すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【プレミアリーグ 23/24 第13節】息詰まる抜き手争い ~トッテナム 1-2 アストン・ヴィラ

2023-12-05 09:24:09 | イングランド・プレミアリーグ
神経の通った90分間

 非常に緊張感のある好ゲームだった。
 
 実力が拮抗した者同士のつばぜり合いに息が詰まった。

 ひとつひとつのゴールとプレスのかけ方、最終ラインの敷き方に思わずため息が出た。これ以上の表現はまったく必要のない試合だと感じた。

 ハイレベルだ。

 言葉が出ない。

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【プレミアリーグ 23/24 第13節】チェルシーの無気力ぶりが目も当てられない ~ニューカッスル 4-1チェルシー

2023-11-30 10:49:19 | イングランド・プレミアリーグ
同節シティvsレッズ戦のハイレベルさとは天地の差だ

 同じプレミアリーグ第13節のマンチェスター・シティ対リバプールの試合があまりにもハイレベルで息詰まる内容だったので、相対的にこの試合の酷さが目立った。とても同じリーグとは思えない内容だった。

 前シーズンからすっかり無気力状態が続くチェルシー。だが今季は前々節でトッテナムに勝ち、前節はマンチェスター・シティと4-4で引き分けるなど上げ潮ムードにあった。個人的にも応援しているので期待したが……当てが外れた。

 なにしろ試合中に、てくてく歩いている選手がいるのだ。シティvsレッズ戦の高い緊張感とはかけ離れている。これでは勝てない。

 まずは13分だ。ニューカッスルが押し込んだ。ペナルティアークでボールを保持したマイリーがボックス右でもらう動きをしたイサクへ縦パスを出す。流れるようにゴール方向へ向き直ったイサクは、ゴール左へきっちりシュートを叩き込んだ。

 これに対しチェルシーも反撃する。20分だ。

 ロングカウンターからスターリングが裏へ抜け出しゴールを狙う。だがボックス手前でDFトリッピアーに止められた。しかしこれはファウルでFKをもらった。

 場所はボックス手前の左だ。キッカーのスターリングは壁の上を越える素晴らしいショットで同点弾をお見舞いした。23分だ。

 以降は追いついたチェルシーが流れをつかんだ。ここまでは「まだまだ試合はわからない」という緊張感があった。そして前半を折り返す。

ニューカッスルが畳み込んで試合を決める

 さて60分だ。ニューカッスルのゴードンが左サイドからきれいなクロスを入れる。これに合わせて完全なフリーでゴール前へ飛び込んだラッセルズがヘッドでゴール右へ押し込んだ。

 続く1分後の61分には、自陣でバックパスを受けたDFチアゴ・シウバがなんとキックミス。これでジョエリントンがボールを奪い返し、ボックス内でGKと一対一になりゴールを決めた。3-1だ。

 追い込まれたチェルシーは69分に3枚替えを敢行する。ジャクソンとギャラガー、ウゴチュクに代えてブロヤ、カイセド、ムドリクを入れて攻めのテコ入れをした。

 だが73分に自陣でリース・ジェームズが、ゴードンを倒して2枚目のカードをもらい退場になってしまう。これでチェルシーは万事窮した。

 数的優位になったニューカッスルは83分、アルミロンのスルーパスに飛び込んだゴードンが4点目を挙げて試合をきっちり終わらせた。

 チェルシーは不運な面もあったが、肝心なところで意気が上がらない。選手1人1人の技術レベルは高いのだが「気持ちの問題」だろう。なんだか今季もさえない感じだ。


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【プレミアリーグ】シティが圧巻のサッカーを見せつける ~マンチェスター・シティ 1-1 リバプール

2023-11-26 10:54:17 | イングランド・プレミアリーグ
「3つのスピード」がとんでもなく速いシティ

 イングランドのプレミアリーグ第13節が行われ、マンチェスター・シティがホームのエティハド・スタジアムでリバプールを迎え撃った。高度に緊迫した究極のゲームが行われ、ハイレベルな試合は1対1の引き分けで終わった。

 シティはアーリング・ハーランドを筆頭に、ジェレミー・ドクやベルナルド・シウバらを擁して臨んだ。一方のリバプールはモハメド・サラーとダルウィン・ヌニェス、ディオゴ・ジョタを前線に構える4-3-3だ。日本代表の遠藤航はベンチスタートだった。

 のっけからシティはプレイスピードとボールスピード、判断のスピード、という「3つのスピード」がとんでもなく速い。プレイは必ず2タッチ以内で行われ、ポジティブ・トランジションとネガティブ・トランジションも素晴らしく速い。プレス回避も見事だ。なかでも俊敏なドリブルで敵の最終ラインを食い破るドクが物凄い迫力である。

 3-4-3システムの彼らは3-2-5の形でビルドアップする。ゲームは序盤からシティのペースで進んだ。マンCが一枚も二枚も上手な感じだった。

 試合はそんな彼らが先制した。27分だ。DFアケがドリブルで敵陣を進み、2人かわして最前線のハーランドにパス。受けたハーランドは、ゴール右隅ギリギリに左足で強烈なショットを叩き込む。ボールはGKアリソンが伸ばした手を弾いて入った。

 ハーランドはプレミアリーグ通算50ゴール目。史上最速だ。

途中出場の遠藤航が最後を締めた

 試合の中盤もずっとシティのペースで進んだ。だが逆にレッズの側から見れば、強豪シティを1点に抑えてうまく戦っているともいえる。

 その証拠に、後半に入り時間が押し迫るにつれ次第にリバプールが押し返し始める。そして88分にバイタルエリアでアレクサンダー=アーノルドの凄まじい2タッチでの右足のシュートがファーに決まった。レッズがとうとう同点に追いつく。

 さすがにこのハイレベルでは遠藤はついて行けないなぁ、と思って観ていたら、なんと85分に1対1の痺れる状況で遠藤が交代出場した。クロップは試合を締めるつもりだ。リバプールとしては帝王シティ相手に「引き分けで御の字」てなところだろう。

 それにしてもあんな難しい局面で遠藤が大事な試合の幕引きをまかされるとは、やはりクロップは遠藤の「守り切る力」を認めているのだ。それ以外にありえない。なにしろクロップは遠藤に試合を託したのだから。

 とすれば彼がこの後、強化すべきことは、組み立てのパス出しを含めた攻撃面だろう。そこさえクリアすればレギュラーは近い。

 こんなふうに試合は基本シティのペースで進んだが、特に後半アディショナルタイムに入るあたりからのレッズの追い上げは凄い迫力だった。かくて試合はこのまま1-1の引き分けで終わった。「世界の頂上決戦」は見ごたえ充分だった。

 本題と関係ないが、久保健英はレアル・マドリーなどに行かず、絶対にこの世界で勝負すべきだと強く感じた。そうすれば彼はまだまだ伸びるだろう。

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【プレミアリーグ 23/24 第12節】遠藤航はオン・ザ・ボールを磨け ~リヴァプール 3-0 ブレントフォード

2023-11-14 05:04:37 | イングランド・プレミアリーグ
頻繁に起こるボールロストをなくしたい

 現地時間11月12日にプレミアリーグ第12節が行われ、リヴァプールとブレントフォードが対戦した。試合はリバプールが3ゴールを上げて勝利した。遠藤航がアンカーで先発フル出場した。

 ひさしぶりにプレミアリーグで先発した遠藤は、まずまず無難にプレーした。ただし4分と14分、37分に、そう難しくない場面でボールロストをしたほか、退場もののラフプレーをするなど課題も露わになった。

 この試合はボールが落ち着かないゲームだった。ブレントフォードは2-4-4でビルドアップするが、リバプールがボールを保持すると5-3-2で自陣にブロックを敷いて待ち構えた。そんな試合が動いたのは39分だった。

 ボックス内で縦パスを受けたCFダルウィン・ヌニェスが、右にいたサラーに横パスを出す。受けたサラーはきっちり枠内にシュートを決めた。先制点だ。このあとサラーとジョタが1点づつを取り、3-0でレッズが完勝した。

 リバプールのフォーメーションはいつもの4-1-2-3だ。スタメンはGKがアリソン。最終ラインは右からトレント・アレクサンダーアーノルド、ジョエル・マティプ、ファン・ダイク、コスタス・ツィミカスだ。

