すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【J1首位決戦・2連戦分析】どこからプレスをかけるのか? ~川崎F vs 名古屋

2021-04-30 05:46:45 | サッカー戦術論
高い位置でプレスをかけない戦術の古さ

 変則日程で4月29日に行われた、J1リーグ第22節の首位決戦・2連戦の第一幕。

 マッシモ・フィッカデンティ監督が欠場したショックは、名古屋のメンバーのメンタル面に大きな影を落とした。

 そのせいで十分な力が出せなかったことは否定できない。

 だが、それを差し引いても川崎Fとの戦術の差は明らかにあった。

 それは第2戦となった5月4日の第12節でも顕著だった。

 名古屋はこれまで相手ボールになればミドルサードにリトリートし、4-4-2の守備ブロックを作り堅守を誇っていた。

 だがこの連戦では高いゾーンに踏みとどまることができず、引きすぎて敵のパンチを浴び続けた。これが敗因のひとつだ。

トランジションを意識せよ

 また、もう一点は戦術の古さである。

 名古屋はピンチになると引いて守るだけで、ほかの手立てがない。例えば敵のビルドアップに対しハイプレスを行わない。

 また高いゾーンでボールを失った場合、集団で一気にカウンタープレスを見舞うこともない。

 さらには選手にもっと強い意識づけをし、ポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)を認識させ、速いショートカウンターを打てるようになる必要があるのではないか?

 切り替えの速さは特にマテウスに求められる(彼はムラっ気がある)。

 このあたりがトランジションをめぐる川崎Fとの大きな違いであり、ただ引くだけの名古屋の戦術はやや古色蒼然として見えてしまう。

 この論点はひと昔前の日本代表でも盛んに話題になった、「どこからプレスをかけるのか?」問題である。

ハイプレスを導入してはどうか?

 名古屋はこのさい思い切って、引いて守るだけでなくハイプレスを導入してみたらどうだろうか?

 加えてトランジションをもっと選手にイメージさせ、ひんぱんに速攻を打てるようになるべきだ。

 名古屋は引いて守ることが多いのだから、ボールを奪ってからの切り替えの速さは不可欠だろう。リトリートする以上、絶対にそこを武器にするべきだ。

 こうした問題は前半6分に失点し、なすすべなく負けた第10節のサガン鳥栖戦でもクローズアップされていた。

 シーズン途中でのモードチェンジだけに難しい面もあるが、トライしてみる価値は十分にある。

 まだまだシーズンは長いのだ。

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2021-04-29 20:30:10 | Jリーグ
名古屋のフィッカデンティ監督が「コロナ疑い」で欠場

 この試合、名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督がなんと「コロナ疑い」で欠場し、名古屋はブルー・コンカ・コーチが指揮を執った。この時点ですでに彼らは敗れていたのかもしれない。

 名古屋はフィッカデンティ監督の下でひとつになり、強い求心力を発揮する集団だ。そのチームに監督がいないのではお話にならない。軸を欠いたグループはまったく機能しなかった。

 試合前から名古屋の選手は顔がこわばり、立ち上がりから足に鉛がぶら下がっているかのように動きが重かった。パスを引き出す動きがないし、守備時のカバーリングも遅れた。

 名古屋は試合前からメンタルが崩壊し、すべてにおいて川崎Fを下回っていた。先制され、なすすべなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ状態だった。

 だが首位決戦はまだ終わったわけじゃない。2連戦だ。名古屋はきっちりメンタルを立て直し、次は中4日おいて5月4日にくる第12節の川崎F戦に備える必要がある。落ち込んでいるヒマなどない。

名古屋4-2-3-1、川崎Fは4-1-2-3システム

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、木本、丸山、吉田である。

 セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎が務めた。

 一方、川崎Fのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは右から山根、ジェジエウ、谷口、登里である。

 アンカーにはジョアン・シミッチが入り、右インサイドMFは田中碧。左インサイドMFは旗手が務める。

 3トップは右から家長、レアンドロ・ダミアン、三笘である。

パスワークが乱れる名古屋

 あいにくの雨とあって、試合の立ち上がりは両チームともパスミスが目立つ。特に名古屋はボールの流れが乱れ、きれいに繋がらなかった。

 そんな落ち着かない前半3分に、いきなり川崎Fが先制する。

 まず川崎Fは三笘が左サイドから斜めの縦パスを入れた。これにレアンドロ・ダミアンがポストプレイ。受けた旗手がペナルティエリア中央から右足でシュートを叩き込んだ。

 まるで前半6分に突然ゴールを決められ、0-2であっけなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ展開だ。

 名古屋の選手は手足は動いても、魂がここにない感じ。すっかり浮足立っている。

 このあとずっと川崎Fがポゼッションする展開になった。そのため名古屋は延々、自陣に引いてブロックを組んでいる。いや、というより「押し込まれている」と言ったほうが正解だ。

 続く前半10分。川崎Fの家長が左サイドから糸を引くようなクロスを入れ、レアンドロ・ダミアンが打点の高いヘディングシュートを放つ。またゴール。これで彼らは早くも2点をリードした。

 名古屋はマークが甘く、まったく別のチームになっている。散々だ。

名古屋がやっとロングカウンターを繰り出す

 前半15分、名古屋は待望のロングカウンターを仕掛ける。トップ下の柿谷が川崎Fの最終ライン裏にスルーパスを出す。これにマテウスが走り込んでドリブルしたが、惜しくもボールはゴールラインを割ってしまった。

 名古屋は引いて自陣でボールを奪っても、1本目のパスがなかなか通らない。それだけ川崎Fのプレッシングが利いている。

 そんな川崎Fの3点目は前半23分だった。彼らの右CKからだ。

 キッカーの田中碧が右足でクロスを入れ、ニアでシミッチが後ろにフリック。これにレアンドロ・ダミアンがこの日2点目になるヘディングシュートを決めた。

 名古屋の選手たちは、いまや亡霊のように突っ立っている。魂が抜けたかのようだ。動きがぎこちない。インテンシティが極端に低い。

「川崎Fが強い」というより、名古屋が本領を発揮できていない、というのが正確な表現だろう。それほど彼らは見ていられないデキだった。

名古屋が4-1-2-3にシステム変更する

 前半30分。名古屋は右SBの宮原を引っ込め、同じポジションの成瀬竣平を入れた。同時にワントップの山崎に代えて守備的MFの長澤和輝を投入する。

 これにより米本をアンカー、右インサイドMFを稲垣、左インサイドMFを長澤とする4-1-2-3システムに変えた。守備時は柿谷と稲垣が2トップを組む4-4-2になる。

 だがこの日の名古屋はシステムの問題じゃないのだ。

 彼らはすっかり消極的になっており、守備ブロックを組む位置がいつもより低い。ディフェンディングサードである。そのため川崎Fのパンチを容赦なく浴び続けた。

 名古屋はボールを奪ってからの速いポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)の動きがなく、ボールに対しサポートが欠落している。

 パスの出し手と受け手という1対1の関係しかなく、3人目の動きがない。そのため川崎Fに容易にパスコースを読まれ、守備対応される。打つ手がない。

柿谷が敵GKと1対1になる

 後半9分、そんな名古屋がやっと反撃する。

 彼らは自陣でボールを奪い、右サイドをマテウスがドリブルする。そして敵陣中央から柿谷にスルーパスを出す。柿谷はGKチョン・ソンリョンと1対1になるが、GKが好セーブを見せてゴールを割らせなかった。際どいプレーだった。

 柿谷は強いメンタルで孤軍奮闘、闘っていた。

 このあと名古屋は稲垣がひどいパスミスをし、決定的なピンチを迎える。これまでのシーズンで彼にこんなシーンは一度もなかった。相馬も焦りからか、次第に自己中ドリブルに陥っている。

