地球が温暖化しているのかどうか私に確信はありません(自然現象を越えて人為的に温暖化がもたらされているのではないか、という強い疑念は持っています)が、日中には体温以上にかーっと暑くて時に夕立と言うにはあまりに激しいスコールのような豪雨が降るようになったところを見ると、昭和の頃と比較して平成の日本が熱帯化していることは間違いないようです。となると、次にやって来るのは「熱帯病」の日本への定着ですね。戦前には日本(たとえば滋賀県)にマラリアが流行していたことを思うと、日本に熱帯病の“素地”はすでにあるわけで、この私の想像はそれほど的外れではなさそうです。
【ただいま読書中】『バニラのすべて ──起源・生態・栽培・生産・利用を網羅』エリック・オドゥー、ミッシェル・グリゾニ 著、 谷田貝光克 監訳、 フレグランスジャーナル社、2015年、5300円(税別)
「バニラ」は全世界で年間2000トンくらい生産される高価なスパイスです。私たちに一番馴染みがある用途は、アイスクリームでしょう。ところがDNA分析で「バニラ(芳香成分のバニリル基を含む植物)」がランの亜科であることがわかったのは、ほんの10年前のことだそうです。
本書ではタイトルの通り「バニラのすべて」について網羅的にまとめられています。
バニラは挿し木で増やされます。ウイルス病・菌類の病気・害虫についても書かれています。品質管理は大変です。起源はメキシコ。花の構造は複雑で、自然交配は困難です。中央アメリカではメリポウンという小さな蜂やハチドリが受粉を担当していましたが、旧世界では人工授粉が必要でした。その技術を発見したのはEdmondという12歳の奴隷でした(奴隷ですから姓はありません)。彼の発見そのものは重宝されましたが、彼が奴隷だったため彼自身の待遇はそれ以降もひどいものでした。
無事受粉して種ができても、次の問題は「どうやってバニラの莢を香りが出るように変質させるか」です。メキシコでは日照を調整しながら自然に熟させる方法が使われていましたが、Edmondがいたレユニオン島では熱湯を使う方法が開発され、島はバニラの一大生産地になりました。
生産地として、本家のメキシコ以外に、インドネシア・インド・東アフリカなどが紹介されていますが、意外だったのは中国が登場したことです。日本でも中国のバニラを使っているかもしれません。
本書を読んでもバニラが生産できるようになるわけではありませんが、自分が食べているものが大体どんなものかを知っておいても良かろうと思って本書を開いてみました。とりあえず、バニラの花って、けっこうキュートですよ。莢(特に乾燥したもの)は見て退屈ですが。
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