すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【リオ五輪予選・決勝】あの勝負強さとハガネのメンタルは本物だ ~日本3-2韓国

2016-01-31 10:40:16 | サッカー日本代表
決定力とフィジカルの強さで逆転勝ち

 日本が驚異の粘りと決定力で、永遠のライバル韓国に逆転勝ちした。「日本は韓国に勝てない」という伝説を彼らがぶっ壊した。

 これで晴れて「アジア最強国」としてリオへ行ける。この1勝で得た自信は、本大会に向けとてつもなく大きい。選手のメンタルに好影響を与えるだろう。さあ、あとは本番で勝つだけだ。

 日本には3つの強さがある。勝負強さとメンタルの強さ、フィジカルの強さだ。過去の日本代表のように技術や戦術を武器にするのではなく、日本はこの「3強」で勝ち上ってきた。

 だがこの3強は決勝の相手、韓国の特徴でもある。とすれば同じ土俵、同じ要素でがっぷり四つになる。さて日本の「3強」はあの韓国に通用するか? ここに興味を持って見ていたが、通用するどころか相手を上回った。いやはや大したチームだ。

時間が経過するたびによくなる日本

 この日も前半の日本は相変わらず最終ラインからのビルドアップができず、いつものようにボールのハジキ合いになった。ワンタッチ・コントロールも雑で、パスを受けてもボールを弾いてロストした。特にFWオナイウはボールの収まりが悪かった。

 だが日本は2点取られて先行されると覚醒する。後半に入ると最終ラインからのロングボールの放り込みをやめ、グラウンダーのパスをつなぐようになった。すると日本が2点を取ってからは面白いようにボールがつながるようになった。

 日本は試合を重ねるごと、時間が経過するたびに別人になる。得体の知れない底力が湧いて出る。この日の日本もまさにそうだった。

 最終ラインを高く保ち、スペースを殺して接近戦、肉弾戦に持ち込んだのも当たった。これで日本のフィジカルの強さが生き、特にハイボールでは相手に競り負けなかった。

韓国が前がかりになり逆に浅野が生きた

 同点になって韓国は前がかりになり、彼らの最終ラインの裏にはスペースができた。これで今度はスピードのある、途中出場したFW浅野の裏への飛び出しが生きる展開になった。

 敵の最終ラインと駆け引きし、「よーい、ドン」で競争になれば浅野が負けるわけがない。前のスペースへ走り込んだ浅野が決勝点を決め、日本は鮮やかに勝ち切った。

 浅野はしっかりGKを見て、コースを狙いシュートを打っている。非常にしっかりした決定力だ。守備面での貢献度が高いオナイウを先発させたのは、いつものように「まず守備から入る」というゲームプランだろうが……一度、浅野をスタメンで見てみたい。

 もっとも「相手が疲れてきた後半に浅野を入れ、ライン裏で走り勝たせる」という采配に一理あることは確かだが。

日本は修正すべき点が多い=まだまだ伸びしろがある

 この決勝戦は日本のよさがすべて出た。まさに今大会の総決算のような試合だった。

 日本は韓国に競り負けなかったし、2点先行されてメンタルがへこむこともなかった。そしてアタッキングサードでボールを持てば、驚異の決定力で試合を決めた。

 こんな勝負強い日本代表は今まで見たことがない。

 だがこのチームは修正すべき課題も多い。詳しくは別記事に書くが、まず戦術面を練り直す必要があるし、ワンタッチ・コントロールを磨いてファーストタッチでボールをコントロールできるようにしなければいけない。これはスペースのない現代サッカーでは必須だ。

 また最終ラインは「強さ」はあるが、相手の攻めを弾き返すだけで奪ったボールを前へつなげない。もっと後ろからていねいにビルドアップしたい。

 だが「優勝したのに課題が多い」というのは、それだけ伸びしろがあるということだ。もしこのチームが修正点をきっちり克服できれば、五輪本大会でもかなり期待できる。持ち前の勝負強さとメンタル&フィジカルの強さに、戦術的な上積みやボールコントロールの精度が高まれば鬼に金棒である。

 いよいよ本大会が楽しみになってきた。

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【リオ五輪予選・決勝展望】日本のフィジカルと勝負強さは韓国に通用するか?

