敵は5バックでリトリートしてくる
ハリルジャパンは9月3日、ホームにカンボジアを迎え、ロシアW杯・アジア2次予選を戦う。
さんざん攻めながら引いて守る相手に1点も取れなかった初戦のシンガポール戦、また1勝もできず最下位に沈んだ東アジアカップの記憶も新しい。これまでのところ、ハリルジャパンの対アジア対戦成績はさんざんだ。
そこでハリルホジッチ監督はアジア諸国を分析し、対策を練っているという。
例えば当面の敵であるカンボジアは、ハリルによれば「引いて守ってカウンター狙いでくる。おそらく5バックだろう。そのためトレーニングでもDFを5人置いてシミュレーションし、相手の低いラインをどう崩すか考えている」。
つまり9月3日のカンボジア戦は、初戦のシンガポール戦とまったく同じ展開になるわけだ。そもそも3バックや4バックでなく5バックを選択している時点で、「低く構えて全員で守るぞ」という意図が読み取れる。
とすれば日本はどう戦えばいいのだろうか?
わざと攻めさせてカウンターで仕留める
カンボジアは、あのシンガポールに4点取られて負けている相手だ。ぶっちゃけ、かなり弱い。したがって敵のリトリート対策を講じてただ勝つだけでは、得られるものは少ない。
もちろんド本番の予選だから勝つことは最優先課題だが、ここはW杯本大会をにらみ、2次予選をその練習台として「有効活用」したい。つまり少しでも本大会の予行演習になるような戦い方をしたい。
例えば点差や残り時間によっては、日本もブロックを意図的に低く構える時間帯を作る。で、敵を前におびき出してわざと攻めさせ、これで敵陣内にスペースを作ってからカウンターで仕留める。
すなわちボールを奪ったら、グラウンダーの強くて速いタテ方向へのクサビを突き刺す。同時に選手は2タッチ縛りで敵に守備体形を整える時間を与えない。第3の動きも活発に入れる。
これなら引き込んで自陣のスペースを消してくるであろうカンボジア相手でも、タテに速い攻撃の予行演習ができる。また押し込んでくる相手に対し、プレスをかける練習にもなる。ただ勝つだけでなく、W杯本大会を想定した実戦トレーニングになる。
こんなふうに試合ごとに特定のテーマを持ち、「それが何%実現できたか?」を考えながらプレイすれば進歩も速い。
点差や時間帯を見て原口や遠藤、米倉ら新戦力をテストする
「おいおい。わざと攻めさせるとか予行演習とか、予選本番でそんな悠長なこといってていいのか?」と思う向きもあるだろう。
だが繰り返しになるが、相手はあのシンガポールに4点取られて負けたチームである。「練習相手」としては弱すぎて強化にならないし、そんな相手にただ勝つだけでは収穫が少ない。であれば自チームに「あえて負荷をかける」ことも必要だろう。
そう考えれば、これまた点差や時間帯によっては、新戦力を大胆に投入し実戦に慣れさせることもありうべしだ。
例えばレギュラーの海外組でスタメンを立ち上げ、まず大量リードを稼ぐ。そのうえで原口元気(ヘルタ・ベルリン)や遠藤航(湘南ベルマーレ)、米倉恒貴(ガンバ大阪)など、まだ予選のド本番でのプレイ時間が少ない、または未経験の選手たちを投入するテもあるだろう。
サイドからクロスを入れる形を完成させろ
もうひとつ、カンボジア戦で大きなテーマにしてほしい案件がある。それはサイド攻撃への取り組みだ。同じように引いてくる相手に対し、シンガポール戦の前半みたいにまた中央突破一辺倒になるのでは「どれだけ学んでないんだ?」って話になる。
