すちゃらかな日常 松岡美樹

積極財政などの政治経済をすちゃらかな視点で見ます。ワクチン後遺症など社会問題やメディア論、サッカー、音楽ネタもやります。

【政界再編】本格的な再編劇は「立民がいつ解党するか?」で決まる

2025-02-24 07:53:02 | 政治経済
立民議員が政界全体に四分五裂すれば再編が早まる

 結論から先にいえば、最大野党の立憲民主党は政策がスッキリひとつにまとまることなどあり得ない。過去の例からもう見れば明らかだ。

 何よりいちばん肝心な経済政策でいえば、彼らは所属議員が緊縮派と積極財政派に大きく割れている。

 一例をあげれば、「消費税率25%」を唱える小川淳也・幹事長らと減税を主張する議員たちがゴチャゴチャと混在し、党の方向性がひとつにまとまらない。

 バラバラだ。

 で、党勢が伸び切らない。というより長期的なスパンで見れば、むしろ低迷している。

 まあ政策がアレでは、有権者は投票のしようがないだろう。なにしろあの党は国民に投票を決めさせる「決定的な基準がない」のだから頷ける話だ。

いまの日本には国債発行を前提にした積極的な財政支出が不可欠だ
 
 ではなぜ経済政策がいちばん大切なのか?

 振り返れば日本は長く続いたデフレに端を発し、もう30年も続く不況のさなかにある。

 そしていまはコストプッシュ・インフレが庶民を襲い、国民は異常な物価高にあえいでいる。モノ不足も深刻だ。

 そのためマーケットにおける消費はめっきり衰え、マネーは経済市場を循環せずに停滞し続けている。

 そんな経済を活性化させるには、なにより「お金」がグルグルと潤滑油のように社会をスムーズに回ることが必要だ。

 こんなふうにマネーの滞りを改善しない限り、凋落した日本の再生はない。物価高に苦しむ庶民はまるで救われない。

 そんなピンチをチャンスに変えるには、まず国債発行を大前提にした積極的な財政支出が絶対に必要だ。

 これにより消費税減税(または廃止)や国民への現金給付、公共事業などを大胆に行ない「お金」の循環を呼び込むべきだ。

 とすれば新しい政権作りの決め手は当然、何より「経済政策」が柱になる。

 にもかかわらず立民は、その経済政策があんなふうに緊縮と積極財政に二分し各派が分裂しているのではどうしようもない。

 ノーチャンスだ。

「日本をどう舵取りするか?」じゃなく「自分が生き延びたいだけ」の議員たち

 そもそも立民の議員は「日本をどんな国にするのか?」とか、「苦しむ国民を生きやすくするには何をどうすればいいか?」などという論点じゃなく、何より自分自身の政治生命を少しでも長くすることしか考えてないのだろう。

 だがその一方で日本はいま、特に都市部で非正規雇用や派遣のように不安定な雇用を強いられ、借金まみれなって窮地に陥った20代〜30代の若いワーキングプア層がバタバタ自死している末期的な状況にある。

 その証拠に日本の自殺率は以下の資料の通り、G7各国のなかでダントツの「1位」なのだ。特に死因の順位が「自殺」なのは、「10~19歳」では日本だけという悲惨なありさまである。

【G7各国の自殺の状況】(資料:世界保健機関資料(2023年2月)より厚労省・自殺対策推進室が作成)
https://www.mhlw.go.jp/content/r5hs-1-1-07.pdf

 日本はこんなふうに極度の「危機的」かつ「緊急性」を帯びた状況下にある。

 だがそれでも立民の面々は、のんびり何ら有効な行動を起こさない。もはや彼らの「正体」はミエミエだ。自己保身の塊である。

 第一、例えば小川幹事長は「消費税率を25%に上げて北欧型の福祉国家を作るんだ」って、それいったい何年かかる話ですか?

 もちろん言いたいことはわかるし一案ではある。

 だが上にあげたグラフを見ればわかる通り、そんなものが実現するまでに日本の若者は残らず自死してすっかりいなくなりますよ?

 しかもあの超緊縮的で悪辣な財務省が存続したまま、そんな「大きな政府」をめざす北欧型の福祉政策ができると本気で思ってるんですか?

 もし万一やるなら、まず財務省を解体してからになりますよ?

 小川さん、そのあなたの「現状認識」って、本当に大丈夫ですか?

(いや、あなたは人間的には誠実でいい方だと思うが、政治的センスは……ううむ)

立民議員に決断させるには「解党」しかない

 かくて立民の議員は自分たちが政界で生き延びたいばかりに、いまはまだ大きな塊を保つ「立憲民主党」という大世帯に所属した状態でいたがる。

 そんな彼らは何ら有効な政策など持ってないし、たとえ持っていたとしてもそれを大々的に発揮できない。

 だが同時にあの大きな塊が動かないことには、政界再編は進みようがないこともまた事実だ。

 ならばその立民が今夏の参議院選挙でもし(首尾よく)大敗し、そのせいでバラバラになり解党すれば政界はどうなるだろう?

 そこまで追い詰められて初めて、立民の所属議員はハッキリ態度を決断できるのではないだろうか?

立民の解党で各党に適正な勢力が配分される

 もし立民がそんなふうに発展的に解党すれば、所属議員はそれぞれ自分が考える政策にマッチした他の各党へ散らばって行くだろう。

 各自、分散し、収まるべきところに収まるはずだ。

 すると政界地図が初めてしっかり確定し、すべてのものごとがスムーズに進むようになる。その結果、有権者はどこに政権を預ければいいか? その目安がわかりやすくなるだろう。

 こうして一定のルールに従い政策ごとに票の配分が定まり、自然に国のかたちが決まって行く。そんな過程が正常な政界再編だといえるのではないだろうか?

 まったく情けない話だが、それには立民の解党が必須に思える。

 いまの立民の野田佳彦代表は、あの(第1次・鳩山政権を除きボロボロだった)民主党政権をハッキリ終わらせるきっかけを作った人物だ。

 あのとき野党・自民(当時)の安倍氏に解散を宣言したように、今回は「党の解党」を宣言すべきときではないだろうか?

 大局的には、何よりそれが日本のためだ。

もし立民が生き長らえれば地獄のような膠着状態が続く

 一方、もしこのまま彼らが生煮え状態で生き永らえてしまえば、政治のゆくえを決める大きな塊が依然、路線未確定のままふわふわ浮遊することになる。

 そのせいで政界地図は、ハッキリしないままになってしまう。

 結果、いったいどこが政権をもてば「正しい道」に進めるのか? よくわからない、いまの情勢がダラダラといつまでも続いて行く。膠着状態がヘンに保たれる。

 まさに地獄だ。

 やはり何度考えても、日本を再興させる近道は立民が参院選挙で大敗し、結果的に彼らが四分五裂を強いられて「解党する」ことのように思えるのだが……みなさんは、ほかに何かいい方法ってありますかね?

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【政界再編の課題】立民・江田氏は「食料品の消費税0%」をやめ「完全廃止」に舵を切れるか?

2025-02-22 15:19:51 | 政治経済
安藤裕氏の指摘で「食料品だけ0%」の欠陥があらわに

 つい昨日、本ブログでは、立憲民主党の江田憲司・元代表代行が唱える「食料品の消費税0%」がもつ致命的な欠陥にふれた。

 なんと驚いたことに、あの政策では食料品の消費税を0%にするせいで「仕入れ税額控除」が受けられず、かえって納税する事業者が損をするケースが出るらしい。

 だがそれを知らずに「江田案」を支持していた元明石市長の泉房穂さんは、途中で気づいて支持を取り消したようだ。

 この落とし穴を最初に指摘したのは、元自民党議員の安藤裕さんだった。続いて昨日、その安藤さんが以下のYouTube動画をアップロードされた。

 どうやら立民、江田氏の政策「食料品の消費税0%」に賛同し、連携していた泉さんがその安藤さんの作った解説動画を観てコトの次第に気づいたらしい。

 そして急遽、泉さんはすでに予定していた食料品・消費税0%を訴える「第2回ツイデモ」を中止した

 一方、注意を促した安藤さんの方はといえば、そんな回避行動を取った泉さんに以下の通り、お礼を述べている。これにて一件落着というわけだ。うまく意思の疎通が取れてよかった。

【食料品の消費税ゼロ一旦停止】泉房穂さんありがとう(安藤裕チャンネル)
✳︎安藤さんは、泉さんとすんなり意思の疎通ができたようだ。

このあと江田氏はどんな行動を取るのだろうか?

 とはいえ問題は、完全には解決できてない。

 現に立民の江田氏はすでにおよそ60人からのメンバーを引き連れて、食料品・消費税0%の「勉強会」を開設してしまっている。

 他人に余計なお世話だといえばその通りだが、肝心の江田氏は今回、問題になった「仕入れ税額控除」がネックになり納税者に損をさせる件について現在ご理解されているのだろうか?

 これはなかなか引っ込みがつきにくい案件だけに難しい。

 だが「自分のまちがい」に気づいたとき、果たして見栄を張らず素早く決断し、正しく軌道修正できるかどうか? で政治家の価値がハッキリ問われる。

 ここが大きな見せ場ともいえる。

 もしや、とは思うが……江田氏がこのまま意地を張って政策を変えずに横車を押すようなことになれば、屋上屋を架すみたいな話になってしまう。

 江田氏を筆頭とする立民の消費税・減税勢力は貴重な未来の「友軍」だけに、無事、着地すべきところに降りられることを祈りたい。

 例えばだが、もう思い切ってあの「食料品の消費税0%」をやる勉強会は、「消費税の完全廃止を訴える会」にでも変身されたらどうだろうか?(いや余計なお世話だが)

 というのも江田氏はすでに従来から消費税の「5%減税」は確か訴えてこられたわけだから、もしこれ以上の活動をやるとすれば「完全廃止」以外にないと思えるからだ。
 
 だがそこに中間点としてうまく「食料品だけ0%」がちょうどハマったわけなんだろう。とはいえ、もうそのルートは事実上、消えてしまった。

 では江田氏は今後、どう身の振り方を考えるのか? ここから先は江田氏自身の問題になってくる。

江田氏の意図を調べてみるとビックリだった

 実はいままで個人的には、江田氏についてはあまり深く調べたことがなかった。で、いい機会だから今回ちょっと周辺をサーチしてみた。

 すると基本的に江田氏は「食料品の消費税0%」を、今夏、行われる参議院選挙における立民の公約にしたい意向のようだ。

 ただし一方、同氏はさらに先を見据えてもいる。

 例えば2024年12月27日に行われた泉さんとの対談動画(泉房穂の政治 【救民内閣構想】チャンネル)の18分前後あたりに出てくるセリフがそれだ。

 この中で江田氏は、政権交代について触れている。その部分で語った江田氏のコメントは以下の通りだ。

「5%減税や廃止など程度の差はあれ、野党各党はみんな消費税減税を訴えている。とすればこのテーマは野党連携の大きな柱になる。もし天王山の2025年に行われる参院選で野党各党が消費税減税を共通公約の柱にし、選挙区調整もして望めば政権交代も見えてくる」

 つまり江田氏が政策「食料品の消費税0%」を掲げた意図は、第一義的には立民の公約にするためだ。しかし先を見れば野党各党が消費税減税を旗印にして連携し、政権交代をめざす未来図も描いているわけだ。

 ここまでは、まったくうなずける筋立てである。(ただし今回のような「食料品の消費税0%」が逆に納税者の損になってしまう問題を除いてではあるが)

 さて、この泉氏との対談で江田氏が「政権交代する光明が見えてきた」と解釈する論点を(彼の言葉をもとに)整理すると以下の2点になる。

(1)維新の体制が変わり、政権交代をめざす吉村体制になった。だから維新とは連携できる。実際に自分は維新の幹部と話し合っている。

(2)「自民党とは組まない」という国民民主党のバックにいる連合は、政権交代志向だ。だから立民その他の野党と共闘の芽は十分あるーー。

 みなさんは、これらの論点を見てどう思われるだろうか?

江田氏「野田代表に頑張ってもらいまとめ役を頼む」

 結論として江田氏の構想では、以下の2点がキーになるようだ。

(1)立民と維新、国民民主が3本柱になれば政権交代できる。

(2)「もし私(江田氏)が立民の党首ならそれをやる自信はあるが、いまの党首は野田(佳彦)さんだ。野田さんにはぜひ頑張ってもらう。まとめるのは、やっぱり野党第一党だ」

 こういうお考えのようだ。

 ここでひとつ、忌憚のない意見を言わせていただこう。

 あの緊縮派が多い極めて「筋悪」の立民が中心になり、しかも財務省の化身のような野田代表を今さら主役に立てて政権交代をめざすなんて、まったくセンスのカケラもない時代遅れなその発想にひどく驚かされた。

 それで「票が取れる」とでも本気で思っているのだろうか?

 この世論との大きな乖離には、もう本当にビックリだ。

 なるほど「だから立民は世論の支持を完全に失っているわけだな」と、逆の意味で納得させられるストーリーに見えた。

 現に最近の各種・世論調査でも立民の支持率は下落する一方だし、特に野田代表個人の世間に対する人望のなさは有名な話なのに……。

 それを江田氏は自覚されてないのだろうか?

国民民主党は若い「棄権者」を選挙に呼び戻した

 他方、最近の政党支持率調査では、決まって相対的に国民民主党の支持率がウナギ登りだ。日の出の勢いといえる。

 同党代表の玉木雄一郎氏は何より経済のセンスがあり、「103万円の壁」など経済問題を巧妙に取り上げながら世論に仕掛けて行く。

 ここに生活が苦しい20〜30代のワーキングプアなどの若い層がピッタリ惹きつけられている。

 しかも彼らの中には今まで選挙を棄権していた階層も含まれている。玉木氏が打ち出す「飢えをしのげる経済政策」を見て、それに惹かれて選挙へ行くようになったわけだ。

 こんなふうに国民民主党が掘り起こす新世代の有権者によって、投票率は今後、ぐんぐん上がるだろう。これにより確実に世の中が変わるはずだ。

 どういう意味か?

 これまで全有権者の50%は、ずっと選挙を棄権していた。

 そして残りの選挙へ行く50%のうち、過半数の票の多くを自民党と公明党が組織票ですっかり固めてしまっていた。だから政権は長年まったく動かず、自動的に自公政権が続いてきた。

 残りの50%が選挙へ行かなかったせいだ。これでは票の動きようがない。

 つまり今までは全有権者の50%が選挙を棄権していたために、残りの過半数を自公がほぼ占有してしまい政権を握り続けてきたわけだ。

 だが国民民主党がまったく新しく開拓した、これまで選挙を棄権していた階層が選挙へ足を運ぶようになったのは大きい。

 なぜなら今までは、(繰り返しになるが)全有権者の50%が選挙を棄権してきたからだ。ゆえに自公で有権者全体のほんの「3分の1くらい」の票を取りさえすれば、政権がラクに握れた。

 だが今後は、このバランスが決定的に崩れるのだ。

 自公はもっと票を取らなければ、いまの石破政権のような少数与党になってしまう。いや、それでも政権を取れているだけマシだとさえ言える。

 今後はさらに選挙を棄権する人が減り、そのぶん野党に票が入って自公政権はそのうち続かなくなるだろう。

 すべては国民民主党の玉木雄一郎代表が、なにより経済政策を武器に「新しい風」を起こしたからだ。

経済の素養が欠落している政治家は通用しない

 一方、それに引き換え、江田氏の思考はどうだろう?