 アンカーは遠藤。右インサイドハーフはドミニク・ソボスライ、左インサイドハーフはコーディ・ガクポ。3トップは右からサラー、ヌニェス、ディオゴ・ジョタだ。

オン・ザ・ボールでバタつく

 この試合の遠藤は(3回のボールロストを除けば)そう目立った大きなミスもなく、破綻なくこなしていた。まずまずだった。ただし安定感があったとは言えない。

 例えばボールをトラップしようとして大きく弾いてしまい、そのため結果的に敵と競り合いになって仕方なくファウルしてしまったりしていた。

 例えば55分のシーンなどは象徴的だ。彼はボールを収めようとしてコントロールミスし、奪われそうになって出した足がブレントフォードのMFクリスティアン・ノアゴーの膝に当たった。これはレッドカードかどうかVARで検証されたが、ノーカウントで終わり助かった。

 こんなふうにオン・ザ・ボールのときの遠藤はけっこうバタバタしており、どうも危なっかしい。今にもミスしそうだった。そんなふうだから「パスの受け手はどこにボールが欲しいか?」などを考えた上でパス出ししているようには見えない。

 また遠藤のパスは他人に預ける無難なパスばかりで、マクアリスターのような「試合を決めてしまう」ような決定的なキーパスがないのが物足りなく感じる。

 ただしこれはあくまでライバルのマクアリスターとくらべればの話だ。遠藤のポジションはあくまでアンカーなので、求められるパス出しは組み立ての第一歩になるシンプルなボールだろう。ゆえに現状でも特に問題はない。

競り合いで敵の足を踏むクセをなくせ

 もうひとつ遠藤のプレイで気になったのは、競り合いの時に相手の足を踏んでしまうことが多い点だ。現にこの試合でもやっていた。

 また11月10日に行われたヨーロッパリーグ第4節のトゥールーズ戦でも、退場の可能性のある彼のプレイが論議を呼んだ。一方、このブレントフォード戦では見逃されてラッキーだったというしかない。

 まとめれば、やはり遠藤はプレミアリーグに慣れるのにまだ時間がかかりそうだ。

 この試合ではふだんアンカーを務めるマクアリスターが出場停止だったため遠藤が出たが、これが例えばビッグ6のチームが相手ならクロップは遠藤をスタメン出場させただろうか?

 結論として、遠藤はまだしばらく慣らし運転が必要だろう。

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【分析コラム】プレミアリーグは序盤で早くも優勝候補が絞られた?

2023-11-03 07:29:39 | イングランド・プレミアリーグ
新監督ポステコグルーがスパーズを生まれ変わらせた

 世界中から猛者が集まるプレミアリーグは、第10節を終えた序盤戦で早くも優勝候補が絞られたような感がある。ズバリ、マンチェスターシティとトッテナム・ホットスパー、そしてアーセナルが有力だ。

 なかでも第10節終了時点で8勝2分けと負けなしの勝ち点26で首位に立つスパーズは調子がいい。監督が横浜F・マリノスとセルティックで結果を出した戦略家ポステコグルーに代わり、なにより選手のメンタルが激変した。選手たちがイキイキとのびやかにプレーしているのが手に取るようにわかる。アンジェ・ポステコグルーのモチベーターぶりが光っている。

 昨季までの彼らは単に「ビッグ・シックス」の1クラブというだけで、淡々とルーティーンワークをこなすサラリーマンみたいな集団だった。熱いものがなく、そこそこの成績は残すが優勝は絶対しない。そんな万年課長みたいなチームだった。

 だが今季は新監督ポステコグルーの薫陶を受け、8ゴールを上げて得点ランキング2位にいる韓国代表FWソン・フンミンを筆頭に、レスターから移籍してきたイングランド代表MFジェームズ・マディソンも第10節を終えて3ゴール5アシストと爆発している。

 またメンタルの問題を抱えていることを明かし、不振に陥っていたブラジル代表FWリシャルリソンも復活の兆しを見せている。

 ポステコグルーのサッカーはお得意のハイライン・ハイプレスだ。コンパクトな陣形を保ち、ゾーンを圧縮して敵を窒息させる。最終ラインから少ないタッチ数でグラウンダーのショートパスをていねいに繋ぎ、ビルドアップするスタイルである。

 ただしシティやアーセナルとくらべると、選手層がそう厚いとは言えないのが減点ポイントか? だがチームの勢いは彼らが明らかに断トツだ。

手堅いシティはFWドクに注目だ

 これに対し、8勝2敗の勝ち点24で3位につけているペップ率いるマンチェスター・シティーも、強さに揺るぎがない。エースのノルウェー代表FWアーリング・ハーランドは、11ゴールで相変わらず得点ランキングのトップにいる。

 また今季はなによりスタッド・レンヌから移籍してきたベルギー代表FWジェレミー・ドクがすさまじい。

 筋肉隆々で躍動感がハンパない彼は無双のドリブルでごりごりサイドを食い破り、チームのチャンスを作り続けている。しかもそんな彼とポジション争いをしているのが、イングランド代表MFのジャック・グリーリッシュなのだから選手層の厚さに驚かされる。

 シティーは大黒柱のMFケビン・デ・ブライネが長期離脱中なのが不安材料だが、同じく離脱中だったMFマテオ・コバチッチとMFベルナルド・シウバが戻り、出場停止処分が解けてMFロドリが復帰したのも大きい。あのデ・ブライネがいなくても3位につけているのだからすごい。

 勝ち慣れている彼らは試合運びもうまく、安定感がある。ペップの魔法も相変わらず健在で、手堅い優勝候補であることはまちがいない。

選手層が分厚いアーセナルも有力だ

 選手層という意味ではプレミアリーグで1、2を争うのがアーセナルだ。彼らは7勝3分けの負けなし。勝ち点24で2位につけている。目玉は右WGで使われるブカヨ・サカの突破力だ。

 また第10節のシェフィールド・ユナイテッド戦でハットトリックを達成したFWエドワード・エンケティアやFWガブリエル・マルティネリなど、あのトロサールやウーデゴールらがスタメンで出られないくらいの層の厚さを誇る。

 このチームの死角といえば左SBオレクサンドル・ジンチェンコの守備力くらいだが、彼は偽SBをはじめ攻撃への貢献度が高いので監督のミケル・アルテタも外せないところ。試合展開に応じて冨安を途中投入するなどしてやりくりしているが、この左SBのレギュラー争いも見物のひとつだ。

 個人的には冨安はCBで使ってほしいが、まあ上がつっかえているので仕方ない。

 もうひとつアーセナルの死角を挙げるなら、個人的な印象だが指揮官アルテタの胆力だろうか。彼は見た目が神経質そうで、どこかどっしりとした余裕が感じられない。常にピリピリと何かにイラ立っているように見える。

 昨季、ペップにひっくり返されて逆転優勝されたように、監督としての器がまだ板についてないように感じる。ペップやポステコグルーのような「俺にまかせろ」感がイマイチ感じられない。「このおっさんのために死ぬ気でプレーしよう」と選手に思わせる「何か」が欠けているような気がする。まあ個人的な印象だが。

チェルシーとマンUの再建はあるか?

