すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【シリア戦・分析】ハリルはいったい何を考えてシリア戦に臨んだのか?

2016-03-31 21:21:19 | サッカー日本代表
ハイプレス&ショートカウンターの「テスト」だったシリア戦

 ロシアW杯・アジア2次予選最終戦。いろんな意味で「てんやわんや」だったあのシリア戦を終え、ネットコミュニティも含めて日本のサッカー界内外で、いま大論争が起こっている。

「原口をボランチに起用するとは何だ?」

「ハリルは攻守のバランスを考えてないのか?」

「なぜ格下相手に無謀な『撃ち合い』をするのか?」

「ハリルはいったい何を考えているんだ?」

 今回の記事では、これら論争の疑問にズバリ結論を出そう。実はあのシリア戦は、ハイプレス&ショートカウンターの「テスト」だったのだ。

 ハリルはそのための「オーガナイズ」を用意し、当初からそのつもりでシリア戦に臨んだ。そしてテストゆえ、さまざまな失敗と成功、つまり「てんやわんや」が起こった。テスト=チャレンジとは、そういうものだ。

 だがあの試合はテストマッチではない。W杯予選というド本番ゆえ、監督としては口が裂けても「あれはテストでした」なんて言えない。結果、あの「てんやわんや」だったシリア戦という社会現象は人々の憶測を生み、ああでもない、こうでもないと論争を巻き起こしているーー。こういうことだ。

ハイプレス&ショートカウンターは「公約」だった

 ハリルは代表監督に就任当初から、「ハイプレス&ショートカウンターのチームを作る」と公言していた。つまりタテに速く、である。その意図とは、日本は世界のサッカー界では2~3流国であり、その日本がワールドカップの本大会で勝つにはカウンターしかない、と見切ってのプランニングだったはずだ。

 ところがいざアジア予選が始まりフタを開けてみると、どのチームも日本に対しリトリートでくる。あらかじめ自陣の低い位置に守備ブロックを敷き、「専守防衛」でやってくる。ところがハリルがやりたいカウンター戦術は、当然、相手が攻めて来なければ成立しない。

 W杯本大会ではハイプレス&ショートカウンターで戦うのが理想だ。だがアジア予選では日本は常にその真逆の戦い方を敷いられるーー。つまり「引いた相手をどう崩すのか?」である。ここでボタンの掛けちがいが起こった。「プランとちがう」。おそらくハリルは2次予選初戦、ベタ引きで引き分けに持ち込まれたあのシンガポール戦に、2重の意味で衝撃を受けたことだろう。

「2重」とはどういう意味か? ひとつは遥か格下に勝ち点1しか取れなかったこと。そしてもうひとつは、試合内容がW杯本大会のための強化にまったく役立たなかったこと。つまり日本がハイプレス&ショートカウンターをかける展開にはならなかったことだ。

シリアは2次予選で唯一「テスト向き」だった

 日本はアジア2次予選では、「引いた相手を崩す戦い」を強いられる。だが強豪ひしめくW杯の本大会で日本が勝つには、どう考えても攻め込んでくる列強国にハイプレス&ショートカウンターで挑むのがベストだーー。さて、ここでハリルのジレンマが始まった。あの長かったアジア2次予選は彼にとって、この二律背反との戦いだったにちがいない。

 ところがアジア2次予選でただ一カ国だけ、日本がハイプレス&ショートカウンターを「テスト」できるチームがあった。いうまでもなくシリアである。

 シリアはアジア2次予選の対戦国中、唯一、「引きこもり戦術」ではなく前に出てくるチームだ。しかも好都合なことに、日本はシリア戦を前にすでに最終予選への進出が決まっていた。かくてハリルはやっと、ハイプレス&ショートカウンターを試す機会に恵まれた。そして彼はそれを実行に移した。

 スタメンの顔ぶれは本田、香川を始め、ハリルがロシアW杯の本大会で「これがレギュラーだ」とすでに決めている鉄板スタメンだ。そして戦術は、ハリルがロシアW杯本大会で「こう戦うぞ」と決めているハイプレス&ショートカウンター。かくてシリア戦は、完全なロシアW杯本大会のためのシミュレーションになったーー。これが真相だろう。

では原口のボランチ起用の意図は?

