すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

続・チワワのクーちゃん

2022-12-30 06:06:55 | エッセイ
クーちゃんを妻に紹介する

 今回もチワワのクーちゃんの話をしよう。彼は近所の靴屋さんの看板犬であり、私とは大の仲良しだった。いつも店先のショーウインドウの上にちょこんと座り、町並みを食い入るように観察していた。

 私の妻も大の犬好きで、クーちゃんの話をすると「ぜひ紹介してくれ」という。で、その日は妻に散歩させてもらうつもりで靴屋さんに行った。

 犬のリード(ひも)を借りて準備完了、クーちゃんに妻を紹介すると「こいつの仲間なんだな」とすぐ理解してくれた。

 妻にリードを預けてクーちゃんを引かせた。すると妻の前を行くクーちゃんはことあるごとに妻のほうをクルリと振り返り、「こいつの仲間はちゃんとついてきているかな?」と確認する。そのしぐさがかわいい。

 なかなか頭のいい犬である。

子供たちに囲まれ団子状態に

 2人と1匹で近くの公園へ行くと、5才くらいの子供たちが数人、遊んでいた。クーちゃんを連れて行くと、たちまち「ワッ」と子供たちに取り囲まれた。

 子供たちはクーちゃんの頭をなでたり、足を握ったりと、引っ張りだこだ。

 てっきりその状況をクーちゃんも楽しんでいるものだと思っていたが、彼は「そろそろ勘弁してもらえないか?」という感じで私のほうをちょくちょく見上げる。

 つまり彼にしてみたら自分を子供たちに触らせ、「サービス」していたわけだ。

 人間の大人みたいな犬だな。そう思い、子供たちに「そろそろ行くよ」と言って帰ってきた。

 さあ靴屋さんの店にもどったら、いつもの「マッサ」タイムだ。

 私はクーちゃんの後ろに回り込み、彼の肩から首にかけてを両手で揉んでやる。すると彼はいかにも「いいわぁー」という感じで目をつぶり、次にマッサージしてほしい部位を自分のほうから私に押し付けてくる。いつものパターンだ。

 こうして今日も私とクーちゃんとの時間は過ぎて行った。

 また明日だね、クーちゃん。

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【サッカー日本代表】新生・森保ジャパンはビルドアップを完成させろ

2022-12-29 07:28:33 | サッカー日本代表
「能動的なサッカーをしたい」

 日本サッカー協会は28日、記者会見で、次期日本代表監督に森保一氏が就任すると発表した。会見では、反町康治技術委員長が森保氏と2時間会談し、「能動的なサッカーに力を注いでもらいたい」などと注文をつけたことが明かされた。

 能動的なサッカーをやるには、まずビルドアップからだ。こうして後方からていねいに組み上げる。

 例えばカタールW杯でGK権田修一は、アバウトなロングボールを放り込むプレーに終始した。そのあとはたいてい相手ボールになる確率が高い。

 そうではなく、例えば足元が得意なGKシュミットを使い、最終ラインからていねいにビルドアップするサッカーをやりたい。それが「能動的なサッカー」のイロハのイだ。

 ビルドアップのバリエーションはいろいろあるが、そのひとつに例えばアンカーが2CBの間に下りて3バックを形成し、そのぶん両SBを上げるパターンは代表例だ。

 またそのほかアンカーがCBとSBの間に下りて展開するケースもある。

 ほかには右(左)のSBが上がり、逆サイドのSBと2CBが右(左)にスライドして3バックを形成するパターンも見られる。

 またスペースがあればCBが積極的に持ち運ぶドリブルをするプレイもアリだ。

 こんなふうにして最終ラインからボールを前へ確実に押し上げ、次の展開をする。能動的なサッカーをするにはこうしたビルドアップが不可欠だ。

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【サッカー日本代表】森保ジャパンとは何だったのか?

2022-12-27 08:03:10 | サッカー日本代表
前半は腰を落として後半勝負

 森保監督の続投報道が出るなか、カタールW杯本大会で豹変して見せたあの森保ジャパンとは何だったのか? もう一度、検証してみよう。

 前半は守備的にブロックを下げて腰を低くし、後半にカウンター勝負をかける。5人になった選手交代枠を使い流れを変えるーー。

 森保ジャパンはそんなスタイルだった。実際、森保監督の選手交代はズバズバ当たり、途中出場の堂安や浅野らがゴールを奪いゲームをひっくり返した。

 引いて守ってカウンター、とよくいわれるが、彼らは守ってばかりじゃなかった。東京五輪でのスペイン戦のようなベタ引きではなく、特定の時間帯には前からプレスをかけて勝負していた。そしてリードすれば5-4-1でピシャリと守り切る試合もあった。

 このコンセプトワークと選手交代は評価されてしかるべきだろう。相手にボールを持たせてショートカウンターを狙う戦い方は機敏だった。

選手の自主性を重んじる

 一方、選手のコメントなどから類推すると、チームは選手と監督が意見を出し合う合議制の集合体だった。

 例えばスペイン戦前のトレーニングでは、森保監督は3-5-2を考えていた。だが、ハマらない。その結果、鎌田の意見を取り入れ、実戦ではフランクフルトが使った5-4-1を採用した。