 このほかリバプールも爆発的な攻撃力・得点力があり有望だが、今季は本職じゃないマクアリスターがバイタルエリアを守る「アンカー問題」が解決しない限り守備が安定しないので優勝はないと見る。

 そのほかマンチェスターユナイテッドとチェルシーは絶対に優勝はない(笑)。今季のチェルシーは「ひょっとしたら立ち直るのでは?」と微かな期待をして観ていたが、まさか第10節でブレントフォードに0-2で負けるなんて夢にも思わなかった。しかも内容が悪すぎる。やれやれだ。

 他方、マンUももはや「負け慣れ」してしまい回復の兆しがない。

 この2チームは「昔の名前で出ています」という看板だけのチームだ。有名なだけで抜け殻である。いちばん深刻なのは選手のメンタルだ。覇気もなければヤル気もない。

 スパーズも昨季まではこの駄目グループに属したが、名モチベーターのポステコグルーが見事に立て直した。マンUとチェルシーも選手のメンタルをゼロからモチベートできる人物が監督にならない限り、浮上はむずかしいだろう。

 このほか優勝まではないだろうが、アストン・ヴィラとニューカッスルもいいサッカーをしている。見ごたえがある。あと個人的には、順位は下の方だがウルヴズも面白い存在だ。

 彼らはガッツのあるメンタルで非常に攻撃的だ。かつ、負けていても絶対に試合を諦めない(マンUやチェルシーは彼らの爪の垢でも煎じて飲んでもらいたい)。選手別では、FWペドロ・ネトとFWファン・ヒチャンのプレイは必見だ。見て損はない。おすすめです。

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【分析コラム・リーグ杯】遠藤航とマクアリスターは対照的だ ~ボーンマス 1-2 リバプール

2023-11-02 10:36:46 | イングランド・プレミアリーグ
スペースを埋め無難にパスを捌いた遠藤

 11月1日にイングランドリーグ杯(カラバオカップ)の4回戦が行われ、2点を取ったリバプールがボーンマスに競り勝った。遠藤航がアンカーで先発し、後半には遠藤は退きマクアリスターが登場した。

 雨の中の試合。遠藤は4-1-2-3のアンカーでプレイした。レッズは31分にエリオットが打ったミドルシュートのこぼれ球をガクポが押し込み、先制に成功する。

 続く63分にはボーンマスのクライファートにCKからのシュートを決められ同点になったが、70分にダルウィン・ヌニェスが左サイドからカットインし素晴らしいゴラッソを豪快に決めリバプールが勝利した。

 興味深かったのは、前半はアンカーを遠藤が務め、後半はマクアリスターが同じポジションでプレイしたところだ。そのぶん両者のプレイスタイルの違いが鮮明に浮き彫りになった。

 まずポジショニングだ。遠藤は最終ラインの前のスペースを埋めることに注力していたのに対し(いかにも本職のアンカーが考えそうなことだ)、一方のマクアリスターはチャンスと見ればポジションを捨てても攻撃を優先していた点だ。

 両者のコントラストがはっきりして興味深かった。

 ただし遠藤は安易にボールホルダーの足元へ飛び込み、カンタンにかわされるシーンが数回あった。リーグ戦でも見られるシーンだが、あそこは修正する必要があるだろう。

キラーパスを出したマクアリスター

 一方、攻撃面での比較はどうか?

 まずポジショニングについては、遠藤は昔で言えば「リンクマン」(前と後ろを繋ぐ役割)に徹し、足元で受けたボールを無難にグラウンダーのパスで横や前へ繋いでいた。

 文字通り、守備陣と攻撃陣を「リンク」させる役割だ。

 かたやマクアリスターはといえば、象徴的だったのはアンカーの深い位置でボールを受け、顔を上げて最前線のFWサラーに向けて浮き球のやわらかいロングパスを通したシーンだ。

 マクアリスターはもともと攻撃の選手なので、こういう一発で試合を決めてしまえる攻撃的なパス出しができる。

 彼は遠くが見えており、ゴールを取るまでのルートを瞬時に頭の中で描ける。ただしそのぶん、守備は得意じゃない。

遠藤は「攻撃性能」でマクアリスターを上回れるか?

 単純に両者を比較すれば、遠藤はマクアリスターがサラーに通したような決定的なラストパスを出すのは難しいだろう。守備に重きを置く選手なのだから当たり前だ。

 ただし監督のクロップは、明らかにマクアリスターのそういう攻撃的なセンスを買ってアンカーのレギュラーポジションに置いている。

 とすれば遠藤がポジションを掴むには、マクアリスターのような「攻撃的なパス」が出せるようになるか? あるいは逆に、そのぶん守備で決定的にチームを助ける役割を果たすか? のどちらかだ。

 遠藤のプレイスタイルを考えれば後者のほうになるだろうが、ただし守備における活躍だけでマクアリスターを上回るのはやはり難しいかもしれない。なによりクロップの目に映るインパクトが違う。

 とすればやはり遠藤はクロップから求められている、鋭い縦パスを配給するなどの「攻撃性能」を地道にアップさせていくしかないだろう。

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【分析コラム】遠藤航が「攻撃好き」なクロップを唸らせるには?

2023-10-28 05:00:07 | イングランド・プレミアリーグ
攻撃的だが守備は苦手なマクアリスター

 現地時間10月26日に行われたヨーロッパリーグ第3節のトゥールーズ戦で、リバプールの遠藤航が移籍後初ゴールを決めてメディアが大はしゃぎだ。「遠藤が凄い! これでレギュラーまちがいなしだ!」とばかりに、天地がひっくり返ったように騒いでいる。

 だが慎重なクロップは、たった1回ゴールを決めた程度では考えを変えないだろう。「継続的」に攻撃的なプレイを見せ続けなくては、遠藤のレギュラー獲りは遠いままだーー。

 さて残念ながら、目下、アンカーの遠藤はヨーロッパリーグとカップ戦要員に収まっている。プレミアリーグには相変わらずマクアリスターがアンカーとして先発する日々だ。この構図が完全に固定化している。

 だがマクアリスターは本来攻撃の選手であり、ぶっちゃけ守備は苦手だ。本ブログでは過去に何度も具体的に彼の守備面でのミスを指摘しているが、彼は守備の選手なら絶対にやらないような「致命的なやらかし」をアンカーの位置で何度もやり、チームをたびたび失点の危機に陥れている。

 マクアリスターのミスのおかげでチームのリズムがすっかり狂い、不安定になることがしばしばある。いや別に私は彼に個人的な恨みがあるわけじゃない。ただ淡々と客観的に状況を分析しているだけだ。サッカーチームというものは、まず守備が安定していなければ本領を発揮できないものなのだ。

 現在、レッズはプレミアリーグで6勝2分け1敗の4位と上位にいるため、結果的に彼のミスは目立たない。だが試合の内容をつぶさに見れば、彼の失敗が足を引っ張っているのは一目瞭然だ。赤いシャツのチームはギクシャクと不安定な試合を繰り返しながら、それでもなんとか勝ち続けている状態である。

「攻撃好き」なクロップが選ぶのは?

 ではなぜ攻撃的なマクアリスターは、こともあろうに守備的なアンカーポジションの先発要員としてクロップに使われているのか? それはおそらくクロップ自身が「攻撃的な選手が好みだから」だろう。

 例えばマクアリスターは、アンカーの位置からでも試合を一発で決めてしまえるようなキラーパスが出せる。攻撃面だけに限定すれば、非常に高い技術の持ち主だ。具体例をあげれば、第6節のウエストハム戦でFWダルウィン・ヌニェスに放った、チームの2点目に繋がったような高度なパス出しだ。

 このときマクアリスターは中盤の底の深い位置から、最前線のヌニェスを狙って縦への鋭いロングパスを入れた。寸分の狂いもなく、ボールはヌニェス目がけて飛んで行く。

 一方のヌニェスは自分の頭上へと飛ぶボールの落下地点へ素早く移動し、目の前に落ちてきたボールを足の甲にうまく乗せてなんとダイレクトでシュートを決めた。超絶的なゴラッソだった。

 つまりマクアリスターは、こういう必殺のパスが出せるから先発で使われているわけだ。

クロップはレッズの欠陥を自覚しているが……

 さて、ここで思い出されるのは、遠藤を獲得したときクロップが彼に言ったというジョークだ。

 クロップは「うちのチームには守備的なMFが足りないんだ」といい、「つまりウチは、なんというか、攻撃的すぎるんだよ(笑)」と笑った。

 ユーモアのセンスがあるクロップは冗談に絡めて、「いまのリバプールは守備に欠陥がある」という現状分析をして見せたのだ。この分析はまったく正しい。冒頭で説明したように、レッズの守備には欠陥がある。

 そして皮肉なのは、クロップはこの自チームの欠陥を自分で重々わかっていながら、にもかかわらずアンカーという守備の要諦を握るポジションに攻撃的な、(だが守備はヘタな)マクアリスターを起用してしまっていることだ。

 つまりクロップは客観的には自チームの欠陥をわかっていながら、それでも攻撃好きな彼は「本能的に」マクアリスターを選んでいるわけだ。

いまのレッズには何が求められているか?

