Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

名湯巡り

2022年02月26日 11時27分46秒 | エッセイ


名湯を巡っている。嬉野、黒川、長湯、別府といった
九州内の温泉から始め、
四国に渡って道後の湯に肩まで浸かった。
まだまだ先は長い、最後は北海道の登別あたりになるか。
だが一カ月もあれば、主な温泉はクリア出来るだろう。
そりゃ無理だと思われるだろうが、そんなことはない。
浴槽に温泉の入浴剤を入れるだけなのだから。

       

毎日、「今日はここ、明日はあそこ」などと考えるだけで、
袋の中の薬剤を浴槽に入れれば、それで済む。
すると浴槽の湯は、それぞれの温泉によって、
青色になったり、オレンジ色になったり、ピンクになったりと。
肩まで浸かって、目を閉じれば2、3割ほどは
その温泉に入っている気になれる。
2、3割というのが少々不満だが、
当然のことながら、それ以上は望みようがない。

     

目を開けて、ギョッとなった。
前の壁に人の顔が浮き出ているのだ。
両目は異様に大きい。口はムンクの名画「叫び」の、
あの人物のようにすぼめている。
叫んではいなそうだが、何か話しかけようとしているのか。
少々気味が悪くなった。
目をそらすと、壁のあちこちに人の顔らしい模様がある。

人は3つの点が逆三角形に配置されている画像を見ると、
「人間の顔」と錯覚するそうだ。
進化の過程で、周りの動物が敵なのか味方なのかを
判別する必要があったため、本能的に脳が人間の顔かどうか
識別しようとすることから起きる錯覚──これを
シミュラクラ現象という。付け焼刃の勉強の成果だ。
心霊写真と呼ばれる現象の多くが、これで説明できるとされている。
  
                

浴室の壁の人の顔が、何だか心霊写真を連想させて気味が悪い。
今日の那須塩原温泉、早々に失礼します。



メンズコスメ

2022年02月23日 11時49分12秒 | エッセイ


母さん 僕が小さい頃、いや今でもこう言い続けていますよね。
「眉が下がっていると男前が下がるよ。
指先を湿らせ、眉をきゅっと上げなさい」
それが母さん 最近の若い男性は母親からそう言われなくとも
自分で眉をハサミで整え、カミソリで俳優さんみたいに
きれいに仕上げているのだそうです。
母さん、それで驚いてはいけませんよ。
中には、眉を書く人もいるとか。
なんとまあ、ですね。

        

ああ、若い男性だけではありませんでした。
40歳代の人にも多くなっているそうです。
先日、テレビを見ていたら、何と男性専門の眉毛サロンもあるんですね。
確か、それだけで2000円でしたっけ。
1000円で散髪できるのにですね。


どうやら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で
オンライン会議や商談が増えたことも一因らしいんです。
要するに見栄えを気にする人が増えたということですよ。
確かに、母さんがいつも言うように
「眉をきゅっと上げていれば少しは男前に見えます」からね。
美容師さんに言わせると、
「目元を強調すると顔全体にメリハリが生まれ、シャープに見える」
そういうことなんですよ。
見栄えだけで、うまく商談がいけばいいのですがね……。
余計なお世話でしたか。

        

ついでに言いますと、最近の男性諸君は眉だけではありません。
肌を美しく見せるための男性向け化粧品、
これを「メンズコスメ」とか言うのだそうですが、
これの市場規模が年々拡大しているんです。
ある調査によると、メイクをする男性の1カ月当たりの
購入費用は平均4759円だと言います。
特に20、30歳代は約5600円で、
女性全体の約2倍というからビックリです。

      

「それで、あなたも眉をそうしたいと言うのですか」
なんてとんでもありませんよ、母さん。
80歳にもなろうとしているんですよ。
ひどく見苦しくなければ、それで結構。
何と言いましても、僕が眉をそうしたら
母さんは「私はもう用無しなんだね」と言って、
会いに来てくれなくなるじゃありませんか。
今まで通り、毎朝髭をそる時、鏡の中から出てきてくださいよ。
指先を湿らせ、眉をきゅっと横に引きますから。



