すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【日本代表メンバー発表】三笘薫や遠藤航ら、9月にドイツ&トルコ代表と戦う

2023-08-31 15:04:36 | サッカー日本代表
初招集はC大阪DF毎熊晟矢のみ

 日本サッカー協会(JFA)は31日、9月にドイツとベルギーで行われる国際親善試合2試合を戦う日本代表メンバーを発表した。

 日本代表は9月9日(土)にドイツ・ヴォルフスブルクでドイツ代表と国際親善試合を行ったのち、同12日(火)にベルギー・ヘンクでトルコ代表との「キリンチャレンジカップ2023」を戦う。

 まずドイツ戦は現地時間20時45分(日本時間10日3時45分)にキックオフされる。NHK・総合テレビで全国生中継がある。一方、トルコ戦は現地時間14時20分(日本時間21時20分)キックオフだ。こちらは日本テレビ系で全国生中継される。

 9月の2試合に向け、発表されたメンバー26名は以下の通り。

■GK
シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)
中村航輔(ポルティモネンセ)
大迫敬介(広島)

■DF
谷口彰悟(アルラーヤン)
板倉滉(ボルシアMG)
森下龍矢(名古屋)
町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ)
毎熊晟矢(C大阪)
冨安健洋(アーセナル)
伊藤洋輝(シュツットガルト)
橋岡大樹(シント=トロイデン)
菅原由勢(AZ)

■MF/FW
遠藤航(リバプール)
伊東純也(スタッド・ランス)
浅野拓磨(ボーフム)
古橋亨梧(セルティック)
守田英正(スポルティング)
鎌田大地(ラツィオ)
三笘薫(ブライトン)
前田大然(セルティック)
堂安律(フライブルク)
伊藤敦樹(浦和)
上田綺世(フェイエノールト)
田中碧(デュッセルドルフ)
中村敬斗(スタッド・ランス)
久保建英(ソシエダ)

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【セリエA 23/24 戦術分析】ラツィオの鎌田大地は戦術「トータル・ゾーン」を操る

2023-08-31 06:21:42 | その他の欧州サッカー
チーム作りに時間がかかる

 鎌田大地が移籍したラツィオの試合を、開幕戦から2ゲームとも観た。だがチームの仕上がりがまだまだで、試合になってない。彼らは開幕戦で格下レッチェに1-2と逆転負けすると、第2節の昇格組ジェノアにも0-1と敗れ2連敗した。

 異才マウリツィオ・サッリが監督なので期待していたが、まだ彼らはシーズン前の「キャンプ地の状態」にいるかのようだ。

 サッリのサッカーは、ナポリやチェルシーを指揮していた時代の試合を観ておもしろいと感じた。だがラツィオの現状は、それらの姿とかけ離れている。

 ただしサッリのチームのシーズン始まりはいつもこんなだ。監督の要求が細かいため、チームを完成させるのに時間がかかるのだ。

意味のないバックパスを繰り返したジェノア戦前半

 特にジェノア戦は立ち上がりから、前半が悲惨だった。

 選手がみなパスコースを作る動きをまったくしない。ただ突っ立っているだけだ。で、後ろを向いた選手が足元にボールをもらっては、ワンタッチで元の場所にいる同じ選手にバックパスするだけ。そんなうんざりするようなバックパスの連鎖がえんえんと続く。レイオフになってないのだ。

 レイオフとは、縦パスやクサビのパスを受けた選手が、彼をサポートに来た「3人目の選手」にワンタッチやツータッチでパスを落とすプレーを指す。

 本来、サッリのサッカーでは、このレイオフを多用する。まず低い位置にいるボールホルダーに対し前線の選手が後ろを向き、ショートパスを受ける。ここまではいい。だがここから、ワンタッチで「3人目の選手」にバックパスするのだ。これを繰り返す。

 この循環構造を作り出し、敵の視野をボールに集中させて前線でフリーな選手を生む。で、新たな攻撃を生み出して行く。こうして味方にボールを預けながら動き直すことでマークを剥がす。そしてポジショナルプレーを展開する。これがサッリのサッカーだ。

 だが現状は「仏作って魂入れず」だ。単に同じ場所で同じ相手とバックパスを繰り返すだけで、選手が「動き直し」をまったくしない。「第3の動き」もない。だからマークを剥がせないし、新たなパスコースも生まれない。そんな煮詰まった状況になっている。これはあくまで彼ら本来のサッカーではない。

 ではそんなラツィオの「真の姿」とめざす戦術、今後の見通しはどうだろうか? それを見て行こう。

「サッリ・ボール」、またの名を「トータル・ゾーン」

 そもそもサッリが考えるサッカーとは、どんなスタイルなのか?

 サッリ監督は「サッリ・ボール」と呼ばれる戦術を操る。これはチェルシー時代に付けられたネーミングだ。サッリが志向するフットボール・スタイルの呼称である。彼のサッカーはナポリ時代には、「ヨーロッパでいちばん美しい」とまで言われた。

 一方、イタリア在住のサッカージャーナリスト兼スカウト・宮崎隆司氏は、彼の戦術を「トータル・ゾーン」と名づけた。チーム全員が連動して動くスタイルだ。

 ト-タル・ゾーンはゾ-ンでもマンツーマンでもない。敵選手の位置はまったく関係なく、守備者は人ではなくボールの位置だけでポジショニングを決める。なぜならボールが味方ゴールに入らない限り失点しないからだ。

機動的なポゼッションスタイルだ

 攻撃面でいえば、基本はボール保持をめざす機動的なポゼッションスタイルだ。少ないタッチ数(基本はワンタッチ)でテンポよくグラウンダーのボールを回す。例えていえば、日本ではアルビレックス新潟のスタイルに近い(ただし守備戦術はまったく違う)。

 そしていったんボールを失うと、できる限り高い位置での奪還をめざす。そのため4-3-3の陣形を極めてコンパクトにキープする。非常にゾーンが狭い。最終ラインも高い。あえていえば、かつてのゾーンプレスに似ている。

