と言っても、お肌のシミのことではありません。
「紙魚」(シミ)
紙や衣服を食べて生きる虫なのだそうで、今の住居に引っ越してきて初めて知った。
それまで1度も見かけたこともなかった。
石をどけるとダンゴムシが現れるように、冬が去り、外が春めいてくるとその姿を現す。
掃除をしようとどかしたパンフレットの山の下から。
あるいは、積読の本の下から。
あるいはモップの動きから逃れようとして。
目の前を素早い速さで横切っていく。
辞書にあるとおり、その色、頭からしっぽの先まで真っ白で、銀光といってもいいほど鮮やかだ。
魚に似ているのでこの名前が付いたとあるが、確かに、床の上を走っていく様は、魚がスイスイとすべっていくように滑らかである。
しかし虫は虫である。
掃除のたびに(たまにしかしないが)、構えてしまう。
今まで見たことがなかったことを思えば、どこかでこの虫の卵を拾ってきてしまったにちがいない。
引っ越し屋さんの段ボール箱にくっついていたのか。
それとも、もともとこの部屋に住み着いて、次の住人の持ち込んでくる紙の類を待ち構えていたのか。
敏捷な動きの割には、指にちょっと触れただけで、床にぐんにゃりとくっついて、上半身だけじたばたと動かしているさまは、情けないような、気味が悪いような……。
もうひとつ、古い本のページをめくっていると、針の先ほどの小さな茶色っぽい虫が、紙の上を横切るのに出くわすことがある。
これなどは、もう1度、パタンと本を閉じるとあっけなく本にくっついて、それこそシミのように紙と一体化してしまう。
本当にすれすれの隙間をぬってそれまで生きていたのだと知ると、哀れな気がしないでもない。
昔から行われている「虫干し」。
日に干したり風にあてたりすれば根絶できるのだろうか。
夏は、足の短いクモの類もどこからともなく部屋に入ってきて、目の前をぴょんぴょん跳ね始める。
飛蚊症の持病があるために、これが目の症状なのか、それとも本当に虫なのか、判別できないで緊張する瞬間がある。
油断のできない虫の季節がやってくる。
「紙魚」(シミ)
紙や衣服を食べて生きる虫なのだそうで、今の住居に引っ越してきて初めて知った。
それまで1度も見かけたこともなかった。
石をどけるとダンゴムシが現れるように、冬が去り、外が春めいてくるとその姿を現す。
掃除をしようとどかしたパンフレットの山の下から。
あるいは、積読の本の下から。
あるいはモップの動きから逃れようとして。
目の前を素早い速さで横切っていく。
辞書にあるとおり、その色、頭からしっぽの先まで真っ白で、銀光といってもいいほど鮮やかだ。
魚に似ているのでこの名前が付いたとあるが、確かに、床の上を走っていく様は、魚がスイスイとすべっていくように滑らかである。
しかし虫は虫である。
掃除のたびに(たまにしかしないが)、構えてしまう。
今まで見たことがなかったことを思えば、どこかでこの虫の卵を拾ってきてしまったにちがいない。
引っ越し屋さんの段ボール箱にくっついていたのか。
それとも、もともとこの部屋に住み着いて、次の住人の持ち込んでくる紙の類を待ち構えていたのか。
敏捷な動きの割には、指にちょっと触れただけで、床にぐんにゃりとくっついて、上半身だけじたばたと動かしているさまは、情けないような、気味が悪いような……。
もうひとつ、古い本のページをめくっていると、針の先ほどの小さな茶色っぽい虫が、紙の上を横切るのに出くわすことがある。
これなどは、もう1度、パタンと本を閉じるとあっけなく本にくっついて、それこそシミのように紙と一体化してしまう。
本当にすれすれの隙間をぬってそれまで生きていたのだと知ると、哀れな気がしないでもない。
昔から行われている「虫干し」。
日に干したり風にあてたりすれば根絶できるのだろうか。
夏は、足の短いクモの類もどこからともなく部屋に入ってきて、目の前をぴょんぴょん跳ね始める。
飛蚊症の持病があるために、これが目の症状なのか、それとも本当に虫なのか、判別できないで緊張する瞬間がある。
油断のできない虫の季節がやってくる。