最近、やたらと「正義中毒」という言葉を目にし、耳にする。
脳科学者・中野信子さんの造語らしい。
その中野さんの著書2冊、「人は、なぜ他人を許せないのか?」と
「ペルソナ 脳に潜む闇」の書籍広告が、同じ新聞の同じ日に
もちろん別々の面に掲載されていた。
どちらも10万部を超すベストセラーなのだそうだが、
残念ながら読んだことはないし、
特に買ってみようとも思っていない。

ただ以前、経済誌で中野さんのインタビュー記事を読んだことがある。
それで「正義中毒」という言葉が、中野さんの造語だということを知った。
著書「人は、なぜ他人を許せないのか?」に関するインタビューの中で
中野さんはこんな話をしている。
「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、
わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに
快感を覚えるようにできている」
「他人に『正義の制裁』を加えると、脳の快感中枢が刺激され、
快楽物質であるドーパミンが放出される」
「この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、
罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになる」
「こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、
いわば『正義中毒』と呼ぼうと思う。この認知構造は、
依存症とほとんど同じだからだ」

この本の新聞広告にも、「考えの異なる人=悪だと考えてしまう」
「年齢とともに頑固になっていく」「SNS炎上に乗っかる人」
「人の不倫を叩きたくなる」などといった文句が並んでいる。
しかも、新型コロナウイルスの蔓延とも無関係ではないという。
この「正義中毒」は、危機的な状況になればなるほど
盛り上がりやすいそうだから、
現況を考えれば「確かにそうだ」と頷きたくもなる。
「中毒」というのは、自分をコントロール出来なくなる状態であり、
しかも人を罰することに快感を覚えようとするのだから、厄介この上ない。
年を取ると認知機能は当然のように低下するし、
カッと切れ易くなるともいう。
残された時間はそれほど多くはなかろう。
大きく腕を振りかざすことなく、何とか穏やかに暮らしたいものだ。