 ボールに対し横方向は極端に絞る。またボールに対し縦方向は極端に押し上げる、またはリトリートする。さらに敵を押し込むと多くの場合、最終ラインは敵陣内に設定される。

 こんなふうにゾーンが常にコンパクトだと必然的に人が密集する。そのぶんネガティブ・トランジション、ポジティブ・トランジションがともに速い。

 つまり攻撃と守備が一連の流れの中で絶え間なく循環する。攻守が常に一体化したサッカーである。実際、負けはしたが第2節・ジェノア戦の後半は、そんな躍動するサッカーを見せていた。

アバンギャルドなスペクタクルが展開される

 だが残念ながら、現状のラツィオではこの戦術は完成されていない。決まりごとが複雑で細かいため、サッリのチームのシーズン初めはいつもこんなふうに未完なのだ。実際、鎌田もまだ手探りの状態である。

 では戦術「トータル・ゾーン」がラツィオで構築されたとき、いったいどんなスペクタクルが展開されるのか?

 そこではかつてサッリが指揮したナポリやチェルシー同様、刺激的でエキサイティング&アバンギャルドな光景がわれわれの眼前に姿を現すにちがいない。

 いまから楽しみでならない。

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【プレミアリーグ】クロップは遠藤航を冗談のネタにしただけだ

2023-08-30 11:36:26 | イングランド・プレミアリーグ
「10人で戦うのがレッズの戦術なんだ」みたいなイギリス式ジョーク

 プレミアリーグのリバプールへ入団したばかりの遠藤航選手について、ひどい捏造ネタが出回っている。

 一部のネットメディアがリバプール・クロップ監督の発言を歪曲し、「エンドウは我々の戦術をまったく理解していない」と遠藤を批判したと報道しているのだ。

 遠藤はリバプールに移籍し、不幸にもデビュー戦から2試合続けてチームが1人退場になってしまった。で、10人でのプレイを強いられている。なんと移籍してからまだ10人での試合しか経験してないのだ。

 それについて現地記者とクロップ監督との会話が捻じ曲げられて伝えられているわけだ。

 記者とクロップの英語でのやりとりは、カンタンに言えば以下のような冗談交じりの感じだった。

ーーーーーーーーーーーー

クロップ「Ha,Ha,また10人だよ(笑)。エンドウにとっては大惨事だね。まだ10人でしかプレイしてない彼は、我々の戦術を覚えるヒマがないな」

記者「いや、彼は10人で戦うのがリバプールの戦術だと思ってるんじゃないですか?」(ジョーク)

クロップ「Absolutely!(まさにその通り)」(記者のジョークに対する、ジョークでの応酬)

ーーーーーーーーーーーーー

 こんな感じの軽妙なジョークのやりとりなのだ。

 このイギリス人独特のシニカルな冗談の応酬を、マジメな意味にしか解釈できない日本人ってホントに情けない。

 まあ「捏造」と言っては当該メディアがかわいそうかもしれない。「ユーモアがわからない日本人には、意味が正確に理解できなかった」と言ったほうが正しいのかも?

 ちゃんちゃん。

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【プレミアリーグ 23/24 第3節】スターリングの2G1Aでほっと一息 ~チェルシー 3-0 ルートン・タウン

2023-08-29 11:18:02 | イングランド・プレミアリーグ
悪夢の昨シーズンから起動せよ

 プレミアリーグでは8月25日に第3節が行われ、チェルシーがホームのスタンフォード・ブリッジに昇格組ルートン・タウンを迎えた。試合はスターリングの2G1Aでチェルシーが3-0と圧勝した。スターリングがチームの救世主になった。

 思えばチェルシーの2022-23シーズンは悪夢だった。選手補強で湯水のようにカネを使って大物をズラリと揃え、「船頭多くして船山に登る」で44というプレミアリーグで過去最悪の勝ち点で12位に沈んだ。そんなチームの再建を託されたのが名将マウリシオ・ポチェッティーノ新監督だ。

 だがチームは今季ここまで、開幕戦でリバプールと1-1で引き分け。第2節のウェストハム戦では1-3で敗れている。勝ちなしだ。今節の対戦相手ルートン・タウンは、古豪ではあるがプレミアリーグは初挑戦の新規参入。しかもチェルシーのホームとあって是が非でもほしい勝利だった。

 この一戦で彼らは前節に引き続きフォーメーションに3-4-2-1を採用。守備時5-4-1~5-3-2のような変幻自在の姿を見せた。シャドーのコナー・ギャラガーが一列降りて中盤3枚になり、スターリングとニコラス・ジャクソンが流動的に2トップ化するような形だ。演じるのは美しいポゼッションサッカーである。

 3バックの中央にはチアゴ・シウバが鎮座し、2CMFの1枚エンソ・フェルナンデスは前目でボールをさばく役。もう1枚のモイセス・カイセドは彼よりやや下がり目でアンカー的な役割を果たす。スターリングはシャドーだ。

エンソが中盤で魅せる鮮やかな舞い

 試合開始から、エンソ・フェルナンデスが躍動している。エネルギッシュに中盤を疾走し、惚れ惚れするような球さばきを見せる。すばらしいボールコントロールだ。しかも動きのひとコマひとコマに、意欲と気合いがこもっている。

 それに対しカイセドは引き立て役に徹している。安定したビルドアップで最終ラインとアタッカーたちをリンクさせ、スポットライトの当たる舞台で踊らせようとする。

 さて、お相手のルートン・タウンは立ち上がりから激しいハイプレスで来た。ガチガチのマンツーマンで前からハメようとしている。そのため両チームが非常にコンパクトなゾーンにすっぽり収まっている。

 ただしルートン・タウンはマイボールになるとバタバタと落ち着かず、ボール保持がままならない。背中にマーカーを背負ってはパニックになり、安全にボールを落としてばかりいる。試合開始早々、どんなレベルのチームなのかが判明した。今日はチェルシーの日だ。