 後半24分には、そんな相馬が前田直輝と交代を命じられる。

 前田は右WGに入り、代わってマテウスが左WGに回った。このあと前田はスタメンのメンバーにはまるでない、活発な動きをした。この交代がもっと早ければ、と思わされた。

川崎Fが自陣にブロックを作るように

 3点取って後半に入り、川崎Fはゆったり構えて無理せず自陣にブロックを作るようになった。上手に時間を使って試合を殺すうまいゲーム運びだ。

 そのため名古屋はボールが持てるようになったかに見えるが、実は「持たされて」いるのだ。川崎Fの試合巧者ぶりが光っていた。

 そんな川崎Fは後半27分、エースの三笘を引っ込め脇坂泰斗を投入。「お役御免」である。脇坂は左インサイドMFをまかされ、旗手が三笘の代わりに左WGに回った。

 そして大団円の4点目は後半39分だ。脇坂が、途中投入され左前にいた遠野大弥にスルーパスを出す。

 遠野はこれをキープし、角度のない左サイドから左足を強振。ゴール右スミに一直線、きっちりボールを沈めて見せた。見事なファインゴールである。

 続く後半41分には名古屋がマテウスに代え、齋藤学を入れた。アグレッシブな齋藤は沈んだゲームの流れを変えるいい起爆剤になる。もっと早く投入してほしかった。

 こうしてフィッカデンティ監督を欠く名古屋は采配面でも疑問手を指し、あえなくゲームセットになった。川崎Fが大量4点を奪い試合を締めた。レアンドロ・ダミアンは2得点1アシストの活躍である。

 さて、問題は変則日程のため5月4日に行われる同じカードの次の試合だ。川崎Fのホーム、等々力陸上競技場で行われる第12節である。

 この日は試合開始早々の失点で、完全にゲームプランが狂った。

 名古屋はそんなショックから立ち直り、しっかり切り替える必要がある。まだシーズンは先が長い。ひとまず今度来るのはまた同じお相手だ。この日の試合をきっちり分析し、次に備えたい。何度もやられるわけにはいかない。

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【J1天王山】川崎 vs 名古屋・見どころチェック(第22節)

2021-04-29 06:00:15 | Jリーグ
選手のプレイと戦術のキモを一挙紹介

 いよいよ本日15時に、首位・川崎フロンターレ vs 2位・名古屋グランパスによる首位決戦・2連戦の火ぶたが切って落とされる。そこで今回は直前特集として、選手たちのプレイの見どころチェックや戦術の勘どころをご紹介しよう。

◆川崎MF・三笘薫と名古屋MF・相馬勇紀のドリブル対決

 よくお題に上がる2人のドリブルだが、実はタイプがまったくちがう。

 三苫はタッチ数が多く、細かく小突くメッシ風のドリブルだ。一方、相馬のドリブルはマーカーの重心移動を観察し、緩急をつけて相手の態勢を崩し「この瞬間」なら抜ける、という一瞬に爆発的に抜き去る。

 また三苫のドリブルは目前の敵を抜くための戦闘行為だが、相馬のドリブルは抜いたあとにクロスを入れる、シュートを打つ、など目的とビジョンがはっきりしている。

◆名古屋MF・マテウスの曲芸ドリブルは見物だ

 マテウスのドリブルは、お客さんを魅せるためのものでもある。そのため股抜きや、ボールの上に足を置いて引きワザを出すなど一種の曲芸ショーとしても楽しめる。必見だ。

◆川崎DF・山根視来はハーフスペースの魔術師である

 右SBの山根はハーフスペースにポジショニングすることが多い。そしてダイナミックにインナーラップしてニアゾーンに侵入する。で、ラストパスやシュートを放つという攻撃的なプレイが得意だ。彼のプレイは見物である。

◆名古屋MF・稲垣祥のミドルシュートを見逃すな

 守備的なセントラルMFである稲垣は、コーナーキックなどの際にはペナルティエリア外のゴール正面にポジショニングすることが多い。
 
 で、ボールがこぼれてくると、カラダを倒しながらボールが浮かないよう低く抑えた速い弾道のミドルシュートを放つ。枠を捉える確率が非常に高い飛び道具だ。

◆川崎MF・田中碧は中盤のコンダクターである

 4-1-2-3システムの右インサイドMFやアンカーを担当することが多い田中は、川崎フロンターレの心臓部を握る存在だ。

 左右へのボールの振り分けや組み立てのパス、ラストパスなどピッチの中央で全体を交通整理する。彼の存在がなければ交差点は混雑して成り立たない。

◆名古屋CB・丸山祐市と中谷進之介、GKランゲラックは要塞の守護者だ

 堅守を誇る名古屋にあって、2CMFと協力して中央に堅い要塞を作る丸山と中谷、ランゲラックは、最後の砦だ。チーム最後部での体を張ったせめぎあいやカバーリング、マーキングなど、彼らを観察して守備のコクを味わおう。

【戦術と戦術のせめぎ合いを堪能する】

 では戦術的にはどうだろうか? まずフォーメーション(予想)は川崎Fが4-1-2-3、名古屋は4-2-3-1だ。ポゼッション率は6:4でポゼッション・スタイルの川崎Fが上回るだろう。ただしカウンター攻撃が得意な名古屋は「やられている」のではない。

 攻撃的な川崎Fは前がかりになり攻めてくる。するとゾーンを上げた彼らの最終ラインの裏にはたっぷりスペースができる。名古屋はそこを狙う。

 つまり相手にボールを持たせ、川崎Fが強く前へ出てくる力を逆用してカウンターを見舞うのだ。攻めているチームは守備のバランスを自ら崩している。そこで名古屋はボールを奪うと素早く敵の崩れた陣形を突く。

 ボールを保持した川崎Fが攻め切るのが速いか? それとも名古屋の反撃が利くか? そこが見物である。

 三笘薫、レアンドロ・ダミアン、家長昭博を擁する川崎Fの3トップは強烈だ。一気に彼らが名古屋を攻め潰す可能性も大いにある。

 そんな彼らのミスを突き、名古屋がボール奪取してカウンターを決められるか? 今日のゲームの焦点はそこにある。

川崎のハイプレスを警戒せよ

 また川崎Fはゲームの立ち上がりにハイプレスをかけ、名古屋のビルドアップを壊しにくるかもしれない。ハイプレスにより前でボールを刈り取り、一気に殲滅する狙いだ。

 ならば名古屋はそれに構うのでなく、ディフェンディングサードで細かくつながず、いったんロングボールを入れて敵のゾーンを押し下げたい。

 また川崎Fは攻めにかかってアタッキングサードでボールを失ったときも、リトリートせず「その場で」カウンタープレスをかけてボールを即時奪回しようとする。

 これにより高い位置でボールを奪えれば、速いショートカウンターのチャンスなのだ。

 では名古屋はどうすればいいか? こんなとき、下手にバックパスに逃げたりするのは下策である。敵が構える刀の前に首を晒すようなものだ。

 ならば名古屋は少ないタッチ数でピッチを斜めに横切る放射状のロングボールを使い、敵のプレスを回避しながらボールを素早くサイドに振りたい。

 もしそれが間に合わないなら、大きくクリアして敵のゾーンを下げさせる。で、陣地を回復してやり直しだ。ディフェンディングサードではセーフティ・ファーストがセオリーである。

川崎Fのポゼッションが生きるか?

