すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【CL 18/19 H組第3節】0-1で勝ち切るイタリアの美学 〜マンチェスター・ユナイテッド0-1ユベントス

2018-10-30 08:26:49 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ユーベが勝ち点9でダントツの首位に

 UEFAチャンピオンズリーグのグループH第3節は、プレミアリーグで不調のマンチェスター・ユナイテッドとユベントスの対戦になった。ユーベは前半17分にアンカーのピアニッチが右サイドへ展開し、右へ流れたロナウドがクロスを入れる。これにクアドラードがゴール前でつぶれ、そのこぼれ球をディバラが押し込んで先制した。

 このあとユベントスはボールを失えば丁寧に自陣に守備ブロックを作る横綱相撲でマンUを寄せ付けず、0-1でキッチリ勝ち切るイタリアのチームらしい試合運びで勝ち点3を重ねた。

 この結果、グループHはユベントスが勝ち点9でダントツの首位。これを勝ち点4の2位マンチェスター・ユナイテッドが追う展開になっている。

いやらしく時間を使うイタリアらしさ

 ユベントスのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがシュチェスニー。最終ラインは右からジョアン・カンセロ、ボヌッチ、キエッリーニ、アレックス・サンドロ。中盤3センターはアンカーがピアニッチ、右がベンタンクール、左がマチュイディ。3トップはクアドラード、ディバラ、ロナウドだ。

 ユーベはMFベンタンクールが右SBとCBの間に落ちてビルドアップする。彼らは前半17分に先制するや、とたんに後ろ半分でじっくり安全にパスを回して時間を使い始めた。まさかこんな早い時間帯から0-1の勝ち切りを見ているのか? 有利に立った局面で、いやらしく時間を使うイタリアのチームらしい試合運びだ。徹底した遅攻がサマになっている。

 一方、マンUは1点を先制されると、まるで目が覚めたかのように自陣に引いて4-4のブロック守備に移行した。相手にボールを持たせてカウンターを狙う作戦だ。リードはされていてもこれ以上の失点を防ぎ、じっくりチャンスを待つ狙いだろう。

 マンUはユーベのビルドアップに対し、ルカクとマタが前で縦関係を作って中へのパスコースを切っているが、さりとてボールをサイドに誘導しハメて回収しようというような組織性は感じられない。

 彼らはボールを奪っても緻密にビルドアップするというよりも、最終ラインから最前線に長い縦パスを当てるダイレクト攻撃か、アバウトなロングボールを放り込むことが多い。ボールを保持してもパスがつながらず、ボールを失ってはまたブロックを作って守備に回り、という悪循環を機械のように繰り返している。

 マンUはボールを奪ってもポジティブ・トランジションが致命的に遅く、モタついている間にユーベにリトリートされブロックを作られてしまう。そのユーベの守備ブロックは岩盤のように固く、引かれてブロックを作られる前に速攻をかけないと得点機は作れない。結局、ユーベのうまい試合運びに、90分間を空転させられた感じで試合は終わった。

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【CL 18/19 F組第3節】シティの攻撃力が大爆発 〜シャフタール0-3マンチェスターC

2018-10-28 09:45:04 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ズルズル下がるシャフタール

 リヨンとの試合(2-2の引き分け)が非常にいい内容だったのでシャフタール・ドネツクには期待したのだが、残念な結果に終わってしまった。

 シャフタールはマンチェスター・シティの攻撃をこわがりラインが徐々にズルズル下がり、カウンター狙いのような形になった。狭いスペースでも存分にプレイできるシティに対し、ラインを下げて守っても意味はない。もっとラインを高く保ち、ライン裏でなくむしろ中盤のスペースを殺すべきだった。

 それでもシャフタールはシティのビルドアップに対し、4-4-2でミドルプレスし、最初はベタ引きはしていなかった。そしてボールを奪うと2タッチ以内の速いパスワークでいい攻撃をする。

 とはいえボールポゼッションは圧倒的にシティが高く、立ち上がりからずっと彼らが押し込んでいる。だが前半から何度も決定的なチャンスを迎えるが、シティは決めきれないーー。

偽SBの予防的カバーリングでカウンター対策も万全

 シティのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがエデルソン。4バックは右からストーンズ、オタメンディ、ラポルト、メンディ。中盤3センターはアンカーがフェルナンジーニョ、右がケガから復帰したデ・ブライネ、左がダビド・シルバ。3トップはマレズ、ジェズス、スターリングだ。

 シティは攻撃時には左SBのメンディが上がり、ディフェンスラインが左にスライドして3バックで攻める。一方、守備に回ると4-1-4-1になる。

 試合が動いたのは前半30分だ。ジェズスのシュートのこぼれ球をダビド・シルバが詰めた。これでシティの攻撃力が一気に爆発する。5分後の前半35分には、シティの左CKからラポルトがヘディングシュートを決めた。

 そしてシティの3点目は後半26分。途中出場したベルナルド・シウバが中央をドリブルで進み、ゴール左スミに強烈なシュートを叩き込んだ。

 3点リードし安全圏に入ると、シティは左右SBのメンディとストーンズが偽SBのポジショニングを取りアンカーの両脇を埋め、2-3-5でビルドアップ。これで予防的カバーリングがバッチリで敵のカウンターへの備えも万全だ。

 尻に火がついたシャフタールは両SBを高く上げ、2-2-3-3で攻め始めるが果たせず。終わってみればシティのいいところばかりが目立つワンサイドゲームになった。シティの快進撃が止まらない。

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【プレミアリーグ 18/19 第9節】拙攻同士の身のない凡戦 〜ハダースフィールド0-1リバプール

2018-10-25 09:08:04 | イングランド・プレミアリーグ
師弟対決となった両監督

 クロップとワグナーという両監督の師弟対決となったこの試合。ハダースフィールドは立ち上がりからハイプレスで激しくハメにくる。その網の目をかいくぐってリバプールがビルドアップする、という展開だ。対するリバプールは、ハダースフィールドのビルドアップに対し3トップでプレッシングする。

 リバプールのフォーメーションは4-3-3。スタメンはGKがアリソン。4バックは右からゴメス、ロブレン、ファン・ダイク、ロバートソン。中盤はシャキリ、ヘンダーソン、ミルナー。3トップはサラー、スタリッジ、アダム・ララーナだ。

 試合は前半24分に早くも動いた。リバプールだ。右SBのゴメスからシャキリに縦パスが通り、そのシャキリがサラーにスルーパスを出す。これで裏抜けしたサラーが軽くゴール左スミにボールを突き刺した。

