埋め、4-1-4-1から4-2-3-1に変化して柔軟に対応していた。また積極的に攻撃参加する右SBの菅原は、まるで忍者のように軽やかで八面六臂の活躍ぶりだった。

 他方、ビルドアップで見逃せないのは、CBの谷口彰悟と板倉滉による正確ですばらしい縦パスと持ち上がりだ。菅原もいい縦パスをもっている。また遠藤は上がった菅原のカバーリングをしっかりしていた。

 そして前半20分の場面では、旗手が遠藤とのワンツーから、すごい縦パスを繰り出してカウンターの起点になった。(このあと鎌田のダブルタッチから三笘へとボールが渡り、折り返しを菅原がシュートしたがヘディングで防がれた)。

 加えて背後にマーカーを背負って縦パスをもらった旗手は右足インサイドのワンタッチで前を向き、一瞬でマーカーをかわしていた。ゲームの先を読める機敏でテクニカルな旗手は、チームに必要だ。

 一方、日本は守備時4-4-2だった。だがCMFのカルタヘナが最終ラインに降りて3枚回ししてくるペルーに対し、後半の日本は三笘、鎌田、途中出場の前田の前3枚でプレスする形に変えた。臨機応変だった。

 また激しく上下動する三笘と組む左SBは、上がらない伊藤洋輝で適合していた。だがもし新しく試すとすれば、横浜F・マリノスの永戸勝也を推したい。

 最後は後半29分、前田の得点シーンだ。右サイドで縦パスを受けた堂安が横にいた久保にパスを出したが弱く、相手ボールになる。このとき堂安からのパスをもらいに寄って行った久保が流れで相手ボールにプレスをかける形になり、前田のゴールが生まれた。久保の好プレイだった。

【まとめ】

 このチームの売りは、三笘薫と伊東純也という両翼で前に高く張り出す2本の槍だ。かたやCFの古橋や上田、前田は代表での得点力はそれなり。前線で基点になるポストプレイも期待できない(まだいちばん近いのは上田だが)。この点は今後も模索が必要だろう。

 またチームとしてはボール保持する時間を(以前より)ふやすことをめざしながらも、ポゼッション率などよりビルドアップや「縦への速さ」を最優先している。それで正解だと思う。

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【第2次森保ジャパン】三笘が1G1Aで日本4発 〜日本 4-1 ペルー

2023-06-21 10:47:10 | サッカー日本代表
日本のカウンターが冴えた

 キリンチャレンジカップが6月20日に行われ、日本とペルーが対戦した。試合は4-1で日本が勝った。ポゼッション率は日本の41%に対し、ペルーは59%。日本はミドルプレスで「相手にボールを持たせて勝つ」サッカーをした。カウンターが冴えた試合だった。

 前半22分に伊藤洋輝が美しいシュートを決め、その後、堰を切ったように三笘薫と伊東純也、前田大然がゴールした。三笘はこの日1ゴール1アシスト。どの得点も複数の選手が絡み、コンビネーションが生きたゴールだった。

 ただペルーはエルサルバドルよりは歯応えがあったが、3月シリーズで対戦したウルグアイやコロンビアとは大きな差があった。そのため日本はミスもあったが、それが致命傷にならず通用した。

 またエルサルバドル戦の前半と同じく、この試合の前半の日本は(遠藤航を除いて)相手ボールに対するプレスが緩かった。もっと球際の厳しさがほしい。

 三笘のドリブルもそれほど成功率は高くなく、いつもの神がかったような鋭さがなかった。日本はゴールの場面だけに限定すれば得点力は上がっているように見えるが、肝心の強い相手とやったときにどうか? が見たい。

 日本のフォーメーションは4-1-4-1。守備時4-4-2。スタメンはGKが中村航輔。最終ラインは右から菅原由勢、板倉滉、谷口彰悟、伊藤洋輝。アンカーは遠藤航。2列目は右から伊東純也、鎌田大地、旗手怜央、三笘薫。ワントップは古橋亨梧だ。