 まとめるとゲームの焦点のひとつは、名古屋の緻密なビルドアップからの攻撃が決まるか? それとも川崎Fがハイプレスでその組み立てを破壊しカウンターを見舞うのか? だ。

 またカウンターだけでなく、もちろん川崎Fは丁寧なビルドアップからショートパスとドリブルでポゼッションし、きっちり組み立てて攻めることもできる。この時間帯が長くなれば名古屋はガマンの時になる。

 もっとも名古屋はミドルサードやディフェンディングサードにリトリートし、4-4-2のブロックを作って組織的守備をすることに慣れている。繰り返しになるがこのとき名古屋は「やられている」ように見えて、実は相手にボールを持たせてカウンターのチャンスをうかがっている。

 ならば「個の力」が強い川崎Fとしては完全に攻め切り、シュートで終わることが肝心だ。こうしてプレイをいったん切れば、名古屋の速いカウンターを食らわずにすむ。

 いずれにしろ、今日の試合は狸と狐の化かし合いだ。2連戦のうち1戦目を先勝すればグンと有利になる。ゆえに双方、総力戦で来ることはまちがいない。

 川崎Fの鬼木達監督、名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督による選手交代を使ったゲームマネージメントも含め、見どころ満載。極上のエンターテインメントになりそうだ。

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【J1リーグ】サガン鳥栖が7億円の赤字で大変だ

2021-04-28 19:39:12 | Jリーグ
育成クラブへの転換を図る

 サガン鳥栖が7億円の赤字で大変だ。

 彼らのサッカーには一目惚れしたので、寄付でもしようかな?(まじめな話)

「かつて元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスなどを獲得した大型補強路線から、アカデミー出身の若手を数多く起用する育成クラブへと大きく舵を切った」

 これは大正解だと思う。

「今季は19歳MF松岡大起や17歳DF中野伸哉など、若手の成長もあり、ここまでリーグ3位につける健闘を見せている」

 そうそう。若くてイキのいい選手がたくさんいる。

 可変システムでチームのスタイルは変則的かつマニアックだけど、非常にアグレッシブで魅力的なクラブだ。

 FWの林大地や酒井宣福がとてもエネルギッシュですばらしいし、「第二のリベロ」みたいなプレーエリアが広いGKパク・イルギュにも目を見張る。

 実はGKパクには横浜F・マリノス時代に一目見て、ガツンと後頭部をやられた。

 あとはMFにも樋口雄太や仙頭啓矢など渋いところが揃ってる。

 機会があればぜひみなさんも一度観てください。一目惚れすること請け合いです。

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【J1首位決戦】矛と盾はどちらが堅いか? ~第22節 名古屋 vs 川崎プレビュー

2021-04-27 21:22:56 | Jリーグ
対照的なスタイルの戦いだ

 今季J1の首位を争う天王山は、4月29日と5月4日に行われる。

 川崎フロンターレと名古屋グランパスによる異例の2連戦となった。

 あらゆる点で対照的なチーム同士の対戦である。

 首位の川崎Fは遅攻のチームだ。ショートパスとドリブルでポゼッション率を高めながら、ひたすら押してくる。攻撃的だ。

 一方、2位の名古屋は速攻、カウンターのチームである。相手ボールになったら堅い4-4-2の守備ブロックを作り、敵をわざと引きつけてバランスを崩させ反攻を仕掛ける。堅い守備が特徴である。

 だがひとたびボールを持てば、美しいビルドアップからのポゼッション・サッカーもできる。

 両者の予想布陣は以下の通りだ。

【川崎フロンターレ】4-1-2-3

FW 三笘薫 レアンドロ・ダミアン 家長昭博
MF 脇坂泰斗 田中碧
MF ジョアン・シミッチ
DF 登里享平 谷口彰悟 ジェジエウ 山根視来
GK チョン・ソンリョン

【名古屋グランパス】4-2-3-1

FW 山崎凌吾
MF 相馬勇紀 柿谷曜一朗 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 宮原和也
GK ランゲラック

初戦がカギを握る緊迫の2連戦

 異例の2連戦になったこの首位決戦、すべてのカギを握るのは初戦だろう。

 両者の勝ち点差は「3」だが、川崎Fの得失点差が22もあるため、名古屋はたとえ1勝しても(常識的には)順位は変わらない。

 とすれば川崎Fとしては、もし1戦目に勝てば十分なデキだ。2戦目は負けないように戦えばいい。

 一方、得失点差で離されている2位の名古屋としては1勝1分けでもいいが、できれば2連勝して完全にひっくり返したい。では、川崎Fを相手にそれが可能か? この得失点差は予想以上に意味が大きい。

点の取り合いになれば川崎Fが有利だ

 川崎Fは守備の堅い名古屋とちがい、普通に失点する。とすれば守備とくらべ相対的に攻撃力のほうが落ちる名古屋とぴったり噛み合う。ゲームとしてはおもしろい。

 もし点の取り合いになれば川崎Fが有利だ。逆に0-0のまま進むようなジリジリする試合展開になれば名古屋が本領発揮する。

 川崎Fは多彩なフィニッシュを誇るチームだが、特にGKと最終ラインとの間に入れるグラウンダーの速いクロスには要注意だ。強力な破壊力を誇る。

 名古屋の堅陣に対し川崎Fが何点取れるか? というゲームになるが、川崎Fの戦闘力を考えれば十分おつりがくるだろう。

 一方、名古屋としては、川崎Fのショートパスとドリブルをどう抑えるか? がポイントになる。激しいプレッシングを主体にしたインテンシティの高い守備で無失点に抑え、1点を争う展開にしたい。

名古屋はボールを奪ったらサイドチェンジをかませ

 チームとして長くボールを保持しようとするポゼッション・スタイルの川崎Fは、それだけカウンターを受ける可能性が高い。自分たちがボールを持ってポゼッションしているのだから当たり前だ。

 こうしたスタイルに対し、有効なのが名古屋の組織守備とプレッシングだ。つまりチームとチームの噛み合わせがよく、観ている人にとってはスムーズな試合展開が期待できる。

 また川崎Fはショートパスを多用するため選手と選手が近づき、選手間の距離を縮めてボールをつなごうとする。すなわち「小さいサッカー」だ。

 つまりそれだけボールの周辺に選手の「偏り」ができるのが特徴である。

 ならば名古屋はボールを失ったら、素早いネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)から複数の選手がプレスをかけ、ボールを奪ったら一発、大きなサイドチェンジをかますのがコツだ。

 こうすればさっきまでボールに群がっていた川崎Fの3~4人の選手を、まとめて置き去りにできる。そのぶんカウンター攻撃が有効になる。

 ボールを奪ったら、名古屋の特徴であるピッチを斜めに横切る放射状の長いパスを使って大きい展開をし、川崎Fのプレスを回避しながらカウンターをかけたい。

両チームのキーマンはだれだ?

 川崎Fのキーマンはズバリ、三笘とレアンドロ・ダミアン、家長の3トップだ。彼ら3人の「矛」は名古屋の堅陣を粉砕できるのか?

 一方の名古屋はマテウスと相馬という両翼のドリブルに加え、守備的なCMFの稲垣と米本、およびCBの丸山と中谷で作る中央の四角い堅い要塞、つまり「盾」である。

 さて、矛と盾はどっちが堅いのか?

 ついに『韓非子』の故事に結論が出る。

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【東京五輪】なぜ私は「OA枠=大迫」を否定するのか?

2021-04-27 06:00:00 | サッカー日本代表
10年後の果実を取りたい

 私は記事『大迫をOA枠で選ぶのには反対だ』で、大迫否定論を展開した。なぜか?