 そしてハリルのテストは半分は成功し、半分は失敗した。成功とは、シリア戦の前半30分までだ。日本代表はこの時間帯、積極的に前からプレスをかけ、タテに速い攻撃で少なく見積もっても5回以上の「完全な決定機」を作った。そして失敗とは、ことごとくそのすべてで得点できなかったことだ。

 後半は、見ての通りである。選手の消耗もあり、ハイプレス&ショートカウンターのシミュレーションをするというゲームプランが崩れた後半は、単なる派手な「撃ち合い」になった。

 では原口のボランチ起用は、いったい何だったのか?

 あのシリア戦、もとからハリルは「前から行く」つもりだった。ゆえに山口蛍が負傷退場した後半には、攻撃的な原口を「攻撃的なボランチ」として送り出した。もともと原口のボランチ起用は、「彼は真ん中でもできる」と繰り返していたハリルの腹案でもあった。つまりこれもテストだ。そして結果はあの通り、これについても半分は成功し、半分は失敗した。

 日本人離れしたフィジカルとアグレッシヴさを持つ原口は、見る者をワクワクさせるような大きな可能性を示した。それほど彼のプレイはダイナミックだった。これが成功だ。そして失敗とは、原口はボランチのセオリーなど知らずやったこともないのだから、当然、ポジショ二ングはバランスを欠く。中盤に「穴」も開けた。

 ではなぜハリルは半分は失敗し、半分しか成功しないような「危ないこと」をやったのか?

 それはシリア戦が「テスト」だったからである。

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【W杯アジア2次予選】てんやわんやのお笑い最終戦 ~日本5-0シリア

2016-03-29 23:51:53 | サッカー日本代表
日本はなぜ実力を出せないのか?

 ことごとく外した前半の決定機を決めていれば、日本は10点くらい入っていた。逆にシリアが好機に決めていれば、2~3点は失点していた。なによりシリアがプレゼントしてくれたオウンゴールがなければ、また遥か格下相手に「0-0」のままハーフタイムに入っていた。相手が消耗し、気持ちが切れた後半にしか点が取れない。

 日本はやればできるのに、何かフィルターがかかったかのように実力を出せないでいる。「5点も取った。バンザイ」で終わらせず、ストイックに問題意識を持っていったい何をすればいいのか、真剣に考える必要がある。特に香川は実力さえ出せればあれくらいはできる。ではどうすれば自分の力をフルに出せるのか、メンタル・コントロールを考えてほしい。

 本当にいろんなことがあった最終戦だった。

 特に原口がボランチで躍動しているのには笑った。気持ちが爆発し、驚くほど伸び伸びしていた。一方、清武は残り時間が少ない場面で出場しながらいいプレイをした。ハリルに指名され、意気に感じたのだろう。ひさしぶりに代表で見た酒井高徳もデキがよかった(特に前半)。

 また金崎は香川のシュートに詰めてゴールの中にスライディングし、しかもそれが自分のゴールにならなかったので真剣にくやしがっていた。大爆笑だ。

 最終予選は、こんなてんやわんやでは勝ち抜けない。いい準備をして、がんばってほしい。

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【手倉森ジャパン】点差と時間帯に応じて速攻と遅攻を使い分けろ

2016-03-28 11:47:37 | サッカー日本代表
時にはポゼッションも必要だ

 ポルトガルに遠征中の手倉森ジャパンは2日前、2012年ロンドン五輪金メダルの強豪、U-23メキシコ代表を2-1で撃破したばかり。だが押し込まれた後半の内容を分析すると、いくつかの課題が浮かび上がってきた。では今夜行われるポルトガル1部のスポルティング戦では、どこをどう修正すべきなのか? 順を追って見て行こう。

