すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】自分で自分のスタイルを狭める日本人

2018-07-31 08:55:58 | サッカー戦術論
特定のプレーに固執する悪いクセ

 日本人は、自分で自分のプレースタイルを狭めてばかりいる。

 よく、「日本人は身長がないのでサイドからのクロスはダメだ」といわれる。で、真ん中からのグラウンダーのスルーパスに過度にこだわる。ならばロシアW杯コロンビア戦で本田のCKから大迫が決めたヘッドはいったい何だ?

 要はクロスを入れれば「何が起きるかわからない」のだ。なのに「日本人は背が低いからクロスはダメ」と決めつけ、自分たちのプレースタイルを狭めてしまう。これに類することは数多い。

 ほかにも例えば「放り込み」などといってロングパスを異常に毛嫌いするのもそれだ。昔とくらべ日本人の技術レベルははるかに上がり、すでにCBからサイドに開いたWGの足元へ正確なロングパスをつけるレベルまで到達している。

 にもかかわらず、いくら精度が高くてもロングパスを過剰に敬遠する。で、「距離感が大事だ」などといって狭いエリアに複数の選手が集まりショートパスばかり交換する。オープンスペースに広がって中長距離のパスを活用しようとしない。要はティキタカ症候群だ。

 皮肉なことに、これが日本サッカー協会の田嶋会長が唱える「ジャパンズ・ウェイ」の実態である。田嶋会長は「日本人の長所を伸ばす」などというが、長所というのはすでに抜きん出ているのだから伸び代は小さい。

 逆に上であげたような「日本人がやろうとしないこと」をやり、「日本人ができないこと」をできるようにすれば、0点だったものがたちまち30点や40点に上がる。トータルでどっちがチーム力の向上になるか? といえば明白だ。

「日本人らしく」小さくまとまり、「長所を伸ばす」などといって短所に目をつぶり修正しないのでは、日本に明るい未来はない。

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【森保ジャパン】西野Jから継承してほしい4つのこと

2018-07-30 08:30:01 | サッカー戦術論
成果をその場限りで終わらせない

 ロシアW杯を戦った西野ジャパンは、速い攻守の切り替えや縦への意識、ワイドな展開でグループリーグを見事突破した。過去の日本代表は監督が変われば実績をすべてチャラにしてゼロからスタートしてきたが、あの西野ジャパンの成果を捨ててしまうのはあまりにも惜しい。

 そこで森保ジャパンには、西野ジャパンから引き継いでほしい4つのことがある。それはざっくり以下の通りだ。

1. 前からのプレッシングで敵のビルドアップを制限する。

2. 第一選択として縦パスを狙う強い意志をもつ(無理な局面では第二、第三選択を)

3. フィールドを斜めに横切る長いサイドチェンジでピッチを広く使ったワイドな展開を。

4. CBからサイドに開いたWGに放射状の正確なロングパスを入れる。

 2〜4は読んだ通りなので1についてだけ補足したい。西野ジャパンは敵のビルドアップ時、ミドルサードの敵陣側で前の選手が中間ポジションを取りながらプレッシングし、中へのパスコースを切って相手ボールを狭いサイドへ誘導した。これによりサイドでハメてボールが取れればよし。そうでなくボールが相手CBに戻されてもビルドアップ制限の目的は達せた。この約束事を森保ジャパンでも継承してほしい。

 仮に森保ジャパンは3-4-2-1だとしよう。で、森保監督の広島時代のようにボールを失えばスルスルとディフェディングサードまでリトリートし、5-4のブロック守備に移行するのも時間帯や点差によってはいいと思う。これによりボールを相手にもたせてカウンターを狙う戦術はアリだ。

 だが相手との力関係や時間帯、点差によっては積極的に上記1のやり方をしてほしい。常にボールを奪う位置が低いままでなく、可能ならより高いゾーンでボールを奪ってショートカウンターをかけたい。成果は適宜継承し、よりよい日本代表を作ってほしい。

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【サッカー日本代表】田嶋会長が唱える「ジャパンズ・ウェイ」の虚妄

2018-07-29 07:30:00 | サッカー日本代表
3-4-2-1ありきの森保ジャパン?

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長が掲げる「ジャパンズ・ウェイ」「日本人の長所を生かすサッカー」が、早くも音を立てて崩れようとしている。

 ネットその他のサッカー論壇を見ていると、森保ジャパンは当然のように3-4-2-1でスタートすることになっている。だが代表候補選手の中で3-4-2-1に慣れてる選手なんて見事に浅野拓磨と青山敏弘くらいしかいない。

 ええっ? するってえと、なんですか? 森保ジャパンは戦術やシステムがまず先にあり、あとから選んだ選手をその鋳型にハメ込むようにチームを作る「ハリル方式」を取るんですな?

 だが確か田嶋会長が唱える「ジャパンズ・ウェイ」は選手個々の個性を生かし、彼らに合った戦術を使って長所を伸ばす「日本らしいサッカー」じゃなかったのか? なのにいきなりハリル方式ですか? ふむふむ、なるほど。

欧州の一流SBに勝てるWBなんて日本にいるの?

 おまけに森保流の3-4-2-1はWBをサイドで意図的に孤立させ、敵のSBと1対1で競らせるのがミソだ。しかし田嶋会長の「ジャパンズ・ウェイ」なら、ハリルお得意の1対1でデュエルするのでなく、数的優位を作り日本らしく組織で対抗するのではないのか?

