目覚め、スマホを手にするとLINEが着信になっていた。
誰が、何事だろう。
開いてみると、友人が一本の動画を送っていた。
「これを見よ」とだけで、何のコメントもつけていない。
その動画の人物には見覚えがある。
アラン・ドロンだ。
85歳の年老いた現在の顔が、どんどん若返っていく。
人はこれほど変わっていくのか。
いささか侘しくなるような、そんな動画である。
アラン・ドロンに続いて、
ブリジット・バルドーやエリザベス・テーラーといった
名だたる女優さんたちが次々に出てくる。
顔はかすかに覚えているが、全部は名前が出てこない。
いずれも、随分な変わりようだ。
友はこの動画を朝の6時35分に、
どんな思いで送ってきたのだろう。
私より年下ではあるが、それほど大きな年の差ではない。
この動画に互いの姿を重ね、ほろ苦い思いをしているのであろう。
そして、「あなたは、どう」と冷やかしているのかもしれない。
スマホを握る手を見て、爪が伸びているのに気付いた。
何ともだらしないことである。
コロナによる緊急事態宣言下、出社は自粛中とあって、
人に会うこともない。友人たちと歓談することも控えている。
すると、つい身だしなみが疎かになってしまう。
コロナのせいばかりではない。
加えれば、年のせいもある。
年を取ると、身だしなみに無頓着になってしまう。
「なぜ、そんな服装をするの」しばしば妻からたしなめられる。
見かけの哀れさ、心持の哀れさ。
笑いながら、老いを吹き飛ばさなければならない。