 まずメキシコ戦を見る限り、ニュー手倉森ジャパン最大の問題は、点差や時間帯など状況に応じた試合運びができてない点だ。具体的には、マイボールになると何でもかんでもタテへ、タテへと速攻をかけてしまう。せっかくマイボールにしても、ボールをすぐに失うリスクをかけた攻め方オンリーになっている。

 特に押し込まれたメキシコ戦の後半などは、2-0でリードしているのだから速攻が無理な局面ならば遅攻に切り替え、もっと時間をうまく使うべきだった。にもかかわらずボールを取ったら遮二無二タテへ攻め急ぎ、結果、簡単にボールを失いまた猛攻にさらされる。その繰り返しだった。

 金持ち、ケンカせず。勝っているのだから、そんな意味のないリスクを犯す必要はない。もっと局面に応じて安全にボールを横につないだり、ときにはバックパスも織り交ぜながらじっくりポゼッションするべきだ。

 手倉森ジャパンは、そんな緩急の使い分けができていない。

「世界」を目指す、したたかな試合運びを

 もちろんアジア最終予選の戦いぶりを見れば、もともと彼らはポゼッション率にこだわらない速攻カウンターのチームであることはわかる。ゆえに技術的に、また「サッカー脳」的に突然、ポゼッションからの遅攻ができるようになるとは思わない。

 だがリオ五輪で「世界」を目指す以上、点差や時間帯を考えながら、またその局面での敵味方のポジショニングに応じた速攻と遅攻の使い分けは絶対に避けて通れない。真ッ正直にタテへばかり急ぐのでなく、もっとしたたかな試合運びが必要だ。

 むろんこれは「90分間ポゼッション・スタイルのサッカーをしろ」という意味ではない。あくまでタテに速いカウンター速攻スタイルをベースにしながら、ただし局面によっては(それが必要なら)適宜ポゼッションするべきだ、という意味である。

 手倉森ジャパンはまだ荒削りで未完成だが、潜在能力が高い。伸びしろが大きい。そんな彼らが状況を読みながら戦う試合巧者になれば、放っておいても「世界」は向こうから寄ってくるだろう。

プレッシングの使い分けはどうするか?

 第二の問題は、局面に応じたプレッシングの使い分けだ。メキシコ戦、日本は4-2-3-1のシステムでスタートしたが、守備時には形を変えた。例えば試合の立ち上がり、ボールをキープする相手の最終ラインに対し、南野と中島、久保の3枚が最前列でフラットになりプレスをかけるスタイルがよく機能していた。前半2分早々に先制点を取れたのも、このハイプレスゆえだ。

 だが90分間、あのプレスのかけ方を続けるのは厳しい。事実、日本の選手は次第に消耗し、特に後半になると運動量が落ちた。それとともに敵ボールホルダーに対する寄せが甘くなり、余裕を持ってプレイさせてしまうシーンも増えた。

 そして日本がシステムを4-3-3に変えた後半にはブロックが低くなり、前がかりになったメキシコの猛攻をモロに被る形になった(そのため後半9分に4-4-2へ変更)。こんなふうに日本は後半、(テストのため)システムと選手を変えたせいで自分からバランスを崩してしまった。そのせいもあるので割り引いて考える必要はあるが、前からプレスに行けないあの時間帯にどう対応するかは問題だ。

「厳しいプレッシングが90分間続かない」

 もちろんこれは今に始まった議論ではなく、サッカーにおける永遠のテーマといえる。

 対応策としては、例えば時間帯によっては相手ボールになったらある程度リトリートしてあらかじめ守備ブロックを作って待ち受けたり、個人戦術としてはひとつひとつの球際の間合いを詰めて寄せを厳しく、相手を自由にプレイさせないことが重要になる。

 アジア最終予選のときからそうだったが、このチームは特にSHの守備の意識にムラがある。自陣に火がついているのにSHが攻め残ってしまう傾向がある。メキシコ戦ではある程度修正されていたが、やはり時として最終ラインと中盤の選手で形成する4-4の守備ブロックを作れていない。そのためボランチの両脇がガラ空きになり、そのスペースを自由に使われる場面が見られた。SHはプレスバックが必要なときは怠らず、基本に忠実にプレイしてほしい。

