次が釣藤散です。
これも今までに何度も話してきたから、ほとんどいいと思います。
抑肝散と釣藤散と七物降下湯というのは、血圧関係の薬の3つの柱だと
いう事は、いつも言っていますね。
釣藤鈎が入っている薬の中で、太陰の薬が釣藤散、
厥陰の薬画が抑肝散で、少陰の薬は七物降下湯です。
その診断がきちんとつけば良い訳です。
釣藤散は頭痛の薬としても使います。
この間、釣藤散は東洋医学のシンポジウムのとき、
耳鳴りに効く人もいるという発表がされていました。
なるほど考えてみたら耳鳴りには、肝や腎しか絡まないと思っていたのですが、
気の上昇でも確かに耳鳴りがしてもおかしくないので、
うつ傾向にある人の耳鳴りに効いてもいてもいいのかなと思います。
抑肝散は肝の緊張による 血圧の上昇に使います。
釣藤散は本来基本にはやはり、うつがあります。
うつの人が一生懸命頑張ろうとするから朝の立ち上がりが悪くなりますし、
朝方頭痛がします。
七物降下湯は時間に関係ないですね。
一日中どこでも血圧が上がったり下がったり、不定になります。
これは意外とお顔を見たら、かなりはっきりしますよね。
七物降下湯は何度も話してきましたように、
腎陰の不足のために心火が上がるので、顔が真っ赤になってきます。
眉を越して額までだいたい真っ赤になります。
六味丸もそうですね。
抑肝散は当然緊張感があります。
場合によっては何かあったら青筋が立ってきます。
本当に青い色を感じることがあります。
釣藤散の人は、太陰の人ですから基本的には静かです。
非常にうつ的で、話を聞けば不眠などもありますし、
うつの特徴というのがあります。
だから、釣藤散は太陰を補う薬が主です。
人参を使って脾を補し、あとは脾の気を発散させます。
陳皮,半夏が入っているのはこういう人でも社会生活を送らざるを得ないから、
ストレスでやられやすくなっていますので、それを補すために入れてあります。
釣藤散、抑肝散、七物降下湯のいずれのお薬も、
後で出てくる天麻を加えても構わないです。
釣藤鈎は体を介して中枢にフィードバックする薬ですが、
天麻は直接脳にも作用する薬です。
実は、釣藤散に関しては、本によっては
腎も虚しているだろうと書いてある本があるのですが、私は違うと思います。
腎に対応するお薬はほとんど入っていません。
ただ、こういう人が一生懸命頑張っているために、
ときどきその頑張るゆえの気の上昇というか、
桂皮などで抑えるような気の上昇ではなくて、
から元気的な気の上昇が出てくるのです。
どうも臓腑弁証をしないで、現象面だけで診る人が、
その気の上昇を苓桂朮甘湯とか、六味丸などの気の上昇と
間違って言っているのではないかなと、そういうふうに思います。
釣藤散は基本には腎虚はほとんどありません。
血圧を何としてでも下げようと思ったら、
いつも言うように釣藤散はエキス剤だけではだめです。
釣藤鈎や天麻の末を加えないと下がりません。
釣藤鈎というのは、煮出してしまうとほとんど降圧する成分はなくなってしまい、
鎮静作用しか残っていません。
でも、朝方の頭痛には非常によく効きます。
午前中にする頭痛というのはうつの頭痛だから、これには非常によく効きますので、
それを目標に使うと結構いいと思います。ただ、釣藤鈎もなかなか飲みにくい薬で、
人によっては全然飲めないという方もいます。
場合によっては釣藤鈎と甘草を振り出しで合わせて飲ませると、
釣藤散の効き目というのが非常によくなることが多いのです。
それから頭痛だけではなくて、
うつ症状そのものもよくする場合はもちろんあります。
釣藤散を飲ませることで、ちょうど帰脾湯を飲ませたときと同じように、
うつそのものがよくなる例は結構あります。
だからむしろ、エキス剤での釣藤散はそういう薬だと、
うつに伴う朝の頭痛や、気持ちの重さ、午前中の体の動きが悪い、
そういうものを改善する薬と考えた方がいいかもしれません。
テキストに書いてあるように、処方としては
二陳湯に釣藤鈎と人参を加えたということです。
もっと太陰を補いたいのなら、当然人参や、
場合によっては黄耆を加えてあげるとさらにうまく補えますし、
うつに対する作用もさらに強まってきます。
ということで、結構これも使っていくと使いではありますが、
あくまで西洋薬を使わないで、これだけで血圧までコントロールしようとするなら、
先程言ったように釣藤鈎や天麻の末を加えてお使いになった方がいいと思います。
第20回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda20.htm
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/41404575.html
https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/042-1.html
[参考]:釣藤散