チェルシーが初の1勝を上げ号砲を鳴らす

 スターリングのワンマンショーに話を移そう。この試合、彼は右に流れてカットインする機会をうかがいしきりにチャンスを作った。

 まず1点目は前半17分だ。彼は右サイドに開いてボールを受け、鮮やかなドリブルでひらりひらりと敵をかわす。相手の守備網はないも同じだ。そして中央にカットインし、ラストは左足でゴール左に力強くボールを差し込んだ。先制だ。

 かくてゲームは後半に入り、20分頃だった。リードされているルートン・タウンは最終ラインを押し上げ、敵陣へ攻め込むようになった。これに対しチェルシーは最終ラインでしきりにゆっくりボールを回して試合を落ち着かせようとする。

 そしてプレミア初挑戦者の野望を打ち砕く一発が23分に出る。カイセドが右サイドの裏のスペースへ出したボールを右WBマロ・グストが中へ折り返し、これをスターリングがワンタッチでゴールに押し込んだ。この2点目で盛り返そうとする「新参者」を見事に押し返した。

 仕上げは30分だ。立役者スターリングが右サイドからワンタッチでクロスを入れ、ゴール前でFWニコラス・ジャクソンがこれまたワンタッチでシュートを叩き込んだ。

 締めて3-0。今季、チェルシーは待望の初勝利を上げ、1勝1敗1引き分けで勝ち点を4とした。まだまだシーズンは長い。これからが勝負である。

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【プレミアリーグ 23/24 第3節】ひどいデキのレッズが攻めの采配で辛勝する 〜ニューカッスル 1-2 リバプール

2023-08-28 09:17:07 | イングランド・プレミアリーグ
アウェイで遠藤航が先発デビュー

 プレミアリーグは第3節が行われ、リバプールがアウェイでニューカッスルと対戦した。ミスのオンパレードで調子の出ないリバプールだったが、2-1でなんとか逆転勝ちした。

 ひどい試合だった。今季の戦力補強がまた十分じゃないリバプールが、その未整理ぶりをさらけ出したようなゲームだ。非常に不安定でお粗末だった。

 特に左IHのマクアリスターが敵CBに掛けるプレスに周囲が連動してスライドせず、中盤が間延びしスペースができる。このぽっかり開いた空間を使ってニューカッスルはやりたい放題だった。

 このゲームでは前節の途中から初出場した遠藤航が、先発メンバーとして本格デビューを飾った。だがリバプールにとってはそれどころじゃなかった。

 前半のレッズは主導権が取れず、ニューカッスルにさんざんボールを回された。彼らは縦に速い攻撃で再三チャンスを作る。またハイプレスで圧をかけてくる。トランジションが劇的だ。おかげでリバプールは退場者まで出し、遠藤にとっては前節に引き続きまた難しい試合になってしまった。

 リバプールのフォーメーションは4-3-3だ。3トップは右からサラー、ガクポ、ディアス。遠藤はアンカーだ。左IHにマクアリスター、右IHにソボスライを置く。

 最終ラインは右からアレクサンダー=アーノルド、マティプ、ファン・ダイク、ロバートソンである。一方、ニューカッスルは4-3-3で、守備時4-4-1-1に変化する。

ファン・ダイクが一発退場に

 試合は前半25分に動いた。モハメド・サラーが出したバックパスを右SBアレクサンダー=アーノルドがトラップミスした。あげくにニューカッスルの左WGアンソニー・ゴードンにボールをかっさらわれ、独走されてゴールを許した。

 さらに同28分にはファン・ダイクが、スルーパスで前へ抜け出しそうになったアレクサンデル・イサクの足をかっさらって倒した。彼が抜け出せばGKと1対1だった。ファン・ダイクは決定機阻止で一発レッドになる。

 これでリバプールは前節に続いてまた数的不利になった。そこでクロップは33分に左WGディアスを下げ、DFジョー・ゴメスを投入。攻撃の駒を減らして守備者を補充した。

 後半、1人少ないリバプールは4-4-1~4-3-2で構えた。遠藤はソボスライとともに2CMFを組んだ。リードされているリバプールは、1人少ないながらサラーを中心にかなり前からプレスをかけた。無理をしているが負けているので仕方ない。

 遠藤は後半13分にFWハーベイ・エリオットと交代した。加えてFWコーディ・ガクポをFWディオゴ・ジョッタと差し替えた。これでソボスライとマクアリスターがダブルボランチを組む格好だ。

ヌニェスの2発で大逆転する

 かくて32分。クロップはCBマティプに代えて攻撃的なダルウィン・ヌニェスを投入した。この攻めの交代が功を奏する。

 途中起用されたヌニェスがその破壊力を発揮したのが36分だった。まずリバプールの最終ラインから長い縦パスが出る。これを中盤で右サイドに展開し、受けたヌニェスがドリブルからゴール左スミに地を這うような弾丸シュートを叩き込んだ。同点だ。

 まだ話は終わらない。1-1で迎えた後半アディショナルタイムに劇的な幕切れが訪れる。48分だった。サラーがヌニェスに縦パスを出す。ボールを保持してボックス右に侵入したヌニェスは、ゴール左スミに美しいショットを突き刺した。逆転だ。

 そしてタイムアップ。選手のミスを監督が補い、親方クロップが采配で勝利をもぎ取った試合だった。1人少ないリバプールが、しかも後半アディショナルタイムに試合をひっくり返した。

 ソボスライは守備的MFとして非常に利いていた。一方の遠藤は心とカラダのフィットネスが仕上がってない感じだ。

 敵に寄せてもボールを奪い切れない。剥がされてパス出しされる。カラダを入れられ弾かれる。アタッカーの急加速について行けないーー。判断、プレイともに動きがスローで、急峻な速いテンポのプレミアリーグにまだ適応し切れてない。

 次節は先発落ちもあるかもしれない。

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【女子サッカー】なでしこジャパンの「アスリート化」は正しい道か?

2023-08-27 09:17:31 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
選手がロボット化する?

 きのう投稿した記事で、なでしこジャパンはプレー強度(インテンシティ)が強豪国に劣ると書いた。だからフィジカルを上げ、アスリート化を進めることが強化の道だと説いた。

 先日開かれた女子ワールドカップ2023を観てそう思ったからだ。

 だが自分でそう書いていながら、疑問も感じる。

 なでしこは強豪国とくらべ、プレー強度やフィジカルで劣ることは確かにその通りだ。だがスウェーデン女子代表やオーストラリア女子代表のように選手のアスリート化を進め、ロボットのようになって行くのが果たして正しいのだろうか?

