支援疲れ蔓延で遠のく停戦、プーチンは高笑い
日刊ゲンダイDIGITAL2023/10/02
もはや、ウクライナの敗北は決定的なのか──。
9月30日、アメリカの「つなぎ予算」がようやく成立した。しかし、共和党の反対によって「ウクライナ支援予算」は盛り込まれなかった。今回成立したのは、あくまで11月半ばまでの「つなぎ予算」だが、2024会計年度の本予算でもウクライナへの支援予算は、大幅に縮小される可能性が高い。
「さすがに本予算からウクライナ支援が消えることはないでしょうが、これまでのような大盤振る舞いは難しいと思う。アメリカでは『ウクライナより、国内だ』という世論が強まっているからです。インフレによって生活が苦しくなっているのが大きな理由です。7月のCNNの調査でも、ウクライナ支援の追加予算を『承認すべきでない』が55%と過半数に達しています。1年後に大統領選が控えているバイデン大統領も、世論に抗してまでウクライナ支援に巨費を投じるのは困難でしょう」(元外務省国際情報局長・孫崎享氏)
ロシアのウクライナ侵攻から、すでに1年8カ月。「支援疲れ」は国際社会に広がっている。
30日に行われたウクライナの隣国スロバキアの議会選挙では、ウクライナへの軍事支援の停止を訴えた野党が第1党になった。
これまでスロバキア政府は、戦闘機を送るなど軍事支援を進めてきたが、ストップする可能性がある。勝利した野党党首は「ロシアへの制裁は物価の高騰を招き国民を苦しめるだけだ」とも主張している。
さらに、ウクライナ政府の強固な支持国だったポーランド政府も、ここにきて「ウクライナは溺れゆく人のように何にでもしがみつく」「ウクライナに武器提供はしない」と明言している。
■停戦も遠のいた
最大の支援国アメリカが、ウクライナ支援に二の足を踏みはじめたら、戦局が大きく変わるのは間違いない。
「支援疲れしている国は、『早く停戦して欲しい』というのがホンネでしょう。停戦に動く国があるかも知れない。でも、逆に停戦は遠のいたと思う。日本の報道からは分からないかも知れませんが、ウクライナの反攻はうまくいっていません。勝利のシナリオが見えない。西側からの支援が縮小するとなれば、なおさら戦況は不利になる。となると、ロシアのプーチン大統領は簡単には停戦に応じないでしょう。勝てると確信を持ったら、徹底的に行くはずです」(孫崎享氏)
いま頃、プーチン大統領は高笑いしているのではないか。
勝ち負けが決まる前に「停戦」に持ち込むのが理想だ。
力を持った世界の指導者がいないということだろう。