秘密保護法でなにがおこるか、現役自衛隊幹部が、私物パソコン・個人宛手紙、メール、預金通帳まで、提出、隊内の不正も秘密になる恐るべき実態が明らかになっています。
「赤旗」より
「秘密」を取り扱っていい隊員かを選別する身辺調査が「適格性確認」です。その内容は、同法実施に向けて、いっそう人権侵害を強める内容になっていると、現役の幹部自衛官が指摘しています。
(山本眞直)
「適格性確認」をめぐっては、調査対象本人が記入する「身上明細書」の存在を本紙が明らかにしました。さらに日本共産党の赤嶺政賢前衆院議員が、「明細書」につける「誓約書」を入手。その内容が、携帯電話の通話記
録などの提出を求めるものであることを国会で追及しました。
「誓約できない」
「絶対に応じられない」-。誓約書についてこう語るのは、陸上自衛隊東部方面混成団本部(神奈川県横須賀市)の訓練科教育幹部の島田雄一I等陸尉 (44)。
5年ごとに実施される自衛隊の秘密情報などの取り扱いについての「適格性確認調査」更新手続きの提出書類のひとつ、「誓約書」の文例の一節にくぎ付けになりました。
「情報保全部署から求めがある場合には、携帯電話通話記録等自己に関する個人情報を提出する」。2009年の更新のさいは、なかった文例です。
島田I尉は上司に 「この項目には誓約できない」と伝えました。この項目をつけたまま「誓約」すれば。
「携帯電話の通話記録だけではすまない。 『等』を根拠に、私物のパソコンからスマートフォン、さらには個人宛ての手紙やメール、預金通帳などありとあらゆる個人情報を返却の時期すら明らかにされないまま提出させられる」と直感しました。
しかし「誓約」を拒否するとどうなるのか。「司令部は秘密資料や保全文書の固まりの部署であり、ここでの作業は秘密取り扱い適性資格がなければ一日たりとも職務につけない。更新手続きが停止となれば事実上の職務の剥奪だ」 事実、誓約拒否を伝えた上司からは、その日のうちに「情報保全隊から、これでは受理できない。秘密取り扱い適格性調査ができないから保全業務資格更新手続きは停止だ」との通告を受けました。
不正も秘密に
上級部隊である陸自東部方面総監部は、島田I尉が2009年に行った防衛相あての内部告発をめぐって、12年までに3回の配転と停職6日の懲戒という処分をしてきました。
告発は、隊員の募集で功績のあった民間人の藍綬褒章受賞者推薦で同総監部などが実績を偽っている、として上申業務の不正を公益通報者保護制度に基づき告発したものです。
島田I尉は12年10月に東京地裁に処分の取り消しと、上級部隊による嫌がらせ的な業務の強要などを「違法な公権力の行使」だとして係争中です。
誓約書は、秘密取扱資格者の幹部・陸曹のほぼ全員が提出対象です。島田1尉は、強調します。「防衛省・自衛隊内の不正行為を知ることができる立場の幹部の告発を、秘密保護の名目で合法的に封じるシステムだ」 陸自は、「誓約書」に
ついて本紙の取材に 「秘密取扱者適格性確認制度の具体的運用を明らかにすると、防衛省、陸自の情報保全に支障が生じるおそれがあり、回答を差し控える」(陸幕広報室)としています。