 というか日本に決定的に欠けているのは個で勝負できるロッベンやリベリみたいなウインガーであり、欧州の一流SBに1対1で勝てるWBなんて日本にいるのだろうか? もともと森保流3-4-2-1はJリーグを想定した戦術だけに、世界が舞台となればこんなふうにギャップも生まれてくる。

 とすれば当然世界向けのアレンジが施されると考えるのが自然であり、過去のデータだけをもとに今あれこれ判断するのは無理がある。すなわち森保流が田嶋会長の「ジャパンズ・ウェイ」にどれだけマッチしているのかなど、現段階ではだれにもわからない。

 にもかかわらずどっかの広告代理店が考えたようなキャッチコピーを振り回すのはいかがなものか。森保流3-4-2-1は世界を相手にどう生まれ変わるのか? 今は静かに事態を見守るべきときである。

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【サッカー日本代表】協会のいう「長所を伸ばす」は滅びの道だ

2018-07-28 09:57:10 | サッカー日本代表
日本人の短所は見ないふりをする

 森保一氏のA代表監督就任が発表された。発表会見では、日本サッカー協会の田嶋幸三会長が『ジャパンズ・ウェイ』なる標語を掲げ、今後は「日本人らしいサッカーをやろう」としきりにキャンペーンを張っていた。日本人の長所を生かし「良いところを伸ばそう」というわけである。

 これだけ聞くと、一見もっともらしい。だがその実、協会が言ってることは「日本人のアラが目立たないサッカーをしよう」ということだ。日本人の短所には見ないふりして頰かむりし、いまできるプレイ=長所だけでやって行こう、という単なる現状維持路線である。というのも日本協会はハリルでほとほと懲りたからだ。

 ハリルが日本人の「ダメなところ」をさんざん指摘したせいでサッカーファンが離れてグッズも売れなくなり、観客入場者数やテレビの視聴率、広告収入が下がってサッカー人気が下降した、と協会は誤認した。で、(おそらく)この理由からハリルを解任したのだ。

ハリルは課題をあげ修正を呼びかけた

 確かにハリルは日本人の苦手なプレイ=短所にあえてフォーカスし、「日本人が抱える課題を修正しよう」と呼びかけた。私は正しいアプローチだと思う。いったい問題点はどこにあり、それを修正するには何をすべきか? を考えるのがサッカーで強くなる近道だと考えるからだ。

 で、ハリルは例えば「日本人はインテンシティが低すぎる。もっと球際で激しく競ってデュエルしよう」、「日本人はポゼッションにこだわりすぎて安全な横パスやバックパスばかり繰り返す。もっと『前へ』の意識を強く持ち、タテに速く攻めよう」と訴えた。

 実際、そのおかげでJリーグではインテンシティが上がり、データによれば球際の強さが向上した。またタテへの速さでいえば、代表チームではボールを保持したCBの吉田や槙野、昌子らが、サイドに開いたWGの足元へ正確な放射状のロングパスを入れるようになった。それだけでなくライン裏に走り込むFW浅野らにCBから正確なウラへの長いスルーパスが通るケースも増えた。

 それまでペップ政権下のバルセロナに強い影響を受け、足元へのショートパスばかり繰り返していた日本代表(日本サッカー界)は確実に変わりつつあった。

ハリル路線を切り真逆に振れた協会

 いやバルセロナならたとえ中盤でショートパスを何十本繋ごうが、最後はメッシら強力なアタッカー陣がゴールを決めて落とし前をつける。だがFWに決定力がなく、フィニッシュへ行く意識が低くシュートすべき局面でパスしてしまう日本代表では、バルセロナとちがい単にショートパスを何本も繋いでいるだけでいつまでたってもゴールできない。数字上のポゼッション率を伸ばすだけの、単なる「ボールキープゲーム」で終わってしまうーー。

 この傾向はジーコジャパンあたりから特に強くなり、日本が長年抱える「病巣」になっていた。で、ハリルはこの構造化した日本の問題点を持ち前の分析力で鋭く見抜き、「もっとタテに速く」と訴え課題を修正しつつあった。

 そこへ田嶋会長が独断で横ヤリを入れ、(おそらく)サッカー人気低迷に気をもむスポンサーやらテレビ局、電通などの利益共同体に忖度してハリルを切った。そしてハリルが掲げた「あえて日本人の短所に注目し問題点を修正しよう」との路線をバッサリ切り捨て、その正反対に位置する「日本人の長所を生かそう」「(課題には目をつぶり)日本らしいサッカーをしよう」とキャンペーンを張り始めたわけだ。非常にわかりやすい展開である。

 だが彼らが言う「長所を生かす」とはウラを返せば「苦手なプレイはしない」ことであり、失敗しない得意なプレイだけやりトライがないことを意味する。これではいつまでたっても日本人の短所や弱点は直せず、問題点を潜在化させるだけだ。「見た目のいいプレイ」ばかりにこだわる短期的な発想はいかにも「商売」を気にする彼ららしいが、それでは長期的にはW杯ベスト8はおろか1次リーグ突破にあくせくするレベルで終わるだろう。「日本らしいサッカー」といえば聞こえはいいが、協会のいう「長所を生かす」は滅びの道だ。

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【次期代表監督】ロシアW杯で実った果実を継承すべきだ

2018-07-25 10:48:49 | サッカー戦術論
日本人みんなで同じ方向を向く

 森保一・東京五輪監督がA代表監督を兼任するのではないかと噂されている。おそらく日本サッカー協会の関係者がメディアにリークし既成事実を作る手法で進んでいるのだろうが、非常に奇妙なのはその森保氏がA代表監督に就任した場合に「どんなサッカーをするのか?」が一切語られない点だ。