 むろん大迫がダメだ、という意味じゃない。ひとことで言えば「もっと未来で大きな果実を収穫したい」ということだ。

 たとえば大迫の近況を見てみよう。ドイツ1部で残留争いに四苦八苦しているブレーメンに所属する大迫は、そんなチームでレギュラーじゃない。

 24日にはスタメン落ちし、1-3で負けていたウニオン・ベルリン戦に後半43分から途中出場し、結果を出せなかった(まあ当然だが)。

 つまり所属チームではまったく認められてないわけだ。

 ところがそんな選手が日本代表に来れば、「神様、仏様、大迫様」と有難がられる。

 そんな現状ってどうなんだ? と思う。

 もちろん代表で大迫を使えば一定の結果は出せるだろうし、「目の前のちっぽけなイチゴ」なら収穫できるだろう。だがいったい、それで何になるんだ? って話である。

 大迫を使う限り、日本代表は結局、その程度のレベルで終わってしまう。

 それくらいなら若くて才能のある上田綺世(鹿島アントラーズ)や前田大然(横浜F・マリノス)、林大地(サガン鳥栖)らに今から投資し、経験を積ませて「未来に大輪の花」を収穫したい、ということだ。

 で、OAは鎌田大地と遠藤航、吉田麻也を選ぶ。そして鎌田をトップ下にして久保は右SH、左SHは相馬勇紀にする。どうです? 強そうでしょう?

 久保より鎌田のほうが得点力があるし、なにより鎌田は攻めだけでなく守備にも開眼しつつある。いまいちばんおいしい選手である。

 また相馬も攻撃はもちろんプレスバックして守備も得意だし、なにより闘える選手だ。鎌田も久保よりは闘える。

 キーワードは攻撃と守備が両方でき、相手に激しくカラダをぶつけてアグレッシブに闘える選手を選ぶということだ。

 大迫で東京五輪に金メダルを、とか言ってる人がたくさんいるが、金って「正気ですか?」という感じ(てか五輪は中止になるしねw)。

 それなら未来に投資したいなぁ、と思う。

 そのほうが夢があるでしょう?

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【J1リーグ】横浜FMが縦横無尽に暴れた ~第11節 横浜FM 5-0 横浜FC

2021-04-26 08:35:26 | Jリーグ
崩壊した横浜FC

 横浜F・マリノスのていねいなビルドアップからの攻撃に対し、横浜FCはミドルプレスで対抗した。だがすぐにボールを持ち出され、横浜FMの攻撃を受ける。

 かなり力が違う印象だ。

 このため横浜FCは失点がかさみ、2失点して以降は相手ボールの際はディフェンディングサードまでリトリートし完全に自陣に引きこもった。

 そのため横浜FMはマイボールになると、常にハーフウェイライン付近まで最終ラインを上げて攻撃した。

 まるでコーナーに追い詰められたボクサーがパンチのラッシュを食らうかのよう。かくて横浜FCは計5失点。勉強代は高くついた。

偽SB化する横浜FMの両SBは攻撃的でおもしろい

 横浜FMのフォーメーションは4-2-1-3だ。スタメンはGKが高丘。最終ラインは右から小池龍太、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン。

 CBの畠中は非常にフィードが正確でセンスがある。

 かたやセントラルMFは喜田拓也と扇原貴宏。トップ下はマルコス・ジュニオール。3トップは右からエウベル、オナイウ阿道、前田大然だ。

 さて横浜FMのふるまいを見ておもしろかったのは、両SBの動きである。

 例えば右SBの小池は攻撃的でかなり自由に動く。インナーラップしてニアゾーンに入ってきたり、変化に富んでいる。

 かと思えば偽SB化して一列上がって絞り、敵のカウンターに備えたりもする。

 かたや左SBのティーラトンも、チャンスになればゴール前に侵入してくるかと思えば、逆サイドの小池同様、偽SBにもなる。

 このへんは、かのグアルディオラの「発明」に準拠した動きといえる。

PKで「5ゴール劇場」の幕が開く

 ゲームが動いたのは前半29分だった。横浜FMのオナイウが倒されてPKが執行された。キッカーのマルコス・ジュニオールはGK六反勇治の逆を突き、ゴール右スミにきれいに決めた。

 2点目は横浜FMのコーナーキックからだった。キッカーのマルコス・ジュニオールが右足でクロスを入れると、オナイウがヘディングシュートを打つ。

 これがGKに弾かれ、こぼれたところを、エウベルが拾ってゴール前にパス。反応したオナイウがシュートを決めた。

 3点目は後半23分だ。このときは前がかりになった横浜FCのライン裏のスペースが使われた。

 右からマルコス・ジュニオールが、グラウンダーのきれいなパスをライン裏に出す。これに対しオナイウがペナルティエリア中央へ走り込み、GKをかわしてゴール右スミに冷静に決めた。

何が横浜FCを崩壊させたのか?

 後半26分の4点目は横浜FMが左サイドでパス交換して作り、扇原がペナルティエリア左からグラウンダーのパスをゴール前に入れる。反応した前田が倒れながらシュートを沈めた。

 最後の5点目は後半33分である。エウベルが左から中央へグラウンダーのパスを入れた。これを交代出場していたブラジル人のレオ・セアラが拾い、ペナルティエリア中央からゴール左スミに軽く決めた。

 それにしても5失点した横浜FCは前途多難だ。

 前シーズンの最終節、下平監督が指揮する横浜FCの試合を見て「いいチームだな」と思ったのだが……何がマイナスに作用したのだろうか? なんとか立て直してほしいものである。

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【J1リーグ】鳥栖が豪快な2ゴールで2連勝する ~第11節 FC東京 1-2 鳥栖

2021-04-25 19:22:04 | Jリーグ
FC東京、懸命な猛追も及ばず

 J1第11節。アウェイの鳥栖は爆発的な2ゴールで先制し、前半は彼らの独壇場で終わった。

 鳥栖の攻撃的MFの仙頭啓矢が要所で一列下り、アンカーの松岡大起と2CMFのような形を組む変則システムは守備力が高い。FC東京にまったく付け入るスキを与えない。

 だがハーフタイムをはさみ、後半からシステムを4-1-2-3から4-4-2に変えたFC東京が1点を返して激しく反撃する。一進一退の展開になった。

 しかし猛追は及ばず。交代出場したレアンドロの惜しいシュートを最後に、FC東京の逆襲は潰えてタイムアップだ。かくて鳥栖の2連勝で激闘に幕が下りた。

 鳥栖の攻撃的MF、樋口雄太は1ゴール1アシストの大活躍だ。FWの酒井宣福も2試合連続となる完璧なゴールを叩き込んだ。

 終盤、選手交代でDFを増やし、守備を固めた鳥栖・金明輝監督のうまい試合運びが光った。

鳥栖は3-1-4-2と4-4-2システムを使い分ける

 鳥栖のフォーメーションは攻撃時3-1-4-2、守備時4-4-2だ。スタメンはGKが朴一圭(パク イルギュ)。最終ラインは右からファン・ソッコ、エドゥアルド、中野伸哉。

 アンカーは松岡大起、2列目は右から飯野七聖、樋口雄太、仙頭啓矢、小屋松知哉。2トップは林大地と酒井宣福だ。

 攻撃時は両サイドがウイングハーフ的に振る舞い、2トップの背後の中央のMFは樋口が攻撃的に、かたや仙頭は後ろの面倒も見てやや守備的にプレイする。

 一方、FC東京のフォーメーションは4-1-2-3である。GKは波多野豪。最終ラインは右から岡崎慎、渡辺剛、ジョアン・オマリ、小川諒也。

 アンカーは森重真人。右インサイドMFは安部柊斗、左インサイドMFは東慶悟。3トップは右から永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトンだ。

鳥栖のFW酒井が完璧な先制弾

 立ち上がりはFC東京が支配したが、前半18分に鳥栖が反転攻勢する。

 樋口が右サイドから、左足でドンピシャのダイアゴナルな強いクロスを入れる。これに敵DFと競り合いながらFWの酒井が頭で合わせ、完璧なヘディングシュートを見舞う。

 鳥栖の先制弾だ。

 酒井がうまくカラダを入れた。彼はフィジカルに優れ競り合いに強い。頼もしいアタッカーである。

 鳥栖のビルドアップは攻撃的な左CBの中野伸哉が、幅を取り高く前へ張り出す。これでオフェンシブなMFが4人から5人へと変化し、2バックの状態で組み上げる変則的なスタイルだ。