 こんなふうにモチベーターとして優れる森保監督は、兄貴分のように選手に寄り添った。そのため選手からの不満はほとんど出なかった。

 チーム運営の評価軸としては、こうした選手の自主性を重んじるスタイルで次のワールドカップも戦えるのか? このやり方が代表チームに適合するのか? といったところだろう。

強豪ドイツ、スペインを撃破した

 さて戦績を見れば強豪ドイツ、スペインを破ってGL突破、決勝トーナメント一回戦ではクロアチアと引き分け(PK負け)のベスト16だった。

 この成績はベスト8をめざしたチームとしては、かなりきわどい。目標に「ギリギリ迫るも、達せられなかった」という感じだ。

 GLであのドイツ、スペインに勝つというジャイアントキリングを成し遂げたことは高く称賛されるべきだ。ベスト16でのクロアチアにも記録上は負けていない。

 だがGLのコスタリカ戦では引いて守る相手にボールを持たされ、何をやっていいかわからなくなったあげくにミスから失点している。

 引いた相手に苦戦したこの戦いは、アジア予選で何度も見せられた光景だった。「あれをまた4年間見せられるのか?」と考えるとちょっとうんざりさせられる。

評価は見る人によってちがう

 結論としてこの戦績からは、目標をクリアしたとも、してないとも取れるなんとも微妙な印象を受ける。さらに森保監督の戦績をもっと引いて見るとアジアカップで負け(準優勝)、東京五輪もメダルが取れず、W杯もお約束のベスト16だった、という結果だ。

 もしかしたら森保ジャパンを絶賛している人は、カタール・ワールドカップだけ見てそう言っているのではないか? という印象も受ける。代表チームを4年間見てきた人と意見がちがうのだ。

 だが実際、そのW杯での采配とマネージメントは実に見事だっただけに、評価が分かれるのは当然だろう。

 結局、森保ジャパンに対する評価は、見る人の主観の数だけ存在する、ということになるだろうか。

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【サッカー日本代表】日本がサッカー先進国になるためには?

2022-12-24 04:20:24 | サッカー日本代表
まずメディアの専門性を上げろ

 日本がサッカー先進国になるためには、何が必要か? 

 まずメディアが変わる必要がある。

 例えばドイツとスペインに勝って「感動をありがとう」ではなく、なぜラウンド16を突破できなかったのか? をメディアと国民が徹底的に議論すべきだ。

 もちろん選手に対するリスペクトは必要である。だが、そこで「感動をありがとう」では日本の進歩が止まってしまう。

 逆に「なぜ勝てなかったのか?」について国民的な議論を起こすことで、ベスト8を実現するための肥やしにしよう。

 そして国民が掲げた「こうすれば勝てた」の根拠を、サッカージャーナリストやメディアがさらに専門的に議論する。そうすることで、次のステージへ進むための戦術や戦い方があちこちから提案される。

 そうなって初めて、日本はベスト8への挑戦権を得るのだ。

森保監督は戦術を語れ

 そのためには、もし森保監督が続投するなら、メディア対応を全面刷新すべきだ。

 森保監督のコメントは、ハッキリ言えばどうでもいい抽象的な内容ばかりだ。

 もしかしたらサッカーを知らない層に配慮しているのかもしれないが、この際そこを改め、森保監督にはコメント対応で一歩踏み込んだ専門的な主張をしてほしい。

 もっと戦術的なコメントをするべきだ。示唆に富む発言をしてほしい。

 例えば試合の途中でフォーメーションを4-3-3から4-2-3-1に変えたら、その意図を説明する。

「敵の中盤が利いており、特にウチのバイタルエリアが自由にやられていた。それを防ぐためにボランチを2枚にしたーー」などというふうに。

 代表監督がサッカーをいかに語るかは、その国のサッカーが発展するに当たり影響力が大きい。それによって国民のサッカーIQがグンとアップする。

 森保監督には、ぜひサッカーファンが聞いたら「何か」を得られるコメントをしてほしい。

メディアの突き上げがサッカーを育てる

 一方、サッカーを報道するメディアの責任も大きい。

 例えば「ドーハの歓喜」などという大仰なタイトルをつけ、感動を盛り上げようとするだけでなく、「もっとこう戦えば敵を徹底的に叩けた」のような戦術的な記事やコメントをふやす。