 もっとも個人的には、前半の立ち上がりに見せたあの超アグレッシヴなハイプレスを90分間続けるガッツと体力、メンタルを備えた「完成形」を見てみたいが……まあこれは監督が判断する案件だから、希望は希望としてそっと呟いておこう。

決定力は伸びしろ込みで杞憂なし

 あとはやはり決定力だ。メキシコ戦では前半26分に中島がどフリーのシュートをはずした。その1分後には今度は久保が、左SB亀川からのクロスボールをフリーの体勢でヘディング・シュートし宇宙開発した。あの2本の決定的なチャンスを決めていれば、メキシコ戦は前半で完全に終わっていたはずだ。

 ただしA代表とちがいこのチームに関しては、決定力はそう心配していない。なぜならチームの一体感やメンタルの強さのせいで、彼らは自然に「勝負の流れ」を呼び込めるからだ。で、このチームは技術や戦術ではなく「勢いや爆発力」でドカンと試合を決めてしまう(A代表にはこの種のオカルト的な「強さ」がまったくない)。手倉森ジャパンのサッカーは実にスペクタクルであり、兄貴分とはダイナミズムがまるでちがう。

 また今回メキシコ戦では新システムの4-2-3-1を試したが、よく機能していた。特に前でスペースをたっぷり持ったトップ下の中島が気持ちよさそうにプレイした。あのシステムなら、セカンド・ストライカーにもなれる中島の前への飛び出しがいっそう生きる。ワントップの久保とのコンビネーションも抜群だった。

 その久保は攻撃だけでなく、身を削るような粘り強い守備ができるインテンシティの塊のような選手だ。両翼に入った南野と豊川も切れていた。また中央ではチームの心臓であるボランチの遠藤が、左右へのボールの振り分けや要所での鋭い縦パス、逆に相手のパスカットなど中盤の核としてよく利いていた。そんなわけで得点力に関しては、伸びしろ込みで杞憂はない。

守備陣がビルドアップに参加し始めた

 一方、守備陣に関しては、アジア最終予選で乱発したアバウトなロングボールの放り込みをめっきり封印した。相手の攻めをただ弾き返しクリアするだけでなく、奪ったボールを前へ正確に繋ごうとする意識が生まれている。おそらく監督からの指示だろうが、ビルドアップの第一歩になるパスを出そうという意欲が見えるようになってきた。

 最終ラインからのビルドアップに関してはまだ道半ばだが、それを意識するようになった時点で大きな進歩だ。今後に期待したい。かたやDF陣の守備についてはCBの植田、岩波を筆頭に頼もしい強さと高さがある。GKの中村航輔も後半にファインセーブを連発していた。もともと守りはこのチーム最大のストロング・ポイントであり、細かい修正点以外は心配ないだろう。

 唯一、寄せが甘くゾーンの感覚に乏しい新戦力のSBファン・ウェルメスケルケン・際は、ゾーンディフェンスの基礎からやり直す必要がありそうだ。だがそのほかの選手についてはそう大きな穴はない。というよりむしろまだ土の中から掘り出したばかりのダイヤモンドの原石のように、フレッシュで将来性豊かなキラキラした魅力にあふれる選手たちばかりだ。

 さて今夜行われるスポルティングとの強化試合では、ぜひターンオーバーで鎌田と関根、金森を使ってほしい。彼らは押し込まれていたメキシコ戦の後半に途中出場したため見せ場は少なかったが、それでも光るものはあった。ぜひ今度はスタメンで見てみたい。(と、これもそっと呟いておこう)

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【手倉森ジャパン】超アグレッシヴなハイプレス&ショートカウンターで難敵を圧倒 ~日本2-1メキシコ

2016-03-26 11:18:51 | サッカー日本代表
A代表がやりたいスタイルで劇勝

 U-23メキシコ代表と強化試合を行った手倉森ジャパンが、超アグレッシヴなハイプレス&ショートカウンターで劇勝した。メキシコは2012年ロンドン五輪で優勝した強豪国。日本はその難敵を圧倒的な内容で撃破し、いよいよ本当に「メダルの匂い」が漂ってきた。