 本来ならロシアW杯を分析した上で「日本が世界で勝つにはこういうサッカーをすべきだ」との指針をまず協会が出し、「だから森保氏にやってもらおう」というのが筋だ。ところが森保氏が就任したらどんなサッカーをするのかは一向に語られず、これまでの監督選びと同様、「サッカーの中身やコンセプトは新監督に丸投げしよう」的ななし崩し感を漂わせながら事態は進んでいる。

 個人的には、日本はまだまだ外国人監督から学ぶべき点が多いと考えているので日本人監督には基本反対だが、ただ一点、ロシアW杯で日本が見せたあのサッカーが継承されるなら森保氏もアリだと考えている。

日本人みんなが共感するサッカー

 西野ジャパンの躍進と国民の熱狂を見て、やはり代表は国民性に合ったサッカーをすべきなんだなと感じた。無論それだけでなく、あのチームが世界で勝てる日本の進むべき道を示したのは事実である。ならばロシアW杯で日本代表が繰り広げたサッカーを日本のモデルにし、指導者や選手も含めサッカー関係者の志向性を同じあの方向で揃えるべきではないか?

 ロシアで日本が見せたのは、コンパクトで攻守の切り替えが速い軽快なパスサッカーだ。日本人のアジリティのよさを生かしてテンポよくボールをつなぎ、主導権を握りながらピッチを広く使ったワイドな展開をする。「前へ」の推進力がカギだ。

 ビルドアップは相手チームのファーストディフェンダーの枚数に応じ、適宜、セントラルMFが1列落ちて両SBを高く張り出させる。またボールを保持するCBやSBから、サイドに開いた両WGへ精度の高い放射状のロングパスをダイレクトに射し込む。フィールドを斜めに横切るダイアゴナルな長いサイドチェンジを織り交ぜながら、瞬間的な裏抜けやハーフスペースからのフィニッシュを積極的に狙う。そんなダイナミックなサッカーだ。

 同じ日本人といってもフットボールの好みはさまざま。だがロシアW杯で日本が演じたあの攻撃的で爽快なサッカーならば、みんながちょっとづつ自分の好みを譲り合い、あのスタイルを日本人共通の最大公約数にできるのではないか? そしてみんなが同じ方向を向いて力を結集させる。そうすれば意思統一の取れたムダのないスピーディーな強化ができるはずだ。ただし失点の原因を作った守備の強化は絶対だし、セットプレーから点が取れる形作りと被カウンター対策は上積みする必要があるが。

森保氏のスタイルとの整合性は?

 そこで浮上するのが、森保氏の志向性と「あのサッカー」とのギャップだ。森保氏が広島の監督時代にやっていたのは、スタート時は3-4-3だが相手ボールになればディフェンディングサードまで深くリトリートし、自陣に5-4のブロックを敷くサッカーだ。これでボールを奪えば最終ラインから丁寧にビルドアップし、コレクティブカウンターを狙うようなイメージだった。攻撃時にサイドを使ってワイドな展開をするのが特徴だ。

 西野ジャパンが前から守備をしボールを奪う位置が高いのとは真逆で、いったんリトリートし相手にボールを持たせてカウンターを狙うあたりはむしろハリルジャパンと共通している。

 さて森保氏が就任すれば、やはり上にあげた広島時代のようなサッカーをやるのだろうか? 広島時代のスタイルは非常にインテリジェンスがあり共感していたが、冒頭に書いたような、ロシアW杯が終わったこの機会に「日本の方向性を揃えたい」という意味ではギャップが生じる。もちろん両者のいいところ取りのハイブリッドで行く、というなら賛同するが。

 日本はせっかくロシアW杯でめざすべきスタイルを見つけた。あのサッカーなら日本人全体の共通理解も得られそうだ。ここは一気呵成に「ジャパン・スタイル」を作る千載一遇のチャンスである。関係者にはそこをよく考えてもらって話を進めてほしい。

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【次期代表監督】「7月中に決める」という狂気の沙汰

2018-07-18 11:36:35 | サッカー日本代表
ロシアW杯の検証さえやらず

 一部報道によれば、次期日本代表監督は7月20日の日本サッカー協会の技術委員会をへて、26日の理事会で森保一・五輪兼任監督に決まるという。ロシアW杯の検証さえやらず、まったく狂気の沙汰だ。

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「9月には親善試合のチリ戦があるし。時間がない」などと言っている。だが、そんなものは明らかな確信犯だ。

 例えば当ブログがこの記事を公開した今年5月1日の時点では、すでに9月7日以降、「キリンチャレンジカップ2018」ホームゲームがなんと年内に6試合も組まれていた。ロシアW杯が終わったばかりの9月以降、年内に立て続けで6試合。明らかに異常なブッキングだが、協会のハラは読めている。

 おそらくロシアW杯は西野暫定監督で惨敗するだろう。ならばW杯が終わるや即、一気呵成に次期監督を決めて体制一新。年内に立て続けにホームへ格下の弱小国を呼び、新体制で連戦連勝して「ハリル解任〜ロシアW杯惨敗」と続いた悪い空気を薄めようーー。

 おそらくそんなシナリオだったのではないか?

マーケティングもせずに新商品を出す愚

 だが考えてもみてほしい。終わったばかりのロシアW杯は、協会内で検証さえされてない。なのにいきなり新監督を決める。これがいったいどれほどの愚行か?

