時 人を待たず、光陰 惜しむべし
古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
唯 光陰のみ、之を惜しむ
今まで述べた黄連、黄芩、山梔子に黄柏が加わっている。
黄連、黄芩が加わっているから、本来、瀉心湯なんですね。
瀉心湯なんですが、なぜ瀉心湯と書かれないかというと、
入っている薬味がすべて冷やす薬。
この場合の冷やすというのは熱を瀉すること。
解熱剤という意味ではないです。
西洋医学の解熱剤を東洋医学的に考えると感覚的に説明が難しい。
例えば、葛根湯・麻黄湯は解熱剤と言えるのか、
確かに飲めば汗をかいて熱が下がるけど、
西洋医学のNsaidsとは全然違う。
何が違うかというと、Nsaidsで熱を下げると体は冷えます。
葛根湯で熱を下げると体は温まります。
寒邪が入ってきてるからそれを温めることで、
結果として熱を下げるのだけど、Nsaidsと同じ解熱剤と言えるのか。
※NSAIDs:ステロイド構造以外の抗炎症,解熱,鎮痛作用を有す薬物の総称
黄連解毒湯の薬味は、全部、熱のものを下げる(瀉す)、一番寒い薬です。
三物黄芩湯も寒い薬と言ったけど、それよりもっと寒い薬です。
黄連解毒湯を黄連解毒湯でない状態に飲ませると、
寒くて震えが止まらなくなる人がかなりいます。
二日酔いや悪酔いの予防のために、
黄連解毒湯と五苓散の組み合わせで使うことがありますが
五苓散で緩和されてるとはいえ万人には薦めません。
五苓散は問題ありませんが黄連解毒湯はあまりすすめない。
そういう意味で非常に強い薬です。
病邪のない瀉薬というのはどういうことかというと、
(陰陽大極図を示しながら)先ほどから病気の話をしていますが、
陰陽論で物事を考える時は、今陰にあるのか陽にあるのかということを考える。
人間の体の今病気をしている状態を診るときは、
陰陽図をみるときは半径で物事を考えていくんですが、
人間の総和をみていくときは直径でみていく。
だから、陽の症状が出ているとき(腑が病んでいるとき)、必ず陰も病んでいます。
どちらが表に出ているかだけです。
陽の症状が出ているとき、必ずそれに対抗する陰がある。
すごく大事なことは、陰陽図を直径をどこで切っても陰陽の割合は等しいように、
普通の状態では陰陽の総和は同じになる。
これが崩れているのが病気の状態です。
例えば、臓はまだそうでもないが、
腑の方があふれてくる場合、その直線上では腑の方が多くなる、
腑の方が多くなると前言ったように熱の症状がでてくる。
そうすればどうするかというと、
冷やす薬をこちらに (陰)に加えればバランスがとれるわけです。
風邪の場合、寒邪が入ったためにバランスがとれなくなって、
陽の部分で反応して一生懸命熱を出している。
そうすると、西洋医学では熱が悪いと考え熱を下げるから
寒邪を野放しにすることになって余計寒くなってくる。
問題は、熱が出てることではなく寒邪が入っていることだから、
外因で熱が出てるときは温剤を使ってこれ(陰)を温める。
その結果、陽は熱を出す必要がなくなって陰陽のバランスがとれる。
このように、いつもその人のどこが多くなって
どこが不足しているかを考えていくべきです。
本来は陰陽は平衡状態にあるわけですから。
年をとって陰陽図が小さくなっても、
陰陽のバランスがとれていれば人間は年相応の健康で生きていられます。
黄連解毒湯は仮借のないさまざまな熱を下げる薬ばかりです。
だから実際はこの薬を単独で使うことは少ない。
なぜなら、今の陰陽図を考えたら分かるように、
これだけの冷やす薬ばかりを使わなければいけない状況が、外因ではまずないだろう。
外から入って中まで焼かれるというのはそうないです。
中からの病気がうんと熱をきたして黄連解毒湯の状態になるためには、
当然そこに至るまでに臓が損なわれている。
その状態に黄連解毒湯だけを使ったらえらいことになる。
黄連解毒湯を単独で使う一番良くある状況は、夏に海水浴で日に焼かれて
顔がパンパンに真っ赤になる皮膚炎。
接触性皮膚炎と同じで臓はやられずに皮膚の表面だけ(腑だけ単独に)が
真っ赤に焼かれた。つまり、真っ赤になったとは腑に心の熱が現れたことになる。
皮膚は本来は肺の支配なんですが、真っ赤になるときは心の色がつく。