 おそらく(想像だが)江田氏は経済の素養に乏しく、例えば「正しい貨幣観」とか、あるいはそもそも「積極財政で日本を救おう」などという概念すらお持ちではないのではないか? と推測される。

 その証拠に、上記の泉さんとの対談の中で江田氏は「財源をどうするか?」というセリフを仕切りに何度もおっしゃっている。たぶん「税は財源じゃない」という事実もご存知ないのだろう。

 で、(立民とは対照的な)国民民主党の「103万円の壁の引き上げ」のように彼らが経済政策で若い層の人気を得ているのを見て、おそらく江田氏は自分が苦手な経済分野に今回、「食料品の消費税0%」という政策でチャレンジしてみた。

 するとたちまち無知をさらけ出してしまい、リスクが発生した。食料品を消費税0%にしているのに、却って納税者が損をするという制度設計の誤りを犯したわけだ。

 江田氏はこの対談の中で、「国民の皆さんは生活が苦しいなか、じゃあ食料品ぐらいは0%にしましょうよ、と思いついたのが食料品0%なんです」と語っている。

 確かに誰でもそんなふうに軽い感じで、「品目ごとに消費税を減税していけばいいや」と思わず考えてしまいがちになる。

 まさかそれが逆に「増税につながる」なんて、だれも想像さえしないだろう。無理もない。

 つまり今回の事例が「仕入れ税額控除」に差し障ることなどつゆ知らない(失礼ながら)もともと経済オンチの方が、意味もわからず見よう見マネで「食料品を消費税0%にしてみた」のだ。

 すると実は場合によっては「却って損になる」などという事態を引き起こしてしまった。

 正直、「この人には政治をまかせられないなぁ」と感じる。

いの一番に「維新との連携」を考えるのは新自由主義者だから?

 だいいち、維新との共闘を最初に挙げていることから考えて、江田氏はバリバリの新自由主義者で、緊縮派の「財務省アタマ」なのではないか?

 そんな疑いをもってしまう。

 うーん、ここまで出来上がってしまったお固いこの人の頭を180度、「積極財政」の方向に変えさせるなんて、ちょっとむずかしいかもしれない。

 繰り返しになるが……ずっと世評が下落し続ける一方の立民をいまどき野党共闘のトップに据え、しかもあの財務省の傀儡みたいな野田代表をトップに戴いて政権交代しようなんて、いったいどんなアクロバチックなセンスなんだろう?

 そんなやり方で、いまの賢い有権者がついてくるわけがない。

 あまりにも時代遅れだ。

 とても驚いた。

 世の中には、自分が住んでいるのとはあまりにも違う、こういう「異世界」もあるんだなぁ、てな感慨すら湧く。

 ある意味、そんな世間を広げる勉強にもなった一件だった。

 やれやれ。

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【食料品の消費税0%論争】完全廃止か? 食料品だけ0%か? あなたはどっちに賛成ですか?

2025-02-21 14:23:17 | 政治経済
食料品0%を唱える「江田&泉房穂」陣営に元自民の安藤氏が疑問を投げた

 いま実はとても重要な議論が巻き起こっている。

 いろんな人が入り乱れ「消費税は減税すべきだ」と主張してる。だが、その減税のやり方が人によってちがう。手法がさまざま割れているのだ。

 つまり複数の人が異なる減税の手法を現状あれこれ提案している。しかもその各人が「あのAさんのやり方にはこんな欠陥がある」などと指摘していてややこしい。

 加えてその内容が素人さんには難解で口を差し挟めないのか、見たところ世論はいまいち盛り上がってない。

 どうにも事態は深刻さの度合いをどんどん増して行くーー。

【食料品の消費税ゼロ】皆さんからの質問に答えます(安藤裕チャンネルひろしの視点)
「食料品の消費税を0%にすると飲食店がバタバタ潰れる」という安藤氏。

 さて、ここで外野からひとつ呼び掛けたいのは、まず双方とも淡々と冷静に思考することだ。

 決して感情的になってはいけない。

 そしてもし自分の方が間違っていると分かったら、体裁を取り繕わない。その時点ですみやかに持論を改め、キッチリ軌道修正するのが肝心だ。

 くれぐれもそう願いたい。

立民・江田氏の案に対し安藤氏は「それでは飲食店がバタバタ潰れる」


 まず議論の前提になる事実関係と、その経緯を説明しよう。

 本ブログのこの記事でも書いた通り、立憲民主党の江田憲司・元代表代行が会長になり、昨年12月に時限的な食料品の消費税0%の実現をめざす勉強会「食料品の消費税ゼロ%を実現する会」を立ち上げた。

 江田さんは食料品に限定し、消費税を0%にしようと主張している。前兵庫県明石市長の泉房穂さんがそれに賛同し、これをきっかけに政権交代も視野に入れて連携している。

 ところがその泉さんらに対し、元自民党議員で積極財政派の安藤裕さんが異を唱えているのだ。

 いや別に悪気があってのことじゃない。単に「その手法にはこんな欠陥がありますよ」と指摘しているだけだ。

 安藤さんの解説によれば、江田さんが考えるやり方で食料品だけ消費税0%にすると、なんと「飲食店がバタバタ潰れる可能性もある」という。

 この手法を取ると売り手の側(飲食店などの事業者)が、かえって損をするケースが出てくるのだ。

 カンタンにいえば食料品の消費税を0%にすると、売り手の側のショップなどが「仕入れ税額控除」を受けられなくなり、損をしてしまう。

 だから大変なのだ。

安藤さん自身も当初「仕入れ額控除」に気づいてなかった

 実は当初、安藤さんもこれに気づいてなかった。だが飲食店を営むある視聴者からこの指摘があり、初めて安藤さんはこの落とし穴に気付いたという話だ。

 つまりプロの税理士で積極財政派の安藤さんですら、なかなか気づかなかった盲点なのである。それは素人には分かりにくいのも無理はない。

 ではなぜ食料品だけ消費税0%にすると売り手が損をするケースがあるのか? それは冒頭にあげた安藤さんのYouTube動画を見てほしい。

 安藤さんはかなり切実だ。

 強い危機感を感じている。

 そしてこんなふうに、その後もこのテーマについて何本も同じ趣旨の動画をアップロードしている。つまりそれだけヤバい問題だ、という認識だ。

目的は同じなのになぜひとつにまとまれないのか?

 この件について私見を述べれば、やはり国民のための政策をやるには「直球一直線」が正しいのかな? と感じる。

 例えば国民民主党の玉木雄一郎代表が主張する「103万円の壁の引き上げ」にしろ、今回の「食料品限定の消費税0%」にしろ……ターゲットにする眼目を部分的に限定するやり方では、必ずどこかに無理が生じるんだろうな、という印象だ。

 もうひとつ、疑問を感じる点がある。

 例えば積極財政派が政策を出す場合、みなさん財務省やら政府やら体制側に気を使ってでもいるのか、ストレートなやり方をしないのだ。

 で、上記のように品目など対象を限定して小規模にし、なるべく権力側を刺激しないやり方を取ろうとする。

 だが今回のようにその手法では、かえって無理が生じて破綻するのかも? 安藤さんの説によればそういう理屈だ。

 とすればやはり安藤さんが言うように、消費税は「完全廃止」または「5%減税」のどちらかで賛同者がスッキリまとまるのがベストな感じがする。

 これで大きな塊を作り、政権を取りに行くのが正攻法だろうと思える。

 もちろん関係者の皆さんはそれぞれ個別の事情がありなかなか難しいだろうが、ここは国民のためにぜひハードルを乗り越えリスクを取ってほしいなと感じる。

自公政権は非情な構造改革路線だ

 以降は、この件に関連する傍論だ。

 おそらく日本政府やその意を受けた財務省は、貧乏な個人ほど負担が重くなる(逆進性の高い)消費税を道具に使い、下層階級を日本から一掃したいのだろう。

 これは2020年から2021年にかけて続いた自公政権のトップ・菅義偉首相が、あからさまに明言していた方向性だ。つまり極端な新自由主義にもとづく政権運営である。

 当時は「えっ? そんな酷いプランを考えているのか?」と非常に驚いたものだ。自民党はあれから少しも変わってない。

 ハッキリ言えば、「1%(高所得者層) vs 99%(下層階級)」の構図で示される99%の階層を完全に「抹消」し、全国民の1%にすぎない高所得者層だけを対象に国家運営をしたいのだ。これなら例えば福祉に使う財源なんていらない。

 つまり少なくとも政権側から見れば、余計な予算がいらず効率的だ。

 また一市民だけでなく、企業に関しても同じことがいえる。

 自公政権は経済界をスクラップ&ビルドして中小企業をなくし、能率の高い社会にしたがっている。これもあの菅・元首相がモロに公言していた。例えば以下の記事のようなストーリーだ。

菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている』(ダイヤモンド・オンライン / 室伏謙一:室伏政策研究室代表)
https://diamond.jp/articles/-/256479

 そして日本を高所得者と大企業ばかりの国にし、スリム化を図る。金持ちと大企業だけで省力化し、効率的な国家運営をしたいと考えている。

 つまり消費税も、その目的を達成するためのツールのひとつなのだ。

 わかりやすい事例をあげれば、以下のページの「OECDはコロナ経済対策の転換を提言」の項を読めばわかる。すなわち構造改革路線である。

OECDのコロナ経済対策の提言と菅政権の中小企業再編』(野村総合研究所・金融ITイノベーション事業本部/木内登英)
https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20200918.html

 こんな政権は、一刻も早く倒さなければならない。

消費税は「預かり金」じゃない

 日本は折からのコストプッシュ・インフレによる物価高騰と、それに起因する消費の低迷ぶりが酷い。

 こんなふうに商品の価格が高くなれば、モノが売れない可能性もある。だから売り手(事業者側)は、消費税分は自分が被って安く根付けせざるを得なくなる。

 つまり消費税分を価格に転嫁できないわけだ。

 ただし正確には、このとき買った消費者自身が「消費税を払っている」わけではない。消費税は「預かり金」じゃない。

 基本、売り手は値段をいくらにしようが自由だ。だが高すぎると売れない可能性がある。だからもう自動的に「本体価格+おおよそ消費税に相当する金額=売り値だ」みたいな話になっているわけだ。あくまで消費税は事業者が国に納めるしくみである。

 ところが(政府の策略だと思うが)消費税の導入以来、長い間にわたり、あたかも商品を買うとき消費者自身が消費税を込みで払っているかのように錯覚させる作戦が取られてきた。

 例えば商品を買った際に店でもらうレシートや、チラシの価格表示などがそうだ。それらは揃って意図的に「偽装」されている。

 具体的には、例えば食料品のレシートなら以下のような表示がされている。外税の場合と、内税の場合をそれぞれ例に上げよう。(金額に意味はない)

◾️外税の場合(1)小計/1573円、外税・8%対象額/1573円、外税・8%/125円、合計・1698円。

◾️内税の場合(2)小計/600円、8%内税対象額/600円、内税額/44円、合計・600円。

 こんなふうに「税抜き価格」と「税込み価格」をわざわざ表示し、いかにも消費者が支払う商品の価格は「消費税込み」であるかのような洗脳が長年、行われてきた。

 またこうしたレシートやチラシのほか、店頭に置いてある商品の価格を客に示す値札にも、「本体価格100円、消費税込み110円」などと、インチキな表示がされている。

 だから「消費税は客が払った預かり金だ。だからそのカネを、もし事業者が国に消費税として納めなかったらネコババになる」という世間の認識ができてしまった。

 国がこんなふうに消費者を錯誤させた狙いは、将来的なインボイス導入を睨んでのものだったわけだが……これはちょっと話がそれるので今回はやめておく。

権力を握るためには手段を選ぶな

 最後に話をまとめよう。

 今回のちょっとしたモメ事を見て、なんだかちょっと「やれやれ」な気分になってしまった。

「消費税減税を進めたい」と考える人たち同士が争ってどうする? というお話に近い。

 例えばかつて「核兵器をなくしたい」という目的は同じなのに、60年代に旧日本社会党と日本共産党が反目し合い、結局、話がまとまらず核の廃絶は実現しなかった。それとまったく同じではないだろうか?

 政治はこんなふうに党派性にこだわるとダメなのだ。

「国民の負担を軽くして救おう」という目的は同じ。なのに、ある者は「じゃあ食料品だけを消費税0%にしよう」と考える。

 またある者は「ウチは(消費税じゃなく)所得税の控除幅を大きくする策で国民を救う。103万円の壁を上げさせるんだ」

 てんでバラバラだ。話がまとまらない。

 だから結局、大きな塊が作れない。いろんな小さい勢力が入り乱れ、めいめいが散発的に弾を打つだけに終わってしまう。

 非自民勢力は、そこが大きな弱点だ。

 だが一方の自民党なんて、権力を握るためには手段を選ばない。

 なんせ彼らは敵だったはずの社会党すら味方につけ、あの村山富市氏を首相にしてまで政権を作ったじゃないか?

 非自民勢力にはああいう大胆さや、いい意味での「無神経さ」がまったくない。

 昔の左翼みたいに党派性に過剰にこだわり、結果、目的は同じなのにひとつになれない。

 非自民勢力はそこを修正し、根本的に発想を変える必要がありそうだ。

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【日本の珍奇な財政政策】悪夢の「財政法第4条」がすべての元凶だ

2025-02-18 10:02:50 | 政治経済
財政法第4条「国の歳出は公債または借入金以外の歳入を当てよ」

 財務省への国民的なデモが頻繁に行われている昨今だが、なぜあの財務省という役所はあんな偏った財政の論理を唱えるのだろうか?

 その一因は、2021年9月1日に施行された「財政法第4条」にある。
https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/171diet/zk210119j.htm

 同省が頑なに守るこの財政法第4条では、予算の支出と収入を「1会計年度でキッチリ一致させる」ことを求める財政均衡主義を唱えている。

 だが実はこの財政均衡主義なるシロモノは、はるか19世紀の財政学者が掲げたもはや死文化した過去の概念だ。

 そしてこの財政均衡主義のアリバイとして財政法第4条に付け加えた「第1項」では、「国の歳出は原則として国債又は借入金【以外】の歳入をもって賄うこと」と規定している。(ただしこの第1項があっても現状、国債発行自体はできる)

 この第1項が財政均衡主義の裏付けとして、堂々とまかり通っている。

 茶番もはなはだしい。

 ところが上のほうに掲げたリンク先にある条文を見れば分かる通り、特に公共事業費や出資金、貸付金の財源については「国会の議決を経た金額の範囲内で国債や借入金による調達を認める」ともしている。

 つまり必ずしも国債はダメなんじゃなく、限定的な支出先として認められてはいるわけだ。
 
 この財政法は昭和22年(1947年)に施行された、古めかしい過去の遺物にすぎない。

 そしてこやつは日本国憲法の第7章で定められた「財政民主主義」に基づき、制定されている。その1947年といえば、日本がまだ連合国軍・最高司令官総司令部(実質的にはアメリカ)の占領下だった時代である。

 すなわちそんなはるか昔に制定された法規に、日本はいまだに縛られているのだ。財政法第4条を以下に再掲しよう。

 財政法第4条「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」

 文字通り、見るからに日本の経済成長に足枷をハメる内容になっている。

 同法は財政の「健全性」を保つために設けられたものだと言われているが、そんなものに実体的な意味なんてない。

 いわば財務省が、自らの点数を上げるために機能するだけの条項にすぎない。

積極財政に反対する左派の「経済オンチな論理」とは?