カウンターの掛け合いはリバプールに軍配が

 両チームともボールを失うとリトリートせず、その場でプレッシングして即時奪回を狙う。必然的にカウンターの掛け合いになるが、ハダースフィールドのほうはボールを保持してもなかなかシュートまで行けない。ボックスの外側でパスを回している感じだ。

 後半になると逃げ切りを見たのか、リバプールはミドルプレスに切り替えた。と同時にハダースフィールドのカウンターを警戒し、ボールを失った場合の帰陣を早くした。これでクロップの思惑通り試合は収束し、リバプールの勝利に終わった。

 ハダースフィールドはハイプレスとファイティグスピリットはすばらしいが、アタッキングサードでの決定力に乏しいのが低迷の原因だ。リバプールはチャンピオンリーグのための先発ローテーションのせいで戦力が落ちて拙攻が続き、ハダースフィールドに決定力さえあれば試合はどうなっていたかわからなかった。

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【マンC攻略法を考える】どうすれば強豪マンチェスター・シティに勝てるのか?

2018-10-24 06:43:46 | サッカー戦術論
引いて守る人海戦術では意味がない

 2018-19年シーズン、勝ち点20で首位を行くマンチェスター・シティが第9節で当たったのは、古き良きイングランド・スタイルを残すバーンリーだった。まさに往年のフットボールと、未来志向のフットボールとの対戦である。

 このゲーム、ポジショナルプレイの花を咲かせて圧倒的な攻撃力を誇るシティに対し、バーンリーは相手ボールになればディフェンディングサードまでリトリートし、「ゴール前にバスを停めて」ボックス内を選手で埋める人海戦術に出た。

 だが精密な技術力をもつシティによって、この古びた戦い方はあっさり無効化された。彼らは猫が歩くほんの一歩分のスペースさえあればすべてを可能にする。ボックス内を仮に11人で埋めても、わずかに残ったスペースを使いシティは余裕でゴールを生み出す。

 実際、この試合では後半9分の2点目のゴールが分水嶺になった。

 シティのサネがペナルティエリア内でバーンリーの選手と交錯し、「PKだ」とアピールしながら倒れた。このときバーンリーの選手たちはプレイを止めてしまったが、審判はファウルを宣してない。すかさずシティにセンタリングを入れられ、ベルナルド・シウバにシュートを決められた。

 前半のバーンリーは失点を1点に抑え、緊張感のある戦い方をしていただけに悔やまれる1点だった。これで緊張の糸が切れ、あとはシティが5点を奪うド派手なゴールショーが演じられた。

ハイプレスでシティのビルドアップを破壊する

 このゲームで実証されたように、シティに対し引いて守る戦い方は意味がない。彼らはほんのわずかなスペースさえあればすべてを可能にするからだ。

 とすれば考えられるのは、ハイプレスでシティの綿密なビルドアップを破壊する方法だ。最前線からマンツーマンでハメてシティにクリーンなビルドアップを許さず、できるだけ前でボールを刈り取ってしまう。で、あとはショートカウンターをかけて素早くゴールを仕留める。

 ただしこの方法とて、もしハイプレスを外されると非常に危険だ。重心が前に偏っているぶんピッチの後ろ半分にはたっぷりスペースがある。ハイプレスの網の目を抜け出したシティの選手に、この後ろのスペースを自由に使われたらひとたまりもない。

 しかもシティはビルドアップ時にアンカーのフェルナンジーニョが最終ラインに落ちたり、左SBを高く上げて残りのDFが中央にスライドして3バックを形成し、3-1-3-3で攻撃を組み立てるなど精密なビルドアップの構築に余念がない。

 おまけにSBが前に出て絞る偽SBのポジショニングをし、シティの4-1-2-3の構造的な弱点であるワンアンカーの両脇のスペースをSBが埋め、敵のカウンターにあらかじめ備える予防的カバーリングを行うなどカウンター対策にもぬかりがない。

 結論をいえば、ぶっちゃけ下位や中位のチームではシティにはとても勝てないだろう。彼らに土をつける可能性があるのはリバプールとチェルシーだけだ。あとはあえて挙げれば、好調時のマンチェスター・ユナイテッドかアーセナルくらいだろう。

 かくして、今季もマンチェスター・シティを中心にリーグが回って行く。いったい彼らを倒すのはどのチームなのか? そんな目でプレミアリーグを観るのもおもしろいかもしれない。

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【プレミアリーグ 18/19 第9節】「王」の底力 〜チェルシー2-2マンチェスターU

2018-10-23 13:11:05 | イングランド・プレミアリーグ
息詰まる熱戦は痛み分けに

 立ち上がりからマンチェスター・ユナイテッドは、チェルシーのビルドアップに対し自陣にリトリートしてブロックを作った。相手をリスペクトし、ボールを持たせてカウンターを狙う作戦だ。

 これに対しチェルシーは、グラウンダーのショートパスをつなぎながらポゼッションする。ポゼッション率は60%。試合は当初、そんな展開が続いた。当然、チェルシーが先制する。

 だが後半10分にユナイテッドが1-1と追いつくや勢いづき、試合は思わぬ展開になる。最後は2-2の痛み分けである。まさにユナイテッドには「腐っても鯛」という言葉がふさわしいゲームとなった。

位置的優位を確保するチェルシー

 チェルシーのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはまずGKがケパ。最終ラインは右からアスピリクエタ、リュディガー、ダビド・ルイス、マルコス・アロンソ。中盤3センターはジョルジーニョがアンカーで右がカンテ、左がコバチッチ。3トップはウィリアン、モラタ、エデン・アザールだ。

 一方、ユナイテッドは4-2-3-1。スタメンはGKがデ・ヘア。4バックは右からアシュリー・ヤング、リンデレフ、スモーリング、ルーク・ショー。セントラルMFはマティチッチとポグバ。2列目は右からラシュフォード、マタ、マルシャル。1トップはルカクだ。

 試合が動いたのは前半21分。右CKからリュディガーがヘディングシュートを決め、チェルシーが先制した。

 チェルシーはトライアングルとロンボ(菱形)がよくできており、フィールドを横切るダイアゴナルな中距離のパスがよく通る。位置的優位、質的優位を確保した彼らは、スペースのない狭いゾーンでも流麗にパスをつなぐ。下りてきてポストになった選手がクサビのボールを受け、ボールをいったん落として次に前方へ展開するパターンが利いている。

