幸運の分布は不平等です。だからせめて挑戦する機会は平等であることが望ましいでしょう。
【ただいま読書中】『デッドボーイズ』リチャード・コールダー 著、 増田まもる 訳、 トレヴィル、1997年、2472円(税別)
『デッドガールズ』の続編です。
舞台は地球と火星。プリマヴェラは死に、イグナッツはプリマヴェラの子宮を持ち歩いています。未来にそこから、彼とプリマヴェラの娘が生まれてくるのです。
時空間が完全にねじ曲げられています。さらに叙述も、イグナッツの内省がそのまま環境に反映されているような状況になっていて、妄想世界を手探りで歩かされているような気分になってきます。
イングランドではクーデターが起き、「ドール(化した少女たち)」を狩り立てていた「人間戦線」は政権から退いています。しかし「デッドガールズ」に安息の日々は訪れません。彼女らを狩り立てる「デッドボーイズ」が登場したのです。その戦乱の日々の中、イグナッツとプリマヴェラの娘ヴァニティは未来からイグナッツに語りかけ続けるのです。
さらに「メタ」という存在が登場します。人類が自分の遺伝子を改変するように、メタは歴史や時空間を改変しようとします。いや、改変された歴史を元に戻そうとしているのかもしれません。話はどんどんややこしくなっていきます。
本書には残酷な描写が次々登場します。ハリウッド映画では、女性と子供の殺害シーンや拷問シーンは直接は描写しないお約束があるそうですが、本書ではそんなことはお構いなし。魔女狩りや異端審問や戦争などで人類がこれまでやって来た残虐行為が繰り返されます。つまり「人類の歴史」とは「残虐行為の歴史」でもあったんですね。読んでいて体のあちこちがずきずきします。
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