すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【れいわ参院選】京都の動きは「独自路線」宣言、今後は政界のリード役をめざす

2025-02-13 10:13:16 | 政治経済
 れいわ新選組が10日、今年7月までに行われる第27回参院選・京都選挙区(改選2)へ、新人で教育研究者の西郷南海子(みなこ)さん(37)を擁立することを発表した。

 また同時にこれは(後述するが)、れいわが当面、実質的に野党共闘などに加わらず独自路線を歩むことを宣言したものだとも解釈できる。(もちろん解釈にもよるが)

 さて擁立される西郷さんは、京都大学大学院卒の才媛だ。2015年7月に京都で発足した「安保関連法に反対するママの会」の発起人でもある。

 また野党共闘という意味では、あの「市民連合」発足の場にもいた。場数を踏んだいっぱしの活動家だ。

 この日、京都府庁で開かれた記者会見では、実に聡明で快活なトークをキレキレでお披露目した。まちいなく北海道選挙区で出る野村パターソンさんと並ぶ気鋭の候補といえる。

 彼女は開口一番、「社会運動していると何かといえば予算がない、となりがちです。でも積極財政という言葉と出会って初めて救われました」という意味の発言をしていた。

 なるほど経済もちゃんと理解している。見るからにデキる人だ。

「革新票を食い合うのでは」という指摘には?

 ただし現場の事情は、ちとややこしい。

 この選挙区は改選議席数が「2」で、自民党と革新系が票を分け合うことが多い。

 今回はこれまでのところ自民党現職の西田昌司氏(66)や共産党の倉林明子氏(64)らが立候補を表明している。

 そんな西郷さんの出馬をめぐるメディアの論調は、以下のような煽り調もあるのが象徴的だ。

『れいわ 参院京都選挙区に西郷南海子氏擁立「革新票食い合うのでは」指摘に「共に国会へ」「自民の議席奪っていく」』(デイリースポーツ)
https://www.daily.co.jp/gossip/subculture/2025/02/11/0018637128.shtml

 つまり本来なら「改選2」のこの選挙区では、「自民・西田氏と共産・倉林氏」という定番コースで丸く収まるはずだった。

「なのにれいわ新選組はそこへ横から割って入るなんて、いままでずっとナアナアだった俺たちの既定路線をぶち壊す気か?」

 そんな古い勢力たちが、自分たちの既得権益を駄々っ子のように主張するいつものパターンだ。

 つまりあの2024年10月の衆院選・沖縄1区で起こったトラブルと似たようなケースだといえるかもしれない。

山本代表は沖縄4区のアダを1区で返そうとした?

 あのときの沖縄1区では、複数のグループで構成された「オール沖縄」の勢力が、共産党の前職に候補者を一本化していた。

 そこにれいわが独自候補を立てようとしてモメたのだ。特に当事者である共産党は「敵対行為だ」と猛反発していた。

 ただし当時は沖縄1区より先行していた、沖縄4区でのオール沖縄による候補者の決め方があまりにも独断専行すぎた

 で、れいわの山本太郎代表はおそらくキレたのだろう。想像だが、4区のアダを1区で返そうとしたのではないか?

 それが外から見ていてよくわかった。だから個人的には「これはよくないなぁ」とも感じた。

 案の定、やがて冷静になった山本代表は、沖縄1区での候補者擁立を結局、そのあと取りやめた。妥当な判断だった。

 ちなみに当時、代表が出したオフィシャルなコメントは以下の通りだ。

声明】沖縄1区について(2024年10月11日 れいわ新選組代表 山本太郎)
https://reiwa-shinsengumi.com/comment/21731/

今回はライバルが「既得権益」を主張するパターンだ

 だが今回の参院選京都選挙区は事情がちがう。

 昔から参議院京都選挙区では、慣例のように自民党候補と革新系候補が議席を(ある種、平和的に)分け合っていた。

 ところがそんな選挙区に新参者のれいわが分け入り、自民と共産で議席を分け合ってきた既得権益を「侵害」した。だから批判されているだけのように思える。

 いや、もちろん事前に関係者同士がしっかり話し合い、たがいに納得した上であくまで政権交代を見据えた政界再編を実現するための大同団結として、他党と共闘する戦略的な候補者擁立をやるなら話はわかる。