外からの急性病は通常は内臓まではやられない。
これが黄連解毒湯を一番使う状況です。
何か分からないけど突然かぶれて皮膚が真っ赤になったとか、
一日中暑い外にいて皮膚が真っ赤になった時に黄連解毒湯は非常に良く効きます。
飲みだした途端に良くなる。
それ以外の黄連解毒湯の状態が出てくるときは、臓も大抵少しやられているので、
黄連解毒湯単独ではなかなか使えません。
一番心の熱を上げやすいのは、以前話したように腎水の不足が一番上げやすい。
だから四物湯を加えて温清飲として使うことがかなりあります。
心陰が不足して心陽が上がると中医学の本には書いてありますが
理屈だけで実際はあまりないですね。
心陽だけが上がることはあります。
これは熱中症のときにどんどん照らされて熱が上がっちゃうと
心火だけがどんどんがることはあります。
そういうときに黄連解毒湯を使えないこともないけど、
現実には熱中症は心火だけでなく体液不足もあるので別の効く薬を使います。
今のような病気・赤い色を出すような病気・赤い色がでてくるような病気
(炎症ですね)には、中からの炎症でも外からの炎症でも
黄連解毒湯を含む製剤は良く効きます。
心の色が濁ったときの赤(老人に顔にみられる赤、アトピー皮膚炎で
皮膚がドロドロになったときの赤)の炎症の時に使うのが黄連解毒湯です。
黄連解毒湯は単味で使うときは少ないですが、すごい大事な薬です。
いろいろな臓器の炎症(ほとんどの炎症は赤だから)に使えうる薬です。
逆に言えば、それだけ強い消炎剤だから使い方も難しいといえます。
そこを意識して使えば黄連解毒湯は非常に大事な薬ですし、
これから話すいろいろな薬に入ってきます。
(ここで出席者より質問がありそれに答えるかたちで)
例えば、柴胡剤を、大柴胡湯は瀉薬である、小柴胡湯は中間、
柴胡桂枝乾姜湯は補薬であると分類しているがウソです。
徹底した瀉薬といえるのは黄連解毒湯しかありません。
徹底した補薬といったら保険収載の薬では四君子湯で、補す力以外は全然ありません。
あとは何らかの意味でわずかにどこかを瀉してどこかを補している。
普通の大人に外邪が入ってきたとき、徹底した補の状態や
徹底した瀉の状態になる人はそんなにはいない。
三黄瀉心湯は黄連、黄芩は瀉薬ですが大黄はわずかに補の作用があるので
98%の瀉薬でしょうか。100%の瀉薬は黄連解毒湯だけです。
だから、あらゆる薬を考えるとき、この薬はどこを瀉して
どこを補しているのかという認識でみて欲しい。
薬がどこを瀉してどこを補すかというのを外因病では六経で、
内因病では臓腑でみていった方がよい。
最後に、山梔子の副作用に注意して下さい。
(茵蔯蒿湯で話した)証が合ってても出ることがあります。
第3回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda03.htm
http://maruhogenkinotane.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/2432-efe9.html
[参考]:
黄連解毒湯
[参照]:
温清飲,
茵蔯蒿湯
次は通導散です。
だんだん薬味が多くなってくると、
あまり熱心に話す内容は少なくなってくるのですが、
日本で作られた漢方薬の中では非常にいい薬です。
テキストには古方の桃核承気湯に相当すると言われてきていますが、
目的とする状態は同様であると書いてあります。
桃核承気湯は、薬味は少ないですが、結構激しい薬なのです。
効くときは激しく効きます。
例えば通じをつけるといったら、わーっとつけますし、
消炎作用も非常に強くて、若くて本当に合っている人を除けば、
慢性的に長く使う薬ではないのです。
どちらかといったら瘀血の急性期、
あるいは若いお嬢さんの便秘で夜だけ少し飲んでいる人が何人かいます。
あるいは潰瘍性大腸炎の類の便秘型の人で、
桃核承気湯で一時的に治療を続けている人がいるぐらいなのです。
ある程度強い瘀血があって、便秘があって、かなり慢性化して、
治打撲一方では、ちょっと弱すぎるという状態に使えるものといったら、
この通導散が最たるものです。だから非常にこれは使いでのある薬です。