 これに対しユナイテッドは、チェルシーの心臓部であるジョルジーニョには、トップ下のマタとCFのルカクが前後に挟み込んで対応している。

 自陣に引いたユナイテッドはボールを奪って時おりカウンターを発動するが、結実しない。ボールを奪う位置が低い(自陣)のでなかなかうまくパスをつなげず、すぐロストしている。もともと彼らは相手にボールを持たせるシナリオだが、やってるうちに相手にボールを保持されている心理的圧迫感に見舞われている感じだ。

逆転しユナイテッドが勢いづく

 ところがハーフタイムを挟んだ後半10分。そのユナイテッドが同点に追いつく。敵ゴール前に押し込んだユナイテッドはまずアシュリー・ヤングが右からシュートし、それをマルシャルがゴール前でトラップする形でシュートを決めた。

 同点に追いついたユナイテッドは勢いづき、自陣でボールを奪ってからのコレクティブ・カウンターが形になってきた。ルカクのポストプレイも目に見えて多くなる。

 そしてユナイテッドは後半28分、2点目を取りついにリードを奪う。CBのリンデレフが右サイドのアシュリー・ヤングにパス。次にヤングが前方のマタに当てていったん落としたボールを、再びヤングがマタの前方のオープンスペースに落としてマタが抜け出した。

 右サイドをフリーで進むマタは、左のラシュフォードにパス。そのラシュフォードが逆サイドのマルシャルに展開し、マルシャルがゴール右スミに鮮やかに突き刺した。自陣からきれいに組み立てた美しいゴールだった。逆転しユナイテッドの選手たちは全身にエネルギーがみなぎり、競り合いにことごとく勝ち始める。

 そのままユナイテッドが勝ち切るかに思われた後半51分。運命の時が訪れる。チェルシーが同点に追いついたのだ。右から入ったクロスにダビド・ルイスがヘディングシュートし、ゴールポストを叩く。そのリバウンドを途中出場のバークリーがきっちり押し込んだ。

 アディショナルタイムでの劇的な追撃弾で両者痛み分けである。息詰まる熱戦にふさわしい幕切れだった。これで第9節を終わってチェルシーは勝ち点21とし、勝ち点23の首位マンチェスター・シティを追う3位に。ただしチェルシーと同勝ち点でアーセナル、トッテナムの三者が並び、得失点差で順位がつく混戦に突入した。今季もプレミアリーグは熱い。

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【森保ジャパン】属人的なサッカーは善か、悪か?

2018-10-21 10:17:31 | サッカー戦術論
属人性の是非はケースによってちがう

 前回の記事で「属人的」という言葉を使った。で、今回のお題は、その属人的な要素によって左右されるサッカーって果たしていいのか? 悪いのか? がテーマである。まず、あいまいな言葉なので意味を説明しておこう。

 属人的という言葉は、ビジネスの現場などでよく使われるキーワードだ。意味は以下のような感じである。

1. 業務が特定の人物のスキルに依存してしまうこと

2. ゆえに、その人物にしか(その業務の)やり方が分からなくなってしまうこと

3. 業務が標準化(マニュアル化)されていないため、担当者の経験や勘に頼らざるをえないこと

ビルドアップやネガティブ・トランジションの場合は?

 一方、前回の記事でこの「属人的」なる言葉を、森保ジャパンに対して使ったのは以下の部分だ。引用しておく。

--------------引用開始-----------------

 例えば厳しい目で見れば、ビルドアップやボールを失った場合のネガティブ・トランジション時に取るべき挙動など、チームとしての約束事が判然としないケースが散見される。状況に応じて対応を変えているのではなく、そのとき対応する選手が誰か? という属人的な要素によって「そのケースにどう対応するか?」が左右されてしまっている印象がある。

 おそらく監督がプレー原則を選手に明示してないからだ。

------------引用はここまで--------------

 私が書いた記事では、ビルドアップとボールを失った場合の対応の2つを例にあげ、それらに関しチームとしての約束事が判然としない点について「属人的だ」と書いた。どういう意味か? 具体的に説明しよう。

 例えば2人のCBがボールを保持し、ビルドアップしようとしている。ここに敵の2人のFWがプレッシャーをかけてきた。局面は2対2だ。数的優位がない。そこでセントラルMFのA選手が両CBの間に下り、3バックを形成してビルドアップした。だが別のときには、同じ状況でセントラルMFのB選手は最終ラインに下りずスルーした。で、2CBは敵の2人のFWにプレスをかけられボールを失ったーー。

 この例では「ビルドアップ時には数的優位を確保する」というプレー原則を監督が示さず、それがチームの約束事として標準化されていないため、セントラルMFのA選手とB選手ではやり方が違ってしまった。つまりA選手の経験や知識に頼らざるをえなかった。これでは非効率であり、「属人的だよね」というお話だ。

共通理解がないと守備はできない

 一方、ボールを失った場合の対応についても具体例をあげよう。

 例えば自チームがボールを保持し、敵陣に攻め込んだところでボールをロストした。このときA選手は「いまゲーゲンプレッシングをかけてボールを奪回すれば、敵ゴールに近い位置でショートカウンターをかけられる」と考えた。で、前に突っ込みプレスをかけた。

 ところがB選手は逆だった。「ボールを失ったのでブロック守備に移行しよう」と考え、前に突っ込んだA選手とは逆にミドルサードまでリトリートしてブロックを作ろうとしたーー。

 まあこんな極端な例は珍しいとは思うが、この例では「アタッキングサードでボールを失ったとき、どう対応するか?」というチームの約束事が共有されてない(標準化されてない)のでA選手とB選手はちがう対応をしてしまった。で、「こんな属人的な対応ではダメだよね」ということだ。

攻撃は属人的なほうがいい?