 そうすることで国民的なサッカーIQが上がり、選手や日本サッカー協会に対する要求もきつくなる。

 選手や協会はそういう厳しい監視の目にさらされ、下手なことができなくなる。これによって彼らのレベルが上がれば、サポーターにとってもひと粒で二度おいしい。

 サッカー業界とファンは、こういう互いが互いを育てるWin-Winのいい関係を構築したい。

 ヨーロッパや南米などのサッカー先進国では、そんな環境がすでにある。だから彼らは強いのである。

 日本はうわごとのようにただ「ベスト8をめざす」というだけでなく、それを実現するための国民的、国家的なサッカー環境を作るべきだ。

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チワワのクーちゃん

2022-12-22 08:12:48 | エッセイ
神社の狛犬のような「あいつ」

 以前、うちの近所に「クーちゃん」という名前のチワワがいた。彼は靴屋のおじさんの飼い犬だった。

 その後、このクーちゃんと私は「同士」とでもいうべき深い同盟関係を結ぶことになるのだが……なにしろ彼との出会いは衝撃だった。

 私はそのとき自転車に乗り、何の気なしに町の通りを眺めながら走っていた。すると目の端に、何か異様なものが引っかかった。

「今のはなんだろう?」

 私は自転車を回れ右させ、もと来た道を戻って行った。町並みを注意深く眺めながら。

 すると目に留まったのは、一匹の犬だった。

 そいつは靴屋の店先のショーウインドウの上にちょこんと乗り、まるで神社の狛犬のような状態で道行く人を興味深そうに眺めているのだ。店の人はいない。

 思わず私は駆け寄り、手を差し出した。だがヤツはまったく関心がない様子だ(あとで知ったが、こやつは女性にしか興味がないらしい)。

 仕方がないので、私は自分の十八番を出すことにした。マッサージだ。

 そっとヤツの後ろに回り込み、犬の肩から首にかけてを丹念に両手でマッサージする。私の得意ワザだ。するとヤツはとたんに、「いいわぁー」といううっとりした表情を浮かべてカラダを私の手に押し付けてくる。

 しかも自分が揉んでもらいたい部位を順番に押し付けてくるのだ。

 かくてこのときマッサージという、彼と私との深い契りが固く結ばれるきっかけとなる行事が確定した。私はその後、店に行ってはイの一番に彼にマッサージするハメになった。

飼い主を置き去りに

 女性にしか興味がなく、男性が構おうとしてもつれない素振りのクーちゃん。だが「マッサ」という強力な武器をもつ私にだけはえらくなついた。

 あるとき店に行くと、クーちゃんも飼い主さんもいない。

 散歩にでも行っているのだろうか? 店の近所を探してみると、やっぱり見つけた。ヤツは一時的にリードを解かれ、飼い主のおじさんと道に佇んでいた。300メートルくらい先だ。

 私はクーちゃんを見つけたのがうれしくて、思わず「クーちゃん!」と大声で叫んで速足で駆け寄った。

 すると私を発見したクーちゃんはしっぽを激しく振りながら、でも申し訳なさそうに飼い主のおじさんのほうを見上げている。

 ヤツは頭がいいから、飼い主を放って私のもとに駆け寄ることに気を遣いためらっているのだ。だがその後、彼は飼い主のほうを2~3度、見上げたあと、ついにガマンできなくなった様子で私のほうに走り出した。

 そのあとを飼い主さんが走って追いかけながら、「こいつ、飼い主をないがしろにしやがって」と笑いながらついてくる。

 かくてクーちゃんは私の元にやってきて、いつものポジションでいつものマッサージにありついた。あのときの気持ちよさそうな顔ったら。やれやれ。

小脇に抱えて

 またあるときは、こんなこともあった。

 いつものように靴屋さんに訪問し、クーちゃんといっしょに散歩に出た。

 すると間の悪いことに、私は激しい尿意に襲われてしまった。

 公衆トイレへ行くとして、クーちゃんをどこかに括り付けておくところはないか? 探したがあいにく見当たらない。

 仕方がないので私はクーちゃんを小脇に抱えたまま、その状態で用を足すことにした。

 その最中、クーちゃんのほうを見ると、彼は私がなにをやっているのかまるでお見通しのように大人しく静かに私の腕にブランとぶら下がっている。

「もうそろそろにしろよ」とでも言いたげに彼は私のほうを見る。

 そのシチュエーションに思わず私は吹き出しそうになってしまった。

 こんなふうにクーちゃんとの傑作なエピソードは数多い。機会があったら、また書くことにしよう。

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【サッカー日本代表】森保続投なら「ここ」を修正せよ

2022-12-21 04:23:27 | サッカー日本代表
デザインされたセットプレイがない

 巷間、森保監督の続投がしきりに囁かれている。

 もし森保監督が続投するとすれば、すなわち森保体制下であいまいだった課題がそのまま放置されるということになる。続投するなら最低限、そこは修正してもらわなければ困る。

 なお戦術的な修正点についてはこの記事で指摘したので、今回はその他の修正点について上げておく。

 まずカタールW杯での森保ジャパンは、デザインされたセットプレイが欠如していた。

 森保ジャパンには、かつての本田圭佑氏のFKのような飛び道具がない。ないなら、トレーニングで作るしかない。だがここが曖昧なまま本大会に入った。致命的である。

 セットプレイはメニューを組み、トレーニングさえやれば完成できるはずだが、それをやらなかった。怠慢というしかない。ここは修正してもらわなければ困る。なにしろセットプレイはやればやっただけ上積みが期待できるのだ。