 攻撃的な能力でくらべれば、確かに遠藤はマクアリスターに一歩譲る。前述したようなFWヌニェスへマクアリスターが出したような超絶的なロングパスなどは遠藤にはマネできないだろう。

 だがいちばんに考えるべきは、いまのリバプールには何が求められているのか? だ。それはもちろん「守備の安定」であり、ならばアンカーに誰を使えばいいかは一目瞭然だろう。

 どう考えても両インサイドハーフにはマクアリスターとソボスライを起用し、より前の位置でマクアリスターの攻撃的な能力を生かすのがベストだ。と同時に、彼らより一列下がったアンカーには守備が安定している遠藤を使うのがいい。

 ならば遠藤はクロップに求められている縦パスなどの攻撃的な能力を今後高めながら、虎視眈々とレギュラー入りを狙ってほしい。

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【プレミアリーグ 23/24 第9節】この試合の見出しがなぜ「三笘」なのか? ~マンチェスター・シティー 2-1 ブライトン

2023-10-24 09:04:31 | イングランド・プレミアリーグ
前半で終わっていた試合だ

 例によってメディアの見出しが「三笘!」「三笘!」の大合唱だ。で、試しにそのゲームを観てみることにした。ブライトンにはあんまり興味はないが確認のためだ。

 すると点差こそ「1点差」だが、驚いたことにマンチェスター・シティーの完全なワンサイドゲームだ。肝心の三笘は大半の時間帯でまったく消えていた。シティの左WGジェレミー・ドクがいつものようにサイドを食い破り続け、ブライトンは防戦一方だった。

 前半のアルバレスとハーランドの得点シーンでは、ブライトンはまるでアマチュアみたいな失点の仕方をしていた。まるで試合になってない。見どころといえば、ドクとマッチアップするミルナーの守備くらいだ(皮肉に言えば、だ)。

 前半早々に「0-2」とリードされ、ブライトンの選手たちはまるでゾンビのように生気なくピッチに佇むだけだった。

ペップのリップサービスを利用し「三笘!」の大合唱

 もし前半26分に放ったドクのあの惜しいシュートが決まっていれば、「3-0」となってゲームは前半で終わっていただろう。

 一点だけブライトンを褒めるとすれば、強敵シティと対戦したにもかかわらず、自陣にこもって「引いて守ってカウンター狙い」という(他のチームがやるような)極端な戦い方をしなかった点だけだ。

 繰り返しになるが、三笘は試合の大部分で「消えていた」。マッチアップしたDFカイル・ウォーカーに完全に抑え込まれていた。

 唯一、彼はアンス・ファティのゴールに関与したプレイで得点に絡んだが、なんであの試合のレポートでタイトルが「三笘が凄かった」になるのか?

「あのペップが三笘を褒めた」などと、試合後のペップのリップサービスに乗っかり「三笘! 三笘!」の大合唱。このメディアによる強大な「スターシステム」には、まったく呆れてモノが言えない。

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【プレミアリーグ 23/24 第8節】スターリングが冴え渡る ~バーンリー 1-4 チェルシー

2023-10-12 05:02:04 | イングランド・プレミアリーグ
ホームのバーンリーが先制するが……

 プレミアリーグ第8節が10月7日に行われ、バーンリーとチェルシーが対戦した。チェルシーが4ゴールを奪って勝利した。

 試合はホームのバーンリーが先制し、前半のチェルシーは相手のコンパクトな守備ブロックに手を焼く展開になった。ブルーズの面々はなんだか不安そうだった。だが前半の終わりに同点に追いつき、そこからチェルシーは急速度に加点し彼らのポゼッションだけが冴える展開で終わった。

 この日、1ゴールのスターリングは全得点に関与する働きが光った。

 チェルシーは立ち上がり、ハイプレスで入った。14分には左WGのスターリングが左サイドからカットインしシュートするが右に逸れる。これがこの日の彼らの攻撃の象徴になった。本日の主役はスターリングだ。

 だが先制したのはバーンリーだった。左サイドから中央へ展開し、最後はボックス内のゴール左からFWウィルソン・オドベールがフィニッシュした。彼らはかつてのクラシカルなサッカーから変身し、すっかりポゼッション・スタイルを身につけたようだ。

 チェルシーのフォーメーションは4-1-2-3だ。GKはロベルト・サンチェス。最終ラインは右からマルク・ククレジャ、アクセル・ディサシ、チアゴ・シウバ、レビ・コルウィルが構える。

 アンカーはモイセス・カイセド。右IHはコナー・ギャラガー、左IHはエンソ・フェルナンデス。最前線は右からコール・パルマー、アルマンド・ブロヤ、ラヒーム・スターリングだ。

スターリングだけが戦意をたぎらせる

 チェルシーは自陣でボールを奪い返して速いカウンターのチャンスになっても、誰も爆発的なスプリントをする選手がいない。カウンターは彼らの辞書にはないのだろう。「俺たちはポゼッションだ」と自分たちのリズムを自分で決め込んでしまっている。局面に応じた臨機応変な戦い方ができない。まるでルーティーンワークを淡々とこなすサラリーマンのようだ。

 34分にもブルーズは早いタイミングでフィニッシュする機会があったが、彼らは遅攻にしてしまった。相手に時間を与えたおかげでゴール前に人垣を作られ好機をフイにした。彼らはバーンリーの4-4の守備ブロックに手を焼いている。ならばリズムを変えて緩急をつけるべきなのに、まったく同じリズムでただパスをゆったり回しているだけだ。

 そんな沈滞した空気を打ち破ったのはスターリングだった。42分に彼は左サイドでドリブルし、左足で鋭いクロスを入れる。するとバーンリーのDFアミーン・アル・ダキルにボールが当たってゴールに入った。オウンゴールだ。これで同点に追いついた。

 さて前半を終わり、ブルーズのポゼッション率は68%だった。だが彼らは敵ブロックの外周をただ安全に「コ」の字型を描きながらパスを回しただけだ。有効なポゼッションではない。後半、そこが改善できるかどうかがポイントだ。

ブルーズが逆転し初の2連勝へ

 チェルシーは後半の頭から、CFのブロヤに代えてニコラス・ジャクソンを投入した。すると48分、スターリングの突破に右SBビチーニョがファウルし、PKを得る。キッカーはパーマーだ。彼はグラウンダーのボールでゴール右に決めた。逆転である。

 現金なもので、ブルーズは2-1と1点リードしたら、とたんにきっちりブロックを作って守り始めた。選手の心理が透けて見える。

 続く65分、チェルシーは中盤でのボール奪取からギャラガーが左のスターリングにボールを振り、スターリングがゴールエリア左角からゴール右にきっちり決めた。3点目だ。

 そして仕上げは75分だった。またもスターリングが左サイドを切り裂き、逆サイドのパーマーにパス。次にボールはパーマーから中央のジャクソンへ。彼はワントラップして切り返し、ゴール右に叩き込んだ。チーム4ゴール目である。

 かくてタイムアップ。終わってみればチェルシーの大勝だが、バーンリーの先制点から次の1点をどちらが取るかが勝負だった。前半のブルーズは自信なさげだっただけに、同点にできたのは大きかった。

 あそこでメンタルが解放され、4ゴール圧勝に繋がった試合だった。サッカーでは、やはりメンタルの影響が大きい。これでチェルシーは初のプレミア2連勝。さあ追い上げだ。

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【プレミアリーグ 23/24 第8節】「アンカー遠藤航」は本格実現するか? ~ブライトン 2-2 リバプール

2023-10-11 05:20:21 | イングランド・プレミアリーグ
遠藤が先発かと思われたが……

 プレミアリーグ第8節が10月8日に行われ、ブライトンとリバプールが対戦した。試合は2-2の引き分けで終わった。

 10月5日に行われた、チャンピオンズリーグ第2節のユニオン・サン=ジロワーズ戦。アンカーで先発していた遠藤は前半で交代したので、てっきりその次に来るこの試合で先発すると思っていたから意外だった。

 やっぱりクロップは、まだ遠藤の新しい環境への適応度を気にしているのだろうか?