 ところが経済オンチな日本の左派は、この財政法に踊らされる傾向にあるから始末が悪い。例えば立憲民主党の大方はそれに当てはまる。

 そのほか左派の典型である朝日新聞は、一例として2020年8月27日の社説「財政法と戦後 歴史的意味を忘れるな」の中で、「財政法逐条解説」の文言を借りながら「公債のないところに戦争はない」という。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14599880.html

 そして「本条項は新憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証するものだ」としている。

 ここでちょっと解説すると、逆にいえばあの太平洋戦争を戦った日本は公債によって軍事費を捻出していたからだ。つまり公債をガンガン出し、それによって武器を調達していた。

 これを朝日の論調にならえば、以下のような論理展開になる。

「だから平和主義に転じた戦後の日本は終戦直後の1947年に財政法第4条を施行し、国の歳出は公債または借入金以外の歳入を財源とすべし」という禁止項目を盛り込んだのだーー朝日新聞はそう高らかに「平和のためだ」と謳っているわけだ。

共産党も「2度と戦争させないために国債を発行するな」と唱える

 一方、何よりも平和を重視する共産党も同じだ。

 彼らが積極財政に反対する理論的な根拠も、この条項に基づいている。

 例えば共産党の機関紙である「赤旗」は、2008年4月24日の記事でそれを認めている。以下、該当箇所をそっくり引用する。

「戦前、天皇制政府がおこなった無謀な侵略戦争が、膨大な戦時国債の発行があってはじめて可能であったという反省にもとづいて、財政法制定にさいして設けられたもので、憲法の前文および第9条の平和主義に照応するものです」

 いや別に共産党にケチをつけるつもりは全くないが、もう少しそのお固いアタマを転換し積極財政に理解を示してほしいな、とは感じる。

 なぜなら特にいまの日本は、消費が落ち込み長い需要不足で雇用が安定しない。また企業の設備投資が停滞し、経済成長にたどり着くには程遠い。

 そんな日本が立ち直り、経済成長するためには積極財政が不可欠なのだ。

 また同時に(立憲民主党も含めた)いわゆる左派寄りの勢力が、ややもするとこんな経済オンチに陥りがちなのも同じ理屈だ。

「平和と財政」という2つの要素が絶対的に不可分なものとして、彼らの間では誤って語られているからである。

 例えば立民の野田佳彦代表を見ればわかる通り、もはや平和と財政均衡に賭ける彼らの情熱は宗教的とさえいえる。

 加えてそれは極めて「ザイム心理教」的だ、と表現してもいいだろう。

積極財政を道具に使って経済を復活させろ

 いまの日本は30年も続いたデフレ不況で経済が壊滅し、いま現在は今度はコストプッシュ・インフレで苦しんでいる。

 おかげで非正規雇用や派遣で生活が不安定な若いワーキングプア層は、食うに困って特に都市部でバタバタ自死している。

 日本社会はかなり危機的な状況にあるといえる。

 そんななか、果たして「平和のための財政均衡」とか「財政規律がなにより重要だ」などと悠長なことを言ってる場合だろうか?

 そうした経済苦から自死してしまう若い層を救うためにも、いまこそ大胆で積極的な財政出動が必要ではないだろうか?

 そもそも日本はユーロ諸国などと違い、「円」という日本固有の自国通貨を持っている。すなわち国債は円建て(自国通貨建て)であり、ゆえに国債は必ず償還される。破綻するなんて、ほぼあり得ない。

 これは実際に当の財務省自身が2002年に以下URLにある通り、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と主張している通りだ。だから日本は原理的に経済破綻しない。
https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

 ちなみにあれこれ検索中にたまたま見つけたが「日本医師会総合政策研究機構」が、国債リスクについて非常にわかりやすい研究レポート(PDF)を出しているので、以下にあげておこう。ぜひお読みください。

「国債発行はどの程度まで可能なのか」(日医総研リサーチエッセイ No.104) 著者・原祐一(岡山大学准教授)
https://www.jmari.med.or.jp/download/RE104.pdf

 いま日本のマーケットは、まさにお金が欠乏している状態だ。

 ならば、いまこそ政府は積極的に財政出動し、日本市場をマネーでマンマンに満たす政策を取るべきだ。

 具体的には消費税減税や国民への現金給付、また公共事業などの公共投資を拡大させる。

 それによって国民みんなの手元にお金を行き渡らせ、まず消費を喚起する。

 これでみんなが買い控えせず積極的にモノを買ったり、お金を使って何らかのサービスを利用するようになる。

 するとマネーが国中にグルグルたくさん循環する。

 これが経済を良好に刺激し、活性化させる。このテで好景気を呼んで日本経済を完全復活させるべきだ。

 すべてのカギは積極財政にあるーー。

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【れいわ参院選】京都参入の動きは「独自路線」宣言、今後は政界のリード役をめざす

2025-02-13 10:13:16 | 政治経済
共闘路線をキッパリ捨て新人・西郷候補を立てる

 れいわ新選組が10日、今年7月までに行われる第27回参院選・京都選挙区(改選2)へ、新人で教育研究者の西郷南海子(みなこ)さん(37)を擁立することを発表した。

 また同時にこれは(後述するが)、れいわが当面、実質的に野党共闘などに加わらず独自路線を歩むことを宣言したものだとも解釈できる。(もちろん解釈にもよるが)

 さて擁立される西郷さんは、京都大学大学院卒の才媛だ。2015年7月に京都で発足した「安保関連法に反対するママの会」の発起人でもある。

 また野党共闘という意味では、あの「市民連合」発足の場にもいた。場数を踏んだいっぱしの活動家だ。

 この日、京都府庁で開かれた記者会見では、実に聡明で快活なトークをキレキレでお披露目した。まちいなく北海道選挙区で出る野村パターソンさんと並ぶ気鋭の候補といえる。

 彼女は開口一番、「社会運動していると何かといえば予算がない、となりがちです。でも積極財政という言葉と出会って初めて救われました」という意味の発言をしていた。

 なるほど経済もちゃんと理解している。見るからにデキる人だ。

「革新票を食い合うのでは」という指摘には?

 ただし現場の事情は、ちとややこしい。

 この選挙区は改選議席数が「2」で、自民党と革新系が票を分け合うことが多い。

 今回はこれまでのところ自民党現職の西田昌司氏(66)や共産党の倉林明子氏(64)らが立候補を表明している。

 そんな西郷さんの出馬をめぐるメディアの論調は、以下のような煽り調もあるのが象徴的だ。

『れいわ 参院京都選挙区に西郷南海子氏擁立「革新票食い合うのでは」指摘に「共に国会へ」「自民の議席奪っていく」』(デイリースポーツ)
https://www.daily.co.jp/gossip/subculture/2025/02/11/0018637128.shtml

 つまり本来なら「改選2」のこの選挙区では、「自民・西田氏と共産・倉林氏」という定番コースで丸く収まるはずだった。

「なのにれいわ新選組はそこへ横から割って入るなんて、いままでずっとナアナアだった俺たちの既定路線をぶち壊す気か?」

 そんな古い勢力たちが、自分たちの既得権益を駄々っ子のように主張するいつものパターンだ。

 つまりあの2024年10月の衆院選・沖縄1区で起こったトラブルと似たようなケースだといえるかもしれない。

山本代表は沖縄4区のアダを1区で返そうとした?

 あのときの沖縄1区では、複数のグループで構成された「オール沖縄」の勢力が、共産党の前職に候補者を一本化していた。

 そこにれいわが独自候補を立てようとしてモメたのだ。特に当事者である共産党は「敵対行為だ」と猛反発していた。

 ただし当時は沖縄1区より先行していた、沖縄4区でのオール沖縄による候補者の決め方があまりにも独断専行すぎた

 で、れいわの山本太郎代表はおそらくキレたのだろう。想像だが、4区のアダを1区で返そうとしたのではないか?

 それが外から見ていてよくわかった。だから個人的には「これはよくないなぁ」とも感じた。

 案の定、やがて冷静になった山本代表は、沖縄1区での候補者擁立を結局、そのあと取りやめた。妥当な判断だった。

 ちなみに当時、代表が出したオフィシャルなコメントは以下の通りだ。

声明】沖縄1区について(2024年10月11日 れいわ新選組代表 山本太郎)
https://reiwa-shinsengumi.com/comment/21731/

今回はライバルが「既得権益」を主張するパターンだ

 だが今回の参院選京都選挙区は事情がちがう。

 昔から参議院京都選挙区では、慣例のように自民党候補と革新系候補が議席を(ある種、平和的に)分け合っていた。

 ところがそんな選挙区に新参者のれいわが分け入り、自民と共産で議席を分け合ってきた既得権益を「侵害」した。だから批判されているだけのように思える。

 いや、もちろん事前に関係者同士がしっかり話し合い、たがいに納得した上であくまで政権交代を見据えた政界再編を実現するための大同団結として、他党と共闘する戦略的な候補者擁立をやるなら話はわかる。

 だが今回は明らかにちがう。

「ここは昔から俺たちの島(シマ)だ。だからお前らは手を出すな」みたいなお話だ。念のため同区の選挙事情を掘ると、歴史的経緯はこんな感じである。

実は京都ってれいわの「シマ」だった

 だがそもそも京都には、立命館大学経済学部にれいわの経済分野における理論的支柱ともいえる松尾匡教授がいる。

 同党で経済政策を仕切る長谷川ういこさんも、京都出身で京都市在住だ。

 また松尾・立命館大教授とならび、れいわの経済政策に関わっている朴勝俊(ぱく・すんじゅん)教授が在籍する関西学院大学も、同じく関西(兵庫)を本拠にしている。

 つまりある種、京都という土地はれいわの根城ともいえる存在なのだ。

共産党側の論理を考えてみると?

 ここで話を戻すと、れいわ側としては「京都選挙区で当選するのが2人なら、自民党の候補を落としてれいわと共産で2つの議席を分け合えばいいじゃないか」と抗弁している。

 もちろんそうなるのが理想だろう。

 だがあくまで共産党の側から見れば実際問題、自民・西田氏は強い候補ゆえ彼にイチ抜けされ、結局、れいわとの争いになるのではないか? そんなのウチにとっては迷惑以外の何モノでもないーー。

 共産党としては、そんな感じなのだろう。人情としては、わからなくもない。

 まぁいずれにしろ、何かといえば他党とモメることが多い、いかにもれいわ新選組らしい船出になったといえる。

西郷さん擁立はれいわのある種「独自路線」宣言か?

 さて最後に今回の京都での動きを、さらに大胆に深掘りして分析してみよう。

 あくまでひとつの推論だが…………今回の京都選挙区での西郷さん擁立は、れいわ新選組を率いる山本代表がもう野党共闘路線に見切りをつけ、本格的に大胆な「独自路線」へと踏み出した一歩と捉えることもできる。

 これまでれいわが歩んできた野党共闘路線を振り返れば……大きな岐路になったのは、2021年の衆院選が終わった翌年に飛び出した立憲民主党の枝野発言だった。

 消費税減税5%を旗印に共闘して結果が出なかった立民の枝野幸男・前代表が、「消費減税を公約にしたのは間違いだった」と本音を吐露したのだ。

 おそらくあれを聞き堪忍袋の尾が切れた山本代表はすっかり気持ちが冷め、「もう野党共闘はやらないぞ」と決めたのではないか? そして党単独で勢力を伸ばす「独自路線」に切り替えたのでは? という推論もできる。

 だとすれば今回のれいわによる半ば共産党を無視したかのような京都選挙区での西郷みなこ氏擁立は、いわばれいわによる「共闘からの完全離脱宣言」とも取れる。

 だが勢力が小さいれいわは、(野党共闘はともかく)野党勢力と何らかの形で組まずに政権なんて取れるのだろうか? そんな素朴な疑問もわくが……。

あくまでれいわがキャスティングボートを握り共闘をリードする未来像も

 しかし見方を変えれば、逆にこう考えることもできる。

 れいわがまず自分で先陣を切って数を増やし、先日の衆院選後における国民民主党みたいにキャスティングボートを握る。

 つまり自公政権に対する交渉権を手にする。で、れいわの政策を徐々に政権側に飲ませて行く。

 それを繰り返すうち次第に自公勢力は権勢を失ない、相対的にれいわが大きくなる。それとともに、やがては次第に他の野党勢力もれいわ新選組を認め、ついてくるようになるーー。

 やはり山本代表のあの勝ち気で独立心の塊のような性格を考えれば、他党の下につき媚びへつらって付き従うなど無理なのだろう。

 あくまでれいわが政界再編および共闘を主導する形でない限り、おそらくコトは成就しない。

 つまり同党が先頭に立って共闘をリードする形で、初めて政権交代が近づいてくる。そんなれいわ主導の未来図を想像することもできる。

 ひょっとしたら山本代表の本心は、そんなところにあるのかもしれない。

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【政界再編】まず第1幕は「積極財政」のワンイシュー、布陣はこうなる

2025-02-09 14:58:45 | 政治経済
政界再編は第2幕、第3幕もありえる

 いまの政界を眺め渡せば、少なくともすぐ政権交代できるような状況じゃない。だがあの悪夢の自公政権を倒さない限り、少なくとも日本には二度と経済的な繁栄なんて来ない。

 もちろんそれだけじゃなく、少子高齢化も解決できないだろう。そもそも彼ら政権側はすでに正常化を諦めているはずだ。

 つまりその代案として、外国人を大量に招いて外国人労働者に頼る無茶な解決法を取ろうとしている。

 この方向が今後もどんどん進めば、まちがいなくヨーロッパなどで起きている外国人(排斥)問題が日本でも頻発するようになるだろう。

 このほか食料自給率の向上も、日本政府はとうの昔に断念している。目下、食料は輸入に頼る綱渡りのような運用が続く。こんな国のままでは、いつ破綻したっておかしくない。

 また非正規や派遣など不安定な雇用形態の蔓延で20〜30代のワーキングプア層が拡大し、貧富の格差もますます広がっている。いったい今の日本に「よさ」なんてあるのか? そんな気にさえさせられる。

 こうした深刻化する一方のウンザリさせられる諸問題を考えれば、いまの自公政権を倒さない限り絶対に日本の復活なんてあり得ない。

 もはやそれは誰の目にも明らかだ。

積極財政派のAチーム vs 緊縮派のBチームに組み替える

 だが決定的な問題は、そんな悪夢の自公政権に取って替わる大きな勢力がない点だ。

 だから一発で政権交代をやろうにもできない。

 なにしろ政権を倒しに行く側のグループが、それぞれみんな小さすぎる。おまけに団結し協力し合うための旗印にすべきイシューも限られる。見渡したところ、「積極財政&減税は是か否か?」の一択くらいに見える。

 とすれば幾度かの政界再編劇を繰り返しながら、やがて勢力の離散集合が進んで環境が整って初めて、やっと政権交代が実現すると考えるのが正しい認識だろう。

 そこで現時点において、どんな政界再編が考えられるのか? 積極財政・減税というワンテーマのみを設定し、ない頭を振り絞って思案してみた。

 するとこの政策のみにこだわれば、以下のような結論が出た。(ただし主要政党だけピックアップした)

【Aチーム】積極財政&減税派の「れいわ新選組と国民民主党、参政党、公明党」

【Bチーム】緊縮財政&増税派の「自民党と立憲民主党、日本維新の会」

 いや、まず第1幕に当たるこの2パターンすら、すぐに実現できるかどうかは怪しいのだが……なるべく両チームの数を拮抗させながらイシューだけを揃えるには、こんな感じで組むしかない。

 両チームの議員数をもっと近づける調整をするなら、立憲民主党にはAチームに入ってもらいたいところだが……。

 しかし旧民主党時代から財務省と関係が深く、消費増税派の野田佳彦代表を戴く立民が積極財政で完全にまとまれるだろうか? やはり疑問が残る。

 ちなみに立民は2021年の衆院選と22年の参院選で時限的な消費税減税(5%)を公約に入れたが、24年の衆院選では消費税減税をもう謳わなかった。

 その代わり中低所得者向けとして、(仕組みが実にややこしい)所得税の控除と給付を同時にやる「給付付き税額控除」を提唱していた。

なぜいまの日本には積極財政が必須なのか?