 静止した状態で始められるセットプレイは、修練すればするほど実入りは上がる。やらないなどというテはないはずだ。

FWの決定力が改善されない

 さて次なる修正点はFWの決定力である。

 例えばカタールW杯でのドイツ戦で、浅野は完璧なボールコントロールから至近距離でGKノイアーの頭上を打ち抜いた。だがそれ以来、彼はそんな超ド級のシュートは二度と放っていない。ミスばかりだ。

 やはりあのゴールは「奇跡」だったというしかない。

 また前田大然の前線からの「鬼プレス」は効いていたが、彼の得点はクロアチア戦の1点のみだ。守備では利いていたが、得点力には欠けていたというしかない。

 もっともFWの決定力不足は今に始まったことではないが、これについては引き続き改善に努めていくしかない。

「個」の技術不足は永遠のテーマだ

 第三に目立ったのは、クロアチア戦のPK戦であらわになった「個」の技術不足だ。あのPK戦では日本の選手はボールを置きに行ってしまった。

 もちろんPKについてはセットプレイと同じく練習するしかないが、「個」の技術不足という点では「止める、蹴る」の基本的な正確性の積み重ねが必要だ。

 日本人選手の「個」の技術は昔とくらべれば飛躍的に上がったが、まだヨーロッパや南米の選手とくらべると劣る点が目立つ。

 ひとつひとつのプレーを大事にし、くれぐれも「止める、蹴る」の正確性の積み重ねを大切にしてほしい。

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【サッカー日本代表】森保続投なら「条件」ありだ ~戦術編

2022-12-20 05:49:48 | サッカー戦術論
W杯決勝を尻目に「森保続投」が既成事実化

 世の中がアルゼンチン VS フランスの激闘の決勝戦に沸くなか、日本サッカー協会の田嶋幸三会長の思惑通り、森保監督の続投が既成事実化しようとしている。

 レーヴやビエルサなど大物も取り沙汰されているが、予算を考えればわかる通りすべてダミーだ。いちおう「外国人監督も検討しました」というアリバイ作りである。

 てなわけで本命の「森保続投」はほぼ決まりなのだろう。あーあ、という感じだが、それがもし本当なら高いハードルを設定しチームを鍛えたい。

ポゼッションとカウンターの使い分けを

 まず世の中的にはカタールW杯での森保ジャパンの守備的な戦いを見て、「そろそろ主導権を握るサッカーをやってほしい」という十年一日の希望がまたぞろ寄せられている。

 ただ勝つだけじゃ満足できない、ってわけだ。

 そうなると森保ジャパンは、カウンターとポゼッションを使い分けるチームでなければならない。

 敵が低いライン設定でカウンターを狙っているなら、ポゼッション・スタイルでこちらから仕掛けて圧倒する。攻め切ってしまう。

 かと思えば敵がラインを上げて遮二無二攻めてきたら、ブロックを低く構えてカウンターで打ち取る。

 そんな戦況に応じた機敏なサッカーをするべきだ。

最終ラインからビルドアップする

 またカタールW杯での森保ジャパンは、GKの権田がアバウトなロングボールを放り込んでばかりいた。ここも変えたい。

 もちろん前線にフリーの味方がいればロングボールもありだが、そうでないならGKに足元がいいシュミットを使い、最終ラインから丁寧にビルドアップするサッカーをしたい。こうして組み上げ、意図のある攻撃をする。

 ビルドアップのパターンはいろいろだ。4バックの右SBが上がれば残る3枚が右にスライドし3バックを構成して味方を押し上げる。

 あるいはCMFがCBの間に落ちて3バックになり、両翼を上げて前線をうかがう。これで中盤までボールを運び、中盤で組み立てて相手ゴールを狙う。

 こんなふうに「主体性のあるサッカーを」というなら、まずビルドアップからだ。

オーバーロードで敵を釣る

 こうしてポゼッションし、ゾーンのギャップでボールを受けて敵をゆさぶる。

 あるいはオーバーロードで一定のエリアに意図的に選手を集中させ、逆側にスペースを作って活用する。

 つまり逆サイドにアイソレーションを作り出し、そこに三笘を使って勝負させる。

 またはSBの選手が内側に絞って偽SB化し、敵の中盤の選手を中へ釣って同サイドのウイングに1対1の状況を作り出す。そこで仕掛ける。

 こんなふうに戦術的にテンプレート化された崩し方は多い。

 だがカタールW杯でのわが日本代表は、ボールを持たされポゼッションせざるを得なかったコスタリカ戦を見ればわかる通り、攻め手に回った場合の戦術がカケラもなかった。「主体性のあるサッカー」を求めるなら、森保ジャパンはこうした攻めの手をマスターし、戦術的に動いてほしい。

W杯本大会を見据えた戦術的な強化を

 カタールW杯での森保ジャパンは、ただなんとなく「選手まかせ」でアジア予選を戦った。

 で、本大会に入ればほぼぶっつけ本番の3-4-2-1で、相手にボールをもたせて勝つサッカーをした。

 あんなドタバタはもう御免だ。森保監督はアジア予選のときから「本番」を見据えて戦術的に強化してほしい。

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【カタールW杯】森保監督は続投すべきか?

