「モダンサッカー3.0」とは何か?
先日、興味深いサッカー本を読んだ。まるで日本代表の森保一監督のように選手の自主性を重んじるイタリア人監督がいるのだ。書名は『モダンサッカー3.0 「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」へ』(ソルメディア)だ。
この本は2人の共著で、著者のひとりは「モダンサッカーの教科書」シリーズでおなじみの片野道郎氏。もうひとりはイタリアで注目されている若手理論派、ペルージャU-19監督のアレッサンドロ・ビットリオ・フォルミサーノ氏だ。
片野氏がフォルミサーノ氏の頭の中にある「サッカーとは?」を聞き出し、会話体で論述してある本である。
おもしろかったのは、片野氏がフォルミサーノ氏に「ゲームモデルとプレー原則についてどう考えるか?」を問うくだりだ。
フォルミサーノ氏にとってのゲームモデルとは、監督が一方的に選手に押し付けるものではなく、逆に選手たちが自由にプレイしているのを監督が観察し、それらのプレイの中から「抽出し、発見するもの」だという。
まるで選手の自主性を尊重する、森保監督そっくりのことを言うのだ。
選手たちは「創発的」にプレイした
そして白眉なのは、フォルミサーノ氏が初めてU-16を指揮したときのことだ。それはある国際トーナメントだった。監督としてそのチームを見るのは初めてで、選手たちがどんなプレーをするのかもよく知らない。白紙の状態だ。
ちなみにそのチームは前年、大型CFを前線中央に置いて教科書通りの4-3-3で戦っていたらしい。
そのチームをフォルミサーノ氏は、システムや配置をまったく決めないまま送り出そうとした。で、選手の面々を前に「どうだ? 行けるか?」と言うと、アタッカーの1人が「去年、自分はウイングでプレーしたが、実は真ん中のほうがやりやすいんだ」と言ってきたという。
で、ならばと彼をトップ下にし、中盤を菱形にして4バックでやってみた。すると小柄なアタッカーたちが細かくパス交換をし何度も相手の守備を崩して6-0で大勝した。
フォルミサーノ氏は思わず助監督と顔を見合わせて、「よし、ここからスタートしよう」と宣言した。
「すべては、私のアイディアや戦術ではなく、選手の創発性から始まったのです」
「次の試合からは中央の密度を高めて細かくパスをつないで崩す、というアイディアをチームに伝えて、それを原則として固めて行きました」
選手たちがイキイキとプレイしている様子が、手に取るように伝わってくる。こういうチームの作り方もあるわけだ。
なるほどそれもいいかもな、とちょっと思った。
先日、興味深いサッカー本を読んだ。まるで日本代表の森保一監督のように選手の自主性を重んじるイタリア人監督がいるのだ。書名は『モダンサッカー3.0 「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」へ』(ソルメディア)だ。
この本は2人の共著で、著者のひとりは「モダンサッカーの教科書」シリーズでおなじみの片野道郎氏。もうひとりはイタリアで注目されている若手理論派、ペルージャU-19監督のアレッサンドロ・ビットリオ・フォルミサーノ氏だ。
片野氏がフォルミサーノ氏の頭の中にある「サッカーとは?」を聞き出し、会話体で論述してある本である。
おもしろかったのは、片野氏がフォルミサーノ氏に「ゲームモデルとプレー原則についてどう考えるか?」を問うくだりだ。
フォルミサーノ氏にとってのゲームモデルとは、監督が一方的に選手に押し付けるものではなく、逆に選手たちが自由にプレイしているのを監督が観察し、それらのプレイの中から「抽出し、発見するもの」だという。
まるで選手の自主性を尊重する、森保監督そっくりのことを言うのだ。
選手たちは「創発的」にプレイした
そして白眉なのは、フォルミサーノ氏が初めてU-16を指揮したときのことだ。それはある国際トーナメントだった。監督としてそのチームを見るのは初めてで、選手たちがどんなプレーをするのかもよく知らない。白紙の状態だ。
ちなみにそのチームは前年、大型CFを前線中央に置いて教科書通りの4-3-3で戦っていたらしい。
そのチームをフォルミサーノ氏は、システムや配置をまったく決めないまま送り出そうとした。で、選手の面々を前に「どうだ? 行けるか?」と言うと、アタッカーの1人が「去年、自分はウイングでプレーしたが、実は真ん中のほうがやりやすいんだ」と言ってきたという。
で、ならばと彼をトップ下にし、中盤を菱形にして4バックでやってみた。すると小柄なアタッカーたちが細かくパス交換をし何度も相手の守備を崩して6-0で大勝した。
フォルミサーノ氏は思わず助監督と顔を見合わせて、「よし、ここからスタートしよう」と宣言した。
「すべては、私のアイディアや戦術ではなく、選手の創発性から始まったのです」
「次の試合からは中央の密度を高めて細かくパスをつないで崩す、というアイディアをチームに伝えて、それを原則として固めて行きました」
選手たちがイキイキとプレイしている様子が、手に取るように伝わってくる。こういうチームの作り方もあるわけだ。
なるほどそれもいいかもな、とちょっと思った。