 チームにはカラダをぶつけてハードワークできる選手がそろっており、球際のデュエルが激しく競り合いに強い。

鳥栖のMF樋口がファインゴールを決め2点目

 前半33分。一列下りた鳥栖の仙頭が、フィールド中央のライン間にいる樋口にグラウンダーのパスを出す。

 これをゾーンのギャップで受けた樋口は、ダイアゴナルな強くて速いグラウンダーのスルーパスをペナルティエリアに侵入した酒井に送る。だが酒井はマーカーともつれて倒れた。

 このときマークについたFC東京のCB渡辺が、右足で酒井の左足を小突いて倒したように見えた。だが笛は鳴らない。

 そして34分、鳥栖の2点目が入った。

 まず鳥栖の酒井および林と、FC東京のアンカー森重が競り合う。で、鳥栖がボールを奪取した。このとき仙頭がボールを松岡に預け、松岡はダイレクトで前縦にいた樋口にパスする。

 樋口はそのままひらりとターンしてドリブルし、ペナルティエリア手前右からゴール左スミへと豪快に突き刺す。ファインゴールだ。

 このときFC東京は、左インサイドハーフの東が樋口を追走しただけ。だれも強く競りに行かなかった。左SBの小川も絞りが遅れた。またCBのジョアン・オマリは、ゴール前の敵選手につられて下がり寄せに行けなかった。

FC東京はプレスが弱く競り合わない

 FC東京はマークが甘く、競り合わない。そのため鳥栖の選手はボールを持つと、ほとんどノープレッシャーで自由自在にパスをつないだ。

 また2点先行している彼らは、FC東京ボールになれば念には念をとディフェンディングサードまでリトリートして4-4-2の強固なブロックを敷く。

 一方のFC東京は、ビルドアップ時に右SBの岡崎が高い位置取りをする。で、2CBと左SBが右にスライドして3バックを形成する。だがビルドアップ後にうまく前でボールをつなげずフン詰まってしまう。

後半、FC東京が激変した

 そんなFC東京は後半の頭から、右SBの岡崎に代えMFの内田宅哉を入れた。同時にCBの渡辺をひっこめ、MFの青木拓矢を投入する。

 FC東京はこの交代で内田を右SBに、またアンカーの森重をCBにして4-4-2に変えた。そしてアダイウトンを左SHにし、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑の2トップにした。

 ハーフタイムにFC東京の選手たちは、長谷川健太監督からネジを巻かれたのだろう。彼らは前半の動きとはぜんぜんちがい活発だ。

 そして後半8分。FC東京は小川がキッカーを務めた左CKから、森重が競りながらヘディングシュート。ボールはゴールの左ポストを直撃して入った。

 これで1-2だ。追撃である。

FW林大地が猛然とプレスバック!

 続く後半9分。FC東京は森重が鳥栖ボールを奪い、カウンター攻撃を見舞う。森重は前縦にいた永井へ浮き球のパス。永井はこれをヘディングで右サイドのディエゴ・オリヴェイラへ。

 オリヴェイラは鳥栖陣内をドリブルで駆けるが、なんとこれに鳥栖のFW林大地が激しく並走する。FWの位置から自陣ゴール前まで戻り切った林は、最後に一発、強烈なタックルをかます。

 そのためたまらずオリヴェイラはシュートをバーの上へはずした。

 自ゴール前まで全力疾走する林の熱いプレスバックだ。こんな壮絶な守備をするフォワードは見たことがない。

FC東京が激しくハイプレスをかけ始める

 だがFC東京はディエゴ・オリヴェイラのシュートで勢いづき、ボールを保持してポゼッションする時間が長くなった。左SB小川諒也がオーバーラップして積極的にシュートを放つ。いい選手だ。

 これに対し鳥栖はピッチを斜めに横切る放射状の長いサイドチェンジを入れるなど、大きい展開をしている。

 FC東京も負けじと、前半とは打って変わって激しく競るようになる。彼らは永井を中心に強くハイプレスをかけるようになった。FC東京のほうが「個の強さ」があり、それに対し鳥栖が組織力で対抗する構図だ。

 いまや双方たがいにポゼッションし合い、どちらが勝つのかまったくわからない展開になった。劇的な死闘である。

鳥栖が名古屋に勝ったのはフロックじゃない

 後半38分、鳥栖はFWの林に代えてDFの田代を入れ、3バックから4バックに変える。守備を固めて試合を終わらせる作戦だ。

 後半46分、途中出場したFC東京のレアンドロが、鳥栖DFの前で左に切り返して強烈なシュートを見舞う。だがこれを鳥栖のGK朴一圭は、ジャンプして左手1本で弾いた。ファインセーブである。

 このシーンがついに幕切れとなり、終わりを告げるレフェリーの笛が静かに鳴った。

 これで鳥栖は2連勝。7勝2分3敗で堂々の3位である。前節、鉄壁の守備を誇る名古屋グランパスにリーグで唯一、土をつけたのはフロックじゃない。

 自ゴール前まで自陣を縦に走り切り、壮絶なプレスバックを見せたFW林大地の熱い姿が今も頭から離れない。

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【J1リーグ】柏のハイプレスが冴え渡る ~第11節 柏 5-1 徳島

2021-04-25 07:00:00 | Jリーグ
徳島はビルドアップを壊された

 ビルドアップに迷いがある徳島ヴォルティスの最終ラインに対し、柏レイソルが容赦なくハイプレスをかけてボールを刈り取った。

 徳島はダニエル・ポヤトス監督が就任する3節前までは、ハイライン・ハイプレスでいいサッカーをしていたが……。新監督はどんなサッカーを志向しているのか、よく見えない。

 試合の途中で徳島の左SBジエゴがベンチの監督に何か言っていた。もしかしたら監督とのコミュニケーションがうまく行ってないのだろうか? 徳島が心配だ。

柏は日本代表の江坂任に注目だ

 徳島のフォーメーションは4-2-3-1である。スタメンはGKが上福元。最終ラインは右から岸本、鈴木大誠、福岡、ジエゴ。

 セントラルMFは岩尾と藤田譲瑠チマ。2列目は右から杉森、宮代、藤原。ワントップは垣田だ。

 一方、柏のフォーメーションは3-4-2-1。この日も1ゴールを上げた、日本代表に選ばれている江坂任が注目の選手だ。関係ないが柏の選手はイケメンが多い。

徳島のバックパスをプレスが襲う

 ボールを保持した徳島の中盤はプレスを受けると、こわがってすぐバックパスしてしまう。ボールを下げて最終ラインで回そうとする。これに柏が、待ってましたとばかりに狙いのハイプレスをかける。飛んで火にいる夏の虫だ。

 この展開がえんえんと90分間続いた。

 その徳島のポゼッション率はなんと66%だ。ポゼッション率がそれだけあれば、ふつう勝っていそうなものだが。要はいかに徳島は最終ラインで意味もなくムダにボールを持たされていたか? という結果である。

 一方、柏は中を締めた守備が非常にタイトですばらしく、万一、徳島にボールを渡してもまったく危なげない。特にセントラルMFの仲間が守備に非常に効いている。いい選手だ。

 チーム全体のゲームモデルといい、選手個々の質といい、さすが名将ネルシーニョが丹精込めて作り上げたチームだけのことはある。そんな彼らが12位にいるというのは不思議だ。開幕ダッシュに失敗したからだが、彼らならいまからでも遅くない。勝負はこれからだ。