 例えば自動車メーカーのA社が6月に新車を出したとしよう。ところが翌月の7月にはもう、その改良バージョンを発売するというのだ。だがそんなメチャクチャができるわけがない。

 6月に新車を出したら、まずA社はマーケティングを行う。いったい消費者はこの新車のどこに魅力を感じたか? 逆にどの仕様が「不便だ」と不評だったか? カラーリングは受け入れられたか? 走行感は? 安全性は?

 こんなふうに細かく市場調査し、まず「よかった点」と「悪かった点」を明らかにする。で、次に新車を出すならどこをどう改善すればいいかを検討する。その上で初めて新商品の開発に入る。

 なのに一体どこの企業がこうした綿密なマーケティングをやらず、6月に新車を出したかと思えばその翌7月にもう改良バージョンを発売するだろうか? そんな行き当たりばったりの素人企業は早晩、市場から退場することになるだろう。日本サッカー協会がやろうとしているのは、これと同じだ。

 そうではなく、まず日本サッカーが世界で勝つにはどんなスタイルを構築すべきか? 基本戦略を策定する。その上でロシアW杯では日本代表はどんなサッカーをし、どの部分が通用したか? またどこがダメだったか? 改良するとすれば何をすべきか? それを任せられる新監督はどんな人物か? ざっくりこの程度のマーケティングをやってから新監督を決めるのがふつうだろう。

ビジネスも重要だが長期的視点を

 なにより危惧されるのは、年内に6試合もホームゲームを組む意図だ。ハリル時代に厳しいアウェイでブラジルやベルギーなどの強豪国と対戦して勝てず、サッカー協会は学習したのではないか? 「これではビジネス的に厳しい」と。

 そうではなく、ラクなホームに格下の弱小国を呼んで連戦連勝させる。で、「日本は強くなったぞ」とハデに煽って、守備的で地味だったハリル時代に下降したサッカー人気を呼び戻し、グッズは売れるわ、視聴率や広告収入は上がるわ、というビジネスモデルを描いているのではないか?

 もしそうだとしたら、タコが自分の足を食って目先の飢えをしのぐようなものだ。傾いた企業が信用をつなぐため、自己資金を食いつぶして無理な配当をするのと同じである。

 そうではなく正しい強化は厳しいアウェイで強豪国と戦い、ねじ伏せられながら学んで行くもの。今は勝てなくても◯年先には強くなるーー。次期代表監督の件もあわせ、そんな長期的視点が必要だ。

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【ロシアW杯・総評】ティキタカの終わり

2018-07-17 08:06:04 | サッカー日本代表
効率を追求するカウンターの時代

 今回の大会ではポゼッション・スタイルのスペイン、ドイツ、アルゼンチンという強豪国が早々に姿を消した。特に決勝トーナメント1回戦でロシアと戦ったスペインは、膨大な数の単調なショートパスを浪費するだけで実に退屈極まりなかった。

 反対にフランス、イングランド、ベルギーといった速いカウンターの得意な国は鋭い一閃でトーナメントを好成績で走り抜けた。これは偶然だろうか? 世界のトレンドは、守備のバランスを崩した相手を一撃で叩く即断即決のカウンターへと流れている気がしてならない。

 カウンターについて、どうも日本人は誤解している感じがする。日本人の持つカウンターのイメージとは、例えばディフェンディングサードに深くブロックを敷いて引きこもり、ボールを奪ったら1発のロングボールをFWに当てて反撃するーー。そんなロングカウンター一辺倒の古いスタイルではないだろうか?

 だがいまや攻撃の最中にアタッキングサードでボールを失えば、その場でプレッシングを開始して速いショートカウンターに持ち込むアグレッシブなスタイルもある。つまり素早いネガティブ・トランジションを武器にしたカウンターだ。

 もう昔のように前線でボールを失えば自陣のディフェンディングサードまでえっちらおっちらリトリートし、そこでやっと守備の態勢を整える、などという、ただ守るだけのカウンター・スタイルばかりではない。

「カウンター? 弱者の戦法でしょ?」などといつまでも認識を変えられなければ、日本人は確実に時代から取り残される。

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【ロシアW杯】西野ジャパンが偶然示したこれからの代表運営

2018-07-15 09:03:20 | サッカー日本代表
今後は個の集積がチーム力になる

 西野ジャパンは準備期間がたった2ヶ月と短かった。そのため何度も合宿を組み、チーム戦術やチームの作法を煮詰める時間がなかった。そんな状態で一定の結果を出した。とすれば偶然にではあるが、西野ジャパンは未来の代表運営のあり方を示唆したといえる。

 どうゆうことか?

 いまや日本の代表選手はたいてい海外のクラブチームに所属している。集まるだけでも大変だ。もはや昔のように日本でプレイする選手ばかりを長期合宿で集め、そこでじっくり煮込んでコトコト料理を作る時代ではなくなった。もうかつてのようには行かない。

 その意味では、日本よりひと足もふた足も早く代表メンバーがほとんど国外のクラブチームに所属していた海外の代表チームと同じ状況に至ったことになる。戦術のすり合わせだけでもひと苦労ーー。ヨーロッパや南米の代表チームはそんな状況で結果を出してきたわけだ。

 とすれば急場しのぎだった西野ジャパンが今回たまたま示したように、今後は日本代表もチームとしての成熟度よりむしろ、そこに集まる選手個々がもつ能力の高さこそが重要になる。個の戦術眼や個のサッカー観、個の技術。つまり個の力が代表チームという磁場に集積し、それがトータルとして結果的に「チーム力」を形作る時代になる。

 瓢箪から駒、とはよく言ったものだ。

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【西野ジャパン】オープンに撃ち合って負けるのが日本人の理想か?