それでなくてもハリルジャパンは、サイドからクロスを入れるフィニッシュが極端に少ない。そもそも選手の頭の中にその発想自体がないフシがある。
これはある意味ザックジャパンから受け継いだ負の遺産であり、致命的な欠点だ。そこでカンボジア戦では、サイドからの崩しが何%まで構築できるか? これが大きなチェックポイントになる。
今回はハリルによれば戦術練習しかしないという話だが、それならサイドからクロスを入れる形を練習で徹底させてほしい。カンボジア戦はそのための「守備者を付けたパターン練習だ」と思うくらいでいい。
厳密にいえば、現状の手駒を考えるとまず質の高いクロッサーを育てるところからやる必要があるが、それではワールドカップ本番にとても間に合わない。付け焼き刃でもやるしかない。
また相手がカンボジアなら高さで負けることは必ずしもないと思うが、単に頭に合わせるハイクロスだけでなく、相手の最終ラインとGKの間を狙うグラウンダーの速いラストパスを織り交ぜるなど、クロスのバリエーションにも工夫がほしい。
片サイドに敵を引きつけ囮にしてサイドチェンジを
また引いた相手を攻めるにはサイドチェンジも有効だ。例えば一方のサイドに複数の敵の選手を引きつけておいて囮にし、相手ブロックのバランスを崩させた上で、一発のロングボールでサイドチェンジする。
で、サイドチェンジのボールを入れたら、敵がポジショニングを修正する時間を与えず、なるべく手数をかけずに速く攻める。5バックでリトリートし真ん中を固めてくる相手には、こうした左右への揺さぶりもカギになる。
このほか敵の引きこもり対策として有効なのは、積極的にミドルシュートを打つことだ。フリーでシュートを打たれてはリスキーだから、守備者はプレスをかけようと前に出てくる。つまり敵をおびき出すことができる。
たとえゴール前に相手が密集していてシュートが直接入らなくても、シュートのリバウンドはどこへ飛ぶかわからない。つまり何が起こるかわからない。すなわち敵はそれだけ読みが効きにくく、シュートのセカンドボールを拾って攻めれば有効打になりやすい。
またゴール前でドリブルを有効に使うのもいい。
守備者があせり、足さえ出して引っ掛けてくれれば、バイタル近くでファウルをもらえる。ハリルが27日の記者会見で語っていた「インテリジェンス」である。とすればキーマンになるのは、ドリブルが得意な宇佐美や原口あたりかもしれない。
アジア2次予選初戦のシンガポール戦で、1点も取れずに迎えるカンボジア戦。上にあげた6つの秘策でぜひとも大量得点し、ロシアへの扉をこじ開けてほしい。
ハリルジャパンは9月3日、ホームにカンボジアを迎え、ロシアW杯・アジア2次予選を戦う。
さんざん攻めながら引いて守る相手に1点も取れなかった初戦のシンガポール戦、また1勝もできず最下位に沈んだ東アジアカップの記憶も新しい。これまでのところ、ハリルジャパンの対アジア対戦成績はさんざんだ。
そこでハリルホジッチ監督はアジア諸国を分析し、対策を練っているという。
例えば当面の敵であるカンボジアは、ハリルによれば「引いて守ってカウンター狙いでくる。おそらく5バックだろう。そのためトレーニングでもDFを5人置いてシミュレーションし、相手の低いラインをどう崩すか考えている」。
つまり9月3日のカンボジア戦は、初戦のシンガポール戦とまったく同じ展開になるわけだ。そもそも3バックや4バックでなく5バックを選択している時点で、「低く構えて全員で守るぞ」という意図が読み取れる。
とすれば日本はどう戦えばいいのだろうか?