 確かクロップは記者会見で「IHのエリオットの調子がいいのでこの試合でスタメン起用した」と言ったらしい。ゆえに「遠藤は使えなかった」という意味だ。

 つまり遠藤がアンカーに入ると、必然的にマクアリスターとソボスライが両インサイドハーフになる。

 ところがそこにハーベイ・エリオットが左IHとして割り込んだため、マクアリスターがはみ出す形で一列下がってアンカーを務め、ソボスライが右IHに回ったのだ、という示唆だろう。

 つまり遠藤はあくまでこの「玉突き」によって先発をはみ出したのであり、遠藤がよくないから起用しなかったのではない、という間接的なクロップの説明だ。

マクアリスターは致命的な「やらかし」がある

 だがクロップは南野拓実がリバプールに在籍したときも、「なぜ使わないのか?」という質問にこのテの当たり障りのない説明をしてお茶を濁していた。

 クロップは決して選手のことを悪く言わないのだ。だから今回もそのテの取り繕いのような気がする。だがいずれにしろ遠藤にアンカーが務まるかどうかで、リバプールの運命は大きく変わってくる。

 現状、マクアリスターがアンカーをやっているが、彼はもともと攻撃の選手だけに守備に関するミスが多い。しかも守備の選手なら絶対にやらない「致命的なやらかし」が目立つ。

 例えばこのブライトン戦でも25分に、ヘディングでボールを収めようとしたが奪われかけ、ルイス・ディアスに助けられている。場所はバイタルエリアだ。

 また30分にはポジションを空けてしまい、ディフェンスラインがむき出しになり失点しかけた。そして80分にはジョアン・ペドロに抜かれてファウルで止めた。これはボックスのすぐ手前だ。

 とにかく彼がアンカーをやっている試合を観るたびキモを冷やす。

 特に第5節のウルブズ戦はひどかった。

ウイン・ウインの形は?

 前にも一度書いたが、リバプールが遠藤を獲ったとき、クロップの頭の中には「遠藤をアンカーで使う。そしてマクアリスターを左インサイドハーフ、ソボスライを右のインサイドハーフで起用する」という青写真があったはずだ。

 マクアリスターがIHとして今の位置より前でプレイできれば、彼の攻撃的な高い技術がいかんなく発揮され、チームの得点力はハネ上がるだろう。

 かたや堅実で安定性の高い遠藤がアンカーでハマれば、シーズン開幕から不安定な試合を繰り返すレッズに安定感がもたらされる。

 完全なウイン・ウインなのだ。

 さて、このいいことづくめの青写真はいつ実現するのだろうか。

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【プレミアリーグ 23/24 第7節】黄色い狼がペップにキツい一発を食らわす ~ウルヴァーハンプトン 2-1 マンチェスター・シティ

2023-10-04 05:00:53 | イングランド・プレミアリーグ
コレクティブ・カウンターが炸裂する

 プレミアリーグ第7節で現地時間9月30日、ウルヴァーハンプトンとマンチェスター・シティが対戦した。ホームのウルブスが2-1で勝利した。シティは開幕からの連勝が6で止まった。

 彼らはシティをリスペクトし、5-2-3の陣形でブロック守備をした。だがそれだけでなく、チャンスになれば両WBを上げて3-4-3に変化し、積極的にビルドアップして攻撃に出た。要所で敵を剥がす個の力がある選手が目立った。

 アタッカーであるペドロ・ネトによる単独ドリブル突破のほか、複数の選手が速いぺースでパスを繋いで前に飛び出すコレクティブ・カウンターが利いていた。

 彼らはただ守るだけでなく攻撃への意欲が強く、好機と見れば少ないタッチ数でパスを繰り出し敵陣へ殺到した。その結果、2点をもぎ取り王者シティを陥落させた。

ネトが右サイドを食い破る

 立ち上がりの13分。中盤でのシティのポゼッションに対し、ウルブスがプレスをかけてボールを奪い取る。そしてネトが右サイドを食い破った。

 彼は単独ドリブルで縦を突破しボックスへ侵入。ゴール右脇で味方にマイナスの折り返しを入れる。するとボールは足を出したシティのDFルベン・ディアスに当たってゴールに飛び込む。オウンゴールでウルブスが先制だ。

 彼らの核弾頭であるネトは第5節のリバプール戦でも大活躍し、すんでのところでレッズを倒す原動力になっていた。レッズ戦でも彼はサイドを蹂躙し、きわどいクロスを何度も入れ続けた。

 さて、その後はシティがボールを保持し、彼らの前半のポゼッション率はなんと69%に上った。だがウルブスもスキを突き効率よくカウンターをかける。

 44分にもネトは右サイドをドリブルで攻め上がり、呼応した味方としばらく敵陣でポゼッションした。かくて前半終了。リードしたホームチームの思惑通りの展開である。

アルバレスがFKを決めシティが同点に

 試合は後半に入り50分だった。ウルブスはラインを上げて中盤~前線でポゼッションした。続く52分にはロングボールを入れ、受けたネトが右サイドでキープ。そこを基点に彼らは敵陣でボールを保持しパスワークを見せた。

 彼らはワン~ツータッチでテンポよくパスを繋ぐ。いつも縦に速いカウンターをかけるというより中盤でのポゼッションも見せ、1点リードしている状況で上手に時間を消費した。

 一方、58分にはシティが反撃に出る。FKのチャンスだ。ボックスのすぐ外から、FWフリアン・アルバレスが右足でゴール左上スミに直接決めた。同点だ。GKジョゼ・サは片手でボールを手に当てたがそのまま入った。

 だが追いつかれてもウルブスのファイティング・スピリットは衰えない。左WBラヤン・アイトヌーリはマイボールになればオーバーラップし、コレクティブ・カウンターの原動力になる。また65分にはシティの攻撃を受けるが、DFクレイグ・ドーソンがシュートを掻き出し必死に守った。

 そして66分だ。ウルブスの右WBネルソン・セメドが攻撃参加する。彼は鋭いクロスを入れ、そのこぼれ球をFWマテウス・クーニャがゴール前で落とす。これに左から迫った韓国代表FWファン・ヒチャンが、ゴール右へしっかり押し込んだ。2-1。再び鼻の差をつけた。

70分頃から狼たちはうまく時間を使った

 シティが左サイドを攻めると、彼らは常に2枚で慎重に守備対応していた。そんなふうに耐えた69分には、またウルブスがカウンターに入りかける。だが途中でスピードを緩めてポゼッションし、うまく時間を使う選択をする。自分たちがリードしているからだ。

 83分にはシティの右SBカイル・ウォーカーの地を這うようなミドルが炸裂。一瞬、ドキリとしたがGKサが捕球した。そしてタイムアップ。黄色い狼たちが攻守に躍動するのに対し、シティの怪物ハーランドはまったく消えていたのが印象的だった。

 シティは出場停止中のスペイン代表MFロドリの不在が大きかったとの声もあるが、というより地力はあるウルブスの踏ん張りが目を引いたゲームだった。

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【カラバオカップ 分析】遠藤航は環境に適応したか? ~リヴァプール 3-1 レスター・シティ

2023-09-30 05:00:00 | イングランド・プレミアリーグ
「3つのスピード」に慣れる必要がある

 カラバオカップで「レッズの遠藤航が凄かった」と絶賛する声が上がっている。で、試しにその試合を観てみることにした。

 結論から先に言えば、遠藤はまずプレミアリーグのプレースピードとボールスピード、判断のスピードという「3つのスピード」に慣れる必要がある、という印象をもった。それには一定の時間がかかる。しばらく実戦をこなし続ける必要がある。

 この感想は、彼がプレミア・デビューした試合を観たときとまったく同じだ。なにしろプレミアリーグはこれら3つのスピードがとてつもなく速い。

 で、実際にゲームを観てみると、遠藤の周りの空間だけがぽっかりと「異空間」になっている感じがする。つまり周りの選手たちとどこか次元が違う。

 その違いとはいったい何か? を分析すると、おそらく上記した3つのスピードだろうと考えられるわけだ。

オン・ザ・ボールの評価をひっくり返せ

 ただし3つのうち「ボールスピード」というのは彼自身のパスのことではない。彼の縦パスは十分に強くて速い。そうじゃなく、彼の周囲を飛び交う回りのボールスピードに慣れるという意味だ。

 それと同じで、周りの選手はとてつもなく速い判断をし速いプレイをしている。そんな環境に遠藤は適応する必要があるということだ。

 また遠藤という選手はボールタッチ時のフォームがあまりスムーズじゃない。ハッキリ言えばモーションがぎこちない。ゆえにオン・ザ・ボールになると見劣りして損だ。

 いや彼はやることはやっているので、単に見栄えの問題なのだが。ゆえにその分は差し引いて観る必要がある。

 そのオン・ザ・ボール時のギクシャク感ゆえ、おそらく初めて彼を観たヨーロッパの記者や評論家はそのぶん辛く採点するだろう。想像はつく。だが繰り返しになるが、その分は差し引いて観る必要がある。