2022-12-09 08:22:28 | サッカー日本代表
森保氏が選手に求める「自主性」は、学校教育の「学級会レベル」だ

 カタールW杯で日本は負けたが、森保続投論が叫ばれている。一方、私は監督を代えるべきだと考えているが、その理由を説明しよう。

 まず森保監督は選手の自主性を重んじる、といわれる。確かにこれだけ聞けば「すばらしい」と思ってしまいがちだが、問題は内容だ。

 結論から先にいえば、森保監督が選手に求める自主性は「学級会レベル」であり、とてもプロサッカー選手に求めるような高度なものじゃない。

 例えばサッカーには「どんなサッカーをやるのか?」という「ゲームモデル」がある。そしてそのモデル(目標)を実現するために、試合の各局面ごとに「どうプレイすべきか?」という「プレー原則」がある。(くわしくは最下段の【関連記事】を参照のこと)

 これはチームの約束事だ。三笘が「このチームには約束事が必要だ」と問題提起した例のヤツである。

 サッカーのプロ監督なら最低限、選手にこれらを提示して徹底しておくべきだ。

 だが森保監督はこんなレベルのものまで「選手まかせ」にしてしまう。

選手が勝手にシステムを考えろ?

 ひどいときには、ある試合で相手チームが試合中にシステムを変え、4-1-2-3のアンカー・システムだったものを、4-2-3-1のダブルボランチにしてきた。

 機能していた日本の中盤にフタをするためだ。バイタルエリア対策である。

 この対策を取られて以後、活発に機能していた日本の中盤は沈黙した。

 だが森保監督はここで有効なシステム変更や選手交代を行わず(見当はずれな策は打ったが)、「選手の自主性にまかせた」。

 つまり「お前ら、自分の頭でシステムを考えて変更するなりして解決しろ」ということだ。

 ここまで極端な放任主義では、試合にならない。

選手からの建設的な提案なら考慮する意味はあるが……

 もちろん日常生活のちょっとしたことを「選手まかせ」にする程度ならわかる。だが最低限、ゲームモデルとプレー原則くらいは監督主導で植え付けるべきなのだ。

 そうでないとどんなサッカーをやっていいのか、チームはバラバラになってしまう。

 もちろん選手の側から、「そこはもっとこうやったほうがいいのではないか?」という建設的な意見が出るなら、対応するのもいいだろう。

 だがあくまで原則は必要である。原則がなければ考えるための叩き台すらない状態になってしまう。「戦術・三笘」とか「戦術・伊東」などと言ってる場合じゃない。

森保監督を解任せよ

 それだけじゃない。森保監督の「選手まかせ」は、その他のサッカーに関することがらの広範囲におよぶ。

「選手に自分の頭で考えさせ、結論が出るならそれがベストだ」という考え方だ。

 だが繰り返しになるが、それは学校教育でやるべきことだ。プロ選手を扱い育てる代表監督がやるべき話ではない。

 結論として、私は森保監督を解任すべきだと考える。

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【カタールW杯】クロアチア戦、1点リードのあと守り切るテはなかったか?

2022-12-08 05:48:26 | サッカー日本代表
5-4-1ブロックを自陣に敷く

 クロアチア戦で、日本は前半43分に前田のゴールで先制した。

 結局、このあと後半10分にクロアチアのペリシッチに同点ゴールを叩き込まれ、PK戦に持ち込まれたのだが、「日本は先制点を守り切るテはなかったか?」という議論がある。

 この大会、日本は初の先制ゴールを上げた。

 選手の心理としてはイケイケで攻めたいところだ。で、結局、殴り合って同点に持ち込まれた。

 では後半を丸々、守り切るテはなかったか? つまり5-4-1のブロックを自陣に敷き、腰を低くして1-0のままスペイン戦みたいに守り切るのだ。

ロングボールへの対処が日本は苦手だ

 これには3つの点で難しい面があった。

 ひとつは選手のメンタル面だ。「初めて先制し1点リードした。よーし、2点目を目指して攻め切るぞ」となりがちなメンタリティが選手にあった。

 ここからベタ引きして守り切るのは、堅守速攻を極めているチームでなければむずかしい。

 つまり日本は形は堅守速攻だがあくまで急場の付け刃であり、メンタリティまで「守り切る」心理にはなりにくかった。中途半端なのだ。

 第二に、クロアチア戦はドイツやスペインとちがい、日本もある程度ボールがもてた。これが油断につながった。ゆえに1点先行したあとも、ボールが持てる分そこで選手は守備に意識が行かなかった。もちろん「先制したのが早すぎた」というのもあるが。

 第三に、クロアチアはドイツやスペインとちがい、ポゼッションに偏らず割り切ってロングボールも放り込んできていたこと。

 身長、体格のちがいもあり、こうなると日本はいつ「出会いがしらの一発」を食らい失点するかわからない。高さを生かして攻めてくる相手に対し、最終ラインを引いて守備をするのは危険だ。

