諸君の献身を決して無駄にはするまい。「大規模イベントでどの程度感染が広まるのか実験」と云う名目で7月に行われた英国の野外音楽フェスであるが、数日後の検査で1050人が陽性と判定されたそうである。ワクチンフル接種か陰性証明が参加の条件だったが、それでも他人に感染させる可能性が有った人は432人居たとの事で、どれだけ厳しくしても人が集まっちゃったらゼロには出来ないよね、と云う至極真っ当な結論が導かれた様で何よりである。4日間で延べ14.4万人を動員したにしては予想外に少なかったと云う見方も出来るので、後は感染リスクと個人の価値観をどう天秤にかけるかである。「当たらなければどうという事はない」理論は嫌いではないが、日本でその価値観が受け入れられるかは微妙な所である。ただ世間の目を気にして事故ゼロ工作に走るよりは、アッケラカンと数字を公表してしまう方が私の好みであるし、結局は傷口を広げずに済む様に思えるのである。
ああ、このパターンはハリウッド映画で何回か観た。ペンシルベニア州立大学の研究チームは、コロナウィルスの劣化版を人工的に作製して投与する事で、ウィルスの活動を阻害する手法を開発したと発表した。それ単体では増殖すら出来ないポンコツだが、野生のコロナウィルスが侵入して来るとそのゲノムを乗っ取り、本家よりも高速に殖え始めるそうである。殖えたとしても元々がポンコツなので人体に害は及ぼさないとの事だが、ハリウッド映画的にはもっと酷い事になるのは間違いない。変異株も結局はウィルスが増殖する際のコピーミスであり、遺伝が繰り返された末にポンコツがどんな形質を獲得するかを制御するのは不可能だと思うのだが、造れるものは造っちゃうのが人間様である。その知的好奇心を抑え込む術は無いのは、ハリウッド映画を観れば明らかである。毒を以て毒を制すと云う発想は嫌いではないが、実際にそれを飲まされる身にもなって欲しいのである。
米FDAも気苦労が絶えない。家畜用の虫下しとして販売されているイベルメクチンを服用した人が、具合が悪くなって通報する事案が相次ぎ、「あなたは馬ではない」と云う声明を発表したそうである。長年に亘って世界中で使われ安全な薬として北里大学等が激推しするイベルメクチンであるが、劇薬指定である事に変わりは無いので、少なくとも人間向けに調剤されたものを服用すべきだろう。またコロナを対象とした二重盲検に拠る治験データはまだまだ不足しているのが現状である。お腹の調子が悪いので取り敢えず正露丸を飲んでおいたら効いた、レベルの経験談が大半である。また連続投与を前提とした薬剤では無い事にも留意したい。ただそんなに高い薬でも無いし目的外処方も厚労省は認めているんだから、欲しい人には医師の指導の下で出してあげれば良いと思う。それでコロナの症状が改善すれば良し、効かなかったとしてもお腹の調子は良くなりそうに思うのである。
まだまだ暑い日が続く。コンビニのアイスコーヒーは正に一服の清涼剤である。氷入りカップを購入し、フタをペリっと剥がし淹れたてコーヒーを注いだらガムシロップを入れフレッシュを入れマドラーでかき混ぜ専用のフタを嵌めストローを差し一気飲みする爽快感は格別である。しかしそんな刹那的快楽の為に発生するプラごみの多さに罪悪感を抱くのも事実である。エシカル消費の観点からすればそう云う商品には手を出さないのが正しいのだろうが、そうなるとコンビニには死活問題である。環境庁はリサイクル強化を強く要請し、従わない場合には企業名の公表と50万円以下の罰金を科すそうだが、費用対効果を考えれば何とも生温い。ESGを意識した経営に望みを託したいのだが、プラスチックは余りにも優秀である。「容器のいろはす化」によってプラごみを減らし急場を凌ぐ可能性が高く、涼を取る際には握力の調整に全身全霊を注ぐ必要が出てくるかも知れないのである。
今の音楽を1000年後に伝えるにはどうすれば良いか。デジタル化が進む書籍や動画も似た様な問題を抱えている。しかし書籍なら中性紙に墨で印刷し酸素を遮断して保管すればその位は持つし、動画は長期間安定して保存出来る媒体がそもそも存在しない。音楽であれば楽譜にすると云う荒業が使えるので、両者の中間的位置付けであると私は考えている。ただ楽器ならともかく、歌手の声は当人固有のものであり、それを紙に転記するのはやって出来なくは無いが止めた方が良いだろう。20世紀に発明された記録媒体は長持ちして精々100年であり、しかも電力が無ければ使い物にならないのが殆どである。口伝で継承していくと云うプリミティブな技も有るが、代を重ねれば変質するのが普通であるから、適切な保存方法とは言い難い様に思える。結局現時点で最新の記憶装置に適宜移し替え、文明の退化や断絶を引き起こす様な真似をしでかさない様に注意するしか無さそうなのである。