 確かにそうなることで球際の競り合いに強くなることは確かだし、それはサッカー選手として必要なことだ。だが選手を頑強にアスリート化することで、なでしこ特有の小回りの利きや繊細さ、細やかさ、アジリティが失われるとすれば、それは本末転倒だと感じるのだ。

プレー強度の強化は守備面限定で?

 例えばフィニッシュひとつ取っても、なでしこには繊細さがある。

 一例としてライン裏に狙いすましたグラウンダーの絶妙なスルーパスを出し、それに合わせてアタッカーが裏抜けする、というような解像度の高い攻めはなでしこの真骨頂だ。

 だがそれに対し欧米の強豪国のフィニッシュは、単純にサイドからハイクロスを入れて敵にパワーで競り勝つような大味で原始的な攻めが目につく。

 もしアスリート化を進めることで、なでしこジャパンがそんなふうに「欧米化」してしまったら「つまらないな」と感じる。

 そう考えるとプレー強度の強化は、おもに球際の競り合いなど守備面限定で進めるのが正しいのだろうか?

 なでしこは守備面でのプレー強度を高める必要があるのは確かだと思うので、ここではひとまずそう結論づけておこう。

 さて、みなさんはどう思いますか?

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【女子サッカー】なでしこジャパンに「欠けているもの」とは?

2023-08-26 10:48:17 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
球際で競るプレー強度がほしい

 なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は、オーストラリアとニュージーランドが共催した女子ワールドカップ2023で健闘した。結果、8強で終わったが、「ある要素」さえあればもっと上まで行けたように思う。

 もちろん彼女たちには勝つための技術がある。敵を打ち負かす一定レベルの戦術もある。だが広い意味でのプレー強度(インテンシティ)で他国に見劣りした。

 これはこの記事でも指摘したのだが、強度が足りないと球際で強く競れない。デュエルで劣る。カラダを自分から敵に押っ付けて競るような激しい接触プレーに弱くなる。プレス強度が落ちる。結果、きわどい場面でボールを支配下に置けなくなる。

 これでは、強度がますます高まるばかりの現代フットボールで勝てない。もちろん女子と男子とでは違うにしても、である。

 プレー強度を上げるには、ひとつはなでしこが世界に劣るフィジカルを上げる必要がある。アスリート化だ。特にスウェーデン女子代表やオーストラリア女子代表などを見ると、その波を感じる。またボールを強く競ることにも日常的に慣れなければいけない。

 これはなでしこジャパンが世界で勝つための大きなハードルだろう。

ボールスピードが足りない

 もう一点、なでしこジャパンを観て感じることがある。それはボールスピードだ。

 これもプレー強度と関係あるのだが……たとえば女子ワールドカップ2023では、特にイングランド女子代表やスウェーデン女子代表、オーストラリア女子代表がものすごい速さでパスを繋いでいた。ヘタをすると男子より速いくらいだった。

 それが端的にあらわれるのがインサイドキックだ。彼女たちが蹴るインサイドキックのボールスピードはとんでもなく速い。スパン! と来る。だからインサイドキックで、かなり離れた味方選手にもボールがつなげる。

 これもなでしこジャパンに欠けている点だ(というより日本人男子にも欠けているのだが)。もちろん、なでしこジャパンやスペイン女子代表のボールスピードが他国と比べそう速くないのは、ひとつにはショートパスを多用することとも関係しているが。

 プレー強度の向上は一朝一夕には難しいだろうが、なでしこジャパンはこうした点をテーマに取り組み「世界」をめざしてほしい。

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【リーグ・アン 23/24 分析】なぜ今季の南野拓実はゴールが取れるのか?

2023-08-24 09:03:30 | その他の欧州サッカー
南野はセンターポジションで生きる選手だ

 今季フランス1部リーグ・アンの開幕から、モナコの南野拓実が第2節を終え早くも2ゴール2アシストと爆発している。

 彼はセンターでのプレイを得意とする選手だ。トップ下やFW、シャドーのようなポジションを務め、ボールを失っても足を止めず、その場で前からプレスをかけてボールを即時奪回し攻撃するカウンタープレスの申し子だ。

 そのプレイスタイルは、レッドブルグループのザルツブルク在籍時に身につけたものだ。

 敵のビルドアップを打ち砕くハイプレスからのショートカウンターと、ボールロスト時における素早いネガティブトランジションでのカウンタープレス。ザルツブルクはこれらを組み合わせた「ストーミング」が特徴だった。そんなチームの中央に位置し、ゾーンのギャップでフィニッシュに絡んで生きるのが南野なのだ。

 実際、第1次森保ジャパンでトップ下として起用された彼は、激しいストーミングでボールを奪って攻めるスタイルにより中島翔哉、堂安律の両サイドハーフとともに「三銃士」と呼ばれて大活躍した。

 そしていま、モナコで再び南野が花咲かせようとしているのが、こうしたセンターでのプレイである。

サイドに幽閉された昨シーズン

 昨季、モナコで指揮を取ったフィリップ・クレマン監督は、南野を4-4-2のサイドMFで使った。だが冒頭で触れた通り彼はセンターポジションの選手であり、サイドでは生きない。

 実際、サイドに幽閉された彼は、昨季はリーグ18試合1ゴール3アシストと冴えなかった。

 だが今季、モナコの指揮官に就任したアディ・ヒュッター監督は、ちょうど南野がザルツブルクに在籍した2014-15シーズンに同クラブの監督だった人物だ。

 当時、南野と同じチームで同じゲームモデルを共有した才人であり、南野がセンターポジションで活性化する選手であることを知っている。

 かくて今季のヒュッター監督は3-4-2-1のフォーメーションを採用し、当然のように南野を中央のシャドーで起用した。これで場を得た南野は、水に帰り泳ぎ回る魚のように躍動している。