 さてあらためて問うが、いまの日本がめざすべき最大のテーマはいったい何か?

 長く続いたデフレと、その余波で30年間もの不況を経験してきた日本だ。そして今度は挙げ句の果てに、コストプッシュ・インフレで苦しんでいる状況にある。

 加えて今年は団塊の世代がみんな75歳以上になり、恐れていた日本の高齢化がグンと進む「2025年問題」も言われている。

 そんななか、消費が低迷する我が国にいちばん必要な喫緊の課題は、国債発行を前提とし、政府が大胆に財政出動する積極財政であることはいうまでもない。

 いま現在の日本経済(市場)はお金が足りない状態だ。消費が致命的に落ち込んでいる。

 だから政府が積極的に財政支出し、世の中にマンマンとお金を満たす必要がある。こうして血液のようにマネーを世の中にうまく循環させ、景気を良くすることが前提になる。

 そのために消費減税や国民への現金給付、その他公共投資などをバンバン行なう必要がある。こうした経済政策が最優先だ。

 もちろん特に左派の人あたりは選択的夫婦別姓など、その他のイシューも同様に重視したいだろう。だが将来的には、自民党からも積極財政派の議員を引き抜きたいのであえて政策に入れてない。

 とにかくワンイシューに絞ったほうが、賛同者を集めやすいのだ。

 別姓については回を改めて書くかもしれないが、今回はあえて「喫緊の課題」とは言えないと分類した。

(もちろん異論は想定できるし、対する私の持論は最下段の【お詫びと訂正】で少しだけ書いた)

 状況に合わせた政策を行うには、イシューごとに優先順位がある。まず経済の立て直しを先にしたい。だから政策をあえて1つに絞り、「大きな塊」を作りやすくした。

 すなわち、それだけ今の日本は「緊急事態にある」ということだ。

 現在の日本において、政策を選ぶときの優先順位は「その政策で果たして命が救えるのか?」というレベルの致命的な状況下にある、という認識が必要になる。

 そうなると、(繰り返しになるが)何よりもまず経済政策が不可欠だ。

 では何が緊急事態なのか? 次項で社会状況を説明しよう。

日本は自死と少子高齢化、食糧自給率低下のトリプルパンチだ

 いま日本の特に都市部では、派遣など非正規雇用で生活するワーキングプアの10代〜30代の若者たちがひしめいている。

 彼らはひどく困窮し、それぞれ孤立しもちろん結婚どころじゃない。だから出会いの機会もない。これは少子化の決定的な原因だ。

 かくてそんなギリギリの生活を続けるうち、彼らは自分の経済的な問題や「仕事にやりがいがない」などの精神的ストレスからすっかりメンタルをやられて行く。

 そして片っ端からウツ病にかかり、ウツが社会に蔓延する。

 ウツ病にかかった人は、まず自分の置かれた状況を正確に把握するための現状認識がおかしくなる。これを精神医学では「認知の歪み」と呼ぶ。ウツの人にきわめて特徴的な症状だ。

 そしてその必要もないのに「自分はもう死ぬしかないんだ」などと思い詰める。結果、特に東京の都市部では、そこらじゅうで人がバタバタ自死している。

(では人はなぜ自死するのか? そのメンタル面が実際の行動に及ぼすメカニズムについては、長くなるので回を改め別途、記事にする予定だ)

「闇バイト」に若者が吸い込まれる構造とは?

 さて、それでもがんばって働き生き延びているワープアの若者でさえ、困窮する事情は(当たり前だが)変わりない。

 一方、いまはインターネットで簡単にお金を借りられる世界でもある。ネットでは盛んに金貸しが宣伝している。

 で、やむにやまれず生活費を怪しいところで借金し、返せなくなってその返済のためやがては複数の消費者金融からも借金を重ねる。

 借りては別の借財先に返し、を繰り返す自転車操業だ。

 その間もひっきりなしに厳しい借金の取り立てで追い詰められ、そのうち「一度だけ」のつもりで今度は闇バイトに手を出す。

 最近、不良でも暴力団でもない20〜30代の「ごくふつうの若者」が、闇バイトに吸い込まれていく理由はこれだ。

 そして最後には逮捕され、やがて釈放されても、彼らはもはや犯罪を繰り返すだけの「マシン」になってしまうーー。

 そんな現状をいったい政府はどう解決するのだろうか?

自公政権はまったく問題を解決する気がない

 この深刻かつ構造的な喫緊の課題を(フジテレビ・ネタ報道ばかりの)メディアはほとんど取り上げないし、世間もすっかりスルーしている。とんでもない話だ。

 そもそもこれらの諸問題が解決しない限り少子化なんてなくならないし、となれば日本の発展もない。お先、真っ暗である。

 だからこそまず「いの一番」に、お金の問題、つまり経済のテコ入れが先決になる。

 とすれば、それを実現する布陣を作るため、積極財政を旗印にした政界再編が必要になる。

 ひとまずテーマを積極財政だけに絞る理由は、ワンテーマのほうが複数のグループがひとつにまとまりやすいからだ。

 現状の勢力分布を見ると、すぐには自公勢力を倒す政権交代を起こせそうにない。だから大きな固まりを作るため、まずワンテーマで対抗軸を作って政界再編を何度も繰り返す。

 そうすれば次第に今の状況を解決できる理想の政権ができて行くはずだ。

 そこで仮に構想として例えばAチームは、まず一の矢で各グループとも共通の政策として積極財政を掲げる。

 それ以降に続く二の矢、三の矢の政策は、ある程度、各グループの独自色を出してもいいかもしれない。

 それくらいでなければ、大きくはまとまれないだろう。ただし二の矢以降は、くれぐれも一の矢の趣旨と矛盾しない範囲での政策としておきたい。

もはや国民民主党は石破首相の眼中にない

 さて積極財政を最大の公約にするれいわ新選組の場合、少数派だから一回こっきりの政界再編では政権交代を実現できる可能性は低い。

 そうなると現状、ひとまず考えられる第1幕の組み合わせは冒頭にあげた通りだ。

 そこで大きなポイントは2つある。

 まず第1点として、自分たちの数が少ないため国民民主党の協力が必要だと考えた自民党は、ある程度、国民・玉木雄一郎代表に政策を譲る姿勢を見せてきた。

 そこへ石破首相と大のお友達である前原誠司・衆議院議員が昨年12月、日本維新の会の共同代表についた。

 さあ、渡りに船だ。もはや今となっては、(下手すると)自民党に減税を迫って来かねない国民・玉木代表と無理に組む必要なんてない。維新と組めば数は一定、もう足りるのだから。

 しかも増税派で有名な立民の野田代表が、政権取りに色気を見せ始めている。

 野田氏とすれば、立民がもし自民と組めば政権に加われる上に自身の宿願である増税まで実現できる。本望だろう。

 一方の石破首相としても、国民民主党をとっとと放流して立民と組めば、もう国民民主に減税で譲る心配もなくなる。一石二鳥だ。

現状の議員数は「Bチーム」の緊縮派が多い

 ちなみに2025年時点で、会派別の衆参所属議員数は以下の通りになる。

◾️衆議院・会派別所属議員数
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/kaiha_m.htm

◾️参議院・会派別所属議員数
https://www.sangiin.go.jp/japanese/giin/old_kaiha/208kaiha.htm

 上記のリストをもとにザックリ計算すれば、やはり積極財政派の「Aチーム」にカテゴライズされそうな議員は「Bチーム」よりかなり少ない。

 だが勝負はこれからだ。

 また冒頭に挙げた組み合わせを成立させるためには、当然、乗り越えるべき壁は複数ある。

 政界再編は、そうカンタンじゃないのだ。例えば変動する可能性がある不確定要素は、おおむね以下の3つだろう。

【その1】公明党が自民中心の政権へ参加して以降、すっかりうまみを吸って来た国交省利権から果たして卒業できるか?

 これは彼らがもともと本来志向していた「福祉の党」への復帰を果たせるか? という問題ともニアリー・イコールの関係にある。

 政党が利権のうまみを知ってしまったら、それを断ち切るのはなかなかむずかしい。さて、公明党はどうなるだろうか?

【その2】国民・玉木代表は、本気で国債発行や本格的な消費税減税に舵を切れるのか?

 玉木代表は昨年の衆議院選挙では票を稼ぐため、「103万円の壁」引き上げだけでなく消費税減税やガソリン減税など、多くのおいしい政策を提起していた。というか当時の彼の論調では、消費税減税が最も重視する公約のはずだった。

 ところが目論見通り高得票を得て、キャスティングボートを握り政権党の自民と交渉できるようになった時点で、もう消費減税なんて足カセにこそなれ追い風にはならない。

 で、ズル賢い彼は選挙終了と同時に、すっかり消費減税の話は口にしなくなった。これは彼がこれまで選挙のたびにさんざんやってきたのと同じ手口だ。

 だがここに来て、風向きが変わった。維新が自民につきそうなおかげで、国民民主がお払い箱になりそうなのだ。

 おそらく石破首相は「103万の壁」なんて、大幅に上げて譲歩することはないだろう。もうそんな必要はないから、あり得ない話だ。

 だったら玉木代表は、どっちを向くのか? ここが大きな問題になる。

 特にいま、10代後半〜20代の若い「Z世代」と呼ばれる有権者層の支持票が、加速度的に増えている彼らを取り込む意味は大きい。この政界再編における最大のカギを握る分かれ目だ。

 果たして玉木代表はこれまでの対自民・交渉路線から転換し、逆に自民の対抗軸へと変身できるのか?

 おそらくそれを決めるのは、玉木代表が選挙前に公約してきた消費税減税は「果たして本気なのか?」にかかっている。

 もしその気があるなら、本来の目的を実現できる積極財政派の「Aチーム」に加われるはずだ。

 反面、あくまで自民と組む選択をするなら、彼は本気で減税をやる気はないという逆の証明になる。これで玉木氏の挙動不審ぶりに対する結論が出るだろう。

立民の「江田勉強会」=太郎シンパ? はAチームに来るか

 さて次の3点目も大きな課題だ。

【その3】立憲民主党にいる「太郎シンパ」の一団は立民を離党し、Aグループに来る勇気があるか?

 立民には、消費税減税を唱える「山本太郎シンパ」の議員群がいるとウワサされている。では彼らが本腰を入れて動くのはいつか? これも切実だ。

 立民の内情がどうなっているのかよく知らないが……例えば立民の江田憲司・元代表代行が会長になり、昨年12月に時限的な食料品の消費税0%・実現をめざす勉強会「食料品の消費税ゼロ%を実現する会」が立ち上がった。

 あそこに集まった約60人が、もしそれら太郎シンパに近いなら勢力として期待は持てるかもしれない。

 この「江田勉強会」に集まった議員たちが、まとまって党を飛び出しAグループに加われば大きな力になる。勉強会はどうやら大人数だから、Aグループの主力にもなり得るはずだ。

 ちなみに江田氏は以下の通り「消費税減税を野党連携の柱にすべき」と言っているが、さてその真意はどこにあるのだろうか?

『立民 江田元代表代行ら 食料品の消費税0%目指し検討へ』(NHK・2024年12月19日付)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241219/k10014672921000.html

『消費減税を野党連携の柱に 立民・江田憲司氏、参院選で』(日経・2025年1月26日付)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA262TU0W5A120C2000000/

 江田氏がいう「野党連携の柱に」の文言が、もし政界再編を起こすにあたりAグループが出す政策の柱にしては? という意味に近いなら大いに賛同できる。

 だがその「柱」なる意味が、例えば立民の大きな勢力である自分たちを野党連携の中心にしろ、みたいな夜郎自大な話なら、この動きはしぼんでしまいかねない。

「オレたちを中心に」ではダメなのだ。

 なぜなら大きなかたまりを作ろうとするときには、呼びかける側は常に謙虚に自分たちの方から七重の膝を八重に折り、相手に譲るスタンスを取る必要がある。

 たがいにそんな譲り合いを繰り返しながら、切磋琢磨して行くのが前提だ。

 最大の問題は減税という大義のために、どこまで自分を殺せるか? なのである。

 自分を殺せないなら、どだい大同団結などできない。政権交代可能なほどの大きな集団は構築不能だ。

 いや、もちろん江田氏がいう柱なる文言が「自分たち」の意味じゃなく、上記の記事にある通り「減税を政策の柱に」という話ならその限りではないが。

紆余曲折しながら政界再編は第2幕、第3幕へ

 なお、この再編劇の第1幕には、不確定要素も多い。

 例えば(1)「現政権側に長くいた公明党は、まだすぐにはAチームに加わらない」という案件がひとつ。

 そして次は(2)「暮らしのための積極財政」とは謳ってはいるが、ただし「責任ある財源論とセットで」(つまり彼らは「税は財源じゃない」ことを理解してないことがわかる)とも唱えている日本共産党は、果たしてAチームに加わるのか? などだ。

 もちろんこうした紆余曲折は当然あるだろう。そんな微調整を幾度も繰り返しながら、山あり谷ありで理想の政権作りをめざしてチーム作りが収斂して行く。

 その結果、ゴールとして政権交代が結実する。

 この種の動きがそんな経緯を辿るだろうことは、ある意味、歴史の必然だ。逆にこの自公政権が未来永劫、変わらず続くのだとすればもう日本は終わる。

 もちろんその自民党にも「このままではまずい」と考える積極財政派はいる。今後、Aチームはそちらの方面にも触手を伸ばし、自民からも引き抜いてチームの数を増やしながら政界再編の第2幕、第3幕へと繋げたい。

 そして本当の意味で国民を幸せにする政府を作ろう。そのためには諦めず今後も選挙へ行こう。

 みなさんも心折れず、そこのところよろしくお願いします。

【お詫びと訂正】

 初期の文中で「選択的夫婦別姓は、必ずしも人間の根源的な『飢え』までは救えない」という趣旨の記述をしていたが、この部分を削除し別の表現に変えた。

 もし初期状態の表現を不快に感じたり、「こいつ、わかってないなぁ」と思われた方には深くお詫び致します。

 実は別姓については、一般家庭や職場など現場の声も過去にあれこれ聞いている。

 だから「なぜ(実用的な意味で)夫婦別姓は必要なのか?」、その意味は十分わかっている。(これについては、回を改め記事にするかもしれない)

 だからここではひとことで済ますが、一例として結婚した女性が夫の姓に変わる場合、以前の仕事を続けるのがあれこれ不便になるケースも多いのだ。

 ただし今回は「政策の優先順位」を示す意味で、夫婦別姓についてはあえて「飢えまでは救えない」と書いた。

 だが、やはりそんな私の真意(わざと別姓に否定的な表現をした真意)なんて、わざわざこんなふうに説明しない限り伝わらないだろう。また第一、客観的事実とはいえない部分だってある。