目の覚めるような伊藤洋輝の一撃

 日本の1点目は前半22分だった。中央の遠藤から伊藤洋輝へ横パスが通る。すると伊藤洋輝がボックスの外から、左足でゴール左スミに豪快なシュートを決めた。目の覚めるような一撃だった。

 2点目は同37分だ。右サイドの菅原がドリブルしてから中央の鎌田にパス。そのあとボールは鎌田から左サイドの三笘へと渡り、最後は三笘がボックス内へ侵入して右足でシュート。敵の足に当たってゴールになった。

 右で作って左で決める。このときボールは右サイドから左サイドにかけて斜め前に進んで行った。

 また同19分には、逆のパターンも見せた。

 最終ラインでペルーのボールを奪い、速い組み立てから鎌田がダブルタッチで敵をかわして左の三笘にパス。三笘は大きくスペースが開いたセンターレーンに入ってくるゴール前の菅原にボールを出したが、菅原のシュートは敵にヘディングでクリアされた。

 オーバーロードとアイソレーションの見本のような形だ。このケースでは逆に「左で作って右で決める」パターンである。この日の日本はこうした左右の片側に密集を作り、敵を寄せておいてサイドチェンジする揺さぶりを見せていた。

後半にプレスが厳しくなった

 そして後半に入ると、日本のプレッシングがグンと厳しくなる。エルサルバドル戦と同じ展開だ。またハーフタイムで森保監督にネジを巻かれたのだろうか?

 そんな後半18分。こぼれ球を鎌田が拾い、三笘に渡す。三笘が中に折り返し、今度は伊東にパス。伊東はあわててすぐシュートせず、しっかりタッチしGKをかわしてからゴールを決めた。3点目だ。

 4点目は同30分だった。途中出場の久保建英が相手ボールにプレスをかけると敵がパスをミスする。これで同じく途中出場の前田大然にボールが渡り、前田がボックス内に侵入し右足でシュートを決めた。半分は久保の得点だ。

 また逆に失点のシーンは同38分。ペルーのカルタヘナがサイドからクロスを入れ、谷口がヘディングでクリアしたボールをゴンサレスが左足でシュートして決めた。日本はノーチャンスだった。

進化する途上の一面なのか?

 ペルーはトランジションがよくカウンターが速い。特に日本の攻めからボールを奪われた、前半10分の彼らの速攻は危なかった。またペルーは守備での寄せが速く、球際が強かった。

 彼らはCMFのカルタヘナが最終ラインへ降り、3バックの形でビルドアップしてくる。また同じくカルタヘナが降り、CBサンタマリアとの2バックでのビルドアップもある。

 ただし自陣から組み上げてのポゼッションというより、どちらかといえば守備やカウンターが身上であるように感じた。そんなチームにボールを「持たせた」のだから、日本が有利になるのも頷ける。

 そう、日本は相手にボールを持たせて勝つサッカーをした。まずは守ってボールを奪い、そこから切り替えてカウンターというケースが目立った。ただし最終ラインからのビルドアップもスムーズだった。

 例えば前半28分にCB板倉から左SB伊藤へとボールが渡る。そして伊藤が前縦の三笘にパスし、三笘が右の伊東に大きく対角のサイドチェンジを入れた組み立ては凄かった。

 ただし前半のプレッシングには疑問が残る。特に日本が前がかりになって押し込みボールを失ったあと、ボールを保持する敵の最終ラインに対するプレスがない。このとき日本はプレスの駒が前に多く残っているのだから、前から圧をかければ有利になるのに詰めが甘かった。

 もっとも相手にボールを持たせて勝つ、というコンセプト上、「前でのプレスはかけない」という共通認識があったのならこの限りではないが。

 いずれにしても、この試合で日本はまた新しい一面をのぞかせた。相手にボールを持たせた、といってもカタールW杯のときほど深い引き方ではなかった。さて、どれが本当の顔なのだろうか? もしこれがどんどん進化していく途中の素顔なのであれば、先が楽しみだ。