本来、紅花も入っていますから非常に強いのですが、
瘀血が強いという時は、当然これにサフランを加えればいいのです。
おそらく紅花を加えているのは、サフランが日本になかったからだと思います。
通導散の証の人はサフランを加える方がかえっていいかもしれません。
便秘をして、癖血があって、慢性化しているのは大抵おばちやんですよね。
男性の場合だったらやはりかなりの事故に遭って瘀血がある人ですね。
腹証は桃核承気湯とほとんど同じです。
前にも言ったと思うのですが、
本来は瘀血というのは圧痛や少腹急結を診るのですが、
慣れてくると手を置いただけで、
瘀血塊がこの付近(図)にあるのが解るようになります。
この状態の人というのは、大体は冷えのぼせです。
暑いような寒いようなという、冷え性なのだけれど変なところでのぼせる、
そういう状態を両方持っているのです。
そうすると、紅花の方は血の道を改善するのですが、
温める作用がほとんどで冷やす作用はありません。
サフランの方は、保険で使えるようになったので、
「ああ、紅花と一緒か」と、最初私も使っていましたが、
違うなということがだんだん解ってきたのです。
ほとんど一緒だと書いてある本が多いのですが、
使ってみると、最終的に血行を改善して温めるのが紅花で、
血行を改善して冷やすのがサフランなのです。
だから冷えのぼせがありますから、通導散には紅花が入っていますから、
それにサフランをちょっとでも加えてあげた方が非常に良いのです。
一応便秘は目標なのですが、一番中心は何と言っても当然瘀血ですね。
この瘀血についてですが、中医学だけしかしない人は、
どうやって瘀血を診断するのだろうなと思うのです。
皮膚の状態を見るとか、舌の裏側に細絡があるというのは、
確かに瘀血の有力な兆候ではあるのですが、
あれだけで瘀血とは、やはり言えないのですね。
手と足の皮膚がかさかさしているとか、
さめ肌ぐらいになればかなり瘀血ですね。
それから足に細絡があるとかもそうです。
でもそれだけで診断するのはかなり難しいのです。
それならば、むしろ問診で、女性だったら月経困難があるか、
あるいは手術歴があるか、事故歴があるかとか聞いた方が、
まだ瘀血を推測できます。
そうなると、瘀血を確実に診断できるのは腹証がやはり一番です。
いろいろやってみても本当に腹証に勝るものはないようですね。
手を置くだけで解ります。
今日も1人いたのです。SLEの患者さんで、
1年か2年治療して、ようやく日の当たるときにも
外に出られるようになるぐらいまで良くなった人なのですが、
何を飲んでいるかと言ったら、治療を始めて1年半か2年たっても、
今なお茯苓四逆湯の加減方を飲んでいるぐらい体力が無いのです。
要するにSLEに対する漢方消炎剤は一切まだ使わず、体を持ち上げる処方、
それだけで外に出られるようになったという人なのです。
でもやはりそういう病気ですから、何となく血の巡りが悪いように見えたり、
あるいは逆にちょっと日光を浴びると、血熱みたいなように見えるので、
周りの人に「あなたはサフランがいいわ、血の道の薬で良いのだそうだよ。
あなたにはどうしてサフランが出ていないのだろうね、
ちょっと聞いておいで」と言われたそうなのです。
でも瘀血はないのです。
瘀血はもうここ(臍 部)に手を置いただけで塊を感じるのです。
それは何と言うべきか、つきたてのおもちが中に入っているという感じです。
それを感じると古来言われている瘀血の圧痛点をきちんと取ります。
ちなみに妊娠したての婦人の場合は下腹部に手を置くと、赤ちやんの気がありますね。
だから妊娠反応が出る前に解ることが多いです。あれはどう表現したらいいでしょうか、
竹の皮にくるまったおむすびがこの奥に入っているような感じですね。
何となくそういう感じです。ただ、これは面白いもので、
母体に流れている気の流れと何か違うものがあるというのは解るのですよね。
手を置くと感じるのです。それで、もしかして妊娠していないかと言うと、
本人も自信なさそうに返事しますが、
しばらくするとやっぱりそうでしたということが多いのです。
それはまあ余談になってしまうけれどね。
瘀血をとらえて、そしてこれを最終的に確認しようと思ったら
