「東京新聞」2023年1月3日
東京都多摩地域における井戸水の有機フッ素化合物(PFAS)汚染は、長期間にわたって広範囲で続いてきた可能性が出てきた。水道水に使われる水は、人々の健康や生命の安全に直結するはずだが、市民団体の再三の指摘にも都の動きは鈍い。背景には、国内ではPFASの明確な健康基準が定められていないことや、汚染源の可能性がある米軍基地への立ち入り調査が難しいことがある。(松島京太)
有機フッ素化合物 PFOSやPFOAなど多数あり、総称はPFAS(ピーファス)。水や油をはじく性質があり、泡消火剤や塗料、フライパンのコーティングなどに幅広く使われてきた。環境中でほとんど分解されず、人や動物の体内に蓄積されやすい。がんや心疾患による死亡リスク上昇との関連や、出生体重が減少する恐れが指摘され、近年、国際的に使用の禁止や規制が進む。日本の水道水などの暫定目標値はPFOSとPFOAの合計が1リットル当たり50ナノグラム。
◆ドイツの基準値を超える住民も
国は水道水におけるPFASの暫定目標値として1リットル当たり50ナノグラム以下としているが、健康影響に関する基準は示していない。一方、ドイツでは人の血中濃度の基準値が定められており、血液1ミリリットル当たりPFASの一種PFOSが20ナノグラム、PFOAは10ナノグラムを超えると影響が出る恐れがあるとされる。
米軍によるPFAS汚染が確認された沖縄県では昨年、基地周辺などの住民387人を検査し、27人がドイツ基準を上回った。2020年には都内のNPO法人が府中、国分寺の2市の住民22人を対象とした検査を実施し、基準を超えた住民がいた。
NPOは大規模検査を求めたが、都化学物質対策課の担当者は「コストに限界があり、PFASの知見も集まっておらず、血液検査は考えていない」と説明する。市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が600人規模を目標に血液検査を開始したが、スタッフの手当などは寄付で賄わざるを得ない。
◆井戸は全て横田基地の東側に 「原因の可能性ある」
PFASの汚染源に浮上しているのが米軍横田基地(福生市など)だ。多摩地域で高濃度のPFASが確認された井戸水の範囲は7市34本に及ぶが、全て基地の東側にある。多摩地域の地下水を調査した昭島市によると、地下水は西の山側から平野部の東側に流れている。汚染源は井戸の西側にある可能性が高い。
全国各地のPFAS汚染を調査している京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は、自然界で分解されにくいPFASを含む泡消火剤が土壌を汚染し、数十年かけて地下水まで浸透しているのではないかとみる。
横田基地では、過去に長期間にわたり大量のPFASを含む泡消火剤が漏出したと報道されている。汚染が確認された浄水施設は最長で約16キロ離れているが、原田氏の大阪府での調査では化学工場から10キロ以上離れた地下水も汚染していたため「基地が原因の可能性はある」と推測する。
◆行政は「公害として捉えるべきだ」
都が米軍基地を調査する際のハードルとなるのは、米軍に特権を与えている日米地位協定。日本側が基地の土壌を立ち入り調査できるのは「環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合」に限られる。基地には事故報告も漏出した明白な証拠もなく、調査の申請は事実上不可能。都の担当者は「立ち入り調査は『やらない』ではなく『できない』だ」と話す。
ただ、都の動きはできることにも鈍い。21年には都内260カ所の地下水でPFAS濃度の調査を始めているが、調査が広範囲に及ぶことを理由に、すべての結果公表は25年とかなり先を見込んでいる。公害問題に詳しい熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は「汚染源を調べたいなら高濃度に汚染されている地帯を重点的に調べる必要がある」と指摘。「行政は公害として捉えて危機感を持って動くべきだ」と訴
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市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」は、18歳以上の多摩地域の住民を対象に、検査の参加者を募っている。問い合わせは事務局の根木山幸夫さん=電042(593)2885=へ。
沖縄だけでなく、横田の方でも問題になっているんですね。
なんだかんだで、人体に影響を及ぼす毒が身近に潜んでいるという危険に対して、大声を上げて
米軍に調査立ち入りや対策案の場を設けるなど、やりたいことがやれないという「日米地位協定」
日本人の人権を、踏みにじるダメな協定は、根本から見直しをして欲しいです。
(・・;)