ありがとう

2022年02月19日 06時00分00秒 | エッセイ

ありがとう  H先生。2015年に前立腺がんになって以来、
        その後の数度の膀胱がんすべての治療をしてくださった
        H先生と3月末でお別れする。頸椎を痛められ、
        長時間の手術が難しくなったそうで、
        負担の軽い他の病院に移られることになったのだ。
        患者と医師の間の信頼感なくて医療は成り立たない、
        ということを分からせてくださった先生だった。
        ありがとう先生。お体、お大事に。

          

ありがとう  Aさん、Fさん、Yさん、Kさん。
        月2回お会いするエッセイ勉強会の仲間たち。
        僕の体調をいつも気遣ってくれ、励ましてくれる。
        お会いできない時は、LINEでお話しており、
        どんなに元気にさせてもらっていることか。
        間もなく80歳になる僕にとり、大切な、大切な友人。
        ありがとうAさん、Fさん、Yさん、Kさん。
        今後もよろしく。


ありがとう   高木美帆さん。北京オリンピックで金メダル獲得。
        おめでとう。これでオリンピックでのメダルは
        金2個をはじめ合計7個、夏冬を通じた日本女子の
        最多記録を自ら塗り替えました。
        今大会では5種目に出場するという、
        まさに超人的な挑戦でした。それを見事やり遂げ、
        テレビの前で大感動に浸りました。
        そのほか小林陵侑君、平野歩夢君、金メダルおめでとう。
        日本選手団の皆さん、感動をありがとう。

         

ありがとう    母さん。産んでくれてありがとう。
        もうすぐ80歳、すっかり爺さんになりました。
        最近、時々あなたのことを思い出しています。
        相変わらず美人でしょうね。
        お会いするのは、しばらくお待ちください。
        ありがとう。おかげで、幸せな人生です。 


ありがとう  僕の奥さん。結婚して以来、今がいちばん
       あなたのことがいとおしく思います。
          何だかんだと小言をもらう毎日ですが、
          それでもいいんです。
          多少の言い合いが会話になっていきますからね。
          僕らは、あれやこれやと本当によく話をする
          夫婦だと思います。
          だから、あなたが留守の時は寂しいですね。
          これからも支え合っていきましょう。
          ありがとう。今日はどんな話をしようか。

       

ありがとう      おまけに救急車の皆さん。
         トランクが開いたままになっているのに
         気付かず走っている車に、そっと寄って行って
         「トランクが開いていますよ」と注意してくれました。
         運転手に成り代わりお礼を言います。
         サイレンを鳴らし、「右を通ります。あけて下さい」
         などとけたたましい日常ばかりではないのですね。
         ありがとう。人命救助の日々、ご苦労さまです。



何と不条理な

2022年02月11日 09時34分21秒 | 思い出の記





思わず「あっ」と出てしまった。
羽生結弦君が演技冒頭に予定していた4回転ジャンプが飛べず、
1回転になってしまったのだ。
言うまでもない、北京オリンピックのフィギュアスケート男子
ショートプログラムでの出来事だ。
他の選手がリンクの表面に作った溝に
踏み切る左足のブレードのエッジがはまってしまったのである。
何と不条理なことか。
だが、結弦君は立ち上がった。
オリンピック3連覇を果たすには、いささか厳しい8位スタートとなったものの、
フリーで4回転半にも挑戦し、4位にまで上がったのだ。
さすが、と言うほかない。

        

ジャンプ混合団体の高梨沙羅さん。
彼女はスーツの規定違反で失格となった。
それがルールとあれば仕方のないことだが、
顔を両手で覆い泣きじゃくる彼女を見れば、
何とも理不尽な判定のように思えてくる。
世には不条理、理不尽なことが何と多いことか。
それに打ちのめされ、進むべき道を見失う人もいる。
結弦君、沙羅さんは大丈夫、自力で自らの道を切り開くはずだ。


