新型コロナウィルスの感染が全世界へと広がっている。
危機感は増すばかりだ。
トイレットペーパーなど紙類の買いだめは、どうやら落ち着きを取り戻しつつあるが
マスク不足は相変わらずで、ドラッグストアやスーパーでは開店前から長い列ができる。
さらに外出自粛要請が相次ぐと、今度は食料品等の買いだめが起きる。
人の心理は不安へ、不安へと追い立てられる。
そうした事態に、70歳以上の人は、おそらく1973(昭和48)年の
オイルショックを思い起こすだろう。
あれは、中東の産油国が値上げと生産削減を発表したのが引き金となった。
これが、エネルギー源として大量の原油を輸入している日本を直撃。
石油価格はもとより、すべての商品が値上がりし
「狂乱物価」という言葉さえ生まれた。
「物がなくなる」と思い込み、買いだめに走った消費者によって
各地でパニックが起きた。
象徴的だったのがトイレットペーパーで
スーパーには長蛇の列ができ、激しい奪い合いさえ起きた。
今度のコロナウィルスにより、マスクがない
トイレットペーパーがスーパーの店頭から消えたなどといった騒動は
「あの時もそうだったな」との思いにさせる。
ところが、同じ職場で机一つ隔てて座る40歳代半ばの彼は
「『平成の米騒動』を思い出しますね」と言う。
『平成の米騒動』と言われてもピンとこない。
急ぎ調べてみると、こういうことだった。
1993(平成5)年産の米の作柄が、記録的な冷夏や日照不足によって
「著しい不作」となった。
加えて在庫米も少なく、安定供給が難しい状況になった。
それで、米を求めての騒動が起きたというわけだ。
深夜に自宅近くのコンビニで運よくマスクが買えたことで、
この『米騒動』の記憶を呼び覚ましたという。
当時、大学生だった彼は
「緊急輸入された外国産米のまずかったこと」も覚えているそうだ。
年齢が30余歳も違うと、脳裏に焼き付いている思い出もまた
それぞれに違ってくる。当然なことであろう。
一つ言えるのは、命さえ危ぶまれる切迫感
それがどれほどのものか、その濃淡の違いがあるように思える。
この新型コロナウィルスは、今生きている人にとっては
「こんな出来事は初めて」に違いなく、将来
「あの時、コロナウィルス騒動といったものがあったな」と思い返すことだろう。
少々のことでは消えそうもない
そんなインパクトを与えているコロナウィルス禍である。