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リヒテルによるシューベルトのソナタ その4

2021年03月07日 23時24分00秒 | シューベルト
先週、岡山県立美術館の特別展『雪舟と玉堂』を見に行きました。今回は雪舟の「山水長巻」がすべて見れるというので、岡山まで出かけた次第です。雪舟の絵画、今回はじっくり見ることができました。やはり「山水長巻」は圧巻でした。山水図での山や木などだけではなく、海の様子や船や家屋なども非常に写実的に描かれ、墨の濃淡だけで、ここまで表現できるか、と驚きました。また、直線が非常にきれいですね。雪舟の凄さを再認識させてもらいました。

ということで、もう3月。今回はシューベルトであります。スヴィヤトスラフ・リヒテルの演奏で、ピアノ・ソナタ第17番二長調D.850です。この曲は、以前に村上春樹さんの『海辺のカフカ』や『意味がなければスイングはない』で取り上げられ、そのこともあり二度ほど取り上げました。1825年に作曲され翌年に出版されており、バート・ガスタインで作曲されたことから『ガシュタイナー』とも言われているそうです。この呼称は初めて知りました。

リヒテルのシューベルトは、ビクターからの19.21番や、EMIからの13番などがスタジオ録音として知られています。他にもライブなどもたくさんあって、いろいろと複雑です。例えばProfilから出ているモスクワでのライブを集めた10枚組には、6,13,14,15,16.17,19.21番が収められています。またデッカには9,15,18番のライブ演奏も残されています。他にも、ライブ音源などがけっこういろいろと残されており、そのあたりはベートーヴェンでも同じ状況ですねえ。

それで、今回の17番ですが、1956年6月14日プラハでのライブです。まだリヒテルが西側にデビューする前の「幻のピアニスト」のころの演奏です。モノラルですがSACDハイブリッド盤。ピアノの独奏は、モノラルでもそれほど聴きにくくはないものが多いのですが、このCDはかなり音質がいいです。SACDとなったお陰でしょうか、まったくストレスなく聴くことができますね。といっても、もとのモノラルの音質がどうだったかは、知らないですがね。

リヒテルの演奏、まずは強打のピアノに驚かされます。ロシアピアニズムの流れですね。リヒテル、このとき40才。若くて元気一杯のピアノが展開されています。ただ、そんなピアノだけではないのが、リヒテルの凄さなんでしょうねえ。この曲って確かに変。でも多かれ少なかれ、この人の曲ってそんな傾向がある。でも、それぞれの楽章は非常に魅力的。リヒテルはそれぞれの楽章もよさを最大限に表現しています。大胆でダイナミックな表現で一気に突っ切るかと思えば、穏やかで、消え入るよな微かな美しさも表現している。シューベルトを抜群のテクニックで縦横無尽に演奏しているのであります。強弱・硬柔を巧みに織り交ぜながら一気に駆け抜ける様は、天才の閃きを感じるところであります。

第1楽章、まずは一発。リヒテルの強打が炸裂。速めのテンポでまくし立て、目まぐるしい展開に耳が奪われる。鮮やかな打鍵で凄まじい技巧を駆使し、その強靱な響きは快感であります。第2楽章、一転して静寂な穏やかなピアノ。ただし強靱さは健在。シューベルトらしい美しい楽章を抒情的に歌い上げる。リヒテルのピアノは繊細にそれを表現し、無上の美しさがそこにはある。第3楽章、再び躍動感に満ちた強打が展開。左手は活発で右手の対抗するよう。そして中間部になると、一転して抒情的。それも強靱なピアノで展開されそれは無上の美しさに達するよう。そして再び強打での反復。爽快なピアノであります。そして第4楽章。以前に「おかしい終楽章」といて取り上げました。しかし、このリヒテルはいいです。これまでと打って変わって軽快なピアノ。軽やかなステップで駆け抜ける。この楽章自体のことは置いといて、リヒテルの見事な演奏に聴き惚れてしまいます。軽快に愛らしく踊り、そのピアノに酔うのでありました。