「ゆっくり話がしたいです」——彼は年賀状にそう書き添えていた。
この11文字にはどこか切なさがあった。
僕が半世紀超を送ってきたサラリーマン社会。
こここそ不条理なこと、理不尽なことに溢れた世界はない。
思いがそこに至るのである。
彼は年齢が私より2回りも若い、今は55歳となった後輩である。
年賀状には「気がつけば、私が最年長になってしまいました」とあった。
社員の訪問先、帰社時間等を記すホワイトボードを見ると、
彼の名は真ん中あたりにある。
上位に書かれた専務、常務、部長の名はすべて彼の後輩なわけだ。
仕事は間違いなく出来る。キャリアも30年ほどになる。
現場のトップに立ってもおかしくないと思えるのだが、
後輩たちの後塵を拝する地位にいる。
彼の心の中には、「何と不条理で、理不尽なことだ」
そんな思いが隠されているのではあるまいか。


だが、サラリーマン社会に「不条理」「理不尽」はつきものである。
ほとんどの人は不本意な思いを抱きつつ、
サラリーマン生活を送っているのが現実と言ってよい。
これほどのキャリアの彼に、
現場の第一線を離れて久しい老兵が言えることは、
「サラリーマンは辛いよな」しかない。
冷たい言いようだと思うが……。
道を開くも閉ざすも本人次第なのだ。



愛着

2022年02月07日 15時28分56秒 | エッセイ


生まれ育った長崎市から福岡市へ居を移して45年ほどになる。
福岡暮らしの方が、はるかに長くなっている。
でも、「どちらに愛着がある」と問われれば、長崎がはるかに勝る。
これほど長く離れていても、それはまったく関係ない。
建て替えられているものの生まれた家は、今も鮮明に覚えている。
幼い頃遊んだ街の隅々、小学校や中学校の
同級生たちとの楽しかった学校生活、
少し大人になりかけの高校、大学の青春時代、
それらが身に焼き付いている。
それらは振り払い、こさぎ落としようがない。

だから、高校野球にしても、都道府県対抗駅伝にしても
目は、声は長崎県の方に向く。
あるいは長崎県の所属チームであったり、
出身が長崎県の選手であれば、やはり同じことだ。

           
                 長崎市

Yahoo! JAPANを何気なく覗いていたら、
「長崎県の地域注目度ランキング」というものがあった。
『生活ガイド.com』サイト内の長崎県のページに
今年1月の1カ月間、どの市に、どれほどのアクセス数があったか、
その数によってランキング化したものらしい。
 
それを見て、ちょっとイラっとした。
何と第1位が、長崎市でなく佐世保市になっているのだ。
両市を比べると「街並みや雰囲気が良い」は、
佐世保市84%、長崎市83%だから差はないに等しい。
「安全」は佐世保市73%、長崎市75%で、
これとて大した差ではない。
「愛着」については、佐世保市73%に対し、長崎市68%である。
「地域交流」はどうか。これは佐世保市59%に対し、長崎市63%。
これらを見ると、ほとんど差がない。

問題は「店の充実」だ。
佐世保市が73%となっているのに、長崎市の数字がない。
それで、「店の充実」が佐世保市が上というのであれば、
少々異議を申し立てたい。
これが1、2位を分けたのなら、なおさらだ。

        
                  佐世保市

何と言っても長崎市は県都だ。
人口にしても長崎市は約40万人なのに対し、
佐世保市は約24万人だ。
佐世保市にも住んだことがあるが、中心商店街の規模も違う。
何をもって「店の充実」としているのか定かではないが、
だんだん腹が立ってきた。
同じ長崎県であっても、生まれ育ちが長崎市とあれば、
「佐世保なんか目ではない」と言いたくなるのだ。

腹立ちまぎれに1人ブツブツ言っていたら、妻がやって来た。
即座に口を閉ざした。
妻は佐世保市の生まれ育ちだ。
迂闊にこの話をしようものなら大論争になりかねない。
そうなれば、長崎市の大敗は確実だ。