およそ2カ月半ぶりに、美容院へ行く。
カットの間中、世間話は、どうしたって震災の話になる。
「はさみを使っている時に揺れたら、怖いですよね」
とわたし。
美容師さんが語るには、揺れた時、たまたまカット中のお客さんはいなかったのだが、
カラーリング中だったり、シャンプーしたばかりだったりして、処理が大変だったようである。
幸い、近所の花屋さんが、ポットにお湯をいれて運んでくれたそうだが、
こうした洗髪の仕方は、初めてのこと。
ふたりがかりで、いつもの何倍も時間をかけて、カラ―液を洗い流し、
停電のためにドライヤ―も使えず、何枚ものタオルを使って、
髪の毛の水気を拭き取ったのだそうである。
あの時間、さすがに自宅で入浴中だったり、シャンプー中だったりした人は、
あまりいなかっただろうが、美容院や床屋さんの場合なら、大いにありうることである。
スタッフも大変だが、客の方も心細かっただろう。
なにしろ、あのテルテル坊主のような、ビニールのうわっぱりをかぶった状態である。
しかも、髪の毛はカラーの薬品がべっとりついたまま、あるいは、シャンプーしたばかり。
揺れがひどくなり、躊躇する余裕もなく外に飛び出したりしたら、
後あと、その格好では、さぞかし具合が悪かったことだろう。
くだんの美容師さんは、母親と、90歳になる祖母の3人暮らしである。
彼の話には、よく、この同居する“おばあちゃん”が登場する。
少々惚け初めていて、時々冷蔵庫に、まさか、というようなものが入っているそうである。
彼の語るおばあちゃんは、どこかユーモアがあって、明るい。
直接世話をする母親とは違い、一歩離れて祖母のことを見られると話していた。
そのおばあちゃん、何かあるとすぐに仏壇の前に座る癖があるそうで、てっきり今回の震災で、
「ぺたんこになっているかと思いました」
と、笑う。かなり大きな仏壇らしい。
震災当日、電話もつながらず、すぐに停電にもなったので、てっきり、ご飯も炊けないだろうと思い、
彼は美容院から徒歩で帰宅する道すがら、コンビニで3人分のお弁当を買って帰ったそうだ。
すると彼の母親もまた、同じことを考えて、やはりお弁当を3つ買って帰宅。
ところが、彼らが帰る頃には、電気も復旧していたので、留守番をしていたおばあちゃんも、
(ぺたんこにもならず)しっかりご飯を作って待っていたそうで、
彼曰く、「その日は、結局パーティーのようになっちゃいました」。
帰宅困難者に買いあさられ、ほとんど食べ物の在庫がなくなったコンビ二。
温かい缶入りスープ1本も手に入れることができなかった人がいるかと思えば、
このように、偶発的ながらも、食糧がてんこ盛りになってしまったお宅もある。
人が100人いたら、100人分の、3・11があるのに違いない。
それは悲惨な話ばかりとは限らない。
日常からかけ離れたできごとがあった日であればあるほど、
あとから振り返ると、滑稽なことだってたくさん起きているのに違いない。
カットの間中、世間話は、どうしたって震災の話になる。
「はさみを使っている時に揺れたら、怖いですよね」
とわたし。
美容師さんが語るには、揺れた時、たまたまカット中のお客さんはいなかったのだが、
カラーリング中だったり、シャンプーしたばかりだったりして、処理が大変だったようである。
幸い、近所の花屋さんが、ポットにお湯をいれて運んでくれたそうだが、
こうした洗髪の仕方は、初めてのこと。
ふたりがかりで、いつもの何倍も時間をかけて、カラ―液を洗い流し、
停電のためにドライヤ―も使えず、何枚ものタオルを使って、
髪の毛の水気を拭き取ったのだそうである。
あの時間、さすがに自宅で入浴中だったり、シャンプー中だったりした人は、
あまりいなかっただろうが、美容院や床屋さんの場合なら、大いにありうることである。
スタッフも大変だが、客の方も心細かっただろう。
なにしろ、あのテルテル坊主のような、ビニールのうわっぱりをかぶった状態である。
しかも、髪の毛はカラーの薬品がべっとりついたまま、あるいは、シャンプーしたばかり。
揺れがひどくなり、躊躇する余裕もなく外に飛び出したりしたら、
後あと、その格好では、さぞかし具合が悪かったことだろう。
くだんの美容師さんは、母親と、90歳になる祖母の3人暮らしである。
彼の話には、よく、この同居する“おばあちゃん”が登場する。
少々惚け初めていて、時々冷蔵庫に、まさか、というようなものが入っているそうである。
彼の語るおばあちゃんは、どこかユーモアがあって、明るい。
直接世話をする母親とは違い、一歩離れて祖母のことを見られると話していた。
そのおばあちゃん、何かあるとすぐに仏壇の前に座る癖があるそうで、てっきり今回の震災で、
「ぺたんこになっているかと思いました」
と、笑う。かなり大きな仏壇らしい。
震災当日、電話もつながらず、すぐに停電にもなったので、てっきり、ご飯も炊けないだろうと思い、
彼は美容院から徒歩で帰宅する道すがら、コンビニで3人分のお弁当を買って帰ったそうだ。
すると彼の母親もまた、同じことを考えて、やはりお弁当を3つ買って帰宅。
ところが、彼らが帰る頃には、電気も復旧していたので、留守番をしていたおばあちゃんも、
(ぺたんこにもならず)しっかりご飯を作って待っていたそうで、
彼曰く、「その日は、結局パーティーのようになっちゃいました」。
帰宅困難者に買いあさられ、ほとんど食べ物の在庫がなくなったコンビ二。
温かい缶入りスープ1本も手に入れることができなかった人がいるかと思えば、
このように、偶発的ながらも、食糧がてんこ盛りになってしまったお宅もある。
人が100人いたら、100人分の、3・11があるのに違いない。
それは悲惨な話ばかりとは限らない。
日常からかけ離れたできごとがあった日であればあるほど、
あとから振り返ると、滑稽なことだってたくさん起きているのに違いない。