完全に職を退いてから、この九州一の繁華街・天神に
出かけることは月に1、2度になった。
数十年もここに親しんできたので、
やはり少しばかり寂しい気がする。
まあ、仕方ないか。
そして、この日が月一度かかりつけ医に出かける日だった。
特に体が不調というのではなく、
飲み続けている薬を処方してもらうためだ。
薬局で薬を出してもらい、
「さて、天神をぶらっとしてみるか」

ああ、今日もお変わりなくいらっしゃる。
天神地区でも、その中心となる交差点の一角。
日差しを避ける帽子をかぶり、
浴衣みたいなものを着けていらっしゃる。
「天神地蔵」さんだ。
1979年というから、もう随分の前のことになるが
暴走族の取り締まり中にバイクにはねられ殉職した
警察官を慰霊するため建立され、以来地域住民が服を着せたり、
掃除をしたりと大切にしているのだ。
そんなお地蔵さんを酔った男が何と足蹴りし、頭がとれてしまった。
4年半前のこと。
無残な姿のお地蔵さんに住民は悲しみ、
「元に戻して」との声が上がった。
すると、30人以上からの合計7万円の寄付が集まった。
そして、修復のうえ今日も大切にされているのだ。
天神のど真ん中とあって交通量も多い。
「事故のないよう見守ってください」そう念じ頭を下げる。