堅守速攻の国としても日本は甘い

 以上のような理由から、日本は攻め合いを選び、失点してPK戦にもちこまれた。

 もちろん攻め合いを選んだのは、「守り切るのでなく攻め切るんだ」というポジティブな理想を追い求めた結果だろう。

 あるいは逆に日本のような急場しのぎの5-4-1でなく、年月を重ねリードして逃げ切るノウハウをもつ堅守速攻の伝統国なら、無失点のまま守り切れたかもしれない。

 だがいずれにしろ、クロアチアが予想通り試合巧者だったことだけはまちがいない。

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【カタールW杯】堅守速攻は「悪」か? ~ハリル時代に先祖帰りの森保ジャパン

2022-12-07 07:20:26 | サッカー日本代表
堅守速攻は弱小国が必ず通る道だ

 思えば堅守速攻を志向していたハリルジャパン時代、「主導権を握る戦いが必要ではないか?」とハリル政権に異議申し立てをする論議が盛んに行なわれた。

 かくてハリルは切られ、森保ジャパンが立ち上がったわけだが、結局やってることはほとんど同じだ。5-4-1の低いブロック守備で敵の攻撃をかわし、少ないチャンスに賭ける戦いで彼らはグループリーグを突破した。

 そしていま、またぞろ同じ「あの議論」が湧き起っている。

「森保ジャパンの堅守速攻では、日本の未来はないのではないか?」

 堂々巡りもいいところだ。

 日本のような弱小国が強豪国に立ち向かうとき、堅守速攻を武器にするのは当然の帰結なのだが。

目標設定がおかしい日本

 そしてSNSを見れば、また「メディアモンスター」の本田圭佑氏が「目標はベスト8じゃない。優勝をめざすんだ!」などとさかんに煽っている。

 日本は目標設定がおかしいのだ。

 日本人は主導権を握るサッカーを目指した、あのジーコジャパンとザックジャパンの大失敗を忘れたのだろうか?

 順番はそうじゃないだろう。

 まずは堅守速攻でW杯の決勝トーナメントの常連国になる。

 それが日本の第一目標のはずだ。何度も何度も毎回決勝トーナメントに出て、「日本のサッカー」を世界の目に焼き付ける。

 まずはそれが日本が登るべき「山の五合目」である。

 そしてラウンド16にすっかり定着したら、次は初めてベスト8、その次は優勝をめざす。

 それが順序というものだ。

現状分析がまちがっている日本。目標の再検討を

 ところが気の早い日本人は、決勝トーナメントにせいぜい数回ていど進出しただけで、「次は優勝だ! そのためにはポゼッション・スタイルで戦う必要がある!」

 などと騒ぎ始める。

 世界のサッカーを舐めているのも、いいところだ。

 もちろん長期的には、日本もクロアチアのように戦況に応じてポゼッションとカウンターを使い分け、長いW杯を抜け目なく戦い抜く必要があると考える。

 だが日本はもうすでに、歴史のあるクロアチアと肩を並べる強豪国なのだろうか?

 カン違いも甚だしい。

 日本人は目標の再設定と、その目標実現のためにはどう戦うのか? を、もう一度、ゼロから検討し直す必要がある。

 一足飛びに、ワールドカップが取れるはずもない。

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【カタールW杯】課題を残したクロアチア戦 ~日本代表1ー1(PK:1-3)クロアチア代表

2022-12-06 07:35:01 | サッカー日本代表
5-4-1で守るパターンしかない

 試合は1-1のまま延長戦に入り、それでも決着がつかずにPK戦に突入したが、日本が敗れた。

 試合は日本が1点先行して進んだが、追いつかれた。あそこで突き放す2点目を取れなかったのが痛かった。

 今大会が残した課題はたくさんある。

 まず日本は5-4-1の受け身でしか戦えず、攻めのバリエーションがなかったこと。能動的にブロックを上げ、アグレッシブに攻めるパターンがなかった。

 またセットプレイになんとなく入り、トレーニングで詰めた特有のバリエーションがなかった。

 それからFWに決定力が決定的になかった点だ。

 これらの課題を持ち帰り、また明日から精進だ。

 日本は本当によくやってくれた。

 なお次は監督とGKを代え、シュミットを使い最終ラインから丁寧にビルドアップするサッカーを目指してほしい。

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【カタールW杯】クロアチアの3センターは精密機械だ

2022-12-05 05:00:23 | サッカー日本代表
スペインより狡猾で守備が堅い

 決勝トーナメント入りした日本の最初の相手はクロアチアである。

 グループFを2位で突破したクロアチアは、前回大会の準優勝チームだ。もっとも総合力は前回より上とみられ、ドイツ、スペインという強豪国を倒した日本にとっても難しい相手になる。