 現地のジャーナリストにすれば、ところが観ているうちにそんな選手がいいパスを出し、いいアシストを続けて行く。で、「なんだ、彼はいい選手じゃないか」に変わり、評価が180度覆る。そういうものだ。

前半は試合に入れてなかった

 さてカラバオカップの3回戦、リヴァプール対レスター・シティ(2部)戦は現地時間9月27日にレッズのホームであるアンフィールドで行われた。アンカーの遠藤はスタメンで90分間フル出場した。

 彼は前半、あまり試合に入れてなかった。その証拠に開始1分、いきなり遠藤は背後からボールを奪われる。だが5分には右サイドに初めてのパスをつけ、リターンをもらってシュートしている。

 試合は早くも3分にレスターのマカティアーが裏抜けから先制点を取った。ゲームは立ち上がりからオープンな展開だ。ボールが一方のボックスから、もう一方のボックスまで直通で移動している。

 遠藤は2本ほど、浮き球のパスを出した。だが彼のキックモーションを見ると、強度やバネは明らかに周りの選手のほうがありそうに見える。

 そのため彼がボールをもつと今にも奪われそうに感じるーー。これが冒頭に書いた「差し引いて観るべきポイント」だ。実は奪われそうでも何でもないのだが、おそらく彼を見て酷評したという欧州のジャーナリストたちはそう感じたのだろう。

スペースを埋めて時空の支配者になる

 ゲームは後半に入った。遠藤は相変わらず最終ラインの前にあるスペースを埋め、敵のチャンスを封じるポジショニングをしている。真ん中にどっしり構え、空間を殺している。もちろん時にはサイドへも出張するが、基本はセンターである。

 リーグで不安定な試合を繰り返す今のリバプールには、こういう安定的なポジショニングをする生粋の6番の選手がいないのだ。遠藤はどちらかといえば明らかにマクアリスターよりソボスライに近いが、彼とも違う一層の守備へのこだわりがある。

 また一方で遠藤はユルゲン・クロップ監督から、より前に関わるパス出しを求められてもいる。そのため彼はボールをもらうと、この試合では右前のサイドへダイアゴナルな浮き球のパスをよく出していた。さて問題のそんな48分、リバプールの同点弾の場面だ。

 このときレッズの面々はいったん敵ボックス内へ攻め込み、そこから相手ボールに変わった局面だった。で、(敵の)右サイドから出た(クリアのような)長い縦パスを遠藤が胸トラップでカットし、寄せて来たフラーフェンベルフにボールを預ける。

 そのフラーフェンベルフはボックス手前でガクポにラストパス。ガクポは左足でトラップし、右足でゴール右に叩き込んだ。このゴールの起点になったのは、遠藤によるボール奪取からのパス出しだ。つまり彼がカウンター攻撃の指揮者になったのである。

 その後、遠藤は(前半と違い)ゲームに入れたようだった。彼はボールを後ろ向きで受けて急反転し、数回の強い縦パスを出した。ボールスピードは十分だ。またワンタッチでも自在に鋭い縦パスをつけている。

 遠藤といえばデュエルばかりが取り沙汰されるが、彼は攻めの起点になるカナメのパス出しに優れていることがわかる。しかも日本人選手が大好きな横パスやバックパスじゃない。速いカウンターを生み出す強い縦パスを武器にしているわけだ。

遠藤の初アシストはこぼれ球の回収から

 さて本日の大団円、70分の逆転弾だ。

 遠藤はこぼれ球を拾い、右斜め前のボックス手前にいたソボスライに速いパスを出す。受けたソボスライは右足でワントラップするや、瞬時に強烈なゴラッソをゴール左上に突き刺した。ボールは唸るようにスッ飛んで行った。

 これでリバプールは2-1とリードし、89分にもディオゴ・ジョッタがとどめの一発を決める。3-1でレッズの勝利である。

 遠藤は全3ゴールのうち2点に関与した。1回目はボール奪取から、組み立ての出発点になるパス出し。2回目はこぼれ球を回収し、決定打に繋がるボールを入れた。初アシストだ。

 重要なのは、どちらも自分たちの最終ラインからビルドアップされてきた安全なボールを受け渡したわけじゃない点だ。遠藤はイーブンまたは相手ボールを奪い、ゼロから自分の力で中盤に杭を打ち立てた。「ここから攻めるぞ」というスタート地点になった。

 そんな彼は速いカウンター攻撃の申し子だといえる。まさにレッズにぴったりだ。

 だが彼はまだまだこんなもんじゃない。ゴールに関与したのは2回だったが、現にこの試合でも何度も縦パスを通していた。試合に出れば、もっと継続的で決定的な活躍ができるはずだ。

 遠藤がプレミアリーグの「3つのスピード」に慣れ、自分の感覚を完全にリフォームしたとき。おそらくヨーロッパのジャーナリストたちは、とんでもない怪物を目の当たりにすることになるだろう。

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【プレミアリーグ 23/24 第6節】ヌニェスの超絶ボレー弾でレッズが激勝する 〜リバプール 3-1 ウエストハム・ユナイテッド

2023-09-29 05:00:45 | イングランド・プレミアリーグ
ヌニェスをレギュラーへ押し上げる一発

 プレミアリーグ第6節が9月24日に行われ、リバプールがホーム・アンフィールドでウエストハムと対戦した。試合はCFダルウィン・ヌニェスの超絶弾などでリバプールが3対1で勝利した。彼らは前節に引き続き冒頭から不安定だったが、次第にゲームをリードし持ち前の得点力で押し切った。

 試合のハイライトは後半に来た。60分だ。

 レッズのアンカー、マクアリスターが敵陣中央から絶妙な浮き球の長い縦パスを入れた。前線にいるダルウィン・ヌニェスは、頭上を飛ぶボールを見上げながら着地点に回り込む。そして自分の前に落ちてくるボールをうまく右足の甲に乗せ、ワンタッチで豪快なボレーシュートを放つ。ボールは凄まじい勢いでゴール左に飛び込んだ。

 チームを2-1とリードさせる決定的なゴラッソだった。非常にむずかしいシュートだ。しかもヌニェスはひとつ前で惜しいチャンスを逃しており、レギュラーに生き残れるかどうかの分かれ目だったーー。

 試合を決めたこのアクロバチックな美技を見て、クロップはさぞほくそ笑んでいたに違いない。おそらくヌニェスはこれでレギュラーへの切符を取っただろう。

マクアリスターがまたミスをする

 試合の滑り出し、リバプールは前節を思わせる不安定さだった。開始早々の6分にマクアリスターがボールを奪われ、カウンターを食らう。ウエストハムにシュートまで行かれた。GKアリソンが奇跡的なセーブをしたからいいようなものの、完全な1点ものだった。彼はどう考えてももっと前のポジションがいい。

 続けて8分にも(レッズの)左サイドからアーリークロスを入れられ決定機を作られる。それだけじゃない。ボールを保持した右SBのジョー・ゴメスが、自陣で足裏を使ったトリッキーな技で敵を交わそうとしてボールを取られる。DFなのにあまりに軽すぎるプレイだ。次々に起こるピンチの連続。まるで前節の再現ビデオを見ているみたいだった。

 そんな流れを吹き飛ばそうとするかのように、レッズが前4枚でウエストハムの最終ラインにハイプレスをかける。ハイプレスはいまやプレミアリーグの風物詩だ。

 さてピンチのあとにはチャンスあり。前線のヌニェスが自分へのパスをヒールでそらし、右WGのサラーにパスした。そのサラーがボックス内で足をかけられ、PKになる。まだ前半の16分だ。サラーがPKを蹴りゴールやや左に決める。先制点が取れた。立ち上がりのミスで先に失点するのとでは天と地の違いだ。やれやれである。

 リバプールのフォーメーションはいつもの4-1-2-3だ。スタメンはGKがアリソン。最終ラインは右からゴメス、マティプ、ファン・ダイク、ロバートソンが構える。アンカーをマクアリスターが務め、右IHはソボスライ。左IHがカーティス・ジョーンズ。3トップは右からサラー、ヌニェス、ルイス・ディアスである。