2018-07-14 12:17:19 | サッカー日本代表
「結果はボールに聞いてくれ」の国民性

 ロシアW杯を敗退した西野ジャパンは、いまや「感動をありがとう」という陳腐なテレビ屋の安っぽい宣材と化している。日夜、テレビでは、日本代表をめぐるさまざまな「感動エピソード」やら、「知られざる逸話」やらであふれ返っている。

 どうやら電通はここを先途とサッカー人気回復に努めているようだ。ハリルのせいで急落した広告収入も復活してウハウハだろう。

 西野ジャパンに「感動をありがとう」と叫ぶ国民を見ていると、日本人とはいったいどんなサッカーが好きなのかが見えてくる。やはり日本人は、勝負に辛く守備を固めて1-0で勝つより、オープンに撃ち合って3-4で負けるほうを好むのだろう。

 もしそういう国民性なら、日本代表はそれに合ったサッカーをするまで。「守備の強化が必要だ」などと姑の小言みたいな警鐘を鳴らしても意味がないのではないか? と思えてくる。

 そもそも「ベルギーに2点も先制したのに日本はなぜ勝ち切れないのか?」と怒る人が1人もいないのだ。これがヨーロッパや南米のサッカーネイションならありえないシュールな光景ではないか?

 その国のサッカースタイルは、その国の国民性に宿る。ならば、ベルギーに先制したらそれを守ってしぶとく勝ち切るフランスのような戦い方は日本にはできないのかもしれない。広い意味で試合を意図的にコントロールし、自らの確固たるシナリオに沿って演目を進めることができない。

「粘り」よりも「潔さ」や「儚さ」のほうが美しい、と感じる日本人の国民性には、オープンに撃ち合って「結果はボールに聞いてくれ」というスタイルの方がマッチしているのかもしれない。

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【ロシアW杯】西野ジャパンとは何だったのか?

2018-07-11 10:50:55 | サッカー日本代表
3つのメンタル要因が躍進のカギに

 W杯の2ヶ月前やそこらにそそくさと結成され、グループリーグ突破という大きな結果を残した西野ジャパンとは、いったい何だったのか?

 第一義的にはハリルを電撃解任した日本サッカー協会による緊急避難所であり、一夜漬けで名目だけ立てた間に合わせの集合体だった。日本中のだれもがいい成績を上げるなどとは考えなかったし、おそらく当の協会自体がそうだったろう。つまり西野ジャパンを結成し、ロシアW杯に参加さえすればそれでよかったのだ。

 ではなぜその緊急避難所は「災害」にもめげずみるみる活性化し、W杯で一定の成績を上げられたのか? それは大きく3つの要素に分けられる。

西野ジャパンによって延命された選手たち

 ひとつは、ハリルに代表を切られる運命だった選手たちが西野ジャパンによって延命され、それによって彼らのモチベーションが高まったことだ。これはわかりやすい。

 なにしろハリルジャパンのままでは自分自身が排除される。とすれば西野ジャパンという救命具が投げられた以上、頑張らざるを得ない。こうして彼らは西野ジャパンによって救出され、やらざるを得ない状況に立たされた。そして火事場の馬鹿力を発揮したーー。

 一方、第2の要素としては、頑固なハリルに押さえつけられていた「自分たちのサッカーをしたい」という欲求の爆発だ。ハリルは集めた選手たちの特性や持ち味に合った戦術を、あとから決めるタイプの監督ではない。まず「速いショートカウンター」という戦術や、4-2-3-1などというシステムが(選手を選ぶより)先にある。

 ハリル「おまえらー、うちのチームではこの戦術とシステムで戦え。以上」

 それだけだ。

 集めた選手たちの特徴はこうだから、ならばこういう戦術で戦えば彼らにマッチする、などという発想はしない。で、ハリルに戦術を押し付けられた選手たちにフラストレーションが溜まった。

「自分のやりたいサッカーがしたい」

 で、西野監督という良くも悪くも自分がない人物が上に立つことで、選手たちはモノが言える環境になった。かくて選手たちは自分たちのサッカー観や考える戦術を西野監督にぶつけ、やがてパズルが組み上がるかのように「あのサッカー」ができて行った。

揶揄するメディア報道に反発心が高まった

 そして第3の要素も、やはり反発心だ。

 短期プロジェクトゆえ、ベテランの経験を重視し彼らの蓄積で急場を乗り切ろうとした西野監督に対し、「年功序列ジャパン」「おっさんジャパン」などと、当初メディアは厳しい報道をした。それによって反発した選手たちが「くそったれ、やってやる!」と、これまた火事場の馬鹿力を発揮した。

 おもしろいことに、こう見てくると西野ジャパン躍進のカギになったのは、すべてがメンタル要因だということになる。それだけスポーツにおけるメンタルは重要だということだ。

 さらに興味深いのは、世界に通用する高度な技術がありながらメンタルの弱さゆえ代表チームでは力を発揮できなかった香川が今回、水を得た魚のように活躍した点だ。つまりこれまで見てきたような3つのメンタル要因が香川の精神にプラスの作用をもたらし、彼の弱いメンタルを底上げし奮起させたわけだ。

 その意味では香川はまさに、西野ジャパン躍進の象徴的な選手といえるかもしれない。

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【サッカー日本代表】「試合を支配しないこと」は悪か?