2016-01-30 00:10:32 | サッカー日本代表
消化試合になった決勝戦の意義とは?

 リオ五輪出場をかけた最終予選。日本はこれまで少ないチャンスをモノにする決定力と熱いメンタル、強い一体感で勝ち抜いてきた。そしてたどりついた今日の決勝戦だ。試合の見どころは大きくふたつある。

 彼らはサッカーというよりラグビーに近いボールのハジキ合いで勝つスタイルだ。とすれば必然的にフィジカルと勝負強さの争いになる。そんな彼らのサッカーが、身体能力の高い韓国に通用するのか? まずそこを見たい。

 第二のポイントは、今回の手倉森ジャパンの意義についてである。

 このチームの存在価値はただひとつ、「勝てること」だ。彼らは美しさを見せて客を楽しませるようなショーはやらない。あくまでリアリスティックに勝敗だけにこだわる。裏を返せば、勝てなければ彼らが彼らである意味がない。負けたらその瞬間にたちまち単なる烏合の衆になる。

 とすれば決勝もきっちり勝ち、自らの存在価値を証明できるのか? そこを見届けたい。

 カギはズバリ、メンタルだ。五輪出場を決め、実質「消化試合」になった不思議なこの決勝戦で、彼らは緩まず今まで通り強いメンタルを維持できるのか? 日本戦となるとがむしゃらさ100倍になる韓国を相手に、石にかじりついても勝ちたいと乞い願えるか?

 それとも何かの瞬間に、例えばリードされたり残り時間が少なくなったとき、ガックリ心が折れてしまうのか?

 ここは大きな見どころであり、このチームが五輪本大会でも変わらず強さを発揮できるかどうかの分水嶺になる。消化試合だなんてとんでもない。ひとつひとつのプレイがすべて、リオの本番でのシミュレーションになる。

 さて結果はどう出るか? 武者ぶるいが止まらない。

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【オーバーエイジ枠】ポゼッション率を上げる補強で攻めの形を作れ

2016-01-29 08:48:15 | サッカー日本代表
ポストプレイのうまいFWがほしい

 リオ五輪最終予選は決勝がまだだが、せっかく日本の五輪出場が決まったことだし、今回はオーバーエイジ枠について考えてみよう。

 U-23日本代表はチームの雰囲気がよく、強い一体感がある。気持ちの熱さや勝負強さも十二分で、オーバーエイジ枠によりチームをいじってしまうのがとても惜しい。だが現状で「足りない要素」を考えれば、逆にオーバーエイジで補強すべきポジションは多い。

 まずこのチームは前線でのボールの収まりが悪い。ポストプレイがうまく、前で攻めの基点になれるFWがいれば構成力が格段に上がる。

 FWにクサビのボールを入れ、落としたところをワンツーからフィニッシュへ。またはいったんサイドに振るのもいい。今のチームは、前線にポイントを作るこうした攻めの形がほとんどない。とすれば一部で報道されている大迫はいい選択だろう。ハーフナーも有力な候補になる。

ゲームを作れるボランチが必要だ

 次は展開力のあるボランチだ。現状、軸になっている遠藤は守備からリンクマン的な機能を果たすタイプだし、試合を決めてしまうようなパスの出せるボランチがいない。補強するなら大前提として守備ができ、ゲームも作れるセントラル・ミッドフィルダーがほしい。

 レッズの柏木はいい選手だが、やや守備面に不安がある。鹿島の柴崎は本来ボランチというよりトップ下タイプだ。U-23日本代表には浅野もいるし、彼を生かす意味でも広島の青山がベストではないだろうか(本当は青山はA代表にほしいのだが)

 最後はフィード力のあるCBだ。現状DFは相手の攻めをただ弾き返すだけ。奪ったボールを前へつなげない。そうではなく、ビルドアップの第一歩になるようなパスを出したい。特に中~長距離の正確なパスをつけられるCBがほしい。A代表の森重のようなタイプのCBがいれば、後方からの組み立てが可能になるだろう。

 さて、こうして補強したあとのチームをイメージしてみるとどうか? 全体に今よりボールポゼッションがよくなり、落ち着いた試合ができるようになる。場合によっては遅攻も可能だ。その意味では現状でもまとまりのいいU-23日本代表だが、オーバーエイジ枠の活用は大きな効果を発揮するだろう。

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手倉森監督のターンオーバー制はハリルが反面教師か?