 クロアチアは基本、スペインのようにポゼッションするチームだが、戦況に応じて抜け目なくブロックを下げてカウンターに移行することも得意だ。

 スペインよりも狡猾で、守備が堅いチームである。

モドリッチら中盤の3センターがチームの核だ

 クロアチアのフォーメーションは鉄板の4-3-3だ。

 なかでもインサイドハーフのルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)とマテオ・コバチッチ(チェルシー)、アンカーのマルセロ・ブロゾビッチ(インテル)の3人が中盤に君臨する。彼ら3センターがチームの核である。

 彼らは非常に技術レベルが高く、2タッチ以内の少ないタッチ数でリズミカルに素早くプレーする。運動量も豊富で、3人が入れ替わりながらローテーションで動く。

 例えばスペインはセルヒオ・ブスケツが固定的にアンカーを務めたが、クロアチアの場合はもっと流動的だ。

クロアチアはミドルプレスが基本

 クロアチアは相手ボールのときにはミドルプレスが基本だ。日本はボールを保持する時間帯も作れるだろうが、その際は相手からボールを奪った瞬間がポイントだ。

 日本は素速いポジティブ・トランジション(守から攻への切り替え)から、中盤力を生かした速いショートカウンターを打てば効果的だろう。

 日本が組むブロックは非常にコンパクトなので、仮に最終ラインでボールを奪ったとしても前への速いカウンターが利く。

 ただしクロアチアは今大会、3試合で1失点しかしてない堅守のチームだ。それだけにもし日本がクロアチア戦でも5-4-1システムでの「撤退戦術」を取れば、両者0-0のまま延長・PK戦まで考えられる。

 いずれにしろ、日本にとっては天王山といえる難敵である。

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【カタールW杯】クロアチアにボールを持たせて勝つ

2022-12-04 04:50:11 | サッカー日本代表
コスタリカに負けた反省点
 
 日本はなぜドイツとスペインに勝ち、コスタリカに負けたのか? おそらくそれはドイツやスペインがポゼッションする攻撃型のチームだったからだ。

 逆に日本は「相手にボールを持たせて勝つ」カウンター型だ。ゆえに攻守の噛み合わせがよかった。

 ではなぜ日本はコスタリカに苦戦したのか? それは彼らが同じカウンター型のチームであり、「攻めないことを厭わないスタイル」だったからだ。

コスタリカはボールを放棄した

 アジア予選でも同様だが、日本はこのテのカウンター・スタイルのチームにボールを持たされ、「どうぞ攻めて下さい」とやられると苦戦する。

 とたんに何をやればいいのかわからなくなる。

 日本のようなポゼッション・スタイルじゃないチームがボールを持たされると、「意味のないポゼッション」に陥りがちなのだ。

 その点、ラウンド16のクロアチアはカウンター攻撃が得意なだけに要注意である。森保ジャパンもカウンターのチームだけに嚙み合わせが悪くなる。

攻撃に移ると守備のバランスが崩れる

 そんなクロアチア戦では、何を警戒するべきか?

 攻撃とは、みずから守備のバランスを崩して行う行為である。

 とすれば日本はボールを保持している際、自分たちが攻守のバランスを崩した状態で不意を突かれてボールを失うことに注意する必要がある。

 こういう態勢のときにボールを奪われると、失点しやすい。

 カラダのバランスが崩れていると倒れやすい(カウンターを食らいやすい)のと同じだ。

 ならば考えようによっては、日本は5-4-1でクロアチアにボールを持たせてしまい、カウンターのスキをうかがったほうが有利に運ぶかもしれない。

 敵が攻撃態勢を取り、みずから守備のバランスを崩してきた瞬間が、狙い目である。

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【カタールW杯】3バックを開花させた「森保マジック」に乾杯だ

2022-12-03 05:45:45 | サッカー日本代表
敵にボールを持たせて勝つ

 ついに日本がW杯決勝トーナメントに進出した。

 ひとことで言って、しぶといチームである。

 躍進のカギは要所で使う3-4-2-1だ。

 森保監督は一時代を築いたサンフレッチェ広島監督時代、この3-4-2-1を駆使し「敵にボールを持たせて勝つ」という蘊蓄を培った。つまりカウンター・スタイルだ。

 それが今まさに花開いている感じがする。

 攻撃を司る3-4-2-1。要所での攻撃的な5-2-3ハイプレス。最後は5-4-1で敵にボールを持たせて時間を使う。まさに「森保一のサッカー」だ。

 フォーメーションを3-4-2-1から5-2-3、5-4-1と、3バック基調で戦況に合わせて変幻自在に変化させている。

 まるで万華鏡のようなチームである。

ズバズバ当たる用兵術

 選手起用もズバリと当たる。

 森保監督が「槍の切っ先」として選んだ前田大然は、スペイン戦でアンカーのセルヒオ・ブスケツへのパスコースを遮断した。

 ドイツ戦に続きスペイン戦でも、途中投入した堂安律が衝撃の同点ゴールを決めた。
 
 同じく途中出場の三笘薫は、田中碧の逆転ゴールを引き出すゴールラインぎりぎりでの絶妙な折り返しを見せつけた。

 それだけじゃない。

 スペインがジョルディ・アルバとアンス・ファティを同時投入してきた際、彼らを防ぐ右サイドの守りとして冨安健洋を途中起用し抑えて見せたのにも舌を巻いた。

 もう何をやっても当たる状態だ。負ける気がしない。

 さて次から始まる決勝トーナメント。

 いったい森保マジックは、世界にどんな驚愕の舞台を用意しているのだろうか?