2018-07-10 08:19:42 | サッカー戦術論
国技化するポゼッション率至上主義

 日本では専門のサッカー雑誌でさえ、「試合を支配できない時間帯」「押し込まれる時間帯」などという表現を使い、それが悪いことのように書いている。

 だが前者については、意図的に相手にボールを持たせてカウンターを狙う戦術はあるし、後者についてもわざとリトリートして低い位置にブロックを作って戦う戦術はある。

 にもかかわらず日本のメディアはいつまでたっても、「試合を支配する」「相手を押し込む」ことが絶対的な善であるかのような報道をしている。つまり彼らにとっては、いまだに「ポゼッションこそが正義」なのだ。

 だがポゼッションとカウンターは、どっちがいい悪いの問題ではない。どんな戦い方を選択するか? のポリシーの違いでしかない。しかも現代サッカーでは、同じチームが当然両者を兼備していなければいけない。

 とすれば日本人はこの相反する二元論に対する認識を変える必要があるが……西野ジャパンの攻撃サッカーが躍進したおかげで、またぞろ日本では相変わらずのポゼッション率至上主義がはびこるのだろう。

 やれやれ。

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【ロシアW杯】「ベルギーに優勝してほしい」と願う日本人のどうしようもなさ

2018-07-09 08:03:28 | サッカー日本代表
負けを正面から認められない

 ベルギーに優勝してほしい、と願う日本人が多いらしい。

「日本が負けたのは、あの優勝したベルギーだ。だから日本は負けたが大したもんだ」

 そう思いたい深層心理だろう。なんて見苦しい国民性なのか?

 日本人は「論理」にではなく「感情」に左右されるのだ。 

 負けを正面から「負け」と認め、いったいどこがどう悪かったのか? そこを修正して「次こそは勝とう」と生産的に考えるんじゃなく、「日本は負けたが弱くないんだ」と内にこもって負けを認めず、自分を慰める手段を探す。

 まったくどうしようもない。

 そんなことだから、いつまでたってもW杯に「出るだけ」で終わるのだ。
コメント (2)
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【ロシアW杯】西野采配に感じるこれだけの疑問

2018-07-06 08:01:07 | サッカー日本代表
西野監督の続投には断固反対だ

 ロシアW杯でグループリーグを突破し、世界に強いインパクトを残した西野ジャパン。だが「勝てば官軍」で終わらせてしまっては、日本サッカーのためにならない。そこで今回は、実は「疑問」が多い西野采配の問題点を逐次、検証して行こう。

1. そもそも「あのサッカー」は西野監督が作ったのか?

 西野監督はよく選手の意見を聞き、監督というよりむしろ選手の聞き役に回っていた、という「美談」がしきりに報道されていた。「ゆとり教育」がよしとされるいかにも日本らしい光景である。だがもしそうだとすれば、そもそもロシアW杯で日本が演じた「あのサッカー」は、西野監督が作ったのか? 日本人らしい連動性とアジリティを生かした軽快で機動的なパスサッカー。あれは実は欧州の所属チームでポジショナルプレーを繰り広げる選手たちによるアイディアの結集であり、選手たちのアドリブの集積だったのではないか?

2. 本田に一時は「取り込まれた?」西野監督

 本田は西野ジャパン結成に当たり、報道陣に向け「再建策はある」「プランは考えている」とまるで自分が監督のような発言を繰り返していた。一方、西野監督も「本田のリーダーシップは頼もしい」などと持ち上げていた。とすればテストマッチのガーナ戦、スイス戦までのグダグダなあのサッカーは本田と西野監督の「合作」だったのではないか? トップ下の本田が横パスとバックパスを繰り返し、攻めをひたすら遅らせた「あのサッカー」こそがむしろ西野監督の作なのではないか?

 そして西野監督がレギュラーと考えていた選手たちを使ったガーナ戦、スイス戦でまったく結果が出ず、その反動でパラグアイ戦では西野監督がサブとみなしていた選手たちを「総替え」で使ったら、たまたま当たった。で、その偶然の産物であるパラグアイ戦でのサッカーの方が、W杯本大会での戦い方の雛形になった、ということではないのか?

3. 西野監督には選手を見る目がない

 上記2でもあげたが、西野監督は当初、宇佐美と本田を「主軸」と考えていた。この時点で西野監督には選手を見る目がないのは明らかだ。宇佐美はオフ・ザ・ボールの動きがダメで、すぐ足を止めてラクをしようとする。自分がボールを持ったときだけ輝くハンパな選手だ。守備も苦手でひ弱、ハードワークできない選手の典型である。

 一方の本田はトップ下に入るとバランスを無視した勝手なポジショニングをし、相手チームにカウンターのスキを与える。また速攻のチャンスなのに横パスとバックパスを繰り返し、ひたすら攻めを遅らせて好機をフイにする。こうした選手らを「主軸」と考えていた時点で、ハッキリ言って西野監督の能力を疑わざるをえない。

4. 西野采配はズバズバ当たった?

 巷間、西野采配は「ズバズバ当たった」ことになっている。確かに本田を途中出場させれば点を取るなど、西野監督が「持っていた」ことだけは確かだろう。だがそもそも西野監督はあのチームを本田のために作ったようなものであり、ガーナ戦とスイス戦でダメだった経緯もあり本田をレギュラーに据えることはさすがにできなかったが、「本田を途中出場させること」はむしろ予定の采配だった。

 つまりパラグアイ戦で「サブ組」を出したらたまたま当たったのと同様、当初の予定通り本田を途中起用したらたまたま当たっただけではないのか? 西野監督は「持っていた」のであり、果たして監督として「すぐれた戦略に基づきロジカルな采配を振るった」といえるのだろうか?

