
だから
風を待っている
雑木林を抜けて
野山のてっぺんを
そよいで 駆け抜けて 突き当れば 周り込む
吹いては 黙々と くぐり抜け
それでいて
荒っぽくも やさしくもあり
不思議な風は ここに来て
季節を感じさせてくれる
野花が咲いて
蔓延るように覆い尽くし もうすぐ
ススキ野に変身してしまう 砦
山道を登ると 草むらに隠れて
野アザミが ユリが 小菊が
顔を揃えて
迎えてくれるはず
風を待っている
誰かが慌てて 届かなかった便りの
話をしたくて
いらぬ噂を すべて払拭したくて
想いのすべを ぶっつけたくて
荒れ野は 見たくないから
今を 呼んでみる
ここに来たくなる
陽射しが強く
乾燥した肌に
まだまだ遠いからと
青い空が呟いているようで
涼風も知らぬふり
もう少し 時が過ぎるまで
風を待っている~