先月くらいからNTTコミュニケーションズからの勧誘電話が盛んにかかるようになってきました。他社(特にKDDI)やIP電話からNTTに変更する人が増えている、と言うのですが、それって、かつてのセールスマンが玄関で「ご近所の皆さんが買って下さっています」と言っていたのと似た口調にしか感じられません。
もしかして、せっぱ詰まって必死に売り込まなければならない理由でもあるのかしら?
【ただいま読書中】『女子中学生の小さな大発見』清邦彦 編著、 新潮文庫、2002年、400円(税別)
別に結論が出なくてもいいから「ちょっと試してみた」という“自由研究”。女子中学校に勤務する教師が、1年生のレポートを数年分まとめた本です。もう面白くて可笑しくて、「理科離れ」でお悩みの諸兄には強力にお勧めしたい本です。
たとえば……
・犬の顔に臭い靴下を当てるとどうなるか試したら、ものすごい顔をして逃げていった。
・イカの墨でお習字をしてみた。
・万歩計をつけて寝たら、朝までに12歩歩いていた。
・水温とアサリの活動を調べた。摂氏3度から動き始め、15度で活発に動き、20度で少し活動が鈍くなり、73度でパカッと音を立てて開いた。
・プールで息を吐くとどんどん沈んでいく。
・お風呂で息を吸うと体が浮き上がる。
・1年間、左手の指は関節をぽきぽき鳴らし、右手は鳴らさなかった。指の太さは変わらないが、左手の指の方が長くなった。
・一緒に寝るとイヌも寝言を言った。
・アユの解剖をしたら、美味しかった。
いやもう、なんでこんな発想ができるんだろう、とひたすら感心します。これはおそらく、中学生だけではなくて、理科教師の“手柄”ですね。本当に小さな「なぜだろう」とか「もしこうやってみたらどうなるのかな」といった疑問や思いつき、そしてそれに対する素朴な実践が、編著者の温かい視線の下ですくすくと育っています。たとえば紅茶の湯気を集めて色や匂いを観察するのは、やる前から結果はわかりますが、やらずにわかっている(わかったつもりになる)のと、実際にやってみるのとでは、行動のレベルが大きく違います。そして、腰を重たくせずにひょいひょいと確認に走ってみる態度が、「科学」の基礎の基礎と言えるでしょう。科学の“入り口”で敷居を高くするよりも、「とにかくお入り」とその気がある人は全部中に入れてしまってそこで育つかどうか見る、という態度で編著者は子どもたちに接しているように見えます。もちろん蒔いた“種”がすべて発芽するわけではないし、発芽したものがすべて素晴らしい収穫をもたらすわけではありません。しかし、種を蒔くための素晴らしい土壌をきちんと準備する手間を惜しまないことが、科学(の普及)にとってとても大切であることが本書から学べます。
編著者の「理科少年記」が各章の最初に載せられています。少年時代の清先生が、遊びの延長で自然に親しみ、電気とか動力といった科学の基本を感じていたことが、生き生きと書かれています。
明らかに間違った解釈やアヤシイ実験もありますし、科学的に素晴らしい原則を含んだ実験も多くあります。私が一番感動を覚えたのは「サインペンの黒色は何色からできているか」の実験です。コーヒーフィルターにサインペンで印を付けフィルターの先を水につけてインクをにじませるのですが、これはつまりはペーパークロマトグラフィーではありませんか。素晴らしい発想です。しかもその結果が、さまざまな色が混じっている(しかも、メーカーによって差がある)ことがわかるのですから、もう拍手喝采です。自分でもやってみたくなりました。
やっぱり「理科」って、面白いなあ。「良い教師」って、いるんだなあ。
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【ただいま読書中】『女子中学生の小さな大発見』清邦彦 編著、 新潮文庫、2002年、400円(税別)
別に結論が出なくてもいいから「ちょっと試してみた」という“自由研究”。女子中学校に勤務する教師が、1年生のレポートを数年分まとめた本です。もう面白くて可笑しくて、「理科離れ」でお悩みの諸兄には強力にお勧めしたい本です。
たとえば……
・犬の顔に臭い靴下を当てるとどうなるか試したら、ものすごい顔をして逃げていった。
・イカの墨でお習字をしてみた。
・万歩計をつけて寝たら、朝までに12歩歩いていた。
・水温とアサリの活動を調べた。摂氏3度から動き始め、15度で活発に動き、20度で少し活動が鈍くなり、73度でパカッと音を立てて開いた。
・プールで息を吐くとどんどん沈んでいく。
・お風呂で息を吸うと体が浮き上がる。
・1年間、左手の指は関節をぽきぽき鳴らし、右手は鳴らさなかった。指の太さは変わらないが、左手の指の方が長くなった。
・一緒に寝るとイヌも寝言を言った。
・アユの解剖をしたら、美味しかった。
いやもう、なんでこんな発想ができるんだろう、とひたすら感心します。これはおそらく、中学生だけではなくて、理科教師の“手柄”ですね。本当に小さな「なぜだろう」とか「もしこうやってみたらどうなるのかな」といった疑問や思いつき、そしてそれに対する素朴な実践が、編著者の温かい視線の下ですくすくと育っています。たとえば紅茶の湯気を集めて色や匂いを観察するのは、やる前から結果はわかりますが、やらずにわかっている(わかったつもりになる)のと、実際にやってみるのとでは、行動のレベルが大きく違います。そして、腰を重たくせずにひょいひょいと確認に走ってみる態度が、「科学」の基礎の基礎と言えるでしょう。科学の“入り口”で敷居を高くするよりも、「とにかくお入り」とその気がある人は全部中に入れてしまってそこで育つかどうか見る、という態度で編著者は子どもたちに接しているように見えます。もちろん蒔いた“種”がすべて発芽するわけではないし、発芽したものがすべて素晴らしい収穫をもたらすわけではありません。しかし、種を蒔くための素晴らしい土壌をきちんと準備する手間を惜しまないことが、科学(の普及)にとってとても大切であることが本書から学べます。
編著者の「理科少年記」が各章の最初に載せられています。少年時代の清先生が、遊びの延長で自然に親しみ、電気とか動力といった科学の基本を感じていたことが、生き生きと書かれています。
明らかに間違った解釈やアヤシイ実験もありますし、科学的に素晴らしい原則を含んだ実験も多くあります。私が一番感動を覚えたのは「サインペンの黒色は何色からできているか」の実験です。コーヒーフィルターにサインペンで印を付けフィルターの先を水につけてインクをにじませるのですが、これはつまりはペーパークロマトグラフィーではありませんか。素晴らしい発想です。しかもその結果が、さまざまな色が混じっている(しかも、メーカーによって差がある)ことがわかるのですから、もう拍手喝采です。自分でもやってみたくなりました。
やっぱり「理科」って、面白いなあ。「良い教師」って、いるんだなあ。
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