いつも言うように血海反応を見れば良いのです。
臍傍の圧痛点にせよ、少腹急結にせよ、血海を圧すると消えます。
血海(膝の上の内側)のツボは、慣れると指が黙っていてもそこに行くようになります。
患者さんを触った瞬間に指がそこに行くようになります。
瘀血のある人は、それだけでも飛び上がるように痛がりますし、
そして同側の瘀血の圧痛が、見事に消えます。
押さなくても手を当てただけで、先程まであったおもちがすっと消えるのが解ります。
それくらいはっきりします。
通導散の人は、要するに事故に遭った、大手術をした、あるいは女性の更年期、
あるいはいわゆる血の道を疑わせる生理周期に伴う変動、そういうものがあって
便秘をしていて、それに伴う症状が慢性的にあり、冷えのぼせ両方があるのです。
だから非常に簡単です。
それでうまく合うと、これだけでその方が言っていたもろもろの症状が全部取れます。
先程言ったように通導散には、しばしばサフランを加えます。
通導散にサフランを加えても、本質的には使用目的は変わらないのです。
腹証でテキストに上腹部に圧痛があることがあるとあります。
これは物の本にもあるのですが、
おなか全体は痛みを訴えるところはあちらこちらにありますが、
上腹部の痛みは瘀血というよりも、むしろ承気湯的な痛みです。
気の巡りも悪くなっているので、ガスが停滞したりして
上腹部も痛がるということで、やはり中心は瘀血です。
これを間違いなくとらえてください。
第20回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda20.htm
https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/019-27.html
[参考]:
通導散
いきなり気が出てきましたけど、気には先天の気と後天の気があります。
先天の気に属するのは、代表は腎の気、それと腎の気に導かれて働く心の気です。
後天の気に属するのは、一番中心は脾の気で、それと
導かれるだけではないですが肺の気です。
先天の気は、そんなに激しい症状は一般的には出さないですね、
じんわりした、気と言いながら空気なんかはあまり動かさないで、
どちらかというと気力にかかわってくることの方が多い。
なぜかと言うと、腎の気は生命力そのものだからそんなに動揺しては困るんですね。
毒物を飲むなどよっぽどの事がないかぎり、腎の気が一気にやられることはない。
普通は、じわーと立ち上がり じわーと消えていくんです、
一生かかってね。それに伴って心の気も立ち上ってだんだん衰えていく。
だから、そんなに激しい症状は出さない。
ところが、脾の気は毎日の食べ物でも影響される。
肺の気は毎日の天候でも、温度差、湿度、
室内にたちこめる炭酸ガスの量にでも左右される。
もう一つ肝の気、これはストレスがらみ、人間関係などによって動かされている。
この中で、身体症状を一番急激に出すものは何かというと、
肝は腎よりは早いけどじっくりやっていく、
ストレスがずっと加わるといろんな症状を出していく。
脾はその場その場で変動します。
脾気や肺気が変動すると現実に空気の異常をきたす。
承気湯というのは本来それを意識した方剤です。
脾・肺の気の巡りが悪くなると、
いきなり脾や肺の臓がやられるわけにはいかないので、腑に下請けさせる。
腑に下請けさせると胃と大腸、胃と大腸がやられると
必然的にその中間の小腸も含めて、
これは脾や肺の腑ではないんですが、ガスの巡りが悪くなる。
外因病で入ってきたときは、まず胃と大腸が熱で焼かれる。
脾や肺が受けたくないから腑の胃や大腸で最初受ける。
熱性疾患の初期で、胃が全然動かなくなったり、
急に便秘になったりする状態がそうです。
内因病の時は、脾や肺の気が枯渇してくる、陰が衰えると必ず陽が熱を帯びてくる。
陰がうんと衰えると冷えの症状が出てくるが、
陰が最初ちょっと衰えて陰の症状をそのまま出さなければ、腑の方が熱をもってくる。
ようするに、外因病でも腑に熱がもたらせるし、
内因病で脾や肺が衰えていっても胃、大 腸に熱症状がでる。
この状態の一番初期の状態が、調胃承気湯や小承気湯の状態なんですね。
だから、単なる便秘の薬ではない。