 これは決してフロックじゃない。極めてロジカルな現象なのだ。

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【セリエA 23/24 第1節】ラウタロのドッピエッタでインテル開幕戦勝利 ~インテル 2-0 モンツァ

2023-08-23 08:28:22 | その他の欧州サッカー
インテルは攻撃時3-5-2だ

 インテルは8月19日、セリエAの開幕節でホームにモンツァを迎え、2-0で勝ち切った。

 インテルのフォーメーションは攻撃時3-5-2、守備時5-3-2だ。ボールを失うと中盤でプレスしてディレイをかけ、ディフェンディングサードまでリトリートし非常にコンパクトなブロックを作る。これで敵がサイドを攻めてくれば、同サイドのWBが前に出て対応し、残りの4バックがボールサイドにスライドする。

 8分にインテルが先制だ。右WBデンゼル・ダンフリースのサイドからの折り返しに、中央でFWラウタロ・マルティネスがワンタッチで慎重に合わせてゴールした。先制点だ。ダンフリースはかなり攻撃的で、サイドを前線までオーバーラップする。

 次第にモンツァがボールを保持するようになるが、なかなか決定機を作れない。インテルの分厚い守備ブロックを崩せないでいる。ポゼッション率自体はモンツァの方が高いが、これがインテルのペースなのだろう。  

 インテルのビルドアップは右CBのマッテオ・ダルミアンが前に出て、残りの2バックで行われる。また彼らは敵陣に押し込むと、DFがかなり高い位置まで押し上げる。

ラウタロが2ゴール目を奪う

 後半に入り、ボールを握ったモンツァが何度もゴール前に攻め込むが、粘り強い守備にあいゴールは奪えない。彼らは前線に6人をかけて攻め立てるが、インテルの堅陣を破れない。

 途中、ユベントスから移籍したクアドラードが、交代出場でインテルでのデビューを飾った。

 インテルのビルドアップは、3-1-4-2の形で行われることもある。最終ラインからグラウンダーのボールをていねいに繋いで組み上げる。左右のCBがドリブルで持ち上がることもある。フィニッシュは主にサイドからのクロスだ。

 インテルが攻め込むとモンツァは自陣に引き込み、ボールホルダーの背中に張り付いて絶対に前を向かせない守備をする。そのためインテルも追加点を取るのが容易じゃない。

 だが76分だった。中央のムヒタリアンからボックス左でボールをもらった途中出場のマルコ・アルナウトヴィッチが、鋭いフェイントからグラウンダーのクロスをファーサイドに送る。受けたラウタロ・マルティネスが右から滑り込み、倒れながらカラダごとボールを押し込んだ。ドッピエッタ。2-0だ。

 79分にラウタロ・マルティネスは悠々、退く。試合はこのままインテルが押し切り、ホームでの開幕戦を勝利で飾った。

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【女子W杯・分析】なぜ女子W杯2023はおもしろかったのか?

2023-08-22 07:25:53 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
真剣さとボールスピードがすごかった

 熱かった女子ワールドカップ2023が終わり、また元通り男子サッカーを観るようになった。で、手始めに鎌田大地のラツィオ戦、南野拓実のモナコ戦、藤田譲瑠チマのシント・トロイデン戦を観たのだが、ちっともおもしろくない。「女子ワールドカップの方がはるかにおもしろかったなぁ」と感じた。

 ちょっとした「女子ワールドカップ・ロス」である。

 で、それは一体なぜなのか? をちょっと分析してみた。

1)女子ワールドカップの方がパスがよく通った

 これはよし悪しなのだが、ボールに激しくプレスをかけ合う男子にくらべ、女子はそこがゆるい。そのぶんパスがよく通る。実際、なでしこジャパンやスペイン女子代表はこれでもかとパスを繋いでいた。プレスが辛い男子サッカーにくらべ女子はプレスが甘いのだが、エンターテインメントとしては逆にそこがいい。

 考えてみたら男子サッカーだって往年の時代はプレスなるものがゆるく、ゆうゆうとパスを通しあっていた。その意味では、女子サッカーは「古き良き時代のサッカーの味わいがある」と言えるかもしれない。

2)女子ワールドカップの方がボールスピードが速かった

 個人的な好みなのだが、私はボールスピードの遅いサッカーを観る気がしない。インサイドキックのボールが「てんてんてん」などとゆるく弾みながら転がっているのを観ると、それだけでテレビを消したくなる。

 そこへ行くとイングランド女子代表とスウェーデン女子代表、オーストラリア女子代表のインサイドキックのボールスピードはかっ飛んでいた。スパン! と来る。痛快だった。

3)女子ワールドカップの方が国を背負って真剣だった

 サッカーって国を背負っているのと、単に勝敗をかけているのとでは純度がちがう。

4)女子ワールドカップの方が無駄なアイドルタイムがない

 世の中のコンテンツはどんどん短サイクル化している。例えば人々は長大な書籍などは読まず、いまや短いX(旧ツイッター)を読む。YouTubeにしても「1時間は長すぎるなぁ」となり、いまどきは15分のコンテンツがせいぜいになった。そんななか、サッカーの90分は長すぎる。

 で、その長い90分の中でも、男子より女子ワールドカップの方が無駄なアイドルタイムがないのだ。例えば男子みたいに大げさに倒れてファウルをアピールし、笛が鳴るといちいち時間が止まってモメるーー。これがかったるい。思わず「早送り」したくなる。女子サッカーにはそれがない。汚いプレーなし。これは大きい。

「女性のサッカーだからパワーがないだろう」などと先入観を持つなかれ。今大会のイングランド女子代表やスウェーデン女子代表、オーストラリア女子代表のプレーはパワフルですごかった。技術的にも申し分ない。遠い逆サイドに1本のボールで楽々サイドチェンジしていた。

 てなわけで私は女子サッカーに対する偏見がすっかりなくなり、「WEリーグが始まったら観てみよう」と思っている次第である。

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【女子W杯2023 決勝】そして時代はひと回りしてティキタカが復権する 〜スペイン 1-0 イングランド