 だが話はまだ終わらない。ケースによっては属人的なプレイがOKになるのだ。

 例えばA選手がボールを保持しているとき、敵の守備者が寄せてきた。で、A選手はドリブルでマーカーを1人かわしてシュートした。一方、まったく同じ状況のとき。B選手は自分をサポートしにきた選手Cを壁に使ってワンツーをし、それによりマーカーを振り切ってシュートしたーー。

 このケースではドリブルを使ったA選手とワンツーを使ったB選手ではやり方がちがうので属人的だといえるが、この場合はOKである。というよりむしろ、そこでA選手とB選手が同じ手法を使ったのでは、敵に読まれてマーカーをかわせない可能性さえある。つまり属人性、バンザイだ。

 こんなふうにサッカーでは、属人的であることがダメなときとOKなときがある。つまりケースバイケースなのだ。ざっくりいえば、おそらく守備に関しては属人的ではダメで、約束事を標準化し選手間で共有して組織的に動けるようにしておく必要があるケースが多いだろう。

 一方、攻撃に関してはむしろ「属人的であること」が武器になるケースが多い。特に1対1ではそうだ。「選手Aにしかできないフェイント」なんてふつうにあるし、むしろ選手Aにとってはそれが切り札になる。ほかにも瞬間的なひらめき、イマジネーションは攻撃時に非常に有効だ。

 とはいえ攻撃に関しても、組織プレーになればなるほど選手間で共通理解がなければできない場合が出てくるので、やはりケースバイケースといわざるをえない。

【結論】「何に関して属人的か?」を明示しないと議論にならない

 こんなふうに「属人的であることは是か、非か?」を論じるときには、「それはどんな局面における何の話なのか?」を明示しないと議論が噛み合わない。

「個か? 組織か?」とか、「リアクションサッカーか? アクションサッカーか?」みたいな不毛な二元論で終わるお題と同じになってしまう。

 サッカーの世界ではこういうことって多いので、気をつけておきたいものだ。

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【森保ジャパン】よくいえば個性重視、悪くいえば「選手まかせ」はいつまで続くのか?

2018-10-19 07:01:01 | サッカー戦術論
監督が「自分」を出すのは3-4-2-1導入時だ

 森保監督は、ハリルジャパンから西野ジャパンへと続いた道程に強く影響を受けている。ハリルジャパンからは縦への速さやデュエル、カウンター志向を受け継ぎ、かたや西野ジャパンからは選手の個性重視や攻撃志向、セントラルMFを両CB間に落とすビルドアップ等を継承している。頭がよく、柔軟な指揮官だ。

 フォーメーションに関しても、おそらく森保氏は当初、監督就任と同時に3-4-2-1への着手を前提にしていたはずだ。だが西野ジャパン的スタイルの継承を望む世論の動向を見て、柔軟に対応しているのだろう。国民が支持するスタイルこそが、ナショナルチームの力になると考えているのではないか? その意味ではきわめて民主的だ。

 その点、選手を集める前から自身のフィロソフィ(サッカー哲学)をチームコンセプトに色濃く反映させていたハリルとは対照的だ。民主的な森保氏と対比させれば、ハリルはさしづめ「独裁者」と映るだろうか。むろんどちらがいい悪いの問題でなく、方法論のちがいである。

 そしてこの点が今後、森保ジャパンの浮沈を握っているように見える。

選手まかせゆえの無原則

 森保ジャパンが現状うまく行っている理由は、西野ジャパン同様、選手の個性を生かして監督がでしゃばりすぎてない点だ。森保監督は自分の考える戦術で選手を縛ってない。むしろ西野ジャパンのように選手がアイディアを出し合い、個を生かし合っているのだろう。

 だから中島や堂安ら若い2列目が伸び伸びとプレイできている。

 ただしこの点はよし悪しだ。あくまでチーム作りの初期段階である「いま」ならOK、というお話である。なぜなら森保ジャパンのゲームを仔細に見れば、基本的なプレー原則が一貫しておらず明らかに監督の手が入ってない部分が垣間見えるからだ。

 例えば厳しい目で見れば、ビルドアップやボールを失った場合のネガティブ・トランジション時に取るべき挙動など、チームとしての約束事が判然としないケースが散見される。

 状況に応じて対応を変えているのではなく、そのとき対応する選手が誰か? という属人的な要素によって「そのケースにどう対応するか?」が左右されてしまっている印象がある。

 おそらく監督がプレー原則を選手に明示してないからだ。

 そして森保ジャパンでは4バックが続く限り、この状態が継続する可能性が高い。よくいえば民主的、悪くいえば「選手まかせ」ゆえプレーに一貫性がなく、無原則だ。

 親善試合ならともかく、このままではハイレベルな場、例えばW杯の決勝トーナメントではとても戦えない。

 だが個人的には、悲観はしていない。おそらく森保監督は将来フォーメーションを3-4-2-1に移行させた段階で自身のフィロソフィを明確に打ち出し、選手まかせをやめて、わかりやすくいえば「ハリル的なチーム運営」に入るだろうからだ。

 いまはその移行期であり、選手に自由にやらせて観察している初期段階なのだろう。なお個人的には3-4-2-1の採用には反対だが、今回のお題はそこではない。あしからず。

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【森保ジャパン】ウルグアイ戦で彼らは「公約」を果たしたか?

2018-10-18 07:42:38 | サッカー日本代表
若い三銃士の活躍に目を奪われるが……

 ウルグアイ戦に先立つこの記事で、試合の見どころとして以下の4点をあげた。

(1)スタメン予想

(2)中島ら若い2列目がウルグアイに対しどこまでやるか?

(3)ロシアW杯で縦横無尽に攻撃を組み立てた柴崎は通用するか?

(4)ポストプレイはいいがゴールが少ない大迫は点を取れるか?

 では上から順に見て行こう。まずスタメン予想に関しては、11人とも当たった。だがまあこれは宝クジみたいなもんだ。次の(2)「若い2列目はどこまでやるか?」に関しては、見ての通りである。どこまでもヘチマも、中島、南野、堂安の若い3人は日本代表をむしろ牽引していた。

 あえてケチをつければ、堂安は前半に消え気味になっていた点と、中島は大量のシュートを打ったが1度もモノにできなかったことくらいだろうか。

 ただそうはいっても中島はすばらしいクロスで南野のゴールを演出していたし、シュートを打てば入らなくても味方がリバウンドを詰める可能性があるのだから、これは言いがかりに近い。

 さてもう一点、巷間、南野を香川のライバルとし、香川と比較する論調があるが、これはいささかピント外れだ。タイプがちがう。南野は司令塔的なトップ下というよりセカンドトップであり、(本人は「自分はどこでもできると言っているが)香川との対比はやや的外れだろう。

 逆にいえば、ではなぜ森保監督は香川のような司令塔的なトップ下を招集しないのか? を見れば、森保ジャパンの今後がある程度読める。おそらく森保監督が本来志向している3-4-2-1には司令塔的なトップ下は不要だからであり、逆にいえば司令塔的なトップ下を招集しないのは将来的な3-4-2-1への布石であると見る。

柴崎は消えていた?

