車を運転しながら謎解きに挑んでいる。
2台前を走るバンボディー・トラック、
その荷台に『春夏 二升五合』と書いてある。
これは一体どういう意味だろう。酒か何かの名前か。
いかにもありそうな気がする。
『春夏』のあとにも何か書いてあるのだが、
前の車に遮られて見えない。
だが、『春夏』とあれば『秋冬』だろう。そうに違いない。
緩やかなカーブになった際、邪魔をしていた前車がずれ、すべて見えた。
何と『秋冬』の次は『冬』一文字だけだった。
『春夏冬 二升五合』──まず、この『春夏冬』の三文字が謎を呼んだのだ。
なぜ秋がないのか、答えの出ないまま家に帰り着いた。
放っておけない。さっそく調べてみた。そして大笑いだ。こんなことだった。
まず『春夏冬』、これには『秋』がない。
つまり、『あきがない=商い』となる。
次に『二升五合』だが、『二升は升升=ますます』、
さらに『五合』は『半升=はんじょう』と読ませる。
すると『春夏冬 二升五合』とは、『商い ますます繁盛』と読めるのだ。
商売が上手くいきますように、と願った言葉遊びであり、
飲食店などでよく見かけるらしい。
そんなことも知らなかったのか、と笑うなかれ。
こうやって調べるのも勉強のうち、いくつになっても勉強、勉強なのだ。
まあ、結構な頭の体操であった。そう開き直っておこう。
その爺さん、81歳になってなお運転免許証を更新した。
これで、あと3年間運転できるわけだ。
運転できれば、想像を超える自然の絶景や営みなど、
さまざまな出来事に触れることができる。
先日も一泊二日の車中泊に行き、写真や絵では味わえない、
何物にも代えがたい自然のすごさを味わってきた。
ただ、限界が近づいている。
何といっても視力、特に夜間の運転が無理になってきた。
自分ではさほど意識してはいないものの判断力の衰えもあるはずだ。
そうとあって、更新はしたものの
返納するのも近いような気がしている。
免許を失くすと、あのような楽しみもなくなるだろうし、
いろいろと不便なことだろう。
でも、高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違え
事故を起こしたというニュースは、ひっきりなしだ。
いつ自分も……という思いが付きまとう。
「おーい、そこの婆ちゃん。ちゃんと横断歩道を渡らないと危ないよ」
「爺ちゃん、背中をぴっと伸ばして歩きなさいよ」
フロントガラス越しにそう叫ぶ。
よくよく見れば、自分の方がよほど年長のように思える。
とほほ、の謎解き爺さんである。