 そう考えて今回は、上記の通り記事の本文を一部修正した。

 一方、もう一点、修正が箇所がある。積極財政と消費税減税を唱える「Aチーム」のほうに、参政党さんの名前も加えさせて頂いた。

 同党の経済政策はもちろん存じていたが、まだ勢力も小さいし今回の第一回・元原稿には加えてなかった。だがやはり志向性は「Aチーム」に近いので加えた。失礼しました。

 最近、忙しいせいか謝罪や訂正が重なるが……どうぞ呆れずお付き合いください。

 なお、このお詫びと訂正は、外部の第三者などのクレームを受けてのものではありません。あくまで私が自主的に判断した。その旨、どうぞご理解いただきたい。

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【スピン報道】権力側に都合の悪い事案から世間の目を逸らすトラップにご注意

2025-02-04 17:46:23 | 政治経済
フジの女子アナ・上納案件は囮の「エサ」だ

 フジテレビの女子アナ・上納案件に絡み、「これでもか」とばかりに余波が続いている。

 元女子アナ・青木歌音さんなる新キャラが飛び出したかと思えば、今度は笑福亭鶴瓶さんにも報道被害が飛び火するーー。

 こうして次々に新ネタが発射され、大きな世間の話題になって行く。

 かと思えばつい先日、今度はホリエモンと組んだ対談で、あの長谷川豊・元フジTVアナがスキャンダラスな暴露発言をして大きな話題を呼んでいる。

「これを機に、また浮かび上がれるのでは?」

 過去に一度、社会的に「沈んだ」経験のある長谷川氏にとっては、最後の勝負をかけた行動なのかもしれない。

 そのYouTube動画(以下)でひさしぶりに同氏の喋りを聴いたが、実際、彼はとても語りのスキルが高く、まったく技能が錆び付いてない。

 今からでも番組のひとつも仕切らせれば、立派にコンテンツが成立しそうなレベルにあると感じた。

【緊急対談】「フジテレビに上納文化はあります」日枝久が作った“歪な構造”を元フジアナウンサー・長谷川豊が猛烈批判(堀江貴文 ホリエモン)
https://www.youtube.com/watch?v=V7xXAJ7upeQ

「結果的にスピン」になれば目的は達成される

 さて、こんなふうに世間の耳目を集めそうな(特に下卑たネタなど)旬の話題が繰り返されると、どうなるか? 社会の目はその一点に引きつけられる。で、ほかの出来事に対する注意がすっかりおろそかになる。

 こんなふうに権力側にとって都合の悪い事実から、ズル賢く世間の目を逸らす目的で行われるゴシップの撒き散らしは「スピン報道」などと呼ばれる。

 いや、別に「誰かが意図的に狙って目を逸らしているのかどうか?」は(実態的には)問題じゃない。

 結果的にいまの社会が抱える深刻な「本題」がボケさえすれば、「彼ら」の目標は達成される。例えばそんなスピン報道について評論家の荻上チキ氏は、以下のように分析している。

『僕は、「スピンか否か」という政治意図に着目するのではなく、「結果がスピン的になっていないか」という政治効果に着目するのが重要だと思っている。そして、結果的に政治ニュースの優先順位を下げるような報道のあり方を、「結果スピン」と読んでいる』(「桜を見る会」と芸能報道から考える、「結果スピン」の効能/2019年11月19日付・同氏の以下noteより)
https://note.com/ogiuechiki/n/nc37d8eb10b76

 うなずける意見である。

 つまり「悪いのは狙ってスピン報道するメディアだ」という陰謀論的な意味で言ってるわけじゃない。

 メディア自体にその意図があるかないかに関わらず「情報の受け手の側」(=私たち)は、それに踊らされて結果的に重大事から目を逸らされてはマズい、危ないぞ、ということだ。

 要は、メディアから情報を受け取る側の「私たち」が、どう理性的・客観的に自制するか? の問題である。

 繰り返しになるがフジの関係者だった(しかも非常に饒舌で能力のある)あの長谷川・元アナの参戦は特に直近、話題を呼んでおり、このぶんでは二の矢、三の矢で同氏への後追い報道なども今後ありそうだ。

 とすればこのフジ案件でもうこの先、数ヶ月間は社会の「目隠し状態」が続くのではないか?

 そんな気配も漂ってきた。

 非常に危険な状態だ。

「食料供給困難事態対策法」が4月1日に施行される

 そんなわけでこうしている間にも、たとえば農林水産省が管轄する「食料供給困難事態対策法」(今年4月1日施行)がスーッと通った。

 これはもともと昨年5月23日に第213回通常国会でひっそり成立し、6月21日に公布されたものだ。今年4月1日から施行される。

・ご参考「食料供給困難事態対策法について」(農水省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/horitsu.html

 内容は、異常気象や国際情勢の悪化で米や麦など主要な食糧が足りなくなったとき、その深刻度に応じ政府が生産者などに生産や出荷の調整を要請・指示できるという食糧安全保障を目指したものだ。

 実は以前からこの法律は「台湾有事」を想定していると囁かれており、カンタンにいえば罰金付きで農家に生産調整を半強制するある種、過激な法律になっている。また農家の営業の自由を侵害するのでは? という議論もある。

 そもそも食糧安全保障という意味でいえば、この問題は(もはや政府がまったくやる気のない)日本の食料自給率をどう上げていくか? という死命を制する重大事とも密接に関係している。

 つまりこの法律のように緊急事態になったら「そのとき(場当たり的に)対策する」なんて問題じゃなく、平時から安定的な食料の生産と供給ができる体制を整えておくべきお話なのだ。

 また立場によって、例えば生産者か? 消費者か? でも意見は分かれる。まさに国民的な議論が必要な大テーマだといえる。

国民に向けたパブコメの募集が始まった

 さて、これについて農水省はきょう4日、「食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針案」(以下URL)を公示した。この案について3月5日まで、国民に対しパブリックコメントを募集する。

【食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針案】
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000286633

 パブコメするには、以下のページへアクセスする。

「食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針案」についての意見の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=550004063

 上記のページからコメントを投稿する際には、まず同ページにある3つのPDFをひと通り開いた上で中身を読む。

 すると次にその下段にある「意見募集要領(提出先を含む)の全部を確認しました」という一行の冒頭にある四角い空欄にチェックマークが付き、さらにその右下の「意見入力へ」のボタンを押すと投稿できる。

 最低限、3つのPDFのうち、いちばん上にある「意見募集要領」さえ開けばラジオボタンにチェックマークが付き、投稿可能だ。だが、できればなるべく3つとも読んでほしい。

 なお、このテーマは「アベマプライム」でも取り上げられ、ひろゆきさんら数人のメンバーによって討論されている。動画は以下から視聴可能だ。

『食料危機の新法「農業の自由奪われる」本当か? 3Kイメージも? 減少する農家』(アベマプライム)
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p6208?pl=1&resumeTime=803&utm_campaign=times_yahoo_10160974_centertx_ap_free_episode_89-66_s99_p6208&utm_medium=web&utm_source=abematimes

 一方、例えば外務省の関連では、昨年12月25日、来日する中国人富裕層向けに10年間も有効になる観光用の数次ビザが新設されると同時に、団体観光ビザの滞在日数も延長された。

「両国間の経済・文化交流を促進する」といえば聞こえはいいが、中国関連では特に北海道の土地が中国資本にバンバン買い漁られるなど、いまや深刻な社会問題になっている。

 このほか現在いくつもの社会問題になるような重要案件が控えているのだが、長くなるので今回はこのへんにしておこう。また回を改めて深掘りするつもりだ。

 お楽しみに。

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【石丸新党結成】政策なき「素人集団」に未来はあるか?

2025-01-16 07:33:54 | 政治経済
エゴむき出しの「烏合の衆」のゆくえ

 前安芸高田市長・石丸伸二氏が音頭を取る新党「再生の道」とやらが15日、旗揚げした。

 今夏の都議選に向け、「東京を動かす 地域政党始動」をキャッチフレーズに誕生した地域政党だ。

 さてネット配信で話を聞きまず驚いたのは、のっけから「こういう社会を作りたい」という肝心要の政策がまるでない点だ。

 石丸氏によれば、「募集に当たっては右か? 左か? というイデオロギーがどうこうじゃなく、実務的な能力を重視したい」という。

 いやいや、「政策」というのは別に「右か? 左か?」の話じゃない。

 なぜそういう古くて単純な「イデオロギー対立」の話になるのか?

 政策って、そうじゃないだろう。

 例えば「大きい政府か? 小さい政府か?」とか、「緊縮財政か? 積極財政か?」みたいな具体的な大枠の話だ。

 根本的なところで、とんでもない勘違いしている。

 というか政策とは何か? を、よくわかってない。

 非常に驚いた。

すっかり「既得権益」側に変わった石丸氏の尊大さ

 また会見場に詰めかけたマスコミ各社も指摘していたが、記者会見に入れる「資格」を、「記者クラブ加盟社」および一定以上のアクセスを集める大規模メディア、およびネット媒体等に限定している点もヘンだ。

 つまり典型的な「オールドメディア限定」なのだ。

 なんでも石丸氏は「誰でもOK、では現場が混乱するから」だという。

 だがこれって要は、自分がまだ「小物」だった時代は、やたら突っ張りアウトサイダー気取りだったはずだ。

 それがいざ「取材を受ける側(=大物)」になると、とたんに「記者クラブ」という旧弊な既得権益にすがり、それをやたらありがたがって来場者の基準にしたり、既得権益者の力に頼り切りになることを意味する。

「ああ、底が見えたなぁ」という感じがした。

 彼は自分がまだ駆け出しの頃は既存概念に捉われず、「反権力」的なイメージを売り物にしていたはずだ。

 だが自分がいったん権力を握ればとたんに保守化し、今度は自分が「既得権益」側に回って「甘い汁を吸おう」というだけのお話だ。

 まったく呆れてモノが言えない。

 これぞ「堕落の典型」である。

 居並ぶ記者団に対する喋り方も、いかにも横柄かつ尊大で「いったい何様のつもりなのか?」という感じだった。

 ちょっとは「何か」をやるんじゃないかと思っていたが……まさかこんな早期に、これほどエゴむき出しの「こんなレベル」に成り下がるとは夢にも思わなかった。

 いやはや。

 まったく失望を禁じ得ない。

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【右傾化の仕掛け人】なぜ日本はそもそも「右」が当たり前になったのか?

2025-01-08 09:42:09 | 政治経済
80年代発のTV番組「朝生」司会者・田原氏のシナリオでそれは始まった

 まず素朴な疑問がある。

 過去に以下の記事で書いた通り、2020年代にグンと台頭した石丸伸二・元安芸高田市長と玉木雄一郎・国民民主党代表、立花孝志・N党党首の3者やその支持者たちは、そもそもなぜ揃いも揃って右派なんだろうか?

✳︎ご参考【現代の真相】政治に新風を吹き込むビッグ3「石丸・玉木・立花」はなぜ揃って右なのか?(すちゃらかな日常 松岡美樹)

 実は、上記の記事ではあえて書かなかったが、それにはハッキリ歴史的な由来がある。

 はるか日本の右傾化の源流を辿れば、最終的には「あるテレビ番組」に行き着くのだ。

 で、その番組から生まれた新世代の右派を(いわゆる「伝統的右翼」と区別して)第一世代と定義付けたとしよう。

 こう見ると、その後も続く第二、第三世代の右派が、すでにテレビやネット世代において代替わりを続けている。

 そして今では、すっかり何世代かが生まれ変わっているのが現状だ。

朝ナマで田原氏は「意図的」に右派の論者をしっかり揃えた

 では、その「テレビ番組」とは、いったい何か?

 正体は、80年代にあのジャーナリストで評論家の田原総一朗氏が仕掛けた討論番組「朝まで生テレビ!」(1987年4月放送開始)である。

 現在では、同番組はBS朝日に引っ越している。だが当時は放送開始からずっと、より視聴率が高く社会に影響量のある地上波のテレビ朝日で、金曜〜翌日未明までの深夜帯に放送されていた。

 番組・司会者の田原氏はあの番組で、左派の言論人に対抗させる形で抜け目なくしっかり右派のデキる論客をズラリ揃えていた。

 例えば当時、メインパネリストとしてレギュラーだった評論家・保守思想家の故・西部邁氏(元・東大教授)と映画監督の故・大島渚氏という両雄を左右に従えていた。

 あの番組では、彼ら2人が右派と左派を象徴する存在としてキャスティングされていた。

 そのほか特に右派としては、東大教授(当時)の舛添要一氏や故・西尾幹二氏(元・電気通信大学名誉教授/元・新しい歴史教科書をつくる会会長)や、また「右」の革新者である故・鈴木邦男氏(民族主義団体「一水会」創設者)、そして大物の故・野村秋介氏(新右翼、民族派活動家。のち朝日新聞に乗り込み1993年に拳銃自死)ら、それまでテレビなどの一般マスコミには絶対に呼ばれなかった右派の大物言論人らを、あえて積極的に番組に招いた。

 そんな彼らが発火点となり、かくて日本で初めて「右傾化の波」の第一波を巻き起こしたわけである。

巧妙な演出で左派の「穴」を突かせた司会者の田原氏

 旧来のマスコミによる紙面づくりや番組制作では、主に左派の有名言論人や知識人だけを揃えるのが常だった。

 もっぱら彼らに「人権重視」を基調とする、左派の考え方を「正論」として語らせるのがメディアの常だった。

 だがあの朝ナマの(左派だけでなく)右寄りの論者をスキなく配置した常連出演者の陣容を見れば、司会者である田原氏の狙いと仕掛けはハナから明らかだった。

 おそらく「すっかり左に偏った今の世の中に、一発、オレが風穴を開けてやろう」てな狙いだったのだろう。

 そんなわけで番組の基本的な演出は、こんなふうだった。

 まず「左」の論者にいかにも「正論」に聞こえる(実は建前的な)持論(つまりこれが当時のすっかり左に偏ったスタンダードな世論になっていた)を語らせる。

 で、次に「右」の論者に、彼らの矛盾点を突く知的で巧妙なツッコミを入れさせるのだ。

 つまり左の論者の論理に潜む、根本的な矛盾点(これがそっくりイコール、当時の日本社会が抱える根本的な論理矛盾だった)を突かせて叩かせるーー。

 そんな番組進行だった。

 とすれば、生まれて初めてテレビでこうした右派の論理を聞いた視聴者は、「あれ? 自分は今までてっきり(左の論者が番組で語る論理が正しい)と思っていたが……まちがいだったのか?」と自然に気づくーー。

 そんなうまい仕掛けだった。

(まあ後から考えれば、実はこれも田原氏・一流の左から逆方向へと向かわせる「洗脳」ではあるのだが)