 一方、(3)「柴崎はウルグアイに通用するか?」については、残念ながら彼は期待に応えられなかった。もっともぼんやり見ていると柴崎は消えていたように感じるが、南野の2ゴール目の起点になった鋭い縦パスを出すなど、それなりのプレイはしていた。

 柴崎といえばどうしてもロシアW杯でのゲームメイクぶりと比較してしまうのだが、ウルグアイ戦では中島ら2列目のアタッカーが強烈だったこともあり、ボランチである自分はやや下り目でバイタルエリアを埋めてウルグアイのカウンター攻撃に備えよう、という意図もあったように読める。

 つまり「予防的カバーリング」の位置取りをして前線からこぼれてくるボールを拾い、二次攻撃につなげようという狙いだ。

 とはいえ中盤のデュエルで負けるなど彼は元気がなかったことは否めず、試合に入れていなかったと言われても否定はできないだろう。所属チームで試合に出られてないことも影響していると思われるが、彼にはがんばってほしいものだ。

大迫はゴールゲッター化したか?

 最後に(4)「ゴールが少ない大迫は点が取れるか?」については、ウルグアイ戦で彼は中島のシュートがGKに弾かれたリバウンドを詰め、1ゴールをあげた。だが前半19分と同32分、後半23分に、どフリーのシュートを3本も外しており、決定力不足は否めない。

「いや大迫はポストになり、ボールを収めて前線で基点になっているんだから」という論調はあるし、実際その通り彼は重要な機能を果たしていると思うが、大迫はFWである以上、めぐってきたシュートチャンスは絶対ものにすべきであるし、今後も彼には引き続きそこを求めたい。

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【キリン杯・森保ジャパン】彼らは一直線にゴールをめざす 〜日本4-3ウルグアイ

2018-10-17 15:59:52 | サッカー日本代表
獲物を狙う猟犬のように

 まるでワールドカップの決勝トーナメントを観ているかのようだった。ウルグアイは攻撃的だ。彼らはボールを失ってもリトリートしてブロックを作ったりせず、その場で激しくプレッシングしてボールの即時奪回を狙う。真っ向勝負だ。

 このやり方は日本も同じで、必然的にピッチのあちこちで激しいデュエルの火花が散った。その壮絶な撃ち合いを制して日本は堂々4-3の勝利。しかも相手はFIFAランク5位の強豪ウルグアイだ。まさに歴史の1ページが開いたと言っても過言ではない。

 日本は攻守の切り替えが速く、いったんボールを持つと攻め切ることができていた。そのため相手からボールを奪っての速攻カウンターが得意なウルグアイは日本に遅攻を強要され、自分たちの形に持ち込むことができなかった。

 それにしても中島、南野、堂安のワンダースリーはすさまじかった。すごい躍動感だ。しかも楽しい。彼らは個の力がすばらしく、数的優位なんていらないんじゃないか? という感じだ。

 中島はえらく俊敏で小回りがきく。彼は細かいステップを踏むドリブルでラツィオ所属のDFカセレスをキリキリ舞いさせ、堂安はワンツーから抜け出しAマドリーのゴディンをぶち抜いてゴラッソを叩き込んだ。

 そして南野はファーストタッチでマーカーを完全に置き去りにした1点目と、シュートのリバウンドを詰めた計2点で3試合連続ゴールである。日本代表は彼ら3人にぐいぐい牽引される形で高みを極めた。

 あのカバーニが、シュートを外し地面を叩いて真剣にくやしがっていたのがやけに印象に残った。彼らはド必死だったのだ。だが勝ったのは日本である。カバーニのシーンは象徴的だった。

メインディッシュは中盤のデュエル

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが東口。最終ラインは右から酒井、三浦、吉田、長友。セントラルMFは柴崎岳と遠藤航。2列目は右から堂安、南野、中島。ワントップは大迫だ。

 立ち上がり、ウルグアイは日本のビルドアップに対し、激しく前からプレスをかけてきた。

 その彼らのフォーメーションは4-4-1-1。ビルドアップ時にはセントラルMFのルーカス・トレイラ(アーセナル)が左SBとCBの間に下りてくる。これにより左SBのサラッキ(RBライプツィヒ)はかなり高い位置取りをする。彼らはプレイ強度があり、競り合いに非常に強い。

 そのせいか、この試合は激しいデュエルの応酬になった。片方がゆっくりビルドアップし、もう片方がプレッシングでそれを制限する、などという平和なシーンはあまりない。もっぱら中盤での過激なデュエルがメインディッシュである。

足を止めずにパス&ゴー、こぼれ球を詰める

 試合が動いたのは前半10分。左サイドの中島が放ったプラスのクロスに、南野がファーストタッチでマーカーを外し、ゴールをぶち抜いた。美しいゴールだったが、さらに劇的だったのは後半14分の堂安の3点目だった。

 ボックス付近で堂安は左にいた酒井にパス&ゴー。堂安はそのまま足を止めずに酒井からリターンパスをもらい、ゴール左スミに叩き込んだ。一連の動作があまりに速すぎて、一瞬、何が起こったのかよくわからなかった。

 しかもこの日、日本が奪った4点のうち、2点目と4点目はいずれも味方のシュートのリバウンドを詰めたものだ。サッカーでは、誰かがシュートを打つととたんに足が止まりがちになる。だが彼らは決して足を止めず、味方のシュートと同時に前へ突っ込みこぼれ球を詰める。まるで獲物を狙う猟犬のように貪欲だ。

 こんなふうに2列目の若武者3人がガンガン行くタイプなので、柴崎岳と遠藤航の2セントラルMFは上がらずバイタルエリアを埋め、もっぱら予防的カバーリングに徹していた。

 もちろん課題はある。

 3失点のうち1失点目はお決まりのセットプレイからの被弾だし、2失点目と3失点目はミスによるものだ。修正する必要はある。だが彼らのサッカーはそれらを補って余りあるほど魅力的でスペクタクルだ。それに中島のあの子供のような笑顔を見ると、なんだか心が洗われるような気分になる。

 さて、歴史はまだ始まったばかりだ。われわれは少なくとも今後4年間、このチームを楽しめるのだ。日本人は、どえらいコンテンツを手に入れたものである。

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【キリン杯・森保ジャパン】素早い切り替えでウルグアイに勝て

2018-10-16 05:21:57 | サッカー日本代表
ボールを失っても絶対に足を止めるな

 16日の今日、日本はキリン・チャレンジカップで強豪ウルグアイと対戦する。いくら相手が強いといっても穴はあるもの。では日本がウルグアイに勝つコツはあるのだろうか? 以下、順に見て行こう。

