
これも結構使ってはいるんです。
非常にさっぱりした薬ですが、今までの薬と違って、
副作用がないから使いやすいのです。
何に使うかと言うとヒステリ一に使います。
漢方は全部食べ物です。
この処方の薬味は特に今でも食べられる食べ物です。
甘草の輸入制限が問題になった事がありますが、
それに一番反対したのがお菓子メーカーです。
輸入制限は起きないでしょう。
甘草が一番使われているのはお菓子の甘味のべ一スです。
浮小麦と言うのは普通の小麦とは違います。
もちろん麦芽とも違います。 幼弱な麦です。
まだ完全に熟さない段階で刈り取った麦の実を、
脱穀して水に浮かべて、浮くものを浮小麦と言います。
熟してしまったら単なる小麦です。
水に浮くと言いますが、基本的には食べ物です。
大棗はなつめで食べ物です。
甘草の作用は非常に難しいんです。直接には心とか脾とかに作用します。
甘草は12経に作用します。
薬味の帰経から単純にはいえないんですが、やっぱり甘い食べ物で、
ずっと甘味でつられて入っていくのです。
これが大きいんですね。甘は肝に通じます。
本来は甘味と言うのは脾ですが…。
でもヒステリーを起こしている状態は、
実は肝気が上がって脾が抑えられている状態です。
普通は肝気をなだめる薬を使うんですが、
抑えられている脾の方の甘味を上げることで、
意外と肝気が抑えられるんですね。
疳の虫と言うのはこの事なんですね。
甘いものをあげると案外、子供がヒステリーを起こしているのが納まります。
大人の場合も大体そうみたいです。
芍薬甘草湯は、肝の方を和らげて脾に働かせてあげる。
甘麦大棗湯は脾に働いて肝を満足させてあげる作用です。
意外と使っています。
急性のもので、過去に一番効いたと言うのは、やっぱり子供です。
昔、子供一人で留守番をしていた家が火事になりまして、
多分その子が火遊びをしたんじゃないかと思いますが、
二歳ぐらいの子供だったと思います。
親が農家で、火事だと思って家に帰ったら、もう火に包まれていて、
手立てがないと思っていたら、その子が火の中から這い出してきたのですね。
新築したばかりの家だったのですが、子供が助かった時にはもう、
親は「もう何も要らないと思った」と言っていました。
農家ですので納屋にしていた古い家に移って、ニコニコして生活していましたね。
その後1週か2週して、母親がその子を連れてきました。
あれ以来、夜になると泣き叫ぶと言うんです。夜驚症ですね。
やはり暗くなってくると火が見えるんですね。
そういう時にトランキライザーを使うとおかしくなるみたいです。
2週問くらい甘麦大棗湯を飲んだだけで全く良くなりました。
大人の場合は、過呼吸症候群の時に非常に良く使います。
過呼吸症候群に関しては、暗示的なものではないかという問題もあり、
難しい面もあります。一回治まれば安心してしまうんですね。
これさえ持っていれば大丈夫と言うように、半分ぐらい暗示で効くのです。
トランキライザーなんかよりはるかに効きます。
トランキライザーはどんなに早くても、30分ぐらいしないと効き始めないようです。
こういう薬は味で既に効き出します。だから飲んで5分ぐらいして効いてきます。
一回効いてしまうと本当にしめたものです。あとは、これを持っていなさい、
おかしくなりかかったら飲みなさいとか言えば、
もうそれだけで安心して生活できる人がいます。
結構これは良い薬です。何よりも副作用がないんです。
トランキライザーみたいな、変な副作用を出さないんです。
非常に味の良い薬です。なめてみると解ります。非常に飲みやすい薬です。
飲みにくい薬もいっぱいあるんですが、
飲んでみれば甘麦大棗湯は飲みやすい薬であることが解ります。
子供も飲んでくれます。ずっと飲み続けても何の害もありません。
そういう薬ですね。
※トランキライザー(tranquilizer): 精神安定剤
最初は、その時期その時期に感じたことをお話しします。
遅れた人はビデオをよく見ておいてください。
質 問1
「 手術前の患者さんの緊張感を取るのに、甘麦大棗湯はどうでしょうか? 」
回 答
ヒステリーと言うのは実体のないものに対する反応です。
手術前の緊張感なら、ストレスがあるので、効く可能性のあるのは四逆散ですね。
質 問2
「 抑肝散はどうでしょうか? 」
回 答
抑肝散は四逆散の変方です。抑肝散は神経過敏に使われますが、
小児の場合は「母児共に服せ」とあるように、実は母親の精神的影響を強く受けて、
子供が神経質になっているときに使います。
本当は母親にも飲ませたいなあ、と思うようなときが抑肝散証です。
子供が単独で、外的要因で、一時的にヒステリーを起こすのが甘麦大棗湯証です。
質 問3
「 熱性痙攣について? 」
回 答
外から熱邪が入って来て心に入るので、強いて言えば瀉心湯と思います。
でも瀉心湯とか黄連解毒湯を飲ませても、効き出す前に治まる方が早いですね。
それだったら坐薬のほうが早 いですね。
質 問4
「 熱性痙攣の予防法は? 」
回 答
予防としては、高熱がこもるのを防ぐような処置として、
風邪の初期から麻黄湯や大青竜湯等で、必要以上に熱がこもらないようにする事です。
完全に早い時期に熱を発散させると、
発熱しても簡単に熱性痙攣を起こさないんじゃないかと思いますが、
現実的には熱性痙攣のときは、すぐに親が坐薬を使ってしまうので、
実はあまり経験がないのです。そこのところは何とも言い切れませんね。
質 問5
「 半夏瀉心湯の長期投与について? 」
回 答
半夏瀉心湯は三黄瀉心湯 とちょっとまた違うんですね。
一方で瀉しながら、冷えすぎないように、補薬が含まれています。
多分長期投与は大丈夫だろうと思います。
質 問6
「 尺沢反応について? 」
回 答
例えば脾と肝が争っているとき、左天枢に圧痛があります。
同側の尺沢を圧すると痛がりますが、ずっと圧してから再び左天枢を圧すると、
圧痛が減少ないし消失します。そうすると左天枢圧痛は、単なる圧痛ではなく、
肝と脾が争っていることが診断できると言うことです。
右天枢圧痛は、肝と肺が争っていることを示します。
そうであることを確かめるために、右尺沢反応を使います。
どうも有り難うございました。


第2回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda02.htm
甘麦大棗湯

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