 つまりすっかり左に傾いた世論のバランスを取り、今度は逆に右へ寄せようとする司会者・田原氏が描いた巧妙なシナリオだったのだ。

舛添氏が見せた左派へのトボけたツッコミは絶妙だった

 ともあれこのやり方で番組は見事に大成功し、ウケまくった。

 まず珍しくテレビでこんな寸劇を観た右派の人たちは、「そうそう、オレが言いたかったのはそれなんだよ!」と賛同する。

 一方、「なんとなく左派」だった人たちは、「あれ? 自分が今までもっていた(左派的な)考えは、実はまちがっていたんだろうか?」と自分に疑問を持つようになる。

 そんなウマい仕掛けで、番組は当時の左派が支配する「致命的な陥穽に落ちた日本社会の基本的な矛盾点」を次々に暴き出した。

 特にそんな欺瞞的な左翼論者が持つ「穴」の突き方が、バツグンにうまかったのが舛添要一氏だった。

 彼は敵の手の内を(実は)完全にわかっていながら、最初はわざとトボけて相手の左傾化した話を「うんうん」と聞きながらエンエンとまずしゃべらせる。

 で、次にやおら、こう切り出すのだ。

「あれ? でもあなたのその論理って、実はこうおかしいんじゃないですか? そこは矛盾してますよね?」

 こんな具合いで、見事に敵の首を取って見せるわけだ。

 彼のこのやり口は、実に巧妙でおもしろかった。番組では、このやり取りがウケまくった。

 かくてそんな手法で番組に出る左の論者たちは、揃って片っ端から論破されて行った。

 その田原氏による狙い通りの「右方向への修正作用」(世論誘導策)がやがて番組のワクを飛び出し、まるでさざ波のように世の中一帯へと浸透して行った。

 これがその後の日本の右傾化の起点になったのだ。

 当時、「朝ナマ文化人」などというネーミングができたほど、この番組での右派の論陣は冴えていた。

 で、やがてはそれがだんだん社会のデファクト・スタンダードになって行くことになる。

 のちに日本は90年代以降にかけてさらに右ぶれし、やがて社会の隅々にまで右傾化の波が浸透した。それが今や、2020年代では「右であることが当たり前」の世の中になった背景だ。

知的刺激でいっぱいだった「朝ナマ」の議論

 80年代当時、あの「朝ナマ」が発信した議論は新鮮でまったく見たことがなく、かつ知的刺激でいっぱいだった。

 特に常連だったあの西部氏が次々に繰り出す、聞いたこともないような「ひねりのある知的な問題提起のしかた」には、口をあんぐりさせられたものだ。

 当時、まだ戦後の日本が左翼運動の思想や論理にどっぷり占拠されていた状態のなか、各家庭では判で押したようにみんなが「朝日新聞」を購読し、揃って左の人権意識に染まっていた。

 その大衆があの「朝ナマ」を初めて観て、後頭部をガツンと一発やられることになった。

「世の中にはこんな思想があったのか!」

 実際、そんな「ニューワールド」は、実にエキサイティングだった。

最後にトドメを刺したのは橋下徹・大阪市長(当時)だ

 一方、こうした右傾化の波が社会全体を覆うにつれ、90年代以降の左派はすっかり退潮して行った。

 特に右派のニュースターとして期待を一身に背負い、日の出の勢いで維新から台頭した橋下徹・大阪市長(当時)が、2012年に勃発した「左の巨頭・朝日グループとの骨肉の戦い」に完全勝利を収めたのが大きかった。

 そして最後には朝日グループ側から謝罪を引き出す。あれで朝日に代表される「左の権威や文化」がガタ落ちし、右の完勝がすっかり確定した。

 以後、今に至るも左の勢力は、もはや見る影もないのはご存知の通りだ。

 果たして今後また時代がもう一回転し、「左の世界」が来ることはあり得るのだろうか?

 個人的にはそんな新しい潮流を唯一、「もはや左右の争いではなく、上流階級(既得権益者層&支配階級) vs 下層階級(一般庶民&被支配者階級)の戦い」へと昇華させようとしている、れいわ新選組の山本太郎代表には注目しているが……さて、どうなるだろうか?

 ここは注目の焦点である。

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【れいわの政権交代】れいわ新選組が「Z世代」を取り込み政権交代するには?

2025-01-05 11:59:33 | 政治経済
れいわ新選組は衆院選で国民民主に入れた「新規の客」を取れたはずだ

 先日の衆議院選挙で大躍進しキャスティングボートを握った国民民主党は、新規のお客さんをごっそり取った。

 だが本当なら国民民主に今回、新しく投票した非正規雇用者や派遣社員などワーキングプア層の経済的欲求を満たすのは、大胆な積極財政政策を掲げる「れいわ新選組」だったはずだ。

 おそらく本来なられいわの山本太郎代表は彼らの支持を得て、今の国民民主の地位を取りたかっただろう。だから今回の選挙に勝ったとはいえ、太郎氏は悔しそうだった。

 ではなぜれいわはそれを成し遂げられず、国民民主に次ぐ2番手になり下がったのか?

 まず大前提としていえるのは、現状、いきなり政権交代は起きにくい情勢にあるということだ。とすればこの状況で野党が自分たちの政策を実現するには、うまく与党と交渉しなければならない。

 その点、国民民主の玉木代表は「我々は与党の延命に協力しますよ」というスタンスを取った。

 つまり野党でも与党でもない、いわゆる「ゆ党」のそぶりをしながら自民側とうまく立ち回り交渉した。これが大きかった。

 このやり方なら、何も自分たちが政権交代しなくても自党の政策を実現できるからだ。つまり国民民主はこのテでキャスティングボートを握った。

 確かにこれで有権者には、いかにも国民民主の政策が通りそうに見える。一方、国民民主党は「与党に賛成する代わりに、与党は我々の政策を飲んでくださいね」と言えるわけだ。

 この点では自公政権に反発し、ひたすら声を荒げて突っ張りまくるれいわ・山本代表とは好対照だ。ここはアタマがよくて(悪く言えば)ズル賢い玉木代表はうまくやったといえる。

れいわ新選組は「左」に見えるぶん損だ

 第二に大きいのは、れいわの政治的なスタンス、つまり見た目がいかにも「人権を重視する左派の典型」に見える点だ。

 一方、衆院選で国民民主党へ大量に雪崩れ込んだ有権者層は、1997年度から2012年度に生まれた18歳以上〜30代の若い「Z世代」である。

 彼らは生まれたときから、ほぼ世の中に「右派しかなかった世代」だ。だから彼らも自然に右派になった。その意味で生まれついての、意識せざる生粋の右派だといえる。

 そんな彼らのなかには衆院選で国民民主党の「手取りを増やす」のキャッチフレーズを見て、今回まったく初めて選挙へ行った人も多い。

 つまりZ世代は今まで政治になんて興味なかったのだ。だから彼らの多くは、これまで選挙を棄権していた。

 だがその彼らが選挙に関心を持つようになったのは、実は先日の都知事選挙で石丸伸二候補が新旋風を巻き起こしたからだ。あのときに石丸氏を支持したのも、同じくZ世代だった。

 で、そんな彼らは今回の衆院選でも選挙に参加し、今度は国民民主党に入れた。

 とすれば彼らは投票する新規の有権者を増やし、「新たな有権者層」を掘り起こす役目を担ったことになる。

 今後も「投票で世の中を変えること」を知った彼らは選挙へ行き、有権者のパイは広がり続けるだろう。

 これは大きい。

 ではなぜ衆院選では、彼らが選挙に参加したぶん(都知事選の時のように)全体の投票率が上がらなかったのか?

 それはこれまで必ず選挙へ行っていた自民党の支持層の一部が、今回、自民が引き起こしたウラ金問題にウンザリし選挙を棄権したのではないか? だからそのぶん差し引きゼロになり、投票率が上がらなかった。

 あるいはこうして愛想をつかした自民支持層が、一部、国民民主の支持に回ったのかもしれない。で、差し引きすれば投票率がそう変わらなかった可能性もある。どちらの説も、差し引きすれば数字はだいたい合うはずだ。

Z世代が固着していた票のバランスを破壊する

 さて(繰り返しになるが)Z世代の多くはいままで投票を棄権してきた人々だ。ゆえに今後の来るべき政界再編や、その先にある政権交代を起こすに当たり、重要な役目を担う層になる。

 というのも今までの選挙では、自民・公明がおおむね組織票で(投票された票のうち)過半数の票を取ってしまい、これだけで自動的に政権を握り続けていたからだ。

 で、残りの投票分はといえば、野党がそれぞれ小刻みに四分五裂、分け合うだけ。これらの票は大勢にまったく影響しない。一方、あとに残る大半の有権者たちは、今まで選挙にまったく行かなかった。

 すべて棄権者だ。

 かくて票の配分はこれで完全に固着してしまい、自公政権が意味もなくすっかり定着していた。つまりZ世代が、今までずっと選挙を棄権し続けていたのが大きかったわけだ。

 すなわち裏を返せばカギを握っているのは、やはり彼らZ世代だということになる。

 彼らが動けば、政治は変わる。それが今回、実証されたといえる。

先日の都知事選で初めてZ世代が選挙に参加した

 実はこうして長く続いた票のバランスを初めて壊したのが、先日、行われた都知事選に出た石丸伸二候補だった。

 彼はSNSを使った巧みなネット戦術で若者に訴え、インターネットを使い慣れたZ世代を動かした。彼らを選挙に初めて誘導し、その票を獲得した。

 かくて選挙へ行かなかったZ世代の多くの票が、まったく新たに選挙マーケットに加わることになった。この現象がもし今後も続けば、日本の選挙における票の配分バランスは大きく変わるはずだ。

 こうして日本は新しい時代を迎え、今後は自公以外の第三勢力にも広く政権奪取の可能性が生まれるだろう。

 今まで棄権していた彼らが新しく政治に参加してくれば、従来の完全に固定化していた各党間の得票バランスがまるっきり変わる。これで将来的には、政権交代が起こる可能性も必ず高まるはずだ。

Z世代が生まれた時にはすでに右派しかなかった

 ちなみに彼らZ世代が生まれた時には、すでに政治的な「左右の対立」なんてとっくに終わっていた。

 そのとき世の中には、もうほぼ右派しか存在してなかったからだ。だから彼らZ世代が右派になるのは、水が上から下に流れるように自然だった。

 だってそこには、すでに右派しかいないのだから。

(では、なぜそもそもこんな決定的な「右傾化現象」が起きたのか? については、この記事で分析した通りだ。ご参考まで)

 そんなわけでZ世代は自分たちが右派であることにさえ、さほど自覚的じゃない。それだけ自身が右派であることが、ごく自然で当たり前の時代に生まれたわけだ。

 だからなんとなく雰囲気が「左派っぽい」れいわ新選組とマッチしにくい。ここが致命的なマイナスポイントになっている。

 山本代表率いるれいわ新選組は、今後、このギャップをどう解消するか? それが大きなカギになるだろう。

実はれいわは「左右対立」でなく「上下の戦い」をにらんでいる

 だが実はれいわの山本代表は広い目で見れば、今後の政治は「左右の対立」ではなく「上下の戦い」だ、つまり「上流階級 vs 下層階級」の闘争になると読んでいる。

 彼は左右の別にはこだわらない。

 そんな山本代表が考える上下対立の構図とは、「既得権益層」と「持たざる者たち」という対立軸だ。同時にそれは「抑圧者(支配者層) vs  非抑圧者(被支配層)」の対決でもある。

 すなわちこの記事でも解説した上流と下流、つまり「1% vs 99%」のせめぎ合いだ。

山本代表がやりたいのは「積極財政」である

 そんなれいわの山本代表が政権を取った場合、まずやりたいのは積極財政だ。

 具体的には、経済的弱者である下層階級を助けるために消費税の減税(または消費税の廃止)や「10万円の現金給付」などの経済政策を訴えている。

 こう言うとすぐ「じゃあその財源は?」というツッコミが入るが、ちょっと説明を聞いてほしい。基本的な経済原理の話だ。

 まず政府の大きな財政政策のひとつは、市場にあるマネーの量を調節することだ。

 なぜなら唯一、国だけが国債を発行でき、(実態的には)「お金を新たに作ることができる」からである。

 例えば「ユーロ」という共通通貨を使う欧州連合諸国(EU)などとちがい、日本には「円」という日本固有の独自通貨がある。

 一方、日本の国債は円建てだ。だから国債は必ず償還される。デフォルトするなんてあり得ない。したがって日本は経済破綻しない。

 ゆえに市場でお金が欠乏しているときには(今の日本は「この状態」にある)、その際は政府が大胆に財政支出して市場にマネーをマンマンと満たす必要がある。

 具体的には、政府が前述した消費税減税や現金給付をするほか、公共事業をやったり、必要な失業者対策や企業支援などを行なう。

 一方、逆に市場にお金があふれている(多すぎる)ときは、政府が消費増税などを行ない、熱した市場からおカネを間引いて市場の熱を冷ます。おカネを減らす。

 こうした「押し引き」する調整こそが正しい景気対策であり、正しい経済政策である。

 日本の財務省がいうように、予算の支出と収入を一会計年度内で一致させるべきだ、とする財政均衡主義なんて、はるか19世紀の遺物にすぎない。

 どんなときにも「緊縮財政」一辺倒だなんて、もはや常識はずれな話である。

真の「積極財政」を唱えているのはれいわ新選組だけだ

 だがそれならなおのこと、れいわ新選組の左っぽく見える見た目は改善の余地がある。

 これではれいわは誤解されてしまうかもしれない。

 それもあってか先の衆院選では、政治に新規参入してきたZ世代というおいしい右派層にも、れいわ新選組は完全にはリーチできなかった。彼らの多くは国民民主へ流れた。

 しかもあの国民民主党は皮肉なことに、れいわと比較的近い「積極財政」もどきの政策を唱えている。

 だが実はむしろワーキングプア層が多いZ世代のニーズを本当の意味で満たすのは、経済政策的には(国民民主ではなく)れいわ新選組だ。

 なぜなら国民民主が唱える経済政策は、見ればわかるがせいぜい「103万円の壁」やらガソリン減税ていどでしかない。

 ぶっちゃけ、政府に対する要求がしょぼい。

 だがれいわ新選組は国債発行を絡めた大胆な財政支出を基調とし、(1)「103万の壁」よりはるかに国民がトクをする本格的な消費税減税、(2)インボイス制度の導入撤回、(3)インフレ対策として季節ごとに一律10万円の現金給付ーーなどの政策を政府に迫っている。

 つまり本当の意味での積極財政政策を唱えているのは、日本の政党のなかではれいわ新選組が唯一の存在なのだ。

小泉改革的な「シングルイシュー戦略」で積極財政だけで戦え

 ちなみに最近では「右派だからこそ」Z世代にリーチし、彼らの支持を得たケースは、(1)衆院選で躍進した玉木代表の国民民主党、(2)兵庫県知事選挙で斎藤知事を「側面応援」し当選させたN党・立花孝志氏、(3)都知事選で大旋風を巻き起こした石丸伸二氏ーーの3つのケースだった。

 一方、れいわ新選組が左右の別に拘らず、左派と右派を合流させる大きな勢力を作って政権交代を起こすには、あの自民党の小泉純一郎首相がやった「小泉改革」的なシングルイシュー戦略が有効だろう。

 つまり政策をできるだけ徹底的な積極財政オンリーにし、複数の党や支持層がよりまとまりやすいよう共通政策をひとつに絞る。

 そして将来的には異なる複数の政党を糾合し、新たな多数派を作って選挙に臨むのがベストだろう。

 つまり政界再編を仕掛けるのだ。

勝負はいかに「1% vs 99%」の戦いに引きずり込むか?

 繰り返しになるが、れいわ新選組にとって勝負すべき土俵は、旧来から政治的なイデオロギーとして根付いている左右対決のような古い舞台じゃない。

 いかに「1% vs 99%」の戦いに持ち込むか?