 ウルグアイは固い守備を生かしたカウンターが得意なチームである。つまり日本が攻め込み、前がかりになっているときほど、彼らは「カウンターのチャンスだ」と考えるはずだ。

 とすれば日本は敵陣でボールを失ったとき、絶対に足を止めてはいけない。素早いネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)から、すぐ守備の態勢に入る必要がある。

 そこで敵の攻撃を食らっても即座に受け止め、速い攻めを許さない。それがウルグアイに勝つコツだ。

人数をかけて攻めているときほどピンチだ

 ウルグアイはボールを失えば、まずリトリートして自陣にブロックを作り、日本の攻撃を待ち受けるはずだ。「さあ、攻めてこい。自陣に引き込みボールを奪えば俺らのカウンターのチャンスだ」というわけだ。

 とすれば日本は大人数で攻め込んでいるときほど、ピンチと背中合わせである。

 なぜならそこでボールを奪い返されて速いカウンターを食らえば、日本は大人数が敵陣に取り残されたまま、守備に戻れないからだ。日本陣がスカスカで守備要員が少なければカウンターに弱い。

 あっというまにやられてしまう。

敵のカウンターを遅らせろ

 では日本はどんな対策を打てばいいのか?

 まず日本は攻撃に入れば、必ず攻め切ることだ。そして仮にゴールできなくても、必ずシュートで終わることである。そうすればプレイがいったん切れるため、その間に守備の体勢に戻ることができる。

 第二に、日本はなるべく少ない人数で攻めるのがコツだ。裏を返せば攻撃時にも守備要員を自陣に確保し、敵のカウンターに備えるわけである。

 特にピッチの中央のスペースを空けず、真ん中に守備者を残してカウンターに備える「予防的カバーリング」を怠らないことだ。また日本の攻撃時にウルグアイの選手が攻め残っていれば、必ず人をつけてマークし「予防的マーキング」をしておくことである。

 第三に、もし敵陣でボールを失いカウンターを受けたときには、足を止めずにその場で守備して敵の攻めを少しでも遅らせる。ベストはその場でボールを奪い返すことだ。そうすれば敵陣で「カウンターのカウンター」をかけることができる。

 仮にもしその場でボールを奪い返せない場合も、ボールにプレスをかけて敵のカウンターを失速させる。これで時間を稼ぎ、その間に日本は陣形を整え直してしっかり守備の体勢を組む。

 そして次に日本がボールを奪えば、素早いポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)から縦に速いカウンターをかける。鋭い縦パスと2タッチ以内の速いパスワークで、敵が態勢を崩しているうちに守備の時間的余裕を与えず攻め切ってしまう。

 そうすれば、あとは勝利の美酒に酔うだけである。

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【キリン杯・森保ジャパン】ウルグアイ戦の戦術ポイントは?

2018-10-15 11:22:57 | サッカー日本代表
ビルドアップがカギになる

 日本代表は16日、キリン・チャレンジカップでウルグアイ代表と対戦する。日本の予想スタメンは(前回の記事でも書いたが)以下の通りだ。では、このゲームの戦術的なポイントはズバリ、何だろうか?

    ◯大迫
◯中島 ◯南野 ◯堂安
   ◯遠藤航◯柴崎
◯長友◯吉田◯三浦◯酒井
    ◯東口(ダニエル)

 ウルグアイの最大の特徴は守備の固さだ。とすれば日本はまず、そんな彼らの第1プレッシャーライン(FWによるプレッシング)を越えてうまくビルドアップする必要がある。考えられるビルドアップの形は、以下、ざっくり6パターンだ。

(1)両CBの間にセントラルMFが下り、3バックを形成してSBを高く張り出す。

(2)SBとCBの間にセントラルMFが下り、SBを上げる。

(3)左(右)のSBが上がり、そのぶん最終ラインが左(右)にスライドし、右(左)SBが中央に絞って3バックを形成する。つまり基本フォーメーションの4-2-3-1から、5レーンをすべて埋める3-2-4-1に可変する。

(4)もし前にスペースがあれば、CBが運ぶドリブルで前へ持ち上がりフィードする。

(5)最終ラインから、サイドに開いたWGへダイアゴナルなロングパスを出す。

(6)フリーになる動きをしたセントラルMFへパスし、中央経由で組み立てる。

 これらのルートを使って最終ラインからうまくボールを引き出し、敵の2ライン間へクリーンなボールを供給する。あとは中島、南野、堂安のフレッシュな2列目に暴れてもらう。

2セントラルMFがバランスを取る

 次は「心臓部」のお題へ行こう。柴崎と遠藤航が組む、いわゆるダブルボランチだ。

 柴崎はピルロ的なスタイルを継承するレジスタ(司令塔)である。とすればそのぶん相棒の遠藤航は、基本的にはステイしてアンカー的に全体のバランスを取りたい。つまり長谷部的な役割を果たす。これによりバイタルエリアを絶対に空けない。

 もちろん局面によって、2人の果たす役割が入れ替わっても問題ない。要はバランスの問題だ。むろん本人たちは心得ているが、ここの心臓部がスムーズに機能するかどうかは死命を制する。

大迫がゴールに目覚めるかどうか?

 そして最後のチェックポイントは、最前線の大迫が2つの仕事をこなせるかどうかだ。つまりポストワークとゴールを取る仕事である。

 大迫のポストプレイは折り紙付きであり、敵のプレッシングを受けた状態でもボールがよく収まる。だが一方、大迫はFWとしてはゴールが少ない。周囲の味方を生かす役割に徹しがちだ。そこでウルグアイ戦では、敵の固い守備網の狭間で大迫がアグレッシブにゴールを取りに行けるか? ここを見たい。

 森保ジャパンのスタートと同時に、日本の2列目に放たれた中島、南野、堂安という若い猟犬たちはゴールに貪欲だ。そんな彼らに触発され、ベテランの大迫がストライカーとしての本能に目覚めるかどうか? ウルグアイ戦では、そんな相乗効果に期待したい。

 さて、ではいったい日本はウルグアイに勝てるのか? 勝つための秘策、コツはあるのか? それについては次回の記事で細かく分析して行こう。

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【森保ジャパン】ウルグアイ戦の予想スタメンは?

2018-10-14 08:30:02 | サッカー日本代表
敵の守備陣に中島ら2列目が通用するか?

 16日のウルグアイ戦では誰がスタメン出場するのだろうか? (1)パナマ戦と同じフォーメーションで、かつ(2)2戦トータルでなるべく全員を使う、という条件を当てはめれば、スタメンは以下のような感じになるのではないか?