 アバウトなロングボールの放り込みでリオ五輪アジア最終予選を制したばかりのU-23日本代表が一転、戦術をまったく変えた。空中戦から、地上戦へーー。この日彼らが披露したのは、高い位置から積極的にプレスをかけ、奪ったボールを少ないタッチ数でゴールに叩き込むショートカウンターだった。システムは4-2-3-1だ。

 前からの組織的なプレスで相手陣内でボールを取ると、1~2タッチでグラウンダーのパスをリズミカルに繋ぎ相手ゴールへスピーディーに迫る。このコンセプトは、A代表のハリルホジッチ監督がいつも口を酸っぱくして語っているスタイルだ。U-23日本代表は、そんなA代表が目指している(が未だに実現できていない)サッカーでメキシコを圧倒した。

メキシコのパスコースを寸断する

 特に前半のメキシコは、日本の厳しいハイプレスで自陣に押し込められた。日本にパスコースを完全に切られたあげく自陣でボールを奪われ、いきなり前半2分に失点した。MFの中島が、アジア予選イラン戦で見せた左45度の角度からループ気味のシュートをファーサイドに叩き込んだ。

 自陣でDFがボールをキープしたメキシコは、だがどこにもパスの出しようがないーー。それほど日本のプレッシングは圧倒的だった。

 ポゼッション率こそメキシコのほうが高かったが、もちろんそれは日本の意図的な戦術だ。相手にわざとボールを持たせ、敵のゴールになるべく近いゾーンでボールを狩る。で、速攻をかけて最短距離でゴールを奪う。このゲームプランが見事にハマった。

 リードされたメキシコは後半に入ると一転、サイドを軸に攻勢に出たが、日本は球際でカラダを張る猛烈な守備ではじき返し、失点を「1」に抑えた。最終予選ではキレが悪かったMF南野も切れまくり、前半33分に流れるようなパスワークから1ゴール。FWの久保も最前線で縦横無尽に疾走した。熱いガッツとハングリー精神で敵をねじ伏せる彼らのサッカーには、本当に「魂」を感じる。

 A代表に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいくらいだ。

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【W杯アジア2次予選】終わってみれば点は入るも腑に落ちず ~日本5-0アフガニスタン

2016-03-25 09:42:13 | サッカー日本代表
あんなレベルでは本大会で通用しない

 得点シーンだけ切り取ってみれば綺麗に見える。だがすべてのボールスピードがユルく、あの相手でないと通用しないレベルだ。W杯本大会では絶対に通用しない。例えばドイツ代表がアフガニスタンとやればいったい何点取るか? そう考えればわかるだろう。ひとことでいえば、たかがアジアのお山の大将が、高校のサッカー部レベル相手に5点取っただけの試合だった。

 前半はいつでも点が入りそうなユルい雰囲気の中、だがあのまま無得点でズルズル行きそうなムードだった。緊張感が感じられない。日本はまるで温泉へ慰安旅行に来たおっさんたちのようだった。ひとつひとつのプレーがわずかづつ精度を欠き、しっかり噛み合ってない。圧倒的にポゼッションして何度もシュートチャンスを作るが、点が入らない。

 実際、43分に岡崎の華麗なゴールが決まってなければ「0-0」のままハーフタイムに入っただろう。そうなれば精神的なプレッシャーが生まれ、あのシンガポール戦の悪夢が繰り返されたかもしれない。2点目が入って以降は格下相手に櫛の歯が抜けるようにゴールが続いたが、あの前半の緩みは危機的だった。

日本代表は岡崎に感謝すべきだ

 日本は岡崎、金崎の2トップの後ろにダイヤモンド型の中盤を構成する4-4-2だった。トップ下には清武、左SHに柏木、右SHに原口、アンカーは長谷部である。最終ラインは吉田、森重のCBに左が長友、右が酒井(宏)。GKは東口だ。