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【第2次森保ジャパン】ペルー戦、久保はスタメン落ちか

2023-06-19 08:41:33 | サッカー日本代表
三笘と伊東、旗手が先発

 18日に行われた日本代表のトレーニング内容によれば、20日のペルー戦で久保建英はスタメン落ちが濃厚だ。フォーメーションが4-1-4-1なら両サイドには右に伊東純也、左に三笘薫、ワントップには古橋亨梧が入りそうだ。

 またインサイドMFは右に鎌田大地、左に旗手怜央、アンカーは遠藤航が濃厚。最終ラインは右から菅原由勢、板倉滉、谷口彰悟、伊藤洋輝。GKは中村航輔になりそうだ。

 合言葉は「縦に速く」。前に重心がかかる布陣で敵を押し込み、チャレンジングに縦パスを入れる。ボールが奪われればカウンタープレスで奪い返してショートカウンターをかける。

 またポケットを意識し、サイドからクロスを入れる攻撃もカギになる。ビルドアップのスタイルにも注目だ。

自分の存在を証明したい久保

 この6月シリーズで2試合連続スタメンで使われるのは、三笘、旗手、菅原、板倉、谷口の5人になりそうだ。攻撃陣で唯一の再先発となる三笘と旗手は、コンビネーションが買われたのだろう。

 一方、今季同じようにヨーロッパで爆発的な活躍をした三笘と久保は、明暗が分かれた。2戦続けて三笘を先発させるのは、ある意味、森保監督による「エースは三笘だ」宣言といえるかもしれない。

 これまで久保は、代表チームで重用されているとはいえない。そのため「自分の存在を証明したい」という気持ちが強いはずだ。

 その証拠に彼はいままで代表で試合に出るとメンタルのバランスを崩し、ともすれば「俺が俺が」とアピールするプレイに走りがちだった。肩に力が入っている。スタメンに定着しようと必死なのだ。

チーム作りに徹した非情の采配?

 ところがそんななか、先のエクアドル戦で久保はついに結果を出した。その彼がこのペルー戦のスタメンを見て、どう思うか? 

「同じように欧州で絶好調の三笘は先発で、俺はスタメン落ちか」とならないだろうか?

 もちろん右サイドに主力組の伊東純也を使っておきたい森保監督の意図はわかる。有力な伊東をスタメンで使わないテなどない。

 だがエクアドル戦で結果を出した久保をペルー戦でも使い、「お前のことは見ているぞ」とサインを送る手もあった。それで久保のメンタルは安定するだろう。

 その意味ではペルー戦のスタメンは、バランスのいいチーム作りに徹した「非情の采配」といえるかもしれない。

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【第2次森保ジャパン】ペルー戦でビルドアップはどうするのか?

2023-06-18 07:59:48 | サッカー日本代表
骨格が見えたエルサルバドル戦

 相手のレベルと退場者が出たことで1回目のマッチレビューでは選手個々人への評価に留めたが、エルサルバドル戦で見せた日本の戦い方は早めの縦パスとそれが奪われた時のハイプレスからのショートカウンター、またはサイドからのクロス(特にポケットを意識した)という感じだった。

 右は久保と堂安と菅原、左は三笘と旗手と森下という2セットが組になり、左右から攻撃を繰り出した。この2ブロック間の中央の「へそ」には守田が鎮座し、攻守を差配した。時に旗手も降りて2CMFでバランスを取った(2人は個人的に話し合ってそうしたらしい)。

 あとは試合が試合でプレー機会が少なかったので触れなかったが、板倉と谷口の両CBは持ち上がりも含めすばらしかった。またGK大迫が上田に出した長い縦パスと、それをこともなげに胸で収めた上田には唸った。

 全体に、縦に詰まった3月シリーズとは対照的な展開だった。

 特に久保にとっては、彼が代表チームで初めて機能したゲームとして記念に残るだろう。それでもまだ彼はいつものように気が急いている感じがしたが、まあ程度問題だ。どうやったら久保がメンタルを整え代表でドンと構えてプレイできるのかはよくわからない。