5. 西野采配はベテラン重視の年功序列だ

 西野采配をよく観察すると、ある一定の法則がある。例えばFWを使うなら、コンディションがよく裏抜けできるスピードのある武藤ではなく、ケガ持ちの岡崎優先、のような「若手よりベテラン」という年功序列だ。本田の途中起用もこの路線である。「点を取りたいときは本田」という定食コースの采配を自動的に繰り返していたにすぎない。現に今回、リオ五輪世代は使われなかった。要するに西野采配の正体は、ベテランを優先し彼らを順番に出場させて「引退への花道」を用意したら、たまたま当たった、というだけではないのか?

6. なぜ大島を使わなかったのか?

 最大の疑問がこれである。大島は途中ケガで欠場したが、本人のコメントによればその後回復したようだった。しかも事前合宿で西野監督は大島を大いに認める発言をしていた。ならば、もし大島をポーランド戦で起用していればまったく違った展開になったのではないか? あの試合で柴崎に代えて大島を使っていれば、柴崎は他の選手同様、ベルギー戦のために休ませることができた。ベルギー戦で柴崎は疲れが見えただけに残念だ。これは決して結果論ではない。もし大島のケガが治っていたなら、能力のある彼をポーランド戦で使うというのはきわめてロジカルである。

7. なぜGK川島を使い続けたのか?

 GKの川島はテストマッチでディフェンスラインとの連携ミスで失点するなど、非常に不安視されていた。当ブログでも、何度も若い中村航輔の起用を提案したが実現しなかった。これも年功序列采配の結果なのか? 日本が喫した多くの失点のうち、川島起因のものが何点あるか考えると複雑な心境になる。

8. 西野監督には分析能力がない

 あのベルギー戦終了後、西野監督の開口一番は「何が悪かったんでしょうねぇ? わからない」「あんなスーパーなカウンターを食らうなんて想像もしてなかった」だった。一方、ベルギー戦を観たイタリアの名将カペッロはじめ各国の元選手や監督たちは、「あの時間帯を考えれば、なぜ相手にカウンターのチャンスを与えるCKを本田に蹴らせたのか? セオリーから逸脱している」といっせいに指摘していた。また日本はセットプレイからの失点が多かったことについて、西野監督は記者会見で「結局原因がわからないので、対策を取るのはもうやめました」と放言していた。「天然」といえばかわいらしく感じるが……結局、西野監督には分析能力がないのではないか?

9. 西野監督の続投には断固反対だ

 巷間、西野監督はいったん任期を終え休養するがその後再登板も? などと囁かれている。だが以上の分析結果から、西野監督の続投には断固反対する。一方、スポーツ紙で報道されている、何の脈絡もない唐突なクリンスマン(お飾り監督)の就任にも絶対反対だ。監督候補を取り沙汰する前に、日本サッカー協会は「日本はどんなサッカーをめざすのか?」「それによって世界にどう勝つのか?」について、具体的なコンセプトをまず指し示すべきである。

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【西野ジャパン】ロシアW杯、日本のMVPは柴崎である

2018-07-05 07:26:28 | サッカー日本代表
彼の縦パスがチームを活性化した

 ロシアW杯に挑み、決勝トーナメント1回戦でベルギーと死闘を演じた西野ジャパンのMVPはだれか? 乾? 香川? いやいや、文句なしで柴崎で決まりだ。

 断言できるが、もしあのチームに柴崎がいなければ、日本は決してあんなスタイルにはなってなかった。「ここ」という急所を突く前タテにテンポよくパスをつけるサッカーはできてない。おそらくダラダラと意味もなく横パスとバックパスを繰り返し、いつまでたっても有効なゾーンを突けない遅攻一辺倒のサッカーになっていただろう。

 つまり柴崎の鋭い縦パスこそがチームに「前へ」の推進力を与え、ショートカウンターの威力を倍増させたのだ。左に高く張り出した長友に出す柴崎のダイアゴナルな長いサイドチェンジこそが、日本の立体的で大きな展開に生命を吹き込んだ。
 
 大胆に言ってしまうが、今後日本代表の監督が誰になろうが、メンバーがどう変わろうが、中盤に柴崎がいる限り、連動性とアジリティを生かした軽快なパスサッカーを演じる「あのスタイル」は再現される。柴崎がチームの心臓部に君臨する限り、ああいうサッカーになる。

 その意味では、まったく安心している。

 大船に乗った気分である。
コメント (1)
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【ロシアW杯・ベルギー戦】敵GKボールから一直線にカウンターを食う愚かな敗戦 〜日本2-3ベルギー

2018-07-03 14:17:45 | サッカー日本代表
攻守の切り替えの悪さで痛い逆転弾

 ついに日本が迎えたロシアW杯・決勝トーナメント1回戦。日本は立ち上がりから敏捷性を生かしたテンポのいいパスサッカーで幸先よく2点を先制した。大迫、香川らの前からのプレスもよく効き、今大会の4戦のなかでは最高のデキを見せつけた試合だった。だが後半に相手CKからの流れで立て続けに2失点し、同点に。「ドーハの悲劇」をまとめて2〜3回食らう。

 極め付けの3失点目は、日本のCKがベルギーGKにキャッチされたところから致命的なカウンターを食らった。敵GKが手でフィードしたボールから中盤をドリブルで独走され、最後は右からの折り返しをフリーでシュートされた。日本の選手は自らのCKが終わった直後で集中力が切れていた。攻から守への切り替え(ネガティブ・トランジション)の悪さが招いた痛い失点だった。これで「成り上がり日本」の冒険は終わった。