2023-08-21 09:59:50 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
スペインが史上初の大会制覇

 オーストラリアとニュージーランドが共催する女子ワールドカップ2023は20日、決勝戦が行わた。スペイン女子代表(世界ランキング6位)とイングランド女子代表(同4位)が戦った。試合はオルガ・カルモナ(レアル・マドリード)のゴールでスペインが1-0で勝利した。初優勝だ。彼女たちはたった3度目のW杯出場で制覇を成し遂げた。

 スペインはグループリーグ最終戦でなでしこジャパンに負けた以外、全ての試合に勝って決勝へたどり着いた。一方のイングランドも全勝での決勝だった。

 複数のパスコースを作りショートパスを繋ぐスペインの伝統的なスタイルはティキタカと呼ばれる。だが今回、スペイン女子代表が演じて見せたのはただのティキタカじゃない。

 単にひたすらボールを繋ぐだけの旧来のティキタカではなく、あくまでその先にあるゴールを目指すスペイン女子代表の「未来型ティキタカ」が世界を制したのだ。今大会でその「未来型ティキタカ」をプレイしていたのは、実はスペインとなでしこジャパンの2チームだけだったことは歴史に刻んでおきたい。

 明日がある、未来は明るい、ということだ。

 そのなでしこジャパンの宮澤ひなたは、計5ゴールでゴールデンブーツ(得点王)に輝いた。

イングランドのボールスピードはすばらしく速い

 スペインのフォーメーションはいつもの4-1-2-3。スタイルはハイライン・ハイプレスだ。対するイングランドのフォーメーションは3-4-1-2である。イングランドのボールスピードは相変わらず、すばらしく速い。それにくらべショートパスを繋ぐぶん、スペインの球速はそれほどない。

 イングランドのビルドアップはGKからのロングボールも交えるが、スペインは徹底してグラウンダーのショートパスを繋ぐスタイルだ。

 15分。最初に際どいシーンを作ったのはイングランドだった。FWローレン・ヘンプ(マンチェスター・シティ)が左足でシュートを放つが、クロスバーを叩く。すると17分、今度はスペインのFWアルバ・レドンド(レバンテUD)のシュートがGKメアリー・アープス(マンチェスター・ユナイテッド)に弾き返される。まるでシンクロしている。

 続く29分だった。スペインが右サイドから左にサイドチェンジして展開したあと、前のスペースにスルーパスを出す。これに走り込んだ左SBのオルガ・カルモナがダイアゴナルな美しいショットを放つ。ボールはゴール右スミのサイドネットに突き刺さった。スーッと糸を引くようなグラウンダーのボールだった。これでスペインが先制だ。

 その後はゴールがなく、一進一退のまま時間が過ぎる。

 前半が残り10分になり、リードしたスペインが横パスとバックパスを繰り返して安全に時間を使う。「絶対にリードしたまま後半に折り返すぞ」という意思表示だ。繋ぐ力があるスペインに対し、イングランドが真っ向勝負し押されている格好である。

 えんえんボールを繋ぐスペインに、業を煮やしたイングランドがミドルプレスからハイプレスに変えてボールを奪いに行く。虚々実々の駆け引きだ。かくて前半が終わった。

ブロックを下げ守備的になるスペイン

 後半に入り、監督から指示があったのか、リードしているスペインはややブロックを下げてきた。「金持ちケンカせず。もうリスキーなハイプレスはやりません」ということか? まだまだ時間はたっぷりあるというのに、1点を守り切るつもりなのか……。対するイングランドは4-2-3-1にフォーメーションを変えた。

 スペインがブロックを下げたため、めっきりイングランドがボールを保持するようになった。

 そして68分。イングランドのキーラ・ウォルシュ(バルセロナ)がハンドし、PKになる。スペインのFWジェニ・エルモソが右を狙って蹴ったが、GKメアリー・アープス(マンチェスター・ユナイテッド)が同方向に飛んでセーブした。これは大きい。

 しかしイングランドはボールを握って攻めるが、相手の力を柳のようにしなって受け止めるスペインの守備に合い、なかなか得点チャンスを作れない。後半アディショナルタイムは13分もある。だがスペインはあのテこのテで時間を稼ぎながら受けてくる。

 こうしてスペインはイングランドの猛攻をしのぎ切り、かくてタイムアップ。勝利の女神はスペインに微笑んだ。

 ただリードしてからのスペインは前半の終盤から時間稼ぎが露骨で、追うイングランドも焦りすぎて後半はほとんど試合にならなかった。せっかくいい大会だったのに、決勝の後半は「ない」も同然だった。もし0-0のまま後半に入ればもっと手に汗握る展開になったのに……と思うと残念だ。

 スペインの勝因は、グループリーグで日本に0-4と大敗したが動揺せず、まったくブレずに「自分たちのサッカー」を曲げなかったことだろう。自分の得意形で勝つーー。そんな彼女たちの信念の力が初優勝を引き寄せたのだ。

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【女子W杯2023 3位決定戦】やっぱりスウェーデンは強かった ~スウェーデン 2-0 オーストラリア

2023-08-20 08:19:26 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
スウェーデンがポゼッションで圧倒する

 オーストラリアとニュージーランドで共催されている「女子ワールドカップ2023」は19日、3位決定戦を行った。熱戦の末、スウェーデン女子代表が2点を取って競り勝った。点差ほどの差はなかった。これでスウェーデンは女子W杯最多4度の3位に輝いた。オーストラリア女子代表は負けはしたが、過去最高の4位を手にした。

 前半のスウェーデンはポゼッションで圧倒し、オーストラリアを押し込んだ。オーストラリアはカウンター狙いだったが、ボールを相手に持たせすぎた。前半はPKで失点し、後半には逆にカウンターから攻められゴールを奪われた。だがスタッツほど差のない、つばぜり合いが続いた一戦だった。

 ネットの書き込みで誰かが「女子サッカーはコートを狭くしてやった方がいい」などと書いていたが、冗談じゃない。それは「小さいサッカー」をする日本の場合だ。この2チームにはまったく当てはまらない。

