「自分に賛成する人が多い」ことを誇る人が時々いますが、その賛同者の質(彼らが優れた人たちかどうか)がまずは問題にはなりません? だってアホを大量に口先だけでたぶらかしているのなら、それは詐欺師と同類だもの。
【ただいま読書中】
『崖の国物語3 神聖都市の夜明け』ポール・スチュワート 著、 クリス・リデル 絵、唐沢則幸 訳、 ポプラ社、2002年、1600円(税別)
遭難した父の消息を求めて、若き船長トウィッグはエッジダンサー号を飛ばします。第1巻第2巻の感想で書き忘れましたかもしれませんが、この世界の飛空船は帆船で、船体中央の浮遊石で浮力を得、帆と前後左右に垂らした重りのバランスで操舵します。浮遊石は崖の国の突先に位置する「岩の園」で育ち、神聖都市の学者によって“収穫”されます。まことに不思議な(でも整合性は取れている)物理法則に支配された世界です。
トウィッグは大嵐の中心に突入しますが、そこは狂気の嵐(マインド・ストーム)でした。やっと見つけた父は重大な情報をトウィッグに伝えると姿を(文字通り)消し、嵐の中でトウィッグは記憶と船と乗組員を失ってしまいます。流れ星となって地上に落下したトウィッグは闇博士に救われ、自分の記憶と乗組員を取り戻して父に与えられた使命を果たすために、神聖都市から旅立ちます。
やっと見つけ出した乗組員(の一部)と、トウィッグは深森の奥深くの奴隷市場に潜入しますが、そこで大混乱。殺し屋に追われて奴隷市場を脱出したトウィッグたちは、深森をさ迷いつづけ、ついに「道」に出ます。第1巻でトウィッグが外れてしまった、ウッドトロルの道です。いや、深森に舞台が移ってからトウィッグの育った場所だよなあ、と思っていましたが、まさかそう来ましたか。
その道はトウィッグを導きます。深森の最奥部、暗黒の地の向こう側、すべての命が始まるところ、大河の源へ。大河が干上がり、大嵐が襲ってくるまで、もう時間がありません。神聖都市に急を知らせる必要があります。でも、どうやって?
本書では、解説でも述べられているとおり、「魔法」は登場しません。この世界の設定そのものが魔術的であるため、十分私はファンタジーとして満足してしまいますが、もしかしたらこの世界の原子とか分子自体に「魔法」がかけられていて、その結果として物理法則が我々の世界とは異なるものになっているのかもしれません。分析していたら原子のかわりに魔子が見つかったりして。
私がちょっと気になるのは、様々な異種族が登場するのに、結局皆価値観を同じくしていることです。スターウォーズでも様々な異星人が登場しましたが、結局彼らはすべて価値観の点では人類のバリエーションでしかありませんでした。それと同様にどんな異種族もトウィッグと「話が通じ」ます。(あるいは話が通じない場合でもそれはなぜかが読者には理解できます) せっかくの「異世界」なのだから、と思いますが、ソラリスの「海」のようなものがここに登場したらそれはかえってストーリーの邪魔になってしまいますね。ここで進行するのは「異なる価値観との交流」ではなくて「異なる世界での冒険」なのですから、「異種族はすべて(形態はともかく中身は)人類の亜種」としておくのは著者の思いきりというか割り切りというか権利でしょう。
一応「トウィッグの物語」は本書で終了です。しかし「崖の国物語」は図書館には9巻まで並んでいます。これは行くところまで行かなきゃ、ダメかな。
【ただいま読書中】
『崖の国物語3 神聖都市の夜明け』ポール・スチュワート 著、 クリス・リデル 絵、唐沢則幸 訳、 ポプラ社、2002年、1600円(税別)
遭難した父の消息を求めて、若き船長トウィッグはエッジダンサー号を飛ばします。第1巻第2巻の感想で書き忘れましたかもしれませんが、この世界の飛空船は帆船で、船体中央の浮遊石で浮力を得、帆と前後左右に垂らした重りのバランスで操舵します。浮遊石は崖の国の突先に位置する「岩の園」で育ち、神聖都市の学者によって“収穫”されます。まことに不思議な(でも整合性は取れている)物理法則に支配された世界です。
トウィッグは大嵐の中心に突入しますが、そこは狂気の嵐(マインド・ストーム)でした。やっと見つけた父は重大な情報をトウィッグに伝えると姿を(文字通り)消し、嵐の中でトウィッグは記憶と船と乗組員を失ってしまいます。流れ星となって地上に落下したトウィッグは闇博士に救われ、自分の記憶と乗組員を取り戻して父に与えられた使命を果たすために、神聖都市から旅立ちます。
やっと見つけ出した乗組員(の一部)と、トウィッグは深森の奥深くの奴隷市場に潜入しますが、そこで大混乱。殺し屋に追われて奴隷市場を脱出したトウィッグたちは、深森をさ迷いつづけ、ついに「道」に出ます。第1巻でトウィッグが外れてしまった、ウッドトロルの道です。いや、深森に舞台が移ってからトウィッグの育った場所だよなあ、と思っていましたが、まさかそう来ましたか。
その道はトウィッグを導きます。深森の最奥部、暗黒の地の向こう側、すべての命が始まるところ、大河の源へ。大河が干上がり、大嵐が襲ってくるまで、もう時間がありません。神聖都市に急を知らせる必要があります。でも、どうやって?
本書では、解説でも述べられているとおり、「魔法」は登場しません。この世界の設定そのものが魔術的であるため、十分私はファンタジーとして満足してしまいますが、もしかしたらこの世界の原子とか分子自体に「魔法」がかけられていて、その結果として物理法則が我々の世界とは異なるものになっているのかもしれません。分析していたら原子のかわりに魔子が見つかったりして。
私がちょっと気になるのは、様々な異種族が登場するのに、結局皆価値観を同じくしていることです。スターウォーズでも様々な異星人が登場しましたが、結局彼らはすべて価値観の点では人類のバリエーションでしかありませんでした。それと同様にどんな異種族もトウィッグと「話が通じ」ます。(あるいは話が通じない場合でもそれはなぜかが読者には理解できます) せっかくの「異世界」なのだから、と思いますが、ソラリスの「海」のようなものがここに登場したらそれはかえってストーリーの邪魔になってしまいますね。ここで進行するのは「異なる価値観との交流」ではなくて「異なる世界での冒険」なのですから、「異種族はすべて(形態はともかく中身は)人類の亜種」としておくのは著者の思いきりというか割り切りというか権利でしょう。
一応「トウィッグの物語」は本書で終了です。しかし「崖の国物語」は図書館には9巻まで並んでいます。これは行くところまで行かなきゃ、ダメかな。