2016-01-28 10:12:22 | サッカー日本代表
W杯予選で「海外組完全固定」のA代表

 A代表はW杯アジア2次予選・初戦のシンガポール戦で信じられない引き分けを食らい、以後、ビビったハリルは勝って当たり前のアジアのはるか格下相手に海外組をフル動員し、スタメン完全固定で戦ってきた。

 このブログでは何度も書いたが、「たかが」アジア2次予選なんだから若手を積極的に使い、予選自体を「新戦力発掘のためのテスト」に使わなければ意味がない。お堅いベストメンバーでふつうに勝っても、それはただ勝っただけ。今後の積み上げにならないし、膨大な時間と労力のムダだと強調してきた。

 手倉森監督はまさにそのアジア2次予選のベンチに入り、ハリルの固着化したスタメン選びを目の当たりにしている。ひょっとしたら今回のリオ五輪最終予選でのターンオーバー制は、その反面教師なのではないだろうか? 

最終予選を五輪本番のための「練習試合」に

 リオ五輪本番までを見据え、あえて最終予選のスタメンを日替わりにして多くの選手にチャンスを与えた。つまり最終予選を(実質的に)五輪本番のための「練習試合」にした。それにより選手の伸び代、潜在能力を引き出すことを狙ったのではないか? (それはまさにW杯アジア2次予選でハリルに求められたことである)

 もし手倉森監督がそれを実行したのだとすれば、正真正銘、彼は希代の勝負師と言えるだろう(考えてもみてほしい。五輪行きがかかったあの痺れるイラク戦に岩波を外すなんて、ふつうの監督にはとてもできないだろう)。

 その意味で手倉森監督は、(戦術面でのプランニングうんぬんというより)選手をどう選び、どう使うか? という文字通り「采配」の手練れなのだろう。彼の柔軟な選手起用が「だれにでもチャンスがあるんだ!」という選手のモチベーションを生む。やがてはそれがチームの一体感となって強靭なメンタルの醸造につながる。

強いメンタルが生む「あの得体の知れない底力」

 イラン戦やイラク戦のあの劇的な幕切れを見ると、思わず「このチームのあの得体の知れない底力はいったい何だ?」と驚かされる。そんな科学では説明できないこのチームの火事場の馬鹿力は、手倉森監督がコツコツと仕込んできた強いメンタル、柔軟な選手起用が生み出す爆発的なモチベーションが作り出しているのだろう。

 最後に勝負を決めるのは技術や戦術ではなく、勢いや流れ、気持ち、運気なのだ。U-23日本代表の試合ぶりを見ていると、勝負ごとのそんな「基本」を思い知らされる。

 ぜひ決勝もぶちかましてほしい。

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【リオ五輪予選・準決勝】劇的な「さよならミドル弾」でリオ行き決定 ~日本2-1イラク

2016-01-27 09:24:12 | サッカー日本代表
少ないチャンスをモノにする火事場の馬鹿力

 日本はビルドアップは雑だしポゼッションもできないが、劇的な決定力がある。そんな驚異の勝負強さで少ないチャンスを生かし、リオ五輪行きをもぎ取った一戦だった。

 まず先制したのは日本。前半26分に左サイドを縦に抜け出したFW鈴木武蔵が、相手GKと最終ラインの間に絶妙なグラウンダーの折り返しを入れ、それをFW久保裕也がスライディングしながらボレーで決めた。

 だが日本はまずい追いつかれ方をする。前半も終了まじかの43分。相手CKからのこぼれ球を押し込まれ、あっさりリードをフイに。40分台での失点はいかにもまずい。あとほんの5分だけポゼッションして時間を使えば、リードしたままハーフタイムに入れた。課題の残る失点だった。