 対するウエストハムは4-2-3-1だ。

ハマーズがダイビングヘッドで同点に追いつく

 左IHのカーティス・ジョーンズは、本当にあちこちよく動く。というか「チョロチョロうろつく」。バランスを何も考えず、右サイドにしばらく行ったりしている。チーム全体が不安定なだけに気になってしようがない。せめて試合が落ち着くまで持ち場を守ってはどうなのか。

 またマクアリスターも前節に引き続き、トラップひとつ取っても四苦八苦している感じだ。一方、右SBのゴメスは一列上がって中へ絞り、また偽SBをやっている。

 CBのマティプはドリブルで持ち上がるプレイも見せる。さすがにポゼッションではリバプールが上だ。それに対しハマーズがカウンターをかける流れで試合は進行した。

 そんなこんなで40分だ。ウエストハムに4〜5人で攻められ決定機を作られる。それが終わると今度は彼らの右CKだ。試合はまだどっちに転ぶかわからない。

 続く42分。ハマーズのパケタが長い縦パスを入れて前線でMFボーウェンが落とす。受け手のFWアントニオがワンタッチで右サイドへ展開。オーバーラップしたSBコーファルが右からクロスを入れ、ボーウェンがダイビングヘッドで凄いゴールを決めた。1-1。同点だ。

 だがリバプールもチャンスを作る。

 45分、ソボスライが左ボックス外から山なりのボールを入れ、ジョーンズがゴールするがオフサイドだった。47分にもレッズは好機を作る。サラーから右足でパスを受け、ヌニェスがフィニッシュしたが入らない。きわどかった。

 前半が終わった。ポゼッション率はレッズが65%、ウエストハム35%だ。ハマーズはこれで1-1の同点なのだから効率がいい。

途中出場のジョッタが止めの3点目を取る

 試合は後半に入った。

 レッズの攻撃だ。まずソボスライが縦にボールを入れてサラーに送る。彼が折り返し、ヌニェスがシュートを打つが外れる。彼はこういうところをしっかり決めて行かないとレギュラーは取れない。と、思った次のプレイで、なんと冒頭に紹介したすごいボレーシュートをヌニェスが叩き込んだ。どうやら聞こえたらしい。2-1だ。

 それにしてもソボスライのポジショニングすばらしい。動きはするが、基本どっしり中央に構えて安定感がある。頼もしい。

 73分、ウエストハムのアーリークロスはきわどかった。シュートはできなかったが、局面的にはハマっていた。

 続く77分。1点リードしたリバプールは左IHのジョーンズを下げた。代わりにバイエルンからやってきた期待の新顔、ライアン・グラフェンベルフを投入する。そして81分にはCFヌニェスに代えてコーディ・ガクポを、左WGルイス・ディアスに代えてディオゴ・ジョッタを入れた。

 85分。レッズは左CKをファン・ダイクが頭で落とし、入ったばかりのジョッタが右足でゴールした。3-1のリードだ。その2分後、クロップはマクアリスターに代えて遠藤航を投入。「締め役」というよりプレミアリーグに慣らせるためだろう。

 かくてゲームセット。リバプールはベストではないながらもプレミア5連勝だ。デキはともかく確実に勝って行く。これがでかい。6試合を終えて5勝1分け、勝ち点16の2位である。首位シティとは勝ち点2差だ。このままついて行こう。

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【プレミアリーグ 23/24 第6節】息もつかせぬトランジションの激闘 ~アーセナル 2-2 トッテナム・ホットスパー

2023-09-28 05:08:57 | イングランド・プレミアリーグ
切り替えの速さを競う差し手争い

 プレミアリーグ第6節で現地時間24日、アーセナルとトッテナムが対戦した。アーセナルのホーム、エミレーツ・スタジアムで行われるノースロンドン・ダービーだ。ともに今節まで負けなしで快進撃を続けるチーム同士の好カードになった。

 この日、展開されたのはボールをもつチームがゆったりとビルドアップし、他方、敵は自陣に引いて待ち構える、などというのんびりしたサッカーではない。

 互いにボール保持側の敵陣深くに侵入してハイプレスを掛け合い、奪った、奪われたの殴り合いから、切り替えが速かった方がスピーディーにゴールを陥れるスタイルだ。

 このトランジションの戦いを仕掛けているのはアーセナルだが、スパーズも堂々と受けて立ち、差し手争いをしている。そのため展開が目まぐるしく、息もつけない。

 いわゆるジェットコースタームービーのような壮絶な世界が展開された。

 盛んにプレスをかけたのはアーセナルだったが、彼らの得点はオウンゴールとハンドによるPKの2点だ。これに対しトッテナムは新加入の10番、MFジェームズ・マディソンとFWソン・フンミンが重要な場面で決定的な仕事をした。ソンはこの日2ゴールである。同じ2点でもインパクトと価値がちがう。

 ミケル・アルテタ監督のアーセナルは2度もリードしながら、その優位を生かせなかった。恩師であるペップのチームに逆転優勝された、昨季の惨劇が思い出される。果たしてアルテタは「持ってない」のか。選手交代の当否も含め、疑問が残る一戦だった。

26分に先制し攻勢を強めるアーセナル

 立ち上がりからアーセナルは、相手最終ラインに激しくハイプレスをかける。マンツーマンでハメに行く。敵GKにも脅しをかけた。さすがにスパーズはやりにくそうだ。だが赤いシャツのチームがボールを握ると、今度はトッテナムがハイプレスを食らわす。

 ガナーズは敵陣の高い位置でボールロストすると、リトリートせずにその場でカウンタープレスをかける。キックオフから17分まで、彼らはたっぷりトッテナム陣で過ごした。かと思うと19分には、またハイプレスを敢行する。

 そんな彼らの努力が実ったのは26分だった。右WGのサカがボックス右からファーを狙い、シュートを放つ。反応したDFクリスティアン・ロメロのオウンゴールを誘った。アーセナルが先制だ。この日、サカは非常に攻めに効いていた。

 また29分には、彼らは自陣でボールを奪い返して遠路、フィニッシュまでたどり着いた。さらに32分にはスパーズのGKグリエルモ・ビカリオがビルドアップしかけた所を、ジェズスがボックス内でボールを奪いシュートまで行った。

 37分にもサカがボールを持ちこみ、MFウーデゴールがフィニッシュしたがこれはGKの正面を突く。もうイケイケだ。彼らは自陣でのボール保持時、左SBのジンチェンコが一列上がって中へ絞り偽SB化する。ビルドアップへの参加と、被カウンター時のカバーリングのためだ。

 そして4-3-3のフォーメーションから3-2-5に変化してビルドアップする。守備時4-4-2だ。一方、4-2-3-1のトッテナムは2-3-5でビルドアップする。こちらは守備時4-5-1である。

ソン・フンミンが同点弾を決める

 潮目が変わったのは前半の終盤だった。

 ソンからパスが出て、ブレナン・ジョンソンがシュートを放つ。アーセナルGKダビド・ラヤがすんでのところでセーブした。これが予兆だった。

 かくて42分。スパーズのマディソンがボールを保持しながら鋭くターン。そのまま敵ボックス内へ切り込みマイナスのクロスを入れる。ソンがワンタッチでゴールした。1-1。同点だ。

 一方、ガナーズは前半のアディショナルタイムになってもハイプレスを続けた。立ち上がりだけハイプレス、というのはよく見かけるが、こんなに長いのは初めて見た。

 それに対しトッテナムは意に介さず、あくまでグラウンダーのボールで丁寧にビルドアップしようとする。

 ここまで5試合。今季、スコットランドから転勤してきたアンジェ・ポステコグルー監督が見せるサッカーは、最終ラインからショートパスを素早く繋いで組み上げるスタイルだ。ハイプレスが来ようと自分を曲げない。敵の圧を器用によけて隊列の完成をめざす。

 逆にいえばアルテタのチームがここまでハイプレスにこだわるのは、おそらくスパーズがバックラインから立ち上げるグラウンダーのボールによるビルドアップを根こそぎ寸断するのが狙いなのだろう。