    ◯大迫
◯中島 ◯南野 ◯堂安
   ◯遠藤航◯柴崎
◯長友◯吉田◯三浦◯酒井
    ◯東口(ダニエル)

 これでGKのシュミット・ダニエルを除けば、2戦トータルでキッチリ全員が試合に出ることになる。「なるべくたくさんのメンバーを見よう」とする森保監督のポリシーを考えれば、おそらく当たらずとも遠からずだろう。

 かつ、パナマ戦のスタメンとくらべれば、強豪ウルグアイにぶつける上記のスタメンはより「レギュラー組感」が漂う。ただし(ないとは思うが)ウルグアイ戦でいきなり3-4-2-1をやってくることがあるとすれば、この予想は大はずれになるが。

ウルグアイ戦の見どころは?

 ロシアW杯でのウルグアイは、固いブロック守備から相手にボールを持たせてカウンターを繰り出す非常に失点の少ない守備のチームだった。

 そこを考えれば試合の見どころはまず、ウルグアイの固い守備陣 vs 中島・南野・堂安のフレッシュな2列目がどこまで通用するか? だろう。彼らを軸に、この試合でもパナマ戦みたいに2点や3点を取れるようならすごい。逆に日本の攻撃陣が沈黙すれば、世界の壁の高さを学べる。

 さらに見どころ・その2は、ロシアW杯で縦横無尽に攻撃を組み立てたセントラルMFの柴崎が、ウルグアイ相手にどれだけできるか? である。

 彼は所属チームでは、監督の戦術コンセプトに合わず起用されていない。だがもしウルグアイ相手に通用すれば、その実力を証明できる。つまり彼が所属チームで試合に出ていないのは単に監督の「好みの問題」だ、ということになる。

 あとは大迫、長友、酒井あたりの実力はやる前からわかっているし、ある程度は想像の範疇に入る。あえて付け加えれば、ポストプレイはいいがゴールが少ない大迫が果たして得点できるか? あたりになるだろうか。

 いずれにしろ、もしウルグアイに勝ったりすれば赤飯炊いてお祝いだ。ぜひそうなることを願いたい。

 さて、ではウルグアイ戦の戦術的なポイントといえば何だろうか? 次回の記事で見て行こう。

 またウルグアイに勝つ秘策、勝つためのコツについては次々回の記事で分析する。

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【森保ジャパン】あのレベルの相手とやって意味あるのか? 〜日本3-0パナマ

2018-10-13 09:28:26 | サッカー日本代表
強化になるのか心配だ

 日本は最終ラインと最前線の間が間延びし、コンパクトさのないユルユルのゾーン設定のなか、これまたユルユルのメンタルで秋葉原でのショッピングのことしか頭にないパナマに3-0で勝った。だがあのレベルの相手なら前半だけで3点は取っておくべきだった。パナマは単なるプロレスの悪役レスラーみたいな「やられ役」に見えて仕方ない。

 最近、プレミアリーグばかり観ているせいか、パナマのインテンシティの低さとプレースピードの遅さは異様に映った。15人以上はW杯メンバーを入れる取り決めだったらしいが、「死ぬ気でやる」も条件に入れておくべきだった。

 同じ日、ウルグアイも韓国に負けたところを見ると、次戦のウルグアイは辺鄙なアジアツアーなんてヤル気ないんじゃないか? 森保監督はレギュラー組をウルグアイ戦にぶつけるつもりなのだろうが……これで日本代表の強化は大丈夫なのだろうか。

日本の課題もあぶり出された

 一方、日本はボールスピードの遅さが致命的だ。あんなゆるいパスでは、敵が陣形を整え直す時間的な余裕を与えてしまう。ボールスピードの速さはポジショナルプレーに必須の要素だ。

 また日本人選手はボールをめぐる動きがスムーズじゃない。ファーストタッチで、いちばん次のプレイをしやすい場所にボールを置いてないからだ。次のプレイをイメージせずにトラップしている。だからトラップしてからさらにもうひとつボールを小突き、置き直してから次のプレイに移ったりする。ゆえに動きがギクシャクする。必然的に試合内容もギクシャクする。

 加えて日本は目の前の味方の選手にボールを預けようとして、1メートル未満のゆるいパスを出して敵にかっさらわれるシーンが3度ほどあった。あんな異常に短いパスは日本代表でしかありえない。

 日本人は目の前の味方に忖度しボールを「渡してあげよう」とする。で、敵にカットされる。あれではパスの出し手と受け手の2人ともが同時に取り残されたままカウンター攻撃を受ける。あんな短いパスは海外ではまったくありえないプレーだ。

南野と伊東は「当確」にいちばん近い

 ただし日本のゴールはどれもすばらしかった。

 特に1点目は、青山から南野に縦パスが入り、南野は半身になりワントラップしたあと、寄せてくるマーカーとよく競ってボールをしっかり自分のものにしてからコースを狙ってシュートした。

 南野は貧欲にゴールを狙うハングリーさと、トランジションの速さ、ワンプレイ終わっても絶対に足を止めない献身性、競り合いの強さがすばらしい。コスタリカ戦とこの試合で、彼と伊東はもうレギュラー確定じゃないか? などと思えてしまう。

 2点目を決めた伊東もよかった。ドリブルから原口が倒れながら伊東にパス。すると伊東は3人目の動きをした南野にダイレクトでパスを出す。南野がシュートし、敵GKに弾き返されたこぼれ球を今度は伊東が詰めた。この日の伊東は何度もライン裏に鋭い飛び出しをした。ものすごいスピードだ。しかもゴール前ではフリックやダイレクトプレーで敵を惑わす味つけをしていた。

 3点目はオウンゴールになったが、実質、泥臭く粘った川又の得点だ。原口のドリブルからパスをもらい、当たり損ねのような、トラップ崩れみたいな川又のボールがゴールに吸い込まれた。いかにも彼らしいゴールシーンだ。

失われたサッカー人気を取り戻したい協会の思惑

 そのほか選手別では、不調だった大迫はボールが収まるポストプレイはいいが、シュートのほうはとんでもなく下手だ。彼はポストになるだけでなく、点が取れるようになる必要がある。

 一方、右SBの室屋は上がるタイミングがめっぽういいが、あとはクロスの質やプレイ精度を高めてほしい。青山は急所をつく縦パスがストロングポイントだが、プレイ強度にやや不安がある。原口はコンディションが悪いのか動きはぎこちなかったが、ドリブルからよくチャンスメイクした。槙野は……このままではレギュラーは厳しいのではないか?