 彼女たちは一発のサイドチェンジで逆サイドまでボールを運ぶし、最終ラインからロングボールを入れれば余裕で最前線まで到達する。ダイナミックでスケールがビッグな大きい展開をするサッカーだ。

PKとカウンターでスウェーデンが2発

 スウェーデンのフォーメーションは4-2-3-1だ。守備時4-4-2に変化する。対するオーストラリアのフォーメーションは4-4-2。オーストラリアは本来4-2-4の形でビルドアップするが、引き気味だった本ゲームではあまりこの形は見せなかった。

 均衡が崩れたのは26分だった。オーストラリアのペナルティエリア内に入り込んだスティーナ・ブラックステニウスが、クレア・ハントと交錯し足のかかとを踏まれて転倒する。

 これでスウェーデンにPKが与えられ、キッカーのフリドリーナ・ロルフォがゴール右スミに決めてスウェーデンが先制した。

 前半はスウェーデンがボールを保持して圧倒的に押し込んだ。だがオーストラリアもカウンターから徐々に反撃する。ボール保持率の差ほどの力の違いはない。

 そして後半に入り62分だった。スウェーデンが鮮やかなカウンター攻撃を見せる。

 抜け出したブラックステニウスがペナルティエリア左からマイナスに折り返し、受けたアスラニがボックス手前から右足で鮮やかな一発をゴール右スミに叩き込んで2—0とした。そして試合終了だ。

スウェーデンは対戦相手をよく研究していた

 スウェーデンはラウンド16・アメリカ戦でのアバウトなハイボールの放り込みが頭に焼き付いてあまりいい印象がなかったが、やっぱり強い。

 彼女たちは対戦相手をよく研究し、決勝トーナメントに入ってからはアメリカ戦、日本戦、スペイン戦、3決のオーストラリア戦と、まったく違う戦術で戦った。まるでカメレオンのようなチームだった。

 うらやましい高い身長と鋼のようなフィジカルで、守備に回ると当たりも強く球際で競る。最終ラインからグラウンダーのボールでていねいにビルドアップするスタイルと、ロングボールを使ってのダイレクト攻撃を見事に使い分けた。バランスの取れたいいチームだ。

 対するオーストラリアもすばらしいフィジカルで、男子のような大きい展開をする。長い距離でも、平気で強くて速いインサイドキックのボールを通すのには驚いた。すごいボールスピードだった。

 彼女たちは日本と同じアジア枠だ。2枠をかけたパリ五輪予選では、おそらく来年2月の最終予選で日本と当たる可能性が高い。今から楽しみだ。

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【移籍】遠藤航がリバプールへ電撃入団 ーープレイスタイル分析

2023-08-19 06:49:48 | イングランド・プレミアリーグ
守備的MFがいなくなったリバプール

 イングランド・プレミアリーグのリバプールは18日、日本代表主将のMF遠藤航(30)をシュツットガルトから獲得したと発表した。背番号は3。英メディアによると契約期間は4年で、移籍金は1900万ユーロ(約30億円)だ。

 この電撃的なシンデレラストーリーには、リバプールの台所事情が深く関係している。リバプールは今季、キャプテンのヘンダーソンをはじめ、ミルナーやファビーニョ、チェンバレン、ケイタと5人ものMFが退団した。守備的な仕事をするMFがいなくなったのだ。

 そこでブライトンから21歳のエクアドル代表MFモイセス・カイセドを、またサウサンプトンからは19歳のベルギー代表MFロメオ・ラビアの獲得を狙った。だがクラブ間合意には至ったものの、どちらもチェルシーに「強奪」された。

 その結果、8月13日にチェルシーの本拠地で行われたプレミアリーグの開幕戦で、リバプールは今夏ブライトンから獲った攻撃的なアルゼンチン代表MFマカリテルをアンカーに置く始末だ。

 加えてインサイドハーフには、本来3トップの1枚であるオランダ代表FWガクポを起用していた。中盤の守備的な人材が決定的に不足している。そこで遠藤にお鉢が回ってきたわけだ。

遠藤は球際の競り合いで勝つ「デュエル王」だ

 遠藤はまさに、リバプールのユルゲン・クロップ監督が欲するプレイスタイルそのものだ。彼らの決断は正解だろう。

 遠藤は2019年にシュトゥットガルトへ加入するや、2年目、3年目に2シーズン連続でブンデスリーガの「デュエル王」になっている。昨季は1位は取れなかったが、それでも全選手で唯一、3年連続のデュエル勝利数400以上をマークしている。

 彼が昨シーズンに記録したパス成功数は1164本、アタッキングサードにおけるパス成功数は302回にものぼる。しかも過去3年で、ミドルゾーンにおいて400回以上のボール奪取を行っているのだ。

 これらのスタッツはアンカーとして申し分ないだろう。しかも日本代表でもキャプテンをこなす。メンタルが強い。日本代表でもシュトゥットガルトにおいても、チームの精神的支柱である。

 そのプレイスタイルは天性の狩人だ。

 中盤の低い位置でディフェンスを監視し、守備のバランスを取る。また敵のパスカットを行う。特にボールの競り合いにおける球際の厳しさが際立つ。球際で深く踏み込みボールを狩る。マイボールにして攻撃に変える。その起点になるパスや、つなぎのパス出しにも優れている。

 キャプテンシーと献身性にあふれるファイタータイプであり、プレミアリーグ特有の急峻なテンポやトランジション(攻守の切り替え)の速さにも対応できる。そんな遠藤がリバプールに入れば……想像しただけで今季のプレミアリーグはおもしろくなりそうだ。

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【リーグ・アン 23/24 第1節】今季は南野のシーズンだ ~モナコ4-2クレルモン

2023-08-18 05:00:02 | その他の欧州サッカー
旧知の新監督を得て躍動する

 今季は南野拓実にとって「ラッキー・シーズン」になりそうだ。

 フランス1部のリーグ・アンは現地時間13日に第1節を行ない、モナコとクレルモンが対戦した。南野が2得点に絡む活躍をし、4-2でモナコが勝利した。

 モナコには今夏、新しい指揮官としてアディ・ヒュッター監督が就任している。ヒュッター監督は2014-15シーズンのザルツブルク時代に南野を指導している。指揮官からの南野への信認は厚い。彼にとってはベストな環境でプレイできそうだ。日本代表への復帰にも期待がかかる。