 エリート富裕層など「1%の既得権益層」 vs 貧しく抑圧された「99%を占める庶民の戦い」へどう持って行くか? だ。この構図なら必ず多数が取れる。

 それには生まれた時からネットがあった初めての世代である10〜30代のZ世代を、(例えば)SNS戦略などでうまく取り込むいくつかの方策を打つことが必要になる。

 まず生まれた時から右寄りの彼らが納得するような、左右の古い価値観にこだわらない政策を取ることが肝心だ。

 本気で多数を占めて政権奪取を狙うなら、今後は抜本的な党のイメージ作りから考え直す必要があるかもしれない。

 それには山本代表は今までのように、「経済以外」の部分で何らか左派的な色の濃い部分を出すのはなるべく控えた方がいいかもしれない。

 あくまで本当の意味で左右の別に過剰にこだらず、上下の「格差」のみを強調して押し出す姿勢を見せ続けるのがポイントだろう。

積極財政派の議員は20年で「2倍超」に増えている

 こうして左派色をいくらか払拭できれば、あとは政界再編を起こしうる勢力をどこまで大きくできるか? だ。それにはまず各党に散らばる積極財政を支持する議員に協力を求めたい。

 実際、このところ積極財政派の政治家は確実に増えているのだ。

 例えば朝日新聞が東京大学大学院教授の谷口将紀研究室との共同研究でまとめたこの記事では、「積極財政派の議員は20年で2倍超になっている」と分析している。

 最近では地方議員にもその波は波及しており、2023年5月には超党派の「積極財政を推進する地方議員連盟」(事務局長・石井敏宏議員/千葉県・館山市議会議員)も設立された。

 このほか協力が得られそうな議員としてまず考えられるのは、かつて山本代表が活動を共にした立憲民主党・小沢一郎さんのほか、原口一博さんや須藤元気さん(元立憲)あたり。

 加えて立憲民主党に30〜40人ほどいる(ともいわれる)積極財政論者の「山本太郎シンパ」が揃ってもし脱党してくれば、勢力としてのスケールはかなり有望になる。

 彼ら積極財政派の議員たちを、なるべく経済政策のワンイシューでスムーズにすべて糾合することが大切だ。そして大波を起こしたい。

積極財政のインフルエンサーは揃って右派だ

 加えて社会的な影響力が大きく選挙で票に結びつきやすいインフルエンサーの支持を得ることも重要になる。

 というのも日本で積極財政を喧伝する有名なインフルエンサーは、これまた一部を除き、揃って「右」なのだ。その意味でも左派色を薄めることは意味がある。

 例えば「応援団」の候補としては、まず著作家の三橋貴明さん(YouTubeチャンネル「三橋TV」運営者)、中野剛志さん(評論家)、室伏謙一さん(室伏政策研究室代表)、藤井聡さん(京大教授)、ジャーナリストの鮫島浩さん(元朝日新聞社)、元明石市長の泉房穂さん、あたりだろう。

 こんなふうに四分五裂した「志」が同じ勢力に経済という共通政策を訴えかけ、大きな塊(かたまり)を作ることを目標にしたい。

「そろそろヘンなこだわりは捨て、ひとつにまとまろう」

 こう彼らに呼びかければ、うまくマッチングできる可能性は必ずある。

 かつてなら、なりふり構わずこれができたのが(現・立憲民主党の)小沢一郎氏だった。だが今の彼にそれが可能だろうか?

 いや可能かもしれないが、いまならやはりそれをやるのは山本太郎・一択だろう。

 そう感じる。

【謝罪と訂正】

 文中にあった、以下の文言を削除した。

「それには現状のれいわのように、例えば障害者を3人も立てて話題作りするような戦略を取るのは『左翼か?』などと誤解されて却ってソンだ」

 当初、この一文を入れた意図はあくまで、「イデオロギー的な左右の違いで争うのでなく、上下の争いに持ち込めば有利になるはずだ」という戦術的な意味だった。

 だが、だからといってその具体例として障害者の方の擁立に言及したのは、軽はずみで人権を侵害する表現だった。

「れいわ新選組を伸ばすには?」と考えてひねり出した愚策だったが、ちと短絡的で拙劣でした。

 深く反省し、障害者のみなさんと山本代表および「れいわ新選組」、そして読者諸氏に謝罪と訂正致します。

 なお、この修正はあくまで自分で後から気づいたものであり、外部の第三者などから抗議を受けてのものではありません。

 どうぞ誤解なきようお願い致します。

【山本太郎代表とれいわ新選組の躍動を願って】(2025年2月1日)

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【現代の真相】政治に新風を吹き込むビッグ3「石丸・玉木・立花」はなぜ揃って右なのか?

2025-01-03 17:06:30 | 政治経済
支持層は生まれた時から日本が右傾化していた「Z世代」だ

 先日の都知事選で有力候補だった蓮舫氏を抜いて「2位」になり、旋風を巻き起こした石丸伸二氏とその支持層は大きな脚光を浴びた。

 だがここに来て、ひとつ気づくことがある。

 あの社会現象と、今回の衆院選で玉木雄一郎代表の国民民主党に投票した人たち、また兵庫県知事選で斎藤知事を勝たせる立役者になったN党党首・立花孝志氏の支持層のキャラクターという「3つの支持層」は、ぴったり重なる。

 まあ同じとまでは行かずとも、かなり近しい属性といえるだろう。

 それらの支持層は世代的にも思想的にも、かなり似ている。年齢的には、おそらく「Z世代」と呼ばれる人々が主体だ。

 これは1990年代半ば〜2010年代序盤に生まれた世代であり、2025年現在ではおよそ14歳~30歳相当に当たる。

 彼らは生まれたときから当たり前のようにインターネット(=SNS)があった、初めての世代だ。

 また同時に生まれたときから当時の日本は、とっくの昔に右傾化していた。というより逆に、ほぼ右派しか存在していなかった。

 だからそんな右しかない真っ只中で世に出た彼らは、自分が必然的に「右であること」すら意識することがない。それほど右でいることが自然でいる。

「生まれつきの右」、あるいは「右に生まれついた」と言ってもいい。

 一方、彼らは赤ちゃんがおもちゃを使いこなすかのように、SNSを自在に操る存在でもある。

 そんな彼らとガッチリ噛み合うように「石丸・玉木・立花」の3政治家もまた、YouTubeやX(旧ツイッター)をフルに使った「ネット選挙」を展開する点でも共通している。

 しかもみんな右派である。

分類すれば「右派ポピュリズム」を信奉する人々だ

 そんな揃って右派の支持者たちは、まぁ大半は軽めの「右派ポピュリズム」(右の大衆迎合主義)といえるだろう。

 この右派ポピュリストとは、右寄りの政治とポピュリストを結びつける政治上のイデオロギーを指す。

 例えば同志社大学・政策学部(政治学者)の吉田徹教授によれば、この後者に当たる思想の「ポピュリズム」は、まず既成の政治や経済、文化エリートに対し異議申し立てをする。

 第二に、社会から無視されている農民や労働者階級、自営業者、手工業者らの名誉を広め、その地位を高めようと盛んに動く。

 第三にポピュリズムは、カリスマ的な指導者が扇動することが最大の特徴だ。すなわちそれらのリーダーが、石丸、玉木、立花の3者に当たる。

 定義にドンピシャで当てはまる。

 もっとも彼らは典型的な右派ポピュリストであるトランプ次期米大統領や、フランスのルペン前「国民連合」党首みたいに「そこまで破壊的」じゃない。

 だが確かに典型的なネトウヨ層もまた、彼らの中には相当数、含まれているだろうと思われる。

支持者は学生や派遣、非正規などワープア層が中心だ

 次に社会的な属性でみれば、彼らは学生さんから派遣社員、非正規雇用などのワーキングプアが中心だ。あまり裕福じゃない人々がコア層になる。

 だから彼らは将来を悲観している。

 いまの政治は腐敗の極みにあり、人びとの敵をやっつける強い指導者が必要だと感じてる。それがまさに彼らにとっての玉木氏であり、石丸氏であり、立花氏なのだ。

 裏を返せば彼らの政治的関心をイチから呼び起こすトリガーになったのが、そもそも玉木・石丸・立花の3キャラクターだったのである。

 一方、いま社会構造の対立軸を政策の結果として見れば、完全に「1% vs 99%」の関係になっている。

 それぞれ具体的に「1%」と「99%」に例を当てはめれば、「オールドメディアと富裕層など社会の支配者階級、および既得権益層」(1%) vs 「SNSになじんだ単なる平民の被支配者層と被抑圧者層」(99%)という関係だ。

 そんな構図のなか、石丸・玉木・立花各氏の支持層は、99%の側に立つ。

 だから彼らは当然、後者に当たる99%(ふつうの人たち)の声を政治的に重んじるべきだと考える。

 また彼らはどちらかといえば今まで支持する政治家がおらず(無意識的な無党派層だ)、ゆえに選挙へ行かなかった「棄権者」の層もかなり含まれている。

 最近になって政治参加したばかりの新世代の有権者も、多く含まれるはずだ。

最初に「政治的成果」を挙げたのは国民民主の支持層だった

 経済的、社会的に満たされない彼らは、直近では衆議院選挙で国民民主党が掲げた「手取りを増やす」というキャッチーなコピーに飛びついた。

 それだけ彼らは新しい(特に経済的な)政治欲求が強い。

 で、その経済政策に対し、支持者は強く反応した。(ただし、その国民民主党の政策は以下の通り、実際には「うわべの見せかけにすぎない」ものではあるのだが。詳しくは以下、3本の記事をご参照下さい)

【国民民主党】やっぱり騙された? 公約の「消費減税5%」を反故に【衆院選2024】

【国政の七不思議】なぜいまだに国民民主党の政党支持率が高いのか?

【社会保険】「106万円の壁」が撤廃されて大増税に【国民・玉木代表と裏取引きか?】

衆院選で勝った国民民主がキャスティングボートを握った

 こんなふうに3グループに分類される新世代の政治参加者のうち、まず最初に目に見える実績をあげたのが国民民主党の支持層だった。

 かくて国民民主は衆院選で議席を飛躍的に伸ばし、キャスティングボートを握ることになる。

 彼ら新世代の支持者による政治への新規参入が、あんなふうに衆院選での国民民主の大躍進を生んだのだ。

 残る2派の実質的な躍動はまだこれからだが、注目すべきは今後、「右で99%を占めるSNSネット世代」のこれら3層の共同戦線があるのかどうか? だ。

玉木勢と石丸勢はマッチしそうだが立花勢は?

 個別に見れば、おそらく玉木勢と石丸勢は比較的、組むことにも柔軟に見える。

 だが立花勢は、ひときわユニークな個性とこだわりが強いだけに共闘はしにくいかもしれない。ただし、よく話し合い共通の政策に限定して政策を掲げれば、また話は別だが。

 最後に(客観的にではなく)極めて主観的で、個人的な意見を言わせてもらおう。

 外野の私からすれば、これら3派のリーダーは(少なくとも政治的には)悪く言えばうわべだけだ。ややもすれば雰囲気のみであり、現実の政策的には空気みたいに無意味な存在に見える。

 特に石丸氏には何も具体的な政策がないし、立花氏も(頭はすごくキレるが)政治的には同様だ。

 それにくらべ玉木氏の場合は(本当は経済政策としてやるべきことを)確実にわかっているはずだが、それをやれば「自身が破滅しかねない」からおそらく本気でやる気はないだろう。

 玉木氏は日本再生には何が必要か? 本当はわかっている。だが、やることをやらずにうわべの勢力(数の力)だけを稼ぐ戦法を取るはずだ。

 したがって万一、国民民主党が仮に連立政権に加わった場合でも、政策的には結局中身がカラっぽで真空だろう。世の中はなんにも変わらない。

 単に当たり障りがないだけだ。もっとも利権政治で腐敗し切った自民党よりは、まだマシだろうが。

玉木氏が真の意味で「積極財政のカード」を切ることはない

 大蔵省(現・財務省)出身の玉木氏がそうとわかっている「本当にやるべき経済政策」をやれば、日本は真の意味で改革を成し遂げて経済成長できる。

 だが彼はそれが自分の身を滅ぼすことを恐れ、やらないはずだ。

 すなわち「それ」とは、大胆な国債発行を絡めた上での大幅な財政支出を伴う「積極財政政策」を指す。

 もちろん積極財政をやれば、日本の経済は立ち直り、国民は幸せになる。

 だがその結果として、政治的なパワーバランスがどんな結果になるか?

 直接的には、党はまず財務省と真っ向から対立する。ひいてはやがてアメリカとも、コトを構えるガチンコ勝負になるかもしれない。

 もしそうなれば玉木氏は、故・安倍晋三氏や故・中川昭一氏、故・石井紘基のようになりかねない。もちろんそこまで本気じゃない彼は、当然そんなことまでやる気はない。

 だから「玉木改革」は見せかけで終わり、何もなし得ない。これは確実だ。

 それに引き換え、例えばれいわ新選組山本太郎代表は、本当に死ぬ気で積極財政をやるつもりでいる。

 だがいかんせん、れいわは党の見かけが「左」に見えるせいで、このままでは多数の支持を得られない可能性が高い。よって、このままでは政権に参画できないかもしれない。

(では、れいわ新選組はどうすればいいか? については、この記事で解説した通り)

 で、結局、いまの日本はこんなふうに、妙にフン詰まりした歪なパワーバランスで今日もあり続けるわけだ。

 やれやれ、である。

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【必見!】元朝日新聞記者の鮫島浩(ジャーナリスト)さんが「正しい財政政策」を言い切る

2024-12-24 23:35:41 | 政治経済
YouTubeチャンネル「鮫島タイムス」が本日、正論を解説した

 元朝日新聞記者でジャーナリストの鮫島浩さんは、ご自身のYouTubeチャンネル「SMEJIMA TIMES」を以下の通り、本日、更新した。

 そのなかで鮫島さんは「政府の大きな財政政策のひとつは、市場にあるマネーの量を調節することだ。唯一、政府はお金を刷って新たに作れる。

 ゆえにマーケットにお金が少ない(例えば)今なら、刷ったマネーで財政支出し積極財政を行なうべきだ。これは政府にしかできない、政府の役割だ」(要旨)などと、本日の配信でハッキリ宣言した。

【財務省のウソ】減税をつぶした「財政収支均衡」の幻想〜税金の役割は財源確保ではない! 自民党税調の宮沢洋一会長「税は理屈の世界。財源問題は切り離せない」への反論
          ✳︎財務省の役割は、経済の「調節弁」になることだ。

政府は市場にあるマネー量を増減し調節するのが正しい

 この配信で鮫島さんは、以下のように語った。(要旨)

「日本市場にお金が欠乏しているときは(=いま現在、日本はこの状態だ)、その際は政府がお金を刷り、財政支出して市場にマネーをマンマンと満たす」

 逆に、「市場にお金があふれているときは、政府が消費増税するなどして市場からおカネを間引く。おカネを減らす。こうして経済を調整する。これが正しい経済財政政策だ。したがって『緊縮財政一辺倒』の財務省はまちがっている」

