何も言えなくて
ひとり歩く 野辺に
仄かな香りを 漂わせながら
薄いベージュの 水仙が
辺り一面に広がって 咲誇る
小高い丘の やわらかな陽射し
木立の合い間から 木漏れ日も届いて
何もかもが 春色で染まり始めた
蹲っていた虫たち
戸惑いながら 小鳥の囀り
新芽を待つ 幹の小枝
埋もれてしまいそうな 野草の群れ
いっせいに ざわめきの中で
動き始めているような 気がして
いつもと違う
いつもと違えて
走り出した季節の
変わりの速さに
驚きもするけど
置いてけぼりにされないよう
精いっぱい 輝いて魅せる
素朴に咲いた花に つい
愛しくなって
足を止めてしまう
何かの気配に
誘われながら
想い出に浸って
何処までも 追いかけるのは
何故
水仙に聴いてみたいけど...