 だが今大会の彼らは、日本人ならではのアジリティと連動性を生かした軽快なパスサッカーで世界に伍せることを高らかに示した。日本が世界で勝つにはどんなサッカーをすべきか? これで日本がめざすべきサッカースタイルをめぐる方向性は出た。今後は今大会のスタイルを雛形にし、さらに守備の向上とカウンター対策を上積みして世界に対抗していくべきだ。

前からのプレッシングが効いた

 日本のフォーメーションは、香川をトップ下に据えた4-2-3-1だ。ディフェンスラインは右から酒井(宏)、吉田、昌子、長友。ボランチは長谷部と柴崎。右SHは原口、左SHは乾。ワントップは大迫だ。

 立ち上がり、日本は積極的にハイプレスで入った。ボールを保持するベルギーの最終ラインに対し、大迫と香川、乾、原口の4人がいっせいにプレッシングする。この日の日本の勢いを象徴するかのようなシーンだった。その後も日本は1試合を通し、大迫、香川らがボールをもつ敵CBに対し、ミドルサードの敵陣側からプレスをかけ、相手ボールを狭いサイドへ追い込んだ。前からの守備が非常によく効いていた。

 日本は押し込まれる時間帯が長いながらも、前からの守備で状況をよくコントロールしていた。チャンスは少ないが、カウンターになればいい形になった。特に左サイドに高く張り出した長友に対し、右サイドからフィールドを斜めに横切る長いサイドチェンジが入ると乾も絡んでチャンスを作れた。

速いネガティブ・トランジションを

 日本の選手の集中力は高く、前半を0-0で折り返すと後半早々に原口と乾がすばらしいシュートを決めて2-0とリードする。だが次第に日本の悪いクセが出始め、意味もなく横パスやバックパスをしてカットされるシーンが散見されるように。だんだん弱いショートパスばかりを繋ごうとする悪癖も出た。

 そして後半24分と29分に、いずれも例によってセットプレイ(CK)からの流れで立て続けに2失点。最後の3点目は日本の攻から守への切り替えの悪さを突くカウンターを食らい、失点して万事休した。

 3失点めのシーンを振り返ってみよう。コトは日本の左CKから始まった。途中出場の本田が蹴ったボールがベルギーGKのクルトワにキャッチされ、日本の選手はここで完全に足を止めて気持ちを「切った」。すると見計らったようにベルギーGKに素早く手でフィードされ、この時点で6人もの日本の選手がベルギーゴール周辺に置き去りにされる。完全なカウンターだ。

 このあとボールを受けたベルギーのデ・ブライネが無人の中盤をドリブルで独走し、最後は右サイドから折り返されてフリーでシュートを決められた。完全崩壊だ。日本のCK時にベルギーゴール前に集まっていた日本の5〜6人の選手たちは、いったんベルギーGKのボールになったためプレイをやめて集中力を切り、そのスキを見事に突かれた。

日本の武器は「ショートカウンターだ」と自覚せよ

 日本はこのゲームを、「惜しかった。デキはよかった」で終わらせてしまっては何の意味もない。ゆえに、ここからは得られた課題と収穫を見て行こう。今後、問題点を修正するためだ。

 まず課題その1は、日本はショートカウンターの形になるといいチャンスになるのだが、どうやら彼ら本人にはその自覚がないことだ。

 ショートカウンターのチャンスには、ボールを縦に速く繋いで攻める必要がある。だがそこで彼らは意味もなく横パスやバックパスをし、攻めを遅らせてしまう。いったんポゼッションしようとしてしまうのだ。必要なのはそうではなく、縦パスによる速いカウンターなのだが……。で、その間に敵はリトリートして守備の態勢を整えてしまい、かくて日本のチャンスが消える。「ハリル後」の西野ジャパンでは恒例化した、そんなシーンが何度も見られた。

 そして集中力がなくなってくると、弱いショートパスをただなんとなく繋ぐ遅攻一辺倒になって行く。また失点シーンは例によってセットプレイだったり、サイドからクロスを入れられて絵に描いたように高さで勝負されたものだ。

 ただしクロスからのヘディングへの対応はいちがいに高さオンリーではない。良いポジショニングとタイミング、また勝てなくてもカラダをしつこく追っ付けるのがコツだ。球際で粘り強く競る精度の高い守備を、日本は今後さらに上積みして行く必要がある。

3点目を取り「試合を終わらせる」べきだった

 一方、前半の日本はよく集中していたが、後半になると疲れからか集中力の切れるシーンが見えた。自分たちのCKからベルギーGKボールになったとたん、攻守の切り替えができずにフリーズした3失点目がその典型だ。

 そして最大の課題は、日本は自分たちペースのうちに3点目を取って「試合を終わらせる」ことができなかった点だ。リードした2点を守りに入るのでなく、さらに追加点を取って試合を決めることが好調だったこの日の日本にはできたはずだ。だがそこで攻めるのか、それとも残り時間をうまく使うのかが曖昧になり、次第に横パスとバックパスで時間を使うプレイが目立ち始めた後半に止めを刺された。

 かたや最大の収穫は、「このサッカーで行ける」という確信が得られた点だ。日本人のアジリティを生かしたテンポのいいパスサッカーは世界に対抗できるーー。そんな日本のやるべきサッカースタイルが確立した日といえる。にもかかわらずなぜ勝てなかったのかは、上記のような修正点がまだ残っているからだ。日本がW杯の決勝トーナメント常連国になるその日まで、精進あるのみである。

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