わざと攻めさせてカウンターで仕留める
カンボジアは、あのシンガポールに4点取られて負けている相手だ。ぶっちゃけ、かなり弱い。したがって敵のリトリート対策を講じてただ勝つだけでは、得られるものは少ない。
もちろんド本番の予選だから勝つことは最優先課題だが、ここはW杯本大会をにらみ、2次予選をその練習台として「有効活用」したい。つまり少しでも本大会の予行演習になるような戦い方をしたい。
例えば点差や残り時間によっては、日本もブロックを意図的に低く構える時間帯を作る。で、敵を前におびき出してわざと攻めさせ、これで敵陣内にスペースを作ってからカウンターで仕留める。
すなわちボールを奪ったら、グラウンダーの強くて速いタテ方向へのクサビを突き刺す。同時に選手は2タッチ縛りで敵に守備体形を整える時間を与えない。第3の動きも活発に入れる。
これなら引き込んで自陣のスペースを消してくるであろうカンボジア相手でも、タテに速い攻撃の予行演習ができる。また押し込んでくる相手に対し、プレスをかける練習にもなる。ただ勝つだけでなく、W杯本大会を想定した実戦トレーニングになる。
こんなふうに試合ごとに特定のテーマを持ち、「それが何%実現できたか?」を考えながらプレイすれば進歩も速い。
点差や時間帯を見て原口や遠藤、米倉ら新戦力をテストする
「おいおい。わざと攻めさせるとか予行演習とか、予選本番でそんな悠長なこといってていいのか?」と思う向きもあるだろう。
だが繰り返しになるが、相手はあのシンガポールに4点取られて負けたチームである。「練習相手」としては弱すぎて強化にならないし、そんな相手にただ勝つだけでは収穫が少ない。であれば自チームに「あえて負荷をかける」ことも必要だろう。
そう考えれば、これまた点差や時間帯によっては、新戦力を大胆に投入し実戦に慣れさせることもありうべしだ。
例えばレギュラーの海外組でスタメンを立ち上げ、まず大量リードを稼ぐ。そのうえで原口元気(ヘルタ・ベルリン)や遠藤航(湘南ベルマーレ)、米倉恒貴(ガンバ大阪)など、まだ予選のド本番でのプレイ時間が少ない、または未経験の選手たちを投入するテもあるだろう。
サイドからクロスを入れる形を完成させろ
もうひとつ、カンボジア戦で大きなテーマにしてほしい案件がある。それはサイド攻撃への取り組みだ。同じように引いてくる相手に対し、シンガポール戦の前半みたいにまた中央突破一辺倒になるのでは「どれだけ学んでないんだ?」って話になる。
それでなくてもハリルジャパンは、サイドからクロスを入れるフィニッシュが極端に少ない。そもそも選手の頭の中にその発想自体がないフシがある。
これはある意味ザックジャパンから受け継いだ負の遺産であり、致命的な欠点だ。そこでカンボジア戦では、サイドからの崩しが何%まで構築できるか? これが大きなチェックポイントになる。
今回はハリルによれば戦術練習しかしないという話だが、それならサイドからクロスを入れる形を練習で徹底させてほしい。カンボジア戦はそのための「守備者を付けたパターン練習だ」と思うくらいでいい。
厳密にいえば、現状の手駒を考えるとまず質の高いクロッサーを育てるところからやる必要があるが、それではワールドカップ本番にとても間に合わない。付け焼き刃でもやるしかない。
また相手がカンボジアなら高さで負けることは必ずしもないと思うが、単に頭に合わせるハイクロスだけでなく、相手の最終ラインとGKの間を狙うグラウンダーの速いラストパスを織り交ぜるなど、クロスのバリエーションにも工夫がほしい。
片サイドに敵を引きつけ囮にしてサイドチェンジを
また引いた相手を攻めるにはサイドチェンジも有効だ。例えば一方のサイドに複数の敵の選手を引きつけておいて囮にし、相手ブロックのバランスを崩させた上で、一発のロングボールでサイドチェンジする。
で、サイドチェンジのボールを入れたら、敵がポジショニングを修正する時間を与えず、なるべく手数をかけずに速く攻める。5バックでリトリートし真ん中を固めてくる相手には、こうした左右への揺さぶりもカギになる。
このほか敵の引きこもり対策として有効なのは、積極的にミドルシュートを打つことだ。フリーでシュートを打たれてはリスキーだから、守備者はプレスをかけようと前に出てくる。つまり敵をおびき出すことができる。
たとえゴール前に相手が密集していてシュートが直接入らなくても、シュートのリバウンドはどこへ飛ぶかわからない。つまり何が起こるかわからない。すなわち敵はそれだけ読みが効きにくく、シュートのセカンドボールを拾って攻めれば有効打になりやすい。
またゴール前でドリブルを有効に使うのもいい。
守備者があせり、足さえ出して引っ掛けてくれれば、バイタル近くでファウルをもらえる。ハリルが27日の記者会見で語っていた「インテリジェンス」である。とすればキーマンになるのは、ドリブルが得意な宇佐美や原口あたりかもしれない。
アジア2次予選初戦のシンガポール戦で、1点も取れずに迎えるカンボジア戦。上にあげた6つの秘策でぜひとも大量得点し、ロシアへの扉をこじ開けてほしい。