このDCは、タワーさんのセールで見つけました。安かったです。また、最初に述べた「雪舟と玉堂」の特別展は、いつもお世話になっているヒロノミンV様のブログで教えていただきました。感謝申し上げる次第であります。
(Praga PRDDSD350067 2016年 輸入盤)

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6 コメント

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Unknown (ヒロノミン)
2021-03-08 21:46:50
 こんばんは。岡山県美に行かれたのですね。私は会期序盤でしたので、ガラガラの中で見たのですが、ゆっくり見ることが出来たとのことで、良かったです。
 ベールに包まれてた頃のリヒテルですか。私はピアノ演奏よりもオーケストラ曲や室内楽ばかりきいているので、リヒテルのシューベルト自体聴いたことがないのです。参考にさせていただきます。
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Unknown (popotoku)
2021-03-10 09:58:45
リヒテルのシューベルトはいいですね。特に17番、19番のような曲はリヒテルの演奏が好きです(私の持っているのはモスクワライブ)。館野泉さんのCDも宝物です。
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コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2021-03-10 16:08:32
ヒロノミンV 様、コメント感謝です。私も平日の木曜日に行ったので、それほど混雑していませんでした。ゆっくり見ることができました。京博や奈良博ではこうはいきませんね(笑)。
リヒテルは、全集を録音するなどではない人なので、どの曲の演奏があるのか、これにライブが加わって、実に把握が難しいですね。ライブも正規?なのか…。でも、演奏はやはり素晴らしいものが多いですね。
また、ご教示ください。
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コメント感謝です。 (mikotomochi58)
2021-03-10 22:06:21
popotoku 様、コメントありがとうございます。ご指摘の17番は、1956年8月11日のモスクワでのライブですね。PrfilのBOXに収められていますね。19番も同じBoxには1958年2月5日のモスクワでのライブがあります。17番については、他の演奏があるかどうかは私しりません。でも、どれもこの時期のリヒテルらしい演奏です。舘野さんの演奏は、聴いたことがないです。また聴きたいですね。またご教示ください。
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Unknown (クレモナ)
2021-03-14 21:44:33
シューベルトのピアノ・ソナタは、結構所有しているのですが、よく聴くか?といえば、?となります。美しいメロディが、次から次へと出てきますが、突然、曲想が変化し、また、長大なメロディが流れていく、そんな感じで、何か、つかみ所がありません。まあ、それが、シューベルトの特徴なのかも知れませんね。この第17番も、リヒテルのものは、持っていませんが、リヒテルが弾くと、音楽が、がっちり構成されることが、想像できます。リヒテルが弾くと、ベートーヴェンの初期のソナタなども、立派な音楽に生まれ変わります。やはり、天才の音楽家と言わねばなりません。そんなリヒテルが、シューベルトを多数、取り上げているのは、興味があります。
あと、1週間で、「緊急事態宣言」が解除される予定です。感染者数が減っていない(いや、増加している)状態でも、病床逼迫度合いが下がっているということで、恐らく、解除されると思います。つまり、さらに延長しても、意味がないからです。この延長期間は、何だったのでしょうか?一体!
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コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2021-03-15 08:35:14
クレモナ 様、コメント感謝です。シューベルトのピアノソナタは、ご指摘のとおりなかなかですね。その昔はそれほど演奏されていなかったようですが、近年はけっこう盛んに聴かれるようになりましたね。リヒテルのシューベルト演奏は、1950年代からたくさんのこっているようなので、先駆的な存在だったんでしょうかね。そうでもなくみなさんそれなりに演奏しているのかもしれませんが…。リヒテルは、やはり天才肌なんでしょうね。この手の人は、まとめて録音することがあまりなく、自分の好きな曲だけを好きなときにする傾向が多いのかして、どんな曲がどれほどあるのか、たいそうわかりにくいのであります。
ほんとに、緊急事態宣言の意味がなくなってきていますね。延長してもあまり意味がない、のが現状なんでしょうね。どうなることか。第4波が来ますかね。
また、ご教示ください。
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