徳島はロングボールで敵を下げさせるべき

 ではそんな柏に対し、徳島はどうプレイすべきだったのか? 徳島は最終ラインでプレスを受けたら、例えばいったんロングボールを入れて相手のゾーンを下げさせるなどの対策を取るべきだった。

 にもかかわらず真っ正直にバックパスしてはプレスを受けるのでは、敵が刀を構えるところに首を差し出すようなものである。これではどんなチームでも勝てないだろう。

 あるいは背後にマークがついていても、例えばその選手の足元にボールを当ててそれをダイレクトで落とす、そしてボールをサイドに開く、などのトライもすべきだった。とにかくボールを動かすことだ。

 にもかかわらず、この日のように後ろ向きのパスばかりではどうしようもない。

 一時期、Jリーグではバックパスが疫病のように流行ったが、いまではすっかり収まっている。つまりJ2から昇格したばかりの徳島は、いわば時代に遅れているのだ。このやっかいなバックパス癖から脱出する必要がある。

 万一、このバックパスが新監督の指示なのだとしたら……問題を早期に除去すべきだろう。

江坂と呉屋が光った柏の1点目

 そんなこの日の展開が象徴的だったのは、柏の1点目のゴールだった。あの得点劇にこの試合のエッセンスがすべて凝縮されている。

 まず徳島のビルドアップに対し、柏が激しくプレスをかけて押し上げてきた。

 そして江坂がペナルティエリア付近で徳島のパスを巧妙にカットし、左へパス。それに呼応した呉屋がエネルギッシュに左足を振り抜き見事にシュートを決めた。

 こんなふうに徳島は柏のプレッシングを受けながら、よりによって最大の危険地帯である最終ラインでボールを無理やり回そうとした。

 5-1の敗戦はその結果だ。

 なにごとも経験である。徳島はこの試合をよく分析し、ぜひ今後に生かしてほしい。

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【J1リーグ】名古屋のいいところしかないゲームだった ~第11節 名古屋 2-0 G大阪

2021-04-23 22:04:03 | Jリーグ
ついに首位と勝ち点3差に

 完勝だった。

 ガンバ大阪は「枠内シュート」すら1本も打たせてもらえなかった。

 一方、名古屋グランパスのMF相馬勇紀は、1ゴール1アシストと大爆発。先制点を取ったFWの山崎凌吾は今季3点目のゴールである。

 この日、名古屋のポゼッション率はなんと39%。敵を引きつけて敵陣にスペースを作り、相手の態勢を崩させてからカウンターを見舞うゲームモデルが光っている。

 これでリーグ2位の名古屋は9勝2分1敗で勝ち点29とし、首位・川崎フロンターレに勝ち点3差と迫った。次は4月29日と5月4日にその川崎Fとの2連戦を迎える。天王山だ。ついにトップを射程に捉えた。

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から成瀬、木本、丸山、吉田。セントラルMFは米本と稲垣。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎だ。

またマテウスがトランジションの悪さを露呈するが……

 序盤は両チーム、ロングボールの蹴り合いになった。そんな落ち着かない展開のなか、前半10分。名古屋は左SHの相馬が、ドリブルから枠内シュートを放つがGK東口がセーブ。

 16分にもマテウスが右からシュートを撃ち、これはガンバDFに当たりあわやオウンゴールだったがGK東口が収めた。

 そんななか、マテウスがまた悪いクセを出す。

 20分、ガンバのパスミスから名古屋ボールになる。絶好の速いショートカウンターのチャンスだった。だが肝心のマテウスがのんびり歩いて攻撃をスローダウンさせてしまい、せっかくのチャンスがフイになる。トランジション(切り替え)の悪さを露呈した。

 マテウスは序盤に接触プレイを受け、イライラが続きメンタルが落ち着かない感じだった。彼はいつもこうしてメンタルがトランジションに影響する。非常に攻撃力のある選手だが、ブラジル仕込みのムラっ気なメンタルがネックだ。

山崎が氷のように冷静な先制ゴール

 だがそんなもやもやを吹き飛ばしたのが前半29分の先制点だった。

 左サイドを相馬がドリブルし、最後のひと突きでマーカーをかわしクロスを入れた。これをファーにふくらんだFWの山崎凌吾が胸トラップし、落ち着いてきっちり左足で決めた。完璧なゴールだった。

 相馬のドリブルは川崎フロンターレ・三笘薫の「日本人が大好きな」チマチマこねるドリブルとは違い、爆発的な推進力がある。

 三笘のドリブルはとりあえず目の前の敵を抜くためのものだが、相馬のドリブルはクロスを入れるため、シュートをするため、という「次のプレイ」がハッキリしている。そんな特徴がよく出た好アシストだった。

相馬のよさが炸裂した2点目

 そんな相馬がこの日のハイライトを演出した。

 後半10分。敵のライン裏にたっぷりできたスペースに、左SBの吉田が強いグラウンダーのパスを入れ、相馬を走り込ませる。

 受けた相馬はドリブルでペナルティーエリアまでボールを持ち込んだ。そして左足で切り返しマーカーをかわすと、右足でシュート一閃。きれいにゴール右スミへ突き刺した。

 オープンスペースに爆発的な勢いで走り込んだ相馬のすばらしいオフ・ザ・ボールの動きが光った。彼は東京五輪スタメン奪取に向け、猛烈なアピールになっただろう。

カウンター攻撃を見据えた鉄壁のブロック

 一方、チーム全体の動きに目をやると、名古屋はボールを失えば例によってスルスルとミドルサードまでリトリートし、4-4-2の鉄壁のブロックを敷く。

 この状態で、例えばこの日は前半44分から47分までガンバがたっぷりボールをキープし続けた。だがまったくのノーチャンス。最後は名古屋が右サイドでボールを奪うと、マテウスがワンツーで抜け出したちまちチャンスを作った。

 堅い守備を生かし引き気味でブロックを作る。これにより敵をわざと前がかりにさせてバランスを崩させ、カウンター攻撃のチャンスを狙う。そんな名古屋のゲームモデルが光った。

 その直後にはガンバのCK崩れからのこぼれ球に反応した名古屋のCMF稲垣祥が、ペナルティエリアの外から低く抑えられた速い弾道のミドルシュートを見舞う。

 わずかにそれたが、稲垣のミドルは本当に得点確率が高い。

 かたや稲垣と2CMFを組む相棒の米本は、中央でのボール奪取から左サイドの相馬に向けダイアゴナルな長い放射状のパスを繰り出す。名古屋名物の「大きいサッカー」だ。

「リトリート劇場」発動

 笑ったのは2点目を奪い2—0にした後半10分以降である。これ以後、名古屋はガンバのボールになるとご丁寧にディフェンディングサードまで引いてブロックを作る余裕の「リトリート劇場」を展開した。

 まるでイタリアにいるみたいだ。

 ボールを失うたび名古屋が完全に自陣に引くので、ガンバ陣内には無人のスペースがたっぷりある。

 そのためガンバGKの東口はなんと1人でハーフウェイライン付近まで上がってきて、DF2人とともに「3バック」を作りビルドアップしている。GKのあんなシーンは初めて見た。

最後は5-3-2に変え守り切る

 そして試合終盤になると、今度は名古屋の指揮官の出番だ。「マッシモ・フィッカデンティ劇場」である。

 まずは後半32分に攻撃の要である柿谷に代え、守備的なCMFの長澤和輝を投入。米本をアンカーにした3センター含みの4-1-4-1にシステムを変えた。名古屋の勝ちパターンである。

 しかもそれだけじゃない。この日はさらに後半36分、攻撃の駒マテウスに代えてCBの中谷進之介を入れて3CBを形成し、システムをなんと5-3-2に変えたのだ。

 そのためガンバ陣内には無人のスペースがたっぷりできた。途中投入で2トップの一角に入った齋藤学がその前のスペースでガンガンプレスをかけ、ガンバのボールを1人で追いかけ回して猛ダッシュを繰り返す。

 まあ走るわ、走るわ。しかも彼はなんとボールを奪取し、後半51分にはドリブルからトウキックのおもしろいシュートまで放って見せた。

齋藤学のフォア・ザ・チーム

 チームはすでに守備的なモードチェンジをしている。ゆえに2トップがプレッシングし、少しでも敵の攻撃を緩和するのは当然だ。

 だがそれだけでなく攻撃の駒である齋藤学の頭には、おそらく首位・川崎Fに遠く離されて10点近くも差がある得失点差がよぎっていたのではないか?