 そう! 正論だ。それこそが「お金を刷れる政府」にしかできない財政政策であり、こうして経済を調整するのが政府の役割だ。

 ところが日本政府(=財務省)は、それをやらない。

 だから鮫島さんが言い切った。上記のように切り捨てた。

 でも、みんな財務省をこわがって言えないんだ。それを鮫島さんが明言した。

「正しい経済理論」をいう人は日本に数人しかいない

 だが日本では、上記の正しい経済理論をわかっている人がいない。だから言う人も少ない。

 こうした財政理論を理解している(または実際に口に出す勇気ある人・団体は)、少なくとも政党でいえば唯一「れいわ新選組」か、または著作家の三橋貴明さん(YouTubeチャンネル「三橋TV」運営者)、あるいは室伏謙一(室伏政策研究室・代表)さん、藤井聡(京大教授)さん辺りの財政政策を真っ当に理解している数人しか、日本にはいない。

 それを鮫島さんはよくぞ言ってくれた。

 すばらしい。

 よって本コンテンツを拡散します。

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【兵庫案件】県警に匿われている折田楓さん、居心地いかがですか? 〜彼女は恐らく県警に駆け込みゲロってる

2024-12-22 05:44:35 | 政治経済
彼女のこの「完全な音信不通ぶり」は普通じゃない

 
 広告PR会社「merchu」社長の折田楓氏は、兵庫県警に駆け込み保護されているーーそんな説が根強くある。

 まあ、これだけ世間から完全にシャットアウトされ、音信不通になっているのだ。こうした点からみて、おそらくこの情報は確度が高いだろう。

 折田氏はどこかの時点で県警に進んで協力を申し出、手持ちの情報をすべて提供した上で捜査に協力している(推測)。

 まず公職選挙法違反に関しては、斎藤陣営はどう考えても真っクロだ。

 だから必然的にSNS戦略などの中心部を担った折田氏の刑も確定するだろう。

 だが彼女は警察への能動的な捜査への協力が認められて執行猶予が付き、あとはお咎めなしーー。

 折田氏としては、かしこい戦略だ。

斎藤知事は逮捕・失脚、だが折田氏は逃げおおせる

 一方、選挙違反が指摘されている斎藤陣営の反論には、まるで説得力も論理性もなく完全に破綻している。

 証拠はたっぷりある。遠からず、然るべき判定が下るだろう。

 そのときすでに十分、捜査に進んで協力している折田氏は無事、「放流」される。計画通りだ。

 彼女の輝かしい経歴にも傷がつくことはない。

 おそらく今回の県警への駆け込み戦略は、地元で力をもつハイソなご家庭一族・一同からのサジェスチョンだろう。

 あんな法的に穴だらけの斎藤陣営と心中するなんて、バカのひとことである。

本件発覚後、斎藤知事は折田氏を冷たく突き放したまま

 しかも斎藤知事は本件発覚後、折田氏を庇う素振りを一切、見せない。冷たく突き放したままだ。

 いかにも元・中央官僚らしい機械的で血の通わない対応である。

 まあ、もっとも折田氏の個人的な自己承認欲求が暴発し、あんなド派手な「自爆note」を発表してしまったのがそもそもの発火点だ。

 だから折田氏側にも大きな落ち度がある。

 あれさえなければ今回の斎藤陣営の選挙違反なんて、それこそ闇に埋もれたまま完全犯罪になった可能性も高い。

 そう考えれば、斎藤陣営・折田氏側とも、なんだか痛み分けのような感じがする。

県警はあのドス黒い県議員団を洗え

 あと残る掃除すべき勢力は、百条委員会あたりに集う「ドス黒い」利権集団である県議員団への裁きだ。

 斎藤陣営のちっぽけな選挙違反などとは違い、こっちは本命である。

 斎藤知事の前任に当たる旧・井戸敏三知事時代からの話だ。

 井戸元知事は、5期20年の長きに渡り兵庫で権勢を誇り、当然、その間、巨大な地元利権をマンマンと培っただろう。

 その旧時代からの歴史的な巨大利権と、それに群がった県議員団歴代の罪状が残らず存在する。

 この件に関し、もし捜査が進めばゾロゾロいろんな黒い案件が出てくるだろう。

 仮に県警が本気でここに調べを入れれば、この本命においては地元企業の違法な差配なども絡んでみるみる巨大な組織犯罪の記録が出てくるはずだ。

 これを機に、もし本件が残らず白日の元に晒され法の裁きを受ける、なんて事態になればすごいことになる。

日本全国津々浦々にこの巨大な利権構造がある

 例えば丸尾牧氏(無所属)や、斎藤知事が選挙で勝った翌日に速攻で議員辞職したミエミエの竹内英明氏(元・立民系の県民連合)あたりの「悪行」が、徐々に姿を現してきている。

 竹内氏は「脅迫から家族を守ため」という大義名分で議員辞職した。

 だが明らかに斎藤知事の当選で県の勢力図が変わり、今度は捜査当局の調べが自分の身辺に及びそうだから逃げたのだろう。

 彼ら2人を筆頭に、県議員団の悪行はすでにネット上では広まっている。

 もちろんネット情報は完全には信用できない。だが真実を知るきっかけにはなる。

 ネットのウワサを決して鵜呑みにせず、自分でそれらの情報のウラを取り事実確認すればいい。

(少なくとも私が持っている情報では)例えばあのドス黒い議員団を県警が正式に洗えば、続々といろんな巨悪が飛び出すはずだ。

 しかも日本全国津々浦々で、この兵庫レベルの巨大な利権構造が築かれているのだから事態は深刻である。

広告出稿をエサに地元マスコミを自在に操る地元大企業の悪行ぶり

 具体的には、地元大企業と地元マスコミの関係がまず挙げられる。

 地元マスコミへ大量に広告を出稿し、それと引き換えにマスコミ報道のサジ加減を自社に都合のいいよう操る地元企業団の悪行や、それに群がる県知事、県議員団らとの関係やいかにーー。

 なかには警察利権まで絡み捜査できないケースも当然あるだろうが……これを機に中央政界の政治改革だけじゃなく、こうした地方政界の浄化も進めたいものだ。(まあ無理だろうけどw)

 今後はこっちにも期待しておこう。

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【国政の七不思議】なぜいまだに国民民主党の政党支持率が高いのか?

2024-12-19 07:55:09 | 政治経済
有権者は玉木氏が仕掛けた「出来レース」に付き合わされた

 結論から先にいえば、国民はズル賢いあの国民民主党・玉木雄一郎代表が策を弄した「103万円の壁」戦略に、すっかり洗脳されている。詳しくは後述するが、なんとも「やれやれ」な結果である。

 それが判明したのは、以下の調査結果で、だ。

 YouTube「選挙ドットコムちゃんねる」とJX通信社(米重克洋・代表)が毎月行っている政党・内閣支持率調査の結果が、17日に出たのだ。これは電話とネット・両構えによる調査である。

【最新!政党・内閣支持率調査】国民民主党の勢い止まらず!無党派層の支持傾向にも変化(選挙ドットコム)
https://news.yahoo.co.jp/articles/82d4a5cbdf116271ba87a12e531ec24d5ebfff1a

 それによれば玉木氏が代表を務める国民民主党は、「12月の支持率」でまた大きく支持率を上げた。

 今やこれは、日本における七不思議のひとつだ。明らかに国民は、玉木氏が仕組んだキャッチーな「103万円の壁」なるキーワードに洗脳されている。

 さてこの調査によれば、国民民主の12月の支持率は電話調査では「5.7%上昇」、ネット調査では「8.0%」も上がった。すごい数字だ。

 それにしてもなぜ、いまだに国民は騙されていることに気づかないのか?

 結果から見れば玉木代表は、最初から上辺だけの「出来レース」を仕掛けた。で、うまく得点稼ぎをしただけだ。だが玉木氏のワナに、国民はいまだ気づいていない。

選挙が終わったら途端に玉木氏は「103万の壁」しか言わなくなった

 怪しい兆候は、すでにあの衆院選直後にすぐ起こった。

 選挙で勝利し、まんまと狙い通りキャスティングボートを握った国民・玉木代表は、衆院選で勝ったあと「スーッ」と魔法をかけるかのように「103万の壁」しか言わなくなったのだ。

 だが同党はあの衆院選で、以下の通り、最大の目玉公約のはずだった「消費税5%減税」のほか、市民側に「おトク」なおいしい公約を「無数に」掲げていた。

【国民民主党・政策各論】
https://election2024.new-kokumin.jp/policies/specifics/specifics1/

 なのに玉木代表は選挙に勝って終われば、急に「自民側のダメージ」がいちばん少ない「103万円の壁」しか主張しなくなった。

 つまり(市民側にではなく)自民側に配慮し、おもねって「腰を使った」わけだ。

 ズル賢い(が上手い)玉木代表の情報戦である。

 すなわち「テーブルの上では右手で自民と殴り合うふり」をした。だが、かたや玉木氏の左手は「テーブルの下で自民と握手していた」のである。

 かくて国民民主党は、政府サイドが103万円の壁の引き上げを飲む代わりに、先方から当然の交換条件であるかのようにゾロゾロ出されてきた(市民側が損をする)「106万円の壁」やら「130万円の壁」という不利な条件を持ち出された。

 もともとシナリオ通り、完全に仕組まれていた自民の「逆転勝ち」なのだ。むろん助演賞は、盟友・国民民主党である。

それぞれの「壁」の意味を改めてわかりやすく確認してみよう

 ちなみにそもそも103万円の壁とは、給与収入が年103万円を超えたら自分のバイト代・パート代等に、所得税が課税され始める年収の額を指す。

 つまり学生やフリーターなど家族の扶養に入っている人は、年収103万円を超えると扶養を外れ、親など扶養者の所得税と住民税が増えるのだ。

 また「106万円の壁」とは、社会保険に加入する必要がある年収の目安である。

 現状、従業員数51人以上の企業で週20時間以上、パートなどで働く人は、年収106万円を超えると配偶者の扶養から外れる。

 そして自分で厚生年金保険や健康保険の保険料を負担することになってしまう。この壁が、なんと2026年10月に撤廃されるのだ。

 するとどうなるか?

 賃金の額に関係なく、週に20時間以上働くと厚生年金に加入し、保険料を支払う必要が出てくる。

 また、それまで対象じゃなかった個人事業所に関しても5人以上の従業員がいる場合には、2029年10月から加入の対象になる。

 まあ逆にいえば労働者が「社会保険に加入し、年金や健康保険などの安心な社会保障を受けることができるようになる」ともいえるわけだが……。

 ただし差し引きすれば、当然、国民側の負担は増える。

 一方、このほか130万円の壁とは、従業員が50人以下の企業等で働く人でも、年収が130万円を超えると配偶者の扶養を外れる。

 そして国民年金や国民健康保険の保険料を、自分が負担することになる。もちろん、こちらも国民側の負担が大きくなる。

 どう考えたって、103万円の壁を引き上げて有利になる代わりに、そのぶんこれら後者2つの交換条件を飲むのはデカすぎる。

 そんなことになれば、デメリットがメリットを上回ってしまう。

 簡単に言えば「103万の壁のみ」が改善される代わりに、多くの改悪が押し寄せ国民が返って損をするのだ。

 しかもそれだけじゃない。これを機に、いまや政府・与党は(これも103万円の壁と引き換えであるかのように)防衛財源を確保するための増税を言い始めた。

 内容は法人税が2026年4月から、所得税は2027年1月から増税される案が検討されているのだ。

 ちなみに検討案では法人と個人に関し、それぞれ「防衛特別法人税」、「防衛特別所得税」という名称がついている。

 もしこれが計画通り行われたら、いうまでもなく大変だ。逆に国民にとっては大幅な負担増になる。もう地獄だ。

「103万の壁」の提案で返って政府側の増税意欲に火がついた皮肉

 まったく皮肉な話だが、国民・玉木代表が下手に103万の壁を持ち出したばかりに、まるで「寝た子を起こしたように」それに刺激された増税勢力の政府側が、国民負担を増やす意欲にメラメラと火を燃やしているのだ。

 まさに「3倍返し」である。

 自民・政府側は、もういっそこの機を逃さず畳み掛けて全部「やっちまえ」って感じだ。

 さて、この時点ではもはや、すでに「103万円の壁」のメリットなんてとっくに吹っ飛んでいる。こやつがいくらに引き上げられようが、市民の側は「さらに余計に損をする」ことが確定した。

 まったく国民・玉木氏は、余計なことをしてくれたもんだ。

 なのに国民民主党の12月の政党支持率が上がるなんて……なぜ国民はこんなカンタンな理屈がわからないのか? まさかマゾなのか?

 すべては形だけ繕って「市民側にトクさせますよ」という、国民・玉木氏による「形づくり」のポーズに過ぎないのに……。

 それに引っかかって我々、国民はバカを見たよね、って話だ。

 そもそも今回発表された調査結果からは、あの衆院選挙時にX(旧ツイッター)上で「#国民民主党に騙されるな」というハッシュタグが踊った意味に、いまだにまるで気づかない人が山のようにいることがわかった。

 まったく「やれやれ」である。

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【SNS規制】兵庫県議会がSNS規制を求める「怪しい動き」。それに反対する声を伝える記事も

2024-12-15 21:44:21 | 政治経済
賛否が入り乱れる現状を見る

 まあこういう動きは当然、出るだろうなとは思っていた。

『「辞職しろコノヤロー」知事選めぐり兵庫県議に「SNSで誹謗中傷」 県議会が法整備求め国に意見書提出へ』(関西テレビ「newsランナー」2024年12月13日放送)

 つまりオールドメディアと政治家が結託し、自分たちの「エサ場」を荒らす新興勢力であるSNSを退治しようというわけだ。

 だから先読みし、それに警鐘を鳴らすため、以下の2本の記事を書いたのだ。

「【兵庫発の社会現象】N党・立花氏はしばらくネットから離れるべきか?」(すちゃらかな日常 松岡美樹)
https://blog.goo.ne.jp/matsuoka_miki/e/f6f2a49fdc266d0ff425801dbddac875

「【政府の思うツボ】世界的に大規模なネット規制が始まりつつある」(同上)
https://blog.goo.ne.jp/matsuoka_miki/e/c2a61b841148d24413dc650d600449f0

 かと思えば「ネット民の支持を得よう」という狙いなのか、こういうスポーツ紙の記事もある。

『「どの口が?」 兵庫県議会、選挙中のSNS利用に法整備求める意見書案を可決… 「不信任の検証が先では」批判の声』(中日スポーツ)
https://news.yahoo.co.jp/articles/d4729085377cdd102406e2f9350c5af1a247641d

 上記の記事では(N党・立花氏的な行動を抑止しようとする)「この県議会の動きに、X(旧ツイッター)では賛否が交錯した」とし、「『どの口が?』などと県議会批判の声が多くを占めた」という。

 まぁ、そうだろうねぇ。世の中、いろいろだ。

あのとき朝日新聞記者の反応はこうだった

 ちょうど過去に、このテの動きに絡んで朝日新聞を取材したことがある。

 そのとき私の取材に同行した担当編集者が開口一番、「新聞から見ると(反体制SNSメディアを気取る)こういう動きは『素人衆が何を言うか!』みたいな感じですか?」などと、相手からエキセントリックな反応を引き出そうとする、いかにもトンデモな誘導尋問をしたのだ。

 すると驚いた先方は別の意味でエキセントリックな反応をし、「いや冗談じゃない。そんなことを言ったらどんな反応が返ってくることか」と物凄く警戒していた(笑)。

 つまり「このインタビューに答えると、いったいどんな記事を書かれるんだろう?」と、見るからに危ぶんでいるわけだ。

 いやぁ、あの誘導尋問はさすがに居合わせた私の目から見ても「危ない質問」だったなぁ。

(遠い目)

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