 さて今後、年内のキリンチャレンジカップでは、対戦相手にベネズエラやらキルギスなどという「強烈な相手」が控えており、これでホントに強化になるのか非常に疑問を感じる。

 弱い相手と楽なホームでマッチメイクして連戦連勝し、ハリルジャパンで失われたサッカー人気を取り戻したい日本サッカー協会の思惑は痛いほど伝わってくるが。

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【セリエA 18/19 第8節】ナポリ、ミスの多い試合を制す 〜ナポリ2-0サッスオーロ

2018-10-10 06:38:40 | その他の欧州サッカー
サッスオーロがご乱調

 両チームともミスが目立つ凡戦だったが、自力に勝るナポリが制した。ナポリのほうは攻めのミスだが、サッスオーロは失点につながるミスなので致命的。「どっちのミスがマシか?」で勝敗が決まったような試合だった。

 ナポリのフォーメーションは4-4-2。スタメンはまずGKがオスピナ。4バックは右からマルキュイ、アルビオル、クリバリ、ヒサイ。中盤はセントラルMFがログとディアワラ。右SHはジエリンスキ、左SHはベルディ。2トップはメルテンスとウナスだ。

 試合はいきなり開始3分で動く。サッスオーロのバックパスがパスミスになったところを、ナポリのFWウナスが胸トラップから左足でゴールに叩き込んだ。1-0だ。

インシーニェが切れまくり

 ナポリは2タッチ以内でリズミカルにパスをつなぐ。要所でダイレクトパスが利いている。かたやサッスオーロは短い縦パスを出し入れしながらリズムを作ろうとするが、なかなかフィニッシュに行けない。ことに失点に直結する致命的なパスミスが多く、ボールをナポリにかっさらわれては何度もピンチを迎えた。

 とはいえナポリも試合開始直後に得点したものの、攻撃にミスが出てなかなか追加点を奪えない。そこで後半6分には温存していたインシーニェを途中投入し、追い上げを図る。

 ナポリはチャンピオンリーグとのターンオーバーでこの日のスタメンは戦力ダウンしており、そのため点が取れず途中からインシーニェだけでなくアランやカジェホンなどレギュラークラスを出場させる作戦に出た。

 その策が見事にあたり、後半27分にはインシーニェがゴラッソを決める。左サイドを突破した左SBのヒサイがマイナスのパスを出し、ボックスのすぐ外でそれを受けたインシーニェがゴール左上スミに山なりの美しいコントロールショットを見舞った。

 先日、チャンピオンリーグのリバプール戦でもゴールしたインシーニェはワンタッチコントロールがすばらしく、意のままにボールをあやつるアーティストだ。そのエースが途中から出てきてトドメを刺した形。ただし同時にナポリの選手層の薄さが露わになったゲームでもあった。

 これで首位ユベントスを追う2位のナポリは勝ち点18。だが一方のユベントスも危なげなく同節に勝ち点3を上積みし24としており、両者の勝ち点6差は埋まらず。

 ユーベのあまりの強さに、なんでもイタリアのメディアは「年内にも決着がつくのでは?」などとも報じているらしいが……ナポリにはなんとかがんばってセリエAの火を消さないでほしいものだ。

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【プレミアリーグ 18/19 第8節】機敏なトランジションを操るチェルシーの魔法 〜サウサンプトン0-3チェルシー

2018-10-09 07:22:05 | イングランド・プレミアリーグ
敵を置き去りにする切り替えの速さ

 チェルシーの特徴は2タッチ以内のスピーディなパスワークと、ボールを失ってからの切り替えの早さ、それとボールを奪ってからの切り替えの早さだ。これらの土台の上に、ドリブルでリズムを変えられるエデン・アザールの個人技が大輪の花を咲かせている。この試合も、そんな彼らの個性が遺憾なく発揮されたゲームになった。

 チェルシーのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがケパ。最終ラインは右からアスピリクエタ、リュディガー、ダビド・ルイス、マルコス・アロンソ。中盤3センターはアンカーにジョルジーニョ、右にカンテ、左にバークリー。3トップはウィリアン、ジルー、アザールだ。

 試合の立ち上がりから、サウサンプトンの最終ラインはチェルシーの攻撃を恐れてズルズル下がり深くなる。ほぼ5バック状態だ。設定ゾーンが低すぎ、仮にボールを奪っても出しどころがない。で、またボールを奪われる。必然的にハーフコートマッチの様相を呈してくる。試合開始からたった10分で、だいたいどんなゲームになるかは想像がついた。

 試合が動いたのは前半30分。前がかりになったチェルシーは、ボックス手前でいったんボールを失った。だが彼らは素早いネガティブ・トランジションからバークリーがサウサンプトンのボールホルダーにプレスをかけ、たった3秒でボールを奪い返す。

 このときサウサンプトンの最終ラインは、味方がボールを奪った瞬間、「さあ攻撃だ」とラインを上げかけていた。その次の瞬間にすぐボールを奪い返され、完全にフリーズし足が止まってスキができた。

 そこを見逃さずゴール前で、どフリーになったアザールにラストパスが出る。彼は軽くワントラップし、慎重に狙いを定めてボールをゴールに沈めた。先制点である。

31本のパスをつないだ3点目

 チェルシーは完全に前がかりになり、たびたびサウサンプトンのボックス内でミニゲームをやっているような状態になる。サウサンプトンとすれば、修正が必要だ。そこで彼らは後半開始と同時に4バックに変え、攻撃のタクトを振れるMFオリオル・ロメウを投入する。

 これでサウサンプトンは最終ラインを上げ、やっと中盤でボールをキープできるようになったが、それもつかの間。後半12分に2点目を食らって水泡に帰した。

 そして大団円の後半48分には、圧倒的なチェルシーのゴールショーが待っていた。なんと彼らは31本のパスをつなぎ、最後はアザールから途中出場のモラタにラストパスが出て完全フリーの状態でシュートが決まった。サウサンプトンの守備陣を完全に崩し切った遅攻からのゴールだった。

 これで第8節が終わり、マンチェスター・シティとチェルシー、リバプールの3チームが勝ち点20できれいに並び、得失点差でシティが首位に立った。いちばん美しいのはチェルシーで、力強さならリバプール、最もシステマチックなのがマンCだ。芸風が見事に異なり、それぞれの個性を味わえるのも見どころのひとつである。はてさて、いったいどこが最後に美酒に酔うのだろうか?

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