全国学力テストの結果を公表するしないであちこちでもめていますが、今日本で教育熱心な親が本当に知りたいのは、「学校ごと」のデータではなくて「塾ごと」の方じゃないかしら? さらにできたらクラスごとや塾の教師ごと。公立学校にはそこまでの期待はしていないのではないか、と私には思えるんですけど
ね。
【ただいま読書中】
『Q&A』恩田陸 著、 幻冬舎、2004年、1700円(税別)
「それでは、これからあなたに幾つかの質問をします。ここで話したことが外に出ることはありません。質問の内容に対し、あなたが見たこと、感じたこと、知っていることについて、正直に最後まで誠意を持って答えることを誓っていただけますか。」で始まるインタビューがつぎつぎ積み重ねられます。はじめは何が何だかわかりませんが、やがて読者には「事件」が見えてきます。
休日でにぎわう郊外型の巨大なショッピングセンター「M」。非常ベルが鳴り、はじめは火事、ついでガス、という噂が店内を駆けめぐり、人びとはパニックになって避難しようとします。あちこちで人びとは折り重なって倒れ、最終的には死者69人負傷者116人の惨事となるのですが、実際に何が起きたのかはなかなか発表されません。いや、警察や消防が必死に調べても、彼らが死ぬべき理由が見つからないのです。
非常ベルの直前、4階では奇妙な万引き事件が起きていました。それは一瞬通り魔事件の様相となり、パニックになった人は階下を目指して一団となって逃げ出します。
同時刻、1階では異臭事件が起きていました。地下鉄サリン事件のように、紙袋に入れた容器を踏みつぶしてから男が逃げ、床の上には刺激臭のある液体が。「ガスだ!」の声にパニックになった人びとは出口あるいは階上に逃げます。
同時に店内の他の場所でも人は走り始め、上からの人の集団と下からの集団が途中でぶつかり、もみ合い、人の山ができ、崩れます。
「ガス」との情報で重装備で突入した消防隊が見たのは、明るく静かで血まみれのヌイグルミを引きずって歩く2歳くらいの幼女以外には誰一人動く者がいない店内でした。
公式の調査とともに非公式の調査も行われます。陰謀説をはじめとするさまざまな憶測が語られますが、結局原因は不明のままです。そして場面は転換し、さらに様々な「会話」が登場します。「事件」をめぐっての、まるでジグソーパズルの「ピース」を集めているような様相ですが、それは群盲が象をなでるのに似て、結局「真相」は明らかにはなりません。
ただ、人びとが「不安」や「恐怖」を抱きながら「個人の日常生活」を送っていることが語られ、それらの集合体としての「世間での日常生活」が成立していることが描写されます。不気味です。
著者の小説で以前読んだことがあるのは、SFマガジンに連載されていた『ロミオとロミオは永遠に』で、最初はすごく面白かったのが、連載が進むにつれてだんだん弱くなると言うか伝わってくるイメージが希薄になっていったことを覚えていますが、本作もそれに似た雰囲気を持っています。最初の頃のちゃんとオチがつかないエピソードの方が印象的です。この人は変に「真相」に迫らずに、その周囲をただただ漂っているのが向いているのかな?
【ただいま読書中】
『Q&A』恩田陸 著、 幻冬舎、2004年、1700円(税別)
「それでは、これからあなたに幾つかの質問をします。ここで話したことが外に出ることはありません。質問の内容に対し、あなたが見たこと、感じたこと、知っていることについて、正直に最後まで誠意を持って答えることを誓っていただけますか。」で始まるインタビューがつぎつぎ積み重ねられます。はじめは何が何だかわかりませんが、やがて読者には「事件」が見えてきます。
休日でにぎわう郊外型の巨大なショッピングセンター「M」。非常ベルが鳴り、はじめは火事、ついでガス、という噂が店内を駆けめぐり、人びとはパニックになって避難しようとします。あちこちで人びとは折り重なって倒れ、最終的には死者69人負傷者116人の惨事となるのですが、実際に何が起きたのかはなかなか発表されません。いや、警察や消防が必死に調べても、彼らが死ぬべき理由が見つからないのです。
非常ベルの直前、4階では奇妙な万引き事件が起きていました。それは一瞬通り魔事件の様相となり、パニックになった人は階下を目指して一団となって逃げ出します。
同時刻、1階では異臭事件が起きていました。地下鉄サリン事件のように、紙袋に入れた容器を踏みつぶしてから男が逃げ、床の上には刺激臭のある液体が。「ガスだ!」の声にパニックになった人びとは出口あるいは階上に逃げます。
同時に店内の他の場所でも人は走り始め、上からの人の集団と下からの集団が途中でぶつかり、もみ合い、人の山ができ、崩れます。
「ガス」との情報で重装備で突入した消防隊が見たのは、明るく静かで血まみれのヌイグルミを引きずって歩く2歳くらいの幼女以外には誰一人動く者がいない店内でした。
公式の調査とともに非公式の調査も行われます。陰謀説をはじめとするさまざまな憶測が語られますが、結局原因は不明のままです。そして場面は転換し、さらに様々な「会話」が登場します。「事件」をめぐっての、まるでジグソーパズルの「ピース」を集めているような様相ですが、それは群盲が象をなでるのに似て、結局「真相」は明らかにはなりません。
ただ、人びとが「不安」や「恐怖」を抱きながら「個人の日常生活」を送っていることが語られ、それらの集合体としての「世間での日常生活」が成立していることが描写されます。不気味です。
著者の小説で以前読んだことがあるのは、SFマガジンに連載されていた『ロミオとロミオは永遠に』で、最初はすごく面白かったのが、連載が進むにつれてだんだん弱くなると言うか伝わってくるイメージが希薄になっていったことを覚えていますが、本作もそれに似た雰囲気を持っています。最初の頃のちゃんとオチがつかないエピソードの方が印象的です。この人は変に「真相」に迫らずに、その周囲をただただ漂っているのが向いているのかな?