なんて恩知らずな弟なことか。もう1年ほども見舞っていない。
長崎で闘病生活を続ける8つ違いの姉。
両親はもちろん、3人の兄、それにもう1人の姉をすべて亡くし、
今はもう唯一人の肉親となった姉。
幼い頃、それこそ母親代わりとなって僕を育ててくれた姉。
そんな恩ある姉なのに、1年ほども訪ねていないのだ。

佐賀県みやき町「山田水辺公園」
姉の一人娘、姪からのショートメール返信は4度続いた。
「大きな変化はありませんが、身体の動きが悪くて、
調子が悪い日が増えた気がします」
〝大きな変化はない〟ことに少しは安心するが、
それでも〝調子が悪い日が増えた〟ことが気になる。
何だか控えめに書かれているように思え、僕にあまり心配をかけまいとする
姪の気遣いを感じさせる。そう思うと、やはり落ち着かない。
実は、姪自身も母親と自由に会えないのだという。
パーキンソン病の姉は、月に2回ほど治療のため病院に入院するが、
大半は介護施設で暮らしている。
「その介護施設が面会謝絶になっており、(私も)会えない状態です。
病院で受診する時は2泊3日の帰宅が許されていますので、
母と一緒に過ごせるのは帰宅する月2回、この時だけです」
言うまでもなく、コロナウイルスのせいである。
言い訳がましくなるが、僕がこれほど長く見舞っていないのは、それもある。
コロナ、コロナの世の中。義兄の七回忌もできずじまいだ。
「早いもので今年が父の七回忌になります。でも、コロナ禍でしょう。
母と相談し、叔父さんはじめ皆さん方に来ていただくのは
控えたほうがよいだろうと思い、教会でミサだけあげていただくことにしました」
姪は一時期、父と母が同時に入院したため、1人で両親の看病をしていた。
自身も職を持っており、それに加えて両親の看病なのだから大変だったに違いない。

佐賀県上峰町の田園
「いろいろ大変だと思いますが、身体に気を付けて頑張ってください」
そうねぎらい、最後に「姉をよろしく頼みます」と添えて返信した。
恩知らず……自身を罵りつつ、姪に頼む心を強めていく。