「ここで俺が点を取れば、得失点差が少しでも縮まる」

 そんなフォア・ザ・チームな熱いメンタルがあの猛ダッシュを生んだのだ。この名古屋のチーム一丸となった一体感はすごい。

 さて終わってみれば、名古屋は10試合目のクリーンシートだ。

 相馬は29回もスプリントし、米本と稲垣の2セントラルMFは13キロ近く走っている。まったく名古屋のいいところしかないゲームだった。

 さあ、あとはゴールデンウイークに迎える首位・川崎Fとの黄金の2連戦だ。

 ぶちかまそう。

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【東京五輪】大迫をOA枠で選ぶのには反対だ

2021-04-20 08:11:39 | サッカー日本代表
FWは上田と前田、林が見たい

 東京五輪のオーバーエイジ(OA)枠では、巷間、当然のように「大迫、遠藤航、吉田」という3人の名前が挙がっている。だが、ちょっと待ってくれと言いたい。

 遠藤航と吉田の選出には異存はないが、大迫に関しては異論がある。いや、「大迫がダメだ」というんじゃない。「大迫以外に見たいFWの選手がいる」ということだ。

 それは上田綺世(鹿島アントラーズ)と前田大然(横浜F・マリノス)、林大地(サガン鳥栖)の3人である。このフレッシュな3人が入れ替わりで暴れるところをぜひ見たい。

 上田は秀逸なオフ・ザ・ボールの動きとポストプレイ、裏抜けが武器だ。一方の前田はスピードとスプリント、プレッシングに優れている。

林大地は非常にいい選手だ

 残る林大地は知らない人もいるかもしれないが、個人的にはこの2ヵ月で急上昇してきた選手だ。

 今年3月29日にU-24アルゼンチン代表と対戦し、CB瀬古歩夢からの絶妙なロングボールをゴールして見せた選手である。

 今年4月17日に行われたJ1第10節。鳥栖が2-1で勝ったこの名古屋との試合で、林のプレイをじっくり見た。非常にいい選手だった。

 この試合、彼は鉄壁の無失点守備を誇る名古屋から、今季初めてゴール(先制点)を決めた選手である。(名古屋は1失点のみしていたがオウンゴール)

 鳥栖には、守備の堅い上位・名古屋との対戦とあって緊張感が高まっていた。

 そんな固い雰囲気を木っ端みじんに吹き飛ばしたのが、林の劇的な先制点だった。この1点で鳥栖の選手は「行ける!」と一気に士気が上がった。

 しかもそのゴールは左サイドからダイレクトでマイナスに折り返されてきた速いクロスを、ヘッドで見事に決めた難度の高いものだった。

 あまりにもボールと彼の動きが速く、一瞬、何が起こったのかわからなかった。すばらしいゴールだった。

激しいプレッシングも持ち味だ

 そして林は点を取るだけでなく、黒子の仕事も黙々とこなした。この日は2トップを組んだ酒井宣福と連動し、最前線から激しくプレッシングした。

 名古屋はいつも緻密なビルドアップを誇る。その名古屋の組み立てのパスがこの日は微妙にブレていた。

 それは林に今季初めてのゴール、しかも先制点を取られたショックと、林の献身的で執拗なオフ・ザ・ボールでのハードワークのせいである。前線から追い込み、角度を限定し、圧力をかける林のプレッシングは効いていた。

 彼は熱いハートをプレイで爆発的に表すタイプであり、非常にエネルギッシュでアグレッシブ。U-24日本代表にはいないタイプだ。才能はまちがいないし、技術的にも今後大きな伸びしろがある。

 あの名古屋vs鳥栖の熱戦を見た生き証人の一人として、責任をもって林大地を推薦しておきたい。

【東京五輪】なぜ私は「OA枠=大迫」を否定するのか?

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【J1リーグ】先制された名古屋は脆かった ~第10節 名古屋 1—2 鳥栖

2021-04-19 07:00:50 | Jリーグ
鳥栖がすばらしくファイトした

 開幕からここまで名古屋はオウンゴールのみの1失点、対する鳥栖は3失点と守備の堅いチーム同士の対戦になった。

 ところが試合は思わぬ展開になる。前半6分にいきなり鳥栖がゴールを決め、名古屋は明らかに動揺した。組み立てにミスが多い。

 そこを狙われ前半45分にも2失点目を食らい、万事休す。後半に1点返したものの、名古屋は意外な脆さを露呈した。

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、中谷、丸山、吉田。セントラルMFは稲垣と長澤。2列目は右から前田、阿部、マテウス。ワントップは山崎だ。

 一方、鳥栖のフォーメーションは3-1-4-2。林大地、酒井宣福の2トップが強烈にアグレッシブなチームである。

早々の失点でビルドアップが不安定に

 まず最初に名古屋が「洗礼」を受けたのは前半6分だ。

 左サイドの崩しから鳥栖のFW酒井がダイレクトで鋭いマイナスのクロスを入れた。これに呼応しニアに走り込んだFW林大地が、これまたダイレクトのすばらしいヘッドで鮮やかにゴール。名古屋は10試合ぶりにゴールを割られた。

 名古屋は相手に先制される初めての形だ。彼らがこの試合に勝つためには、この時点で最低でも2点を取らなければならないことが確定した。相対的に攻撃力が弱い名古屋にしては苦しい展開だ。

 事実、この失点以降、彼らは明らかに精神的に動揺していた。いつもはスムーズに組み上げるビルドアップも微妙にパスがズレるシーンが続出。鳥栖が激しくプレスをかけてくる影響もあるが、明らかにいつもの名古屋ではなかった。

 加えて鳥栖の試合ぶりがすばらしかった。特に林と酒井の2トップは名古屋のビルドアップに対し激しくプレス。チーム全体に球際の競り合いが強く、インテンシティが高い。よくプレッシングし、よくハードワークする粘り強い好チームだ。

ミドルサードより前でボール保持できない

 そして第二のショックは前半45分に訪れた。

 前半45分、鳥栖のFK崩れから名古屋のクリアを拾った酒井が、爆発的なミドルシュートを名古屋ゴールに叩き込んだ。これもすばらしいシュートだった。

 鳥栖は林、酒井の2トップに粘りがあり、攻撃をよくけん引していた。鳥栖の攻撃は時に3トップ気味になり、ゴールを陥れる鬼気迫る迫力があった。

 名古屋はいつもとちがいややぎこちないビルドアップで組み立てるが、特にミドルサードから前で有効なボール保持ができてない。鳥栖のプレッシングがよく、必ず競り合いに持ち込まれ余裕をもってボールキープできない。