 立ち上がりから日本のボールになると、アフガニスタンはするすると全員が自陣に引き込み、DFとMFが4-4の守備ブロックを敷いた。予想通りの専守防衛だ。前半の日本は例によってこの守備固めに手こずり、まるで10年続いた便秘のようにスッキリしない展開だった。両SBが高いポジショニングを取り、サイドからクロスを入れ続けるが決まらない。

 そんな展開の中、最大の殊勲者はなんといっても1点目を取った岡崎だろう。後ろからきたボールを反転しながらゴール方向へ向き直り、次のワンタッチで冷静にマーカーの股を抜いて正確にコースを狙って決めた。先日レスターで放ったオーバーヘッド・シュートに匹敵する美しいゴールだった。なかなか点が入らない前半の重苦しい雰囲気を吹っ飛ばしたあのゴールがなければ、日本はどうなっていたかわからない。

清武は香川を越えた

 このほか選手別では、特に金崎はよくボールに触り積極的に何本もシュートを打っていた。彼のようなハングリー精神丸出しの飢えた狼のような選手がもっと出てこなければ事態は深刻だ。

 特筆すべきは清武だろう。彼は後半13分、第3の動きで中央に抜け出すや、ダイレクトで技ありのシュートを決めた。決定的なスルーパスも出していたし、後半33分には5点目の起点になったアーリークロスも入れた。この試合を見る限り、清武はもはや香川を越えたのではないか? 香川は後半19分に途中出場したが、まるで燃えかすのようだった。さて海外高級ブランド志向のハリルの目にはどう映っただろうか?

 また長谷部も「ここ」という局面で決定的な縦パスを出しており、攻めの起点になる重要な役割を果たしていた。清武が決めたゴールの起点も彼だ。やはり長谷部は替えの効かない選手である(そのぶんA代表の世代交代が進まないのは痛し痒しだが)。

 一方、最終ラインで目についたのは左CBの森重だった。彼は高い位置を取った右SBの酒井に対し、ダイアゴナルな質の高いサイドチェンジのボールを何本も出していた。やはり森重のフィードの精度は魅力的だ。他方、酒井は相変わらずクロスの質や状況判断に難があった。

 途中出場したハーフナーは後半33分に金崎の5点目をアシストしたヘディングでの落としは鋭かったが、全体に動きが鈍重で明らかに周囲とリズムがちがう。あとは監督がどう判断するかだろうか?

もっと強豪国と強化試合をし危機感を持て

 繰り返しになるが、この試合を見て「5点も入った」などと喜んでいては鬼が笑う。相手は遥か格下であることを忘れてはいけない。

 特に気になったのはメンタルだ。むき出しの野心にあふれ、ギラギラと殺気をたぎらせているU-23日本代表とは対照的に、A代表は温泉旅行だ。このままズルズルW杯本大会に突入しては目も当てられない。

 ぶっちゃけ、今のチームの骨格は、あのブラジルW杯で惨敗し燃え尽きたザックジャパンの残党だ。いわば抜け殻が試合をしているのだから緩むのも無理はない。本当なら武藤(嘉)や宇佐美、柴崎らの世代がもっと伸び、ブラジルW杯後に完全に世代交代が実現できていればこうはならなかっただろうが、そんなことを言っても始まらない。

 とにかくハリルジャパンはもっと強豪国と強化試合をこなし、世界における自分たちの位置づけを再認識して危機感をもつことから始めるべきだろう。

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【ロシアW杯・アジア2次予選】この3人がアフガニスタン戦のカギを握る

2016-03-24 08:11:09 | サッカー日本代表
清武、ハーフナー、金崎に注目だ

 2次予選最大の敵であるシリア戦(29日)は、例によってハリルは鉄板スタメンで臨むのだろう。現に疲労のある本田と香川はシリア戦に焦点を合わせ、今夜のアフガニスタン戦では温存されるようだ。

 とすれば新しいチャレンジをやるとなるとアフガニスタン戦しかない。ひょっとしたら2トップのテストもあるかもしれない。そんなアフガニスタン戦の見どころはズバリ、3人の選手だ。清武、ハーフナー、金崎である。