 だがそんな嫌なムードを吹き飛ばす決勝弾が最後に飛び出す。ドン詰まりの後半48分、ゴール前でこぼれを拾った原川力が、空間を切り裂くような低い弾道のさよならミドル弾をぶち込む。日本はあとはアディショナルタイムの終わりを待つだけだった。

 準々決勝イラン戦のレビューで「このチームは最後に得体の知れない底力が湧いて出る」、「このチームは明らかに持っている」と書いたが、それを裏付けるかのような劇的な幕切れだった。

勝負師・手倉森監督、得意の日替わりローテーション

 この日の日本は、ボランチを2枚置く得意のボックス型中盤による4-4-2。2トップに久保と故障上がりの鈴木を起用し、中盤は遠藤と原川をボランチに。左にはイラン戦2ゴールの中島、右には南野を配した。最終ラインはCBに植田と奈良。左SBに山中を、右SBには室屋を使った。GKは唯一不動の櫛引だ。

 相変わらず長丁場を見越した日替わりローテーションによる大胆な布陣だ。レギュラーも控えもない全員サッカーである。戦術面はともかく、少なくとも選手起用に関しては、手倉森監督はA代表・ハリル監督の10倍は勝負師かもしれない。

 イラクのシステムは4-2-3-1。遠目からでも長いボールをトップに当ててきたかと思えば、ワンツーを交えたショートパスをつなぐこともできる。なによりワンタッチ・コントロールの精度が日本とはまるでちがう。前半立ち上がりの15分を見ただけで、個の力では日本より上であることがすぐわかった。(だがそれでも日本が勝つのだから、これがサッカーである)

アタッキングサードでの驚異の殺傷能力

 対する日本は相変わらず攻めの形が作れない。最終ラインからのビルドアップができず、DFがボールを持つとアバウトなロングボールを前線に放り込むか、中盤より前でなんとかこぼれ球を拾ってカウンターを仕掛けるか、の二択だった。どうやってアタッキングサードへボールを運ぶか? についてのビジョンがない。

 例えばDFラインからグラウンダーのボールで丁寧にビルドアップできないし、中盤では意図のあるパスが2本以上つながらない。おまけに突出した選手もいない。だがそれでも日本にはアタッキングサードでの「火事場の馬鹿力」があり、驚異の決定力で少ないチャンスをモノにする。(今大会の日本の得点シーンを思い出してみるといい。どれも衝撃的なファインゴールばかりだ)

 従来の日本代表といえば、中盤でこそ華麗にボールをつなぐがフィニッシュがまるでダメで勝負弱い。カッコいいけどひ弱で勝てないーー。それが定番だった。

 今回のチームのように、不恰好でゴツゴツした試合展開ながら、とにかく前でボールを持ちさえすれば無類の勝負強さで勝ちをもぎ取る、昔の旧西ドイツのような種類の「強さ」を持つ、こんな日本代表は今まで見たことがない。

 総合力や美しさでは劣るが、試合が終わればなぜか日本人が勝ち残っている。「世界」はこの大会を見て、キツネにつままれたような気分でいることだろう。内容や芸術点などどうでもいい、勝利こそすべてだーー。日本にもとうとう初めて「右翼のフットボール」の時代がやってきたのかもしれない。

 さあ次は決勝だ。優勝して終わるのと、2位でオリンピックへ行くのとでは雲泥のちがいがある。勝負勘や勝ちになだれ込む気迫など、特にメンタル面での強化に格段の差が生まれる。もちろん優勝し、そのままの勢いでリオへ行こう。

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【イラン戦再検証】「狙い通り延長戦に持ち込み勝った」は本当か?

