「まさに あなたの季節です。ミモザさん。お美しい」
「おほめいただき、お恥ずかしい限りです」
「雲一つない、この青空の下、その黄が黄金色に輝いている」
「それで思い出しました。3月8日は国際女性デーでしたね」
「女性へ日頃の感謝の気持ちを込めて、花束を贈る日だとか」
「特にイタリアでは私たちミモザが贈られるんですよ」
「なるほど、ミモザは愛や幸福を呼ぶ花と言われていますからね」
「ところで、あなたは?」
「いえいえ、自分の名さえ思い出せない老木ですよ」
「何を仰います。シャキッとしたその立ち姿、なかなかですよ」
「ええっ、そう言われると照れますね」
「確か昨年はもう少し枝葉を茂らせていらっしゃった……」
「そうなんですよ」
「それがどうして?」
「実は、側を流れている川に遊びに来るシラサギたちの休み所だったんです。
カラスもそうでした。それはそれで結構なことなんですが、
ほれ、下を通る人に思いもかけず糞爆弾を投下してしまうんです」
「あれ、まあ」
「それで管理をして下さっているおじさんが通行人のことを慮って、
鳥たちがとまれないよう枝葉を払い、ご覧のようなありさまに成り果てました」
「お気の毒様と言うべきなんでしょうかね。
でも、それはそれで立派な佇まいでいらっしゃいますよ」
「お褒めいただき恐縮しますね。頭上でお天道様も笑っていらっしゃる」
「ところで、この空のずっと西の方では悲しい出来事が起きていますね」
「プーチンとかいう大統領、正気の沙汰とはとても思えないわ」
「領土欲なんでしょうかね。人間の欲というのは
一つ間違えばとんでもないことを引き起こしますね」
「どうであれ、お年寄り、子ども、それに女性、
これら弱い人たちがなぜ、これほど泣かなければならないのか」
「青年は命を落とす」
「こんなことは分かり切っているのに、なぜ戦争を仕掛けるでしょうか」
「愛や幸福を呼ぶ花・ミモザをプーチンへ贈りましょうか」