 個人的には、メンタルが極端に弱くデキが不安定な香川はもう、見切ったほうがいいと考えている。特にW杯という大舞台ではメンタルの弱さは致命的だ。暗い雰囲気がチームにも伝染する。とすればアフガニスタン戦でトップ下での先発が予想される清武が、香川を食うようなパフォーマンスを見せられるかどうか? これが第一のポイントだ。

 第二は、ハーフナーの高さをフル活用する新しい戦術オプションが機能するかどうか? 具体的には、A代表の課題であるサイドからのクロスの精度とハーフナーのマッチングを見たい。またアフガニスタンがベタ引きで来た場合、中盤を省略してロングボールを彼に当てるパターンもあり得る。相手の密集した守備ブロックを飛び越すわけだ。

 A代表は過去、こうしたハイボールを使う空中戦をまったくやってこなかった。それだけにハーフナーの起用と、彼を生かした新しい戦術バリエーションが機能すれば重要なオプションになる。特にリードされて残り時間が少ないときや、厳しくプレスをかけてくる相手の守備網をかいくぐるには有効だ。

 ハリルは例のごとくもったいぶって「私は代表に呼んですぐプレーさせることはしない」などと言っているようだが、呼んでおいてテストしないのでは何をやっているのかわからない。(先発かどうかは別にして)もし今回ハーフナーを「充分な時間」使わなかったら、そのときはハリルに対する見方を改めざるをえない。

 さて最後になったがアタッカーの金崎はいうまでもなく、FWのポジション争いに割って入る働きができるかどうかが見もの。昨年11月のシンガポール戦でのゴールが鮮烈だっただけに、期待せずにはいられない。大いに楽しみだ。

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【サッカー日本代表】ハリルはハーフナーを使いこなせるか?

2016-03-18 07:03:34 | サッカー日本代表
クロス欠乏症の代表にフィットさせるには

 ロシアW杯出場をかけたアジア2次予選、アフガニスタン戦(24日)、シリア戦(29日)に向けた日本代表メンバーが発表された。

 例によって海外組総出演の変わり映えしない顔ぶれだが、唯一、注目なのが現体制で初招集された選手。オランダのADOデンハーグで今季13点を取っているFWハーフナー・マイクである。なぜなら高さがある彼の使い方次第で、ハリルジャパンは全く新しい戦術オプションを手に入れることになるからだ。

 ハリルはハーフナーについて、「我々はクロスで点が取れてない。そこでサイドから折り返しを入れ、マイクの頭を狙う」と起用の狙いを語っている。

 また特にアフガニスタンは、リトリートしてあらかじめ低い位置に守備ブロックを作ってくるだろう。となれば日本はパスワークで組み立てるのが難しい局面も出てくる。そんなとき、ハーフナーに早めにロングボールを入れ、落としたところを狙う攻め方もある。ハリルはそんなオプションも考えているようだ。

 ただしA代表は今まで、こういうハイボールを使った攻めを全くやっていない。むしろ香川や本田あたりは、そんなスタイルを軽蔑してさえいるかもしれない。だがそのハイボールを使わなければ、ハーフナーは絶対に生きない。とすれば周りの選手が、彼を機能させるための発想の転換をできるかどうかがカギだ。

 そのためにはハリルがあらかじめ選手たちに対し、ハーフナーを生かすための戦術変更を説明し、納得させておく必要がある。チーム全体としての意思統一が必要だ。つまりハーフナーをチームとして使いこなせるかどうかは、ハリルの人心掌握術にかかっている。

 もしハーフナーが途中出場してきたとき、周りの選手が攻め方を変えてハイボールを使うようになるか? それでも彼らがあくまで地上戦にこだわるようなら、ハリルは「監督失格」だということになる。