 いずれにしても、一定の形が見えたテストマッチだったといえる。注文としては1試合を通じてインテンシティを落とさず(むろん「試合運び」という意味でそうするなら理解するが)球際に厳しいプレッシングサッカーをやってほしい。

中村敬斗に注目したい

 残るテーマは、エルサルバドル戦がハーフコートマッチになったために問題が覆い隠されたビルドアップだろう。

 20日のペルー戦では、また3月シリーズでやったギクシャクする偽SBをやるのだろうか? それともエルサルバドル戦のようにSBはまっすぐ縦に走る香車になるのだろうか?

 あと最後に触れておきたいのは中村敬斗についてだ。

 ひとり彼のまわりだけが、まとっている「空気」がちがう感じがした。何かが漂っている。際立った雰囲気をもつ選手といえるだろう。

 見るからに何かをやってくれそうな、何かとんでもなくスペシャルなプレーを繰り出しそうな、そんな特別な選手という感じがする。彼の今後に注目したいと思う。

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【第2次森保ジャパン】頬と空気が弛緩する花試合 〜日本 6-0 エルサルバドル

2023-06-16 07:25:08 | サッカー日本代表
どこまで自分に厳しくなれるか?

 国際親善試合のキリンチャレンジカップ2023が15日に行われ、サッカー日本代表とエルサルバドル代表が対戦した。6-0で日本が勝った。

 コーナーに追い詰められた敵を一方的に殴り続けるような試合だった。試合開始2分に相手選手が1人退場になり、大量得点が入るユルい空気のなか「どこまで自分に厳しくなれるか?」というゲームだった。

 締まらない雰囲気のまま前半が終わり後半に入ると、ハーフタイムに森保監督がネジを巻いたのか日本のプレッシングが目に見えて厳しくなり、緊迫感が戻った。空気が引き締まった後半がなければ、減点になりそうな試合だった。

 日本のフォーメーションは4-1-4-1。スタメンはGKが大迫敬介。最終ラインは右から菅原由勢、板倉滉、谷口彰悟、森下龍矢。アンカーは守田英正。2列目は右から久保建英、堂安律、旗手怜央、三笘薫。ワントップは上田綺世だ。

後半に潜在的な戦力が次々登場した

 前半1分に久保のFKを谷口が頭で合わせ、A代表初ゴールで1点目。前半4分には猛プレスで相手を退場に追い込んだ上田がPKをゴール右に決め、これまた初ゴールの2点目が入った。

 いきなり2点が入り相手に退場者も出て空気がやんわり弛緩するなか、前半の日本は決めなければいけない場面で外したり、やってはいけない危ういプレーや凡ミスが目立った。

 久保と堂安が3点目と4点目を入れ、前半が終わった。すると後半の立ち上がりから、日本は目に見えて相手ボール時のプレッシングが厳しくなった。監督の指示だろうか? 相手が負荷にならないぶん、自分で自分に負荷をかけるというわけだ。

 ハーフタイムを挟んで選手の動きがとたんに鋭くなり、前半にはなかった球際の厳しさが段違いに増した。その変化は後半に交代選手が入るごとにだんだん上がって行った。

 交代出場の選手で目についたのはワンタッチで1得点した初ゴールの中村敬斗のほか、駆け引きしてマークを外しヘディングで1点決めた古橋亨梧、右サイドを駆け上がって機敏にクロスを入れたり精度の高いCKをこなしたSB相馬勇紀、前への飛び出しがよく目立ったオフザボールのいい川辺駿らだ。

 スタメン組では1ゴール2アシストの久保に加え、三笘、堂安、上田、守田、菅原らが光った。また旗手はふつうにトップ下でもやれる感じがした。なぜ彼はしばらく呼ばれなかったのか不思議だ。そういう意味では、潜在的な戦力をいろいろ見られた点でいい試合だった。

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