 タヌキと狐の化かし合いである。

ガナーズが再びリードもソンの2G目でまた同点に

 後半の立ち上がりと同時に、アルテタはMFデクラン・ライスに代えてジョルジーニョ、またMFファビオ・ビエイラを下げてカイ・ハフェルツを投入した。

 すると49分にスパーズのゴール前で混戦になり、ボールがロメロの手に当たったとしてVARの結果、PKになる。キッカーのサカが冷静にど真ん中に決めた。GKビカリオは(サカから見て)左に飛んで空振りした。2—1。これでアーセナルがまた1点リードだ。

 だがその数分後にはたちまちトッテナムが追いつく。ジョルジーニョが自陣でマディソンにボールを奪われ、カウンター発動。ラストパスを受けたソンがワンタッチでゴール左へ流し込んだ。2-2だ。

 アーセナルは60分になってもハイプレスを続けている。一方、64分に今度はトッテナムがハイプレスで敵を追いかけ回すーー。いたちごっこは終わらない。

マディソンとソンのコンビがガナーズを追い詰めた

 試合はこの調子で異様なテンションのまま引き分けに終わった。スパーズはアタッキングサードで威力を発揮した2アシストのマディソンとソンのコンビが、ガナーズを苦しめた。バイエルンへ去った元エースのケイン不在を感じさせないチーム・パフォーマンスだった。

 一方、ハイプレスで主導権を握ったアーセナルは、2度リードしながら試合を決めることができなかった。特にジョルジーニョのミスから失点したのが痛かった。このブラジル生まれのイタリア代表には受難の日だった。

 またアルテタ監督は77分早々にジェズスを下げた一方で、コンディションに変調が見られ足を引きずるサカを後半アディショナルタイムまで引っ張った。疑問の残る采配だ。ガナーズはどうも若くてモロい印象がぬぐえない。

 さて、これで両者は奇しくも6試合を終えて4勝2分けの勝ち点14同士だ。得失点差でスパーズが4位、ガナーズが5位に鎮座している。

 負けなしの2チームの上にまだ3チーム(シティ、レッズ、ブライトン)が君臨しているのがいかにもプレミアリーグらしい。この拮抗した上位争いにはまったくゾクゾクさせられる。

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【プレミアリーグ 23/24 第5節】「壊れたレッズ」が辛くも逆転勝ちで4連勝 ~ウルブズ 1-3 リヴァプール

2023-09-17 12:46:56 | イングランド・プレミアリーグ
5~6点取られてもおかしくなかった

 プレミアリーグは9月16日の第5節で、ウルヴァーハンプトンとリヴァプールが対戦した。リヴァプールが3-1で敵地の試合をなんとかモノにした。中身はともかく、彼らはこれで開幕から4戦全勝だ。遠藤航の出番はなかった。

 それにしてもリヴァプールはひどいデキだった。アンカーのマクアリスターがミスを連発。つられて相方のソボスライまで変調を起こし、マクアリスターの「病気」が11人全員に伝染して行った。5~6点取られていてもおかしくなかった。

 その流れでウルブズに先制され、レッズはメンバー交代を繰り返しやっと後半に逆転した。マクアリスターがあれだけ散々な惨状をさらしているのに、遠藤は交代で出て来ない。ということはクロップによほど信頼されてないか、コンディションの問題かのどちらかだろう。

 リヴァプールのフォーメーションは4-1-2-3だ。最終ラインは右からジョー・ゴメス、 ジョエル・マティプ、ジャレル・クアンサ、アンドリュー・ロバートソンという布陣。

 中盤はアレクシス・マクアリスターがアンカーを務め、右インサイドハーフがドミニク・ソボスライ、左インサイドハーフがカーティス・ジョーンズだ。3トップは右からモハメド・サラー、コーディ・ガクポ、ディオゴ・ジョッタが構える。

ゴメスの偽SBは空振りした

 リヴァプールはビルドアップ時、ときに右SBのゴメスが一列上がって中へ絞り偽SB化する。その代わりに左IHのジョーンズが上がり、3-3-4になる。または3-2-5もある。ゴメスは縦にオーバーラップもする。

 あるいは4バックのままジョーンズが左WGのように上がり、マクアリスターとソボスライがフラットに並び4-2-4。というふうに流動的に組み上げる。ジョーンズは時にはゴール前まで出張する。攻撃好きだ。

 かたや4-5-1から4-3-3に変化するウルブズはきわめて正確にビルドアップし、攻め上がってくる。彼らのフィニッシュはボディブローのようにレッズに効いた。特にサイド攻撃が強烈で、(ウルブズ側の)左サイドからどフリーでクロスをガンガン入れてくる。レッズの右サイドの守備が噛み合ってない。

 特に35分、左サイドからWGネトが入れたクロスは完全に1点モノだった。ゴール前でフィニッシャーになった、CFマテウス・クーニャのミスに助けられた。

 クーニャはヘディングシュートしようとジャンプしたが、飛び上がるタイミングが早すぎて腰にボールが当たってしまった。それにしてもWGネトにはさんざん左サイドを食い破られた。

マクアリスターのミスで流れを失う

 前半20分までにマクアリスターは致命的な縦パスカットを食らい、27分にはなんと単独で最後尾にいる際、ボールを奪われた。このとき自陣はスカスカ。ボールを奪った敵アタッカーはゴールを目ざし、無人のレッズ陣をドリブルするーー。目も当てられない。

 かたやソボスライも21分と28分にやらかした。これだけミスすれば流れは向こうへ行く。前半7分の1失点だけで済んだのは僥倖だった。

 リヴァプールは38分に、右サイドのクロスからやっとフィニッシュの形を作った。続く46分には敵ゴール前へ波状攻撃をかけたが、シュートは2度止められた。ウルブズが2点目、3点目を取らないうちに追いつかなければならないーー。

 そんなメンタリティはわかるのだが、レッズはチームが完全崩壊し押し込まれているのに、大きくクリアしない。押し込まれて敵だらけの自陣で短くパスを繋ごうとする。まるでアルビレックス新潟みたいだ。もうヒヤヒヤして心臓が止まりそうだった。

 これで1失点に抑えているうちにレッズが逆転し、遠藤が交代で出てきて試合をビシッと締めたら痛快だろうな、などと夢想した。だがそれはまったくの身内びいきにすぎないことがすぐにわかった。

マクアリスターを下げ4-2-3-1に

 後半開始と同時に「患部」のマクアリスターをやっと下げ、クロップはFWのルイス・ディアスを入れた。攻撃的な交代である。そしてフォーメーションを4-2-3-1に変えた。ソボスライとジョーンズのダブルボランチだ。

 これで右SBゴメス、左SBのロバートソンが両翼として高く前に張り出し、そのぶんサラーは中に絞ってディアスやジョッタらと相手ゴールの鍵を開ける作業に専念する。ときにソボスライ、またはジョーンズは一列降り、両CBとともに3バックを形成した。

 クロップの修正はテキメンに効いた。ウルブズを押し下げることに成功したのだ。

 リバプールの初ゴールは55分だった。真ん中での細かいパス交換を経て、ジョッタが股抜きの縦パスを繰り出す。受けたサラーは、右ポケットからワンタッチでダイアゴナルなパス。これにガクポが左足で一度だけ触ってゴールした。やっと同点だ。

 56分にはCFガクポに代えてダルウィン・ヌニェス、左WGのジョッタに代えてハーベイ・エリオットを投入する。攻撃力を補強するイケイケの交代策だ。この1-1の時間帯は果てしなく長く感じる。

サラーは全ゴールに関与し3アシストだ

 かくてリバプールは85分に、ロバートソンが待望の2点目を取った。右のボックスちょい外から、サラーが左足アウトサイドでゴール前のロバートソンに斜めのパスを入れる。ロバートソンは左足インサイドのワンタッチで、いともカンタンにゴールへ流し込んで見せた。2-1だ。

 仕上げはレッズの3点目。91分だ。右ポケットからサラーがマイナスのラストパスを入れ、エリオットが決定打になるゴールを上げた(ただし敵DFの足に当たっていたためオウンゴール)。

 サラーは全ゴールに関与し、3アシストだ。彼をサウジアラビアに出すなんて、とうてい考えられない。

 これでリバプールは開幕から無傷の4連勝だ。内容を見ればエンジンがガタピシ鳴いているが、第3節といい今節といい、悪い試合をクロップの采配で見事に形勢逆転した。なるほどドイツ代表チームが「ウチに来ないか?」と熱く誘うのも無理はない。

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