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【カタールW杯】日本が堂々、スペインに逆転勝ち ~日本 2-1 スペイン

2022-12-02 06:56:36 | サッカー日本代表
後半8分に田中が逆転ゴールを決める

 日本は前半11分にスペインに先制され、前半の残り30分以上を1点リードされたまま耐えに耐えた。

 すると後半3分。日本はハイプレスからボールを奪い、途中出場した堂安が右から強烈なシュートを放つ。ボールはGKシモンの手を弾いてゴール右に入る。これで日本は同点に追いついた。

 日本はその後立て続けに後半6分。三苫がペナルティエリア左から、ゴールラインを割る寸前のボールをよく折り返し、受けた田中が届くかギリギリのボールをよく詰めてゴールし逆転した。

 逆転後、日本はスペインにボールを持たせ、自陣に5-4-1のブロックを敷いて守り切った。

 そしてタイムアップ。かくて日本は堂々の逆転勝ちを決めた。

前半11分、モラタが先制しスペインがリード

 日本のフォーメーションは3-4-2-1。スタメンはGKが権田修一。CBは右から板倉滉、吉田麻也、谷口彰悟。右WBは伊東純也、左WBは長友佑都。

 CMFは守田英正と田中碧。2シャドーは久保建英と鎌田大地。ワントップは前田大然だ。

 一方、スペインのフォーメーションは4-1-2-3。GKはシモン、最終ラインは右からアスピリクエタ、ロドリ、P・トーレス、バルデ。

 アンカーはブスケツ。インサイドハーフはガビとぺドリ。最前線は右からウィリアムズ、モラタ、オルモである。

 日本の入りはミドルプレスだ。無理をせず機を見てプレッシングする。試合はがっぷり四つだ。立ち上がり、日本はゴール前の混戦からシュートチャンスを得るが果たせず。

 ところが前半11分。日本は右サイドからアスピリクエタにダイアゴナルなクロスを入れられ、モラタにあっさりヘディングシュートを決められる。早くも0-1だ。

 日本のDFは競っているように見えなかった。あんな簡単に決められるのでは話にならない。この試合、先が思いやられる感じがした。

日本はビルドアップもパスもままならず

 日本はまったくビルドアップができない。マイボールにしても、結局、GKにバックパスして権田がアバウトなロングボールを入れて終わる。

 スペインボールの時、日本は両WBが引き、5-4-1で守備をしている。日本はボールを奪えてもパスがぜんぜんつながらない。

 日本は30分ごろからラインを上げて守備をし始めた。スペインが延々とポゼッションし、日本はまるで守備練習をしているかのようだ。

 スペインは6分(ぶ)から7分くらいの力でやっているような感じだが、日本はボールをなかなか奪えない。

 日本はスペインをリスペクトしすぎ、「死に物狂いのファイト」や「ガムシャラな気合い」のようなものはまるで感じられない。メンタルの問題だ。コスタリカ戦に続き、日本はただ平凡に「やってるだけ」だ。

選手交代が的中し堂安が同点ゴールを決める

 日本は後半立ち上がりから、久保に代えて堂安、長友に代えて三笘を投入した。

 すると後半3分。日本はハイプレスからボールを奪い、堂安が右から強烈なシュートを決める。これで1-1、同点だ。

 立て続けに後半6分。今度は堂安がペナルティエリア右からグラウンダーのパスを出す。

 するとペナルティエリア左から三笘がゴールラインを割るぎりぎりで中央に折り返す。最後は田中が詰めた。2-1と日本が逆転した。

 これで完全に空気が変わった。前半の日本はゾンビのようだったが生き返った。

スペインは淡白な試合ぶりで敗退する

 後半16分、日本は前田に代えて浅野を投入。

 後半24分、鎌田に代えて冨安を投入。冨安を右のWBにし、伊東を前に出す。

 後半42分。日本は田中に代えて遠藤航を投入。守備固めだ。

 リードしている日本は最後の20分間、自陣にブロックを組んでスペインの攻撃をはね返し続けた。そしてタイムアップである。

 日本はこれで堂々ドイツとスペインに勝ち、勝点6でグループリーグ突破を決めた。決勝トーナメント1回戦で日本はクロアチアと対戦する。
 
 日本は同点ゴールを決めて以後メンタルが爆発し、活気づいたチームは一気に試合をひっくり返した。課題は気の抜けたような前半の試合ぶりだ。一方のスペインは2位通過を意識したのかそれほど脅威になるような威圧感もなく、淡白な試合ぶりに終始した。

 さあ、あとは日本がどこまで決勝トーナメントを勝ち進めるかだ。

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