2016-01-26 08:06:57 | サッカー日本代表
イケイケ・ドンドンで加熱しすぎのマスメディア

 リオ五輪最終予選の報道ぶりを見ていると、首をかしげたくなるようなものが多い。別に「メディアにケチをつけてやる」みたいな意味でなく、U-23日本代表について、正確な分析がなされていればいるほど課題を見つけたい日本のためになる。そこで、ちと愚考してみよう。

 特に今回のメディア報道で疑問に思うのは以下の2点だ。

(1)日本は守備が堅い。

(2)イラン戦の日本は、狙い通り延長戦に持ち込み勝った。

 まず(1)の守備については、日本はPKによる1点を除けば無失点で来ていることを論拠にしている。つまり「崩されての失点はない」というわけだ。だが実際には致命的な決定機を何度も作られているし、単純な守備のミスも多い。

 日本のディフェンスは決して鉄壁でもなんでもない。また「抑えるべくして抑えた」わけではまったくない。各ゲームの要所を仔細に分析すれば明白だが、相手の決定力不足に助けられている要素も大きい。

 また(2)のイラン戦の勝因については、確かに手倉森監督は「延長になればコンディションのいい日本が有利になると考えた」旨のコメントをしている。実際、手倉森監督はここまで、ターンオーバーによる日替わりの選手起用により特定の選手に疲労が偏らない采配をしている。また監督が延長戦を視野に入れていたことも事実だろう。

 だがそのことと、「日本は狙い通り延長に持ち込み勝った」というのは別の話だ。

 現にイラン戦は押されっ放しで、日本は90分間で攻めの形をほとんど作れなかった。それだけでなく相手に決定的なシュートチャンスを与えるシーンも多く、イランにもっと決定力があれば日本は90分間で負けていた可能性がかなり高い。つまり他力本願だったわけであり、3-0の勝利は別に日本がイランの攻撃を完全にコントロールして延長戦まで抑え切ったわけでもなんでもない。「狙って延長に持ち込んだ」なんておかしな話だ。

 つまり日本の側に「延長戦に持ち込みたい意思」があったかどうかと、実際にそうなったこととの間に因果関係は薄い。

 いやたとえば日本がもし守備ブロックを90分間低く構え、リトリートからのカウンター狙いに徹して相手を0点に抑えた結果延長戦になったのであれば、「狙って延長戦に持ち込んだ」といえるかもしれない。だが実際の試合内容はそうした経緯をたどってない。

 まとめると、日本側には確かに「延長戦になれば」との考えはあった。だが実際に延長戦にもつれこんだ要因は、イランが決定的なチャンスを決められなかったからである。あたかも日本が試合を意図的にコントロールして勝ったかのような誇大報道は、決して日本のためにならない。

 延長戦での日本の点の取り方があまりにも鮮やかだったために、「イケイケ、ドンドン」の報道ぶりになる気持ちはわかる。だがメディアはもっと客観的に試合を見た上で、「ダメなところはダメ」だときちんと分析してほしい。

 でないと課題を見つけられないし、課題がわからなければ修正もできない。結果、日本は不完全なチーム状態のままズルズル行くことになる。繰り返しになるが、それでは日本のサッカーのためにならない。「ここがこうダメだ」とハッキリいえるメディアこそが、その国のサッカーを育てることができるのである。

 ただしひとつだけいえることは、今回のU-23日本代表は明らかに持っているということだ。さて今夜のイラク戦、サクッと勝ってリオ行きを決めちゃいましょう。

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【リオ五輪予選・準々決勝】あの得体の知れない底力は何だ? ~日本3-0イラン

2016-01-23 08:01:46 | サッカー日本代表
延長戦で別人に変わるムラっ気な日本

 イランはフィジカルを前面に押し出し、ゴリゴリからだをぶつけてくる。そんな激しい相手に日本はビルドアップに苦しみ、ボールロストの山を築いた。攻めの形を作れない。

 イランは組織を感じさせるような完成度のチームではない。だが闘争心丸出しで激しくプレスをかけ、奪ったボールを個の力でカウンターに持ち込んでくる。その形から2~3度決定機を作ったが決められず、試合は完全なこう着状態へ。両者無得点のまま前後半を終えた。