 ここは2次予選・3月シリーズ最大の見どころだろう。

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【なでしこ総括】彼女たちは「自分」に負けた

2016-03-10 12:03:38 | サッカー日本代表
アグレッシヴさがなかった豪・韓・中国戦

 リオ五輪アジア最終予選。ひとことで言って今回のなでしこは、相手に負けたのではなく自分に負けた。

 チャンピオンである彼女たちには背負うもの、守るものが多い。それらを失いたくない気持ちが「安全に行こう」と消極的な気持ちを生み、みずから悪循環にハマって行った。

 ボールを持って果敢に前を向くのでなく、安易なバックパスや弱い横パスに逃げる。責任回避する。あげく、その逃げのパスをカットされてカウンターを食らう。球際の競り合いでも粘らず流してしまうーー。「受け」に回ったメンタルの弱さが、すべての消極的なプレイに出た。

 一方、失うものを失ったあとのベトナム戦、北朝鮮戦では、彼女たちの表情は実に晴れやかだった。プレッシャーから解放されたからだ。試合内容もよく、特に雨の北朝鮮戦では、水しぶきを上げながら豪快に相手へタックルしまくる彼女たちの積極的な姿が印象的だった。

 このチームは死んでいない。一時休止しただけだ。

 特に今回、若い横山と中島のプレイぶりには、なでしこの希望の光を見た。

 体制を立て直し、選手を再選考して世代交代を進め、戦術を再構築すれば、世界舞台へのカムバックは案外、早いのではないか。反省と修正は必要だが、悲観することはまったくない。

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【リオ五輪女子予選】これを機に大胆な世代交代を図れ

2016-03-05 09:22:51 | サッカー日本代表
ブラジルW杯で惨敗した王者スペインのようだ

 あのブラジルW杯。なでしこと同様、ショートパスを繋ぐ王者スペイン代表が、研究・対策してきた競合国にズタズタに蹂躙されて予選リーグ敗退した姿を、この予選に重ねて見てしまった。

 初戦のオーストラリアは明らかになでしこより格上に見えたし、韓国、中国もゾーンディフェンスの基本がしっかりしている難敵だった。アジア列強の追い上げは急だ。

 ひるがえって日本はどうか? 

 宮間は3戦通じてミスが多く、いいところがなかった。大儀見、川澄も消えていた。なでしこはもう「宮間-大儀見-川澄」後の若い選手を中心にメンバーを一新し、戦術も見直し監督も交代、ゼロから出発すべきではないか?

 過去、なでしこは世代交代を図る試行錯誤は見えたが結果が出ず、そのたびに元のメンバーに戻してきた経緯がある。だがもう思い切り、「育てる時期」だろう。

 横山や岩渕など、若い選手が出てきてないわけでは決してない。悲観することはない。大胆な若返りを図り、すぐ結果が出なくても我慢して使ってやる。で、「新しい基盤」を固めるべき時ではないか?

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【リオ五輪女子予選】パスワークは冴えたが甘い詰め ~日本1-1韓国

2016-03-03 06:48:55 | サッカー日本代表
リードしたあとの時間の使い方に難

 初戦オーストラリア戦とはまるで別人のデキだった。

 初戦は敵のハイボール攻撃を警戒したのか、最終ラインが深すぎた。そのため最前線との距離が間延びし、サポートが悪くパスがつながらなかった。

 だが韓国戦ではラインを高く保ちコンパクトにし、前からプレスをかける戦いができていた。選手間の距離感もよく、サポートがあるためパスがよくつながりポゼッション率も高かった。選手別では横山のキープ力とキレ、近賀のビルドアップ、川村の攻守に渡る働きが目についた。

 だが残念ながらチャンスに決められず、「内容はよかったが決定力が……」という日本代表おなじみの結果に終わってしまった。

 後半39分にリードしてから時間をうまく使い、ポゼッションしてタイムアップを狙えなかっただろうか?

 一方、韓国は日本にボールを持たせてカウンターを狙うスタイルで、ほぼゲームプラン通りだっただろう。中盤では相手にパスを回させるが最後の一線が固く、なかなか土俵を割らなかった。

 日本は自力の予選突破が消えたが、このゲーム内容なら残り3連勝できると思うので諦めずがんばってほしい。

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