大黄甘草湯は便秘のくすりですが、承気湯はあくまで気を巡らすくすりです。
ようするに、胃・小腸・大腸に熱をもつと
この辺の血の巡りが悪くなるだけでなく
具体的にガスがたまってきます。
このガスは術者の気が高まってくると手を置くだけでわかります。
上腹部に手を置くだけで、かすかにガスだけが動くのがわかります。
茯苓飲のときは水と空気が一緒に動く、振水音(水泡音)というのがわかります。
そして、当然熱症状があります。
熱症状があって、気の巡りの悪い状態があって、
原因として、何らかの感染症があるか、内因として脾か肺の衰えがあるか、
どちらかをとらえれば良い。
調胃承気湯と大承気湯、小承気湯でどの程度の差があるかというと、
小承気湯は一番症状が軽い、大承気湯は一番強い、
調胃承気湯はちょうど中間という感じです。
但し、意外と承気湯は使う機会あんまり多くない。
日本漢方では意外と承気湯は使わない。
なぜかというと、途中食い違いがでてきたみたいでね、
承気湯を本来使うようなときに柴胡剤をよく使っている。
それでうまくいっているかというと、内因病のときはなんとかうまくいっているが、
外因病のときは結構失敗しているみたいですね。
承気湯を使うべきときに承気湯で下すのがおっかないみたい。
それで柴胡剤で誤魔化しちゃうと、そうすると、
結局少しこじれて長引きながら長い時間かかって治る場合もある。
承気湯は、例えば外因病の場合、お腹の中で熱をもつような悪いものがあるわけだから、
それを下してしまおうとするのが承気湯のポリシーなんです。
あるいは、内因病の結果、お腹に熱をもっているから、
当然お腹の中にあるもの出して熱を下げてしまおうとどっちも同じなんです。
ようするに、お通じをつけるのではなく、気を巡らし下してしまうことで
熱を生み出している元を取り除こうとするのが承気湯なんです。
ただ、まだ僕も分からないことがあるんですが、
矢数道明先生の本に出て来るんですが、
彼がまだ医者になりたての頃、自分の子供が髄膜炎になってしまって、
西洋医学的に見放されて自然に治るのを待つしかない、
治るか治らないか分からないという言い方をされた。
それで、矢数先生は本当に他に治療法がないのなら、
これに医者としての自分を賭けてみようと承気湯を使った。
そして見事に良くなっていった。
それで、彼は西洋医学から漢方に転換した。
僕も実はあるんですね。
最初の日に見せたスライドのSSPEの子を診た時、
痙攣はすぐおさまったんだけど、診だして1ヵ月目ぐらいで
ものすごい高熱を出して39°以上の熱が下がらなくなった。
そこで、ずっとかかっていた札幌のとある総合病院に入院した。
その子の主治医は、漢方を絶対認めない先生だったので、
そこの先生の薬を止めて漢方を飲んでるなんて、その子の親は全然言っていない。
僕のところで治療しているのは内緒にしていたんです。
※SSPE:亜急性硬化性全脳炎
しかし、入院後、点滴・解熱剤を使って1週間経っても、全然熱が下がらない。
そこで、僕は親戚のおじさんということにして病院へ行き診察した。
承気湯の腹証で舌苔がきたない茶褐の苔。
完全な黒なら本来は黄連解毒湯の色になるけど。
これは矢数先生が書いていた承気湯の証だと思って承気湯を出したら、
もちろん鍼もしましたけど、その日から見事に熱が下がった。
それっきりその子は緩解した。 その後1年後になると
CT上で脳所見がべったりした均一から脳の構造がわかるようになり、
2年後に脳波が出てくるとなった。
ようするにその時を境にSSPEそのものはクリアーした。
ただ、未だに分からないのは、
脳炎は脳は本来は最初分類したように普通は心に属する。
髄膜炎というのは何なのか、承気湯が効いたことから
脾、肺、胃~大腸が絡んでいるようなんですが、まだ判らない。
承気湯の証だったから承気湯を使ったら治っちゃったという
完全な随証治療だったということです。
第3回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda03.htm
https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/019-26.html
[参考]:
調胃承気湯