 だが今回は明らかにちがう。

「ここは昔から俺たちの島(シマ)だ。だからお前らは手を出すな」みたいなお話だ。念のため同区の選挙事情を掘ると、歴史的経緯はこんな感じである。

実は京都ってれいわの「シマ」だった

 だがそもそも京都には、立命館大学経済学部にれいわの経済分野における理論的支柱ともいえる松尾匡教授がいる。

 同党で経済政策を仕切る長谷川ういこさんも、京都出身で京都市在住だ。

 また松尾・立命館大教授とならび、れいわの経済政策に関わっている朴勝俊(ぱく・すんじゅん)教授が在籍する関西学院大学も、同じく関西(兵庫)を本拠にしている。

 つまりある種、京都という土地はれいわの根城ともいえる存在なのだ。

共産党側の論理を考えてみると?

 ここで話を戻すと、れいわ側としては「京都選挙区で当選するのが2人なら、自民党の候補を落としてれいわと共産で2つの議席を分け合えばいいじゃないか」と抗弁している。

 もちろんそうなるのが理想だろう。

 だがあくまで共産党の側から見れば実際問題、自民・西田氏は強い候補ゆえ彼にイチ抜けされ、結局、れいわとの争いになるのではないか? そんなのウチにとっては迷惑以外の何モノでもないーー。

 共産党としては、そんな感じなのだろう。人情としては、わからなくもない。

 まぁいずれにしろ、何かといえば他党とモメることが多い、いかにもれいわ新選組らしい船出になったといえる。

西郷さん擁立はれいわのある種「独自路線」宣言か?

 さて最後に今回の京都での動きを、さらに大胆に深掘りして分析してみよう。

 あくまでひとつの推論だが…………今回の京都選挙区での西郷さん擁立は、れいわ新選組を率いる山本代表がもう野党共闘路線に見切りをつけ、本格的に大胆な「独自路線」へと踏み出した一歩と捉えることもできる。

 これまでれいわが歩んできた野党共闘路線を振り返れば……大きな岐路になったのは、2021年の衆院選が終わった翌年に飛び出した立憲民主党の枝野発言だった。

 消費税減税5%を旗印に共闘して結果が出なかった立民の枝野幸男・前代表が、「消費減税を公約にしたのは間違いだった」と本音を吐露したのだ。

 おそらくあれを聞き堪忍袋の尾が切れた山本代表はすっかり気持ちが冷め、「もう野党共闘はやらないぞ」と決めたのではないか? そして党単独で勢力を伸ばす「独自路線」に切り替えたのでは? という推論もできる。

 だとすれば今回のれいわによる半ば共産党を無視したかのような京都選挙区での西郷みなこ氏擁立は、いわばれいわによる「共闘からの完全離脱宣言」とも取れる。

 だが勢力が小さいれいわは、(野党共闘はともかく)野党勢力と何らかの形で組まずに政権なんて取れるのだろうか? そんな素朴な疑問もわくが……。

あくまでれいわがキャスティングボートを握り共闘をリードする未来像も

 しかし見方を変えれば、逆にこう考えることもできる。

 れいわがまず自分で先陣を切って数を増やし、先日の衆院選後における国民民主党みたいにキャスティングボートを握る。

 つまり自公政権に対する交渉権を手にする。で、れいわの政策を徐々に政権側に飲ませて行く。

 それを繰り返すうち次第に自公勢力は権勢を失ない、相対的にれいわが大きくなる。それとともに、やがては次第に他の野党勢力もれいわ新選組を認め、ついてくるようになるーー。

 やはり山本代表のあの勝ち気で独立心の塊のような性格を考えれば、他党の下につき媚びへつらって付き従うなど無理なのだろう。

 あくまでれいわが政界再編および共闘を主導する形でない限り、おそらくコトは成就しない。

 つまり同党が先頭に立って共闘をリードする形で、初めて政権交代が近づいてくる。そんなれいわ主導の未来図を想像することもできる。

 ひょっとしたら山本代表の本心は、そんなところにあるのかもしれない。

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