 南野はフォーメーション3-4-2-1のシャドーで先発した。クレルモンのフォーメーションも3-4-2-1。ミラーゲームだ。

 7分にホームのクレルモンに先制されたモナコは26分、同点弾を上げる。

 ロングボールを受けたヴァンデルソンが胸に当ててボールを落とす。これを受けた南野はひとつ触ってから、股抜きのパスをヴァンデルソンに返す。ヴァンデルソンはワンタッチでしっかり決めた。

 活気づくモナコは43分、左サイドでのスルーパスを受けたフォファナのシュートがポストを叩く。そのこぼれ球をベン・イェデルがワンタッチでゴールへ押し込んだ。逆転だ。

1アシストし決勝点にも関与する

 ところが後半に入り、53分にクレルモンがカウンターで同点に追いつく。

 これに対しモナコが突き放したのが70分だった。

 ボールを受けた南野が鋭いターンで前を向き、左からパス。ファーでこれをヴァンデルソンが折り返し、呼応したベン・イェデルがワンタッチで押し込んだ。モナコがふたたびリードした。

 その後、後半アディショナルタイムにもモナコが1点を追加してゲームセット。南野は85分までプレーした。彼は1アシストを上げ決勝点にも絡む活躍だった。

 今季の南野は2ライン間で間受けし、ボックス周辺でフィニッシュに関わるプレイが冴えている。そんな彼のツボを心得ている監督が就任してよかった。

 リバプールから加入した1年目の昨季は、リーグ18試合1ゴールと「音なしの構え」で終わった南野。厚い信頼の新監督を得て、今シーズンは期待できそうだ。

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【女子W杯2023 準決勝】イングランド3発劇勝、決勝はスペイン戦へ ~オーストラリア1-3イングランド

2023-08-17 05:00:36 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
イングランドが試合を終始リードする

 オーストラリアとニュージーランドが共催する「女子ワールドカップ2023」で8月16日、準決勝が行われ、オーストラリアとイングランドが対戦した。

 イングランドが終始、試合をリードし、3-1でオーストラリアを下した。

 イングランドは36分に先制すると、そのままの勢いで2点を加えて追いすがるオーストラリアを振り切った。オーストラリアは63分に1点取ったがそれまでだった。欧州女王が貫録を見せつけた。

 8月20日(日)19:00に行われるスペインとの決勝戦では、ともに初優勝をかけて相手とぶつかる。試合はサイトFIFA+で生中継される。

イングランドは3-1-3-1-2でビルドアップする

 イングランドのフォーメーションは3-4-1-2、オーストラリアは4-4-2だ。イングランドは3-1-3-1-2の形でアンカーが一列降りてビルドアップする。

 3バックのイングランドが最終ラインからビルドアップする際、2トップのオーストラリアはミドルブロックを組み、時おり前を3枚にして数を合わせてくる。イングランドはこれを嫌い、思い切りロングボールを放り込むーー。虚々実々の駆け引きが行われている。

 グラウンダーのボールでビルドアップするのはたいていイングランドだ。オーストラリアはそれを受けて立つ。カウンター狙いである。イングランドのポゼッション率は58%ある。しかし前半の立ち上がり、オーストラリアの方は伸び伸びやっているのだが、イングランドは様子がヘンだ。どこかおかしい。変調だ。

 だがそれを吹っ飛ばしたのが36分の豪快な一発だった。

 イングランドの左サイドのスローインからだ。まずFWローレン・ヘンプ(マンチェスター・シティ)がパスを繋ぎ、同アレッシア・ルッソ(アーセナル)がマイナスの折り返しを入れる。

 これに合わせてMFエラ・トゥ-ン(マンチェスター・ユナイテッド)が、右足インステップでゴール右上スミに強烈な弾丸シュートをお見舞いした。先制点だ。

 オーストラリアが強くて速いグラウンダーのパスを出す。すごいボールスピードだ。彼女たちはめいっぱい力を出している。だが、なかなか追いつけない。そうこうするうち前半が終わった。時間がたつのがとても速く感じる。

オーストラリアが63分に同点弾を放つ

 後半が始まった。

 1点リードしているイングランドは少し引き気味に構え、前半とは違いオーストラリアにビルドアップさせている。

 そんな63分だった。オーストラリアのエースFWサム・カー(チェルシー)がハーフウェーラインから長いドリブルをし、ペナルティエリアの外から右足で豪快な一発をかます。同点弾だ。盛り上がる観客席。一気に雰囲気が変わった。

 続く71分。自ゴール前でオーストラリアのDFがボールと敵アタッカーとの間にカラダを入れた。が、DFの態勢が一瞬崩れたのを見て、背後についたイングランドのヘンプがワンタッチでゴールを決めた。これでまたイングランドが1点リードする。

 イングランドの選手のシュートは非常に正確だ。ほとんどがワクへ行く。

 そして81分にオーストラリアは、DFポルキングホーンに代えて10番のMFエミリー・ヴァン・エグモンド(サンディエゴ・ウェーブFC)を投入する。勝負に出てきた。

 だが86分だった。イングランドが痛烈なとどめを刺した。

 ハーフウェイラインの手前から、ヘンプが延々ドリブルする。仕上げはライン裏へのスルーパスだ。これに抜け出したルッソは、右足インステップでゴール左スミに叩き込んだ。イングランドが突き放す3点目を取った。

 試合は後半アディショナルタイムに入り、リードされているオーストラリアは立て続けにロングボールを入れてくる。そしてタイムアップ。イングランド、初の決勝進出だ。相手は強豪スペインである。

 予言が当たった。

 イングランドは決勝トーナメント1回戦・ナイジェリア戦の「踏みつけファウル」で、2試合の出場停止になっていたFWローレン・ジェームズ(チェルシー)が決勝で戻ってくる。

 かくて舞台は揃った。

 あとはやるだけだ。

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