 さて前半を終わり、シュート数は鳥栖の6本に対して名古屋は1本。この数字の対比が本ゲームをよくあらわしていたといえるだろう。

リードした鳥栖は4-4-2にシステム変更

 ゲームは後半を迎え、大きく動いた。まず名古屋は後半開始と同時に阿部と長澤に代えて、柿谷と米本を投入。また後半9分には前田と宮原を引っ込め、相馬と森下を入れた。

 これに対し鳥栖は、後半立ち上がりからフォーメーションを4-4-2に変えた。

 彼らは2点のリードをもっている。で、より守りやすい陣形である4-4-2を選択したのだろう。案の定、鳥栖はボールを失うとミドルサードに強固なブロックを敷いた。

 このあたり、両監督の虚々実々の駆け引きが見られ非常に興味深かった。

名古屋は玉砕的なパワープレイに

 後半、攻めに出た名古屋は積極的に動いた。後半40分には今季初出場になった森下龍矢が右サイドからドリブル突破。このこぼれ球に稲垣が鮮やかなミドルシュートを突き刺した。

 後半40分、名古屋は攻撃の要であるマテウスに代え、DFの木本恭生を投入。一瞬、この交代の意味がわからなかったが、マッシモ・フィッカデンティ監督は強さのある木本を最前線に置き、パワープレイを展開した。

 試合の残り10分、名古屋は鳥栖陣に向けアーリークロス、ロングボールの雨を降らせたが果たせず。鳥栖が名古屋の攻撃を抑え切って堂々勝利した。

 この試合、追う立場になった名古屋は意外なメンタルの弱さを見せた。優勝戦線に向け、この点は改善すべき課題だろう。

 また負けた名古屋のポゼッション率が61%なのも興味を引いた。ポゼッションにこだわらず、カウンターに徹した鳥栖に軍配が上がったということだ。日本人のポゼッション信仰は、これで少しは収まるだろうか?

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【J1リーグ】鹿島のハイプレスが光る ~第10節 徳島 0‐1 鹿島

2021-04-18 07:12:50 | Jリーグ
負けた徳島のポゼッション率はなんと64%

 鹿島は相手にボールを持たせ、ハイプレスで徹底して徳島のビルドアップを壊しに来た。これがまんまと当たりウノゼロ勝ち。鹿島のゲームモデルの勝利である。

 フォーメーションは両者4-2-3-1同士のミラーゲームになった。ただし戦術はまったくちがう。

 徳島は最終ラインからていねいにビルドアップしようとするが、鹿島のワントップである上田綺世や両SHが前からしきりに圧をかけプレッシングする。

 すると気圧された徳島はバックパスに逃げる、という流れ。徳島のポゼッション率64%というのは、もっぱらこのデイフェンディングサードにおけるビルドアップの試行錯誤に消費された。つまり有効なポゼッションじゃなかった。

 ふつう支配率64%などといえば負けようがないように思えるが、ポゼッション率は勝敗に必ずしも直結しないことがこの日も証明された。

 徳島は低い位置で逃げのバックパスと、横パスばかり繰り返していただけだったのだ。

相馬直樹新監督の研究が光った?

 徳島はハイライン・ハイプレスのチームである。この日、初陣になった鹿島の相馬直樹新監督はおそらくそれを研究していたのだろう。

 鹿島は徳島のビルドアップに圧をかけ、彼らを低いゾーンに押し込めた。

 そのせいでこの日の徳島は最終ラインがいつもより低く、敵にハイプレスをかけるシーンなどほとんどなかった。完全に鹿島のスカウティングの勝利だろう。

 徳島は自分たちのゲームモデルを破壊され、いつものサッカーができなかった。そのため彼らのハイライン・ハイプレスは鳴りを潜めた。

プランBがなかった徳島

 後半に入っても、この構図は変わらなかった。

 鹿島が最終ラインにハイプレスをかけてくるので、徳島は前へボールを持ち出せない。特にミドルサードからアタッキングサードにかけて、ボールを持てなかった。徳島はプランAを破られ、うしろで回しているだけだ。

 たとえば徳島は、前線にロングボールを入れるようなプランBで鹿島のラインを下がらせるなど、相手の対策に対する打開策がほしかった。

 だがその後も試合の流れは変わらず、後半46分には鹿島はFWの上田綺世に代えて守備的MFの永木亮太を入れて試合を終わらせた。

徳島は十分にJ1残留する力をもっている

 シーズンのスタートでもたついた鹿島はこの日のような知的サッカーをして行けば、上位への返り咲きも十分あり得るだろう。

 特にFWの上田綺世はよかった。巷間、東京五輪のFWのオーバーエイジは大迫を推す声が強いが、個人的にはFWにはオーバーエイジは使わず上田と前田大然(横浜FM)で行って欲しい。ぜひ見たい。

 一方、徳島は持ち前のハイライン・ハイプレスで、前節まで非常にいいサッカーをしていた。この日の反省で修正するところは修正して、また態勢を立て直し挑んでほしい。

 それができれば徳島は十分にJ1残留する力をもっている。がんばってほしい。

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雨の日の公園

2021-04-16 18:34:23 | エッセイ
 6月の梅雨の日だった。

 近くの公園へ行ったのだが、あいにく途中で雨が降ってきた。到着してふと見ると、駐車場の横の木の下で、5歳くらいの女の子が雨に濡れながら一人で泣いている。

 どうしたんだろう? と思い近寄ってその子の前へ行き、しゃがんで女の子の顔をのぞき込んだ。

「どうしたの?」
「お母さんがいなくなった」

 いっしょに歩いていたのに、ふと気づくといなくなったのだという。小雨の降る中、女の子はびっしょり濡れている。私も傘を持ってこなかったので濡れ始めた。

「じゃあ、いっしょにおかあさんを探そうか?」

 そう言うと、女の子はこっくりとうなづいた。

 駐車場ではぐれたというので、雨の中、駐車場の車を一台一台、のぞき込みながら歩いた。心細いのだろう、女の子は黙って私の手をそっと握ってきた。

 とてもびっくりした。

 なにしろ私には子供なんていないし、こんな小さな女の子と手を繋ぐなんてまったく初めての経験だ。

 なんというか、自分の中の隠れた父性を刺激されたというか、言葉ではまったく表現できない気分になった。「絶対さがしてやるぞ」。そう強く思った。

 濡れながら子供と手をつないだ私は、ずらりと並んだ車の中をのぞきながら歩く。いまや私と女の子は、同じ目的をもち連帯感で結ばれている。運命共同体だ。

 靴の中が雨で浸水し始めた。女の子は大丈夫だろうか?

 そう思った瞬間、女の子が「いた!」と小さく叫んだ。

 指さす方向を見ると、駐車場の係員とお母さんが向こうから並んで小走りにこっちへ来る。その子はお母さんに抱きつき、泣きじゃくり始めた。

「見つかってよかったね」

 そう声をかけたが、もうその子はお母さんに抱きついたままで、こちらを見ようともしない。無理もない。こわかったんだろうね。

 お母さんに一声かけ、私はその場をそっと離れた。

 私の手のひらには、いつまでも女の子の手のぬくもりが残ったままだった。

 とても不思議な体験だった。

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サッカーメディアの愚かな「記録主義」

2021-04-16 08:22:32 | Jリーグ
試合内容より「記録」をありがたがる

 サッカーのメディアを見ていて非常に疑問を感じるのが、過剰なまでの「記録主義」だ。

 例えば「名古屋グランパスは9試合連続の無失点を達成し、27年間破られなかった無失点継続時間を818分に伸ばす新記録を樹立した」とかなんとか。

 そんなもん、選手や監督はまったく気にしていないし、観客もそうだ。

 スポーツメディアというのはどうも、このテの悪しき「記録主義」が強い。

 そんなどうでもいい記録について書くヒマがあったら、「その試合はどんな戦術によって行われ、その結果、試合の流れはどう変わったか? また相手チームはその戦術にどう対抗したか?」のような、試合の「内容そのもの」をキッチリ分析した記事が読みたい。

 そう思うのは私だけだろうか?

 名古屋グランパスがいくら「無失点記録」を更新しようが、優勝できなければ何の意味もない。

 メディアはもっと「本筋」に触れてほしい。

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