 だが延長戦に入ると日本はとたんに覚醒する。まず前半5分に右サイドから室屋が折り返し、途中出場の豊川がヘッドで鮮やかに決めて先制。延長後半には左サイドの中島がドリブルから目の覚めるようなミドルシュートを2度も叩き込んで3-0とする。終わってみれば盆と正月がいっしょに来たようなハデな幕切れになった。

裏を狙うロングボールに終始した90分

 この日の日本は、2トップに久保裕也とオナイウ阿道を配した中盤ボックス形の4-4-2。ボランチを遠藤航と原川が務め、左に中島、右に矢島。CBは植田と岩波、右SBに室屋、左SBに亀川という布陣である。

 イランは最終ラインが極端に浅く、日本はそのウラを狙う意識が強すぎたのか、前のスペースへしきりにアバウトなロングボールを放り込む北朝鮮戦と同じ展開だった。落ち着きがなく、相手の激しいボディコンタクトに気圧されバタバタし、とにかくボールを前へ蹴り出すだけだった。

 一方、グラウンダーのパスをつなごうとしても、日本の選手はボールをワンタッチで処理できない。1度はじいて2度3度とボールを小突いているうち、イランにかっさらわれる。その繰り返しだった。

 またFWにクサビを打ってもサポートがなく、孤立してプレスを受けボールを失う。A代表も同じだが、日本はフィジカルでぐいぐい押してくる相手とやるとたいていこういう膠着状態に陥る。ここは大きな課題だろう。もっと速いサポートとそれを実現する豊富な運動量が必要だ。

このチームはあきらかに「持って」いる

 対するイランは組織だった動きがあるわけではないが、ルーズボールに対する出足が日本より圧倒的に速く、こぼれ球を拾って攻め形にする。彼らが決定力を欠いたため日本は助けられたが、イランのフィニッシュの精度が高ければまちがいなく90分間でやられていた。その意味では拾った1勝だ。

 だがこのチームはあきらかに「持って」いる。最初はデキが悪くても次第に得体の知れない底力が湧いてくる。潜在能力が高く伸び代がある。試合を重ねるごと、時間が経過するうちにまったくの別人になる。優勝するチームというのはそういうものだ。

 果たして決勝の舞台に立つまでに、彼らはいったいどんな高みにたどり着くのか? 楽しみでならない。

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【リオ五輪最終予選】悪いながらも勝てたのがすべて ~日本1-0北朝鮮

2016-01-14 21:53:20 | サッカー日本代表
ビルドアップとフィニッシュを見直せ

 内容的には北朝鮮のほうが上だったが(特に後半)、決定力を欠いてくれ助けられた。結果的に相手が無得点になっただけで、日本はタイトな守備ができていなかった。だが内容はともかく、前半5分のCKからの1点を守り切れたのは大きい。予選のド本番だけに結果がすべて。その意味では価値ある勝利だった。

 北朝鮮は遠くからでもトップにボールを当て、落としたボールを拾ってフィニッシュするパターンだった。絵に描いたように同じことをやってくるが、意図が明確でクサビのボールの精度も意外に高く形になっていた。日本の寄せがもう少し甘いとやられていたシーンが何度もあった。

 一方、日本は後ろからのビルドアップに不満を残した。最終ラインからダイレクトで浮き玉のアバウトなロングボールを何度も前へ放り込むが、これがほとんど通らない。縦に急ぎすぎる初期のハリルジャパンを思わせた。かたやグラウンダーのパスが左サイドの中島に通るといい形になったが、全体にパターン不足で「いかにアタッキング・サードへボールを運ぶか?」に大きな課題を残した。

 フィニッシュも「なぜそこでシュートを打たない?」と思わせられるシーンが多かった。ゴール前でひとつ多くボールを繋いでしまい、シュートで終われないシーンが目立った。狙いも不明確で「どうゴールを取るか?」の意図が見えなかった。

 遠目からでもシュートを打てば、入らなくてもリバウンドを拾って攻めが続く。そんな狡猾さと執拗さがもっと必要だろう。

 だが内容は悪いながらも勝ちをもぎ取れたのは大きい。こういう一勝が最後になって効いてくる。ビルドアップとフィニッシュを見直し、次のタイ戦もいただこう。

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