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「家づくり」の周辺で感じることを、建築士がなんとなくつぶやき解説しながら・・・自由に語るかも

補強金物のカラクリ

2007-05-25 22:02:08 | 家づくり

5-19:補強金物のカラクリ

近年の木造住宅において、構造軸組み(土台、柱、梁、スジカイ)を特殊な金物で文字通り補強する事が当たり前になっています。そいうすることで、地震の揺れから柱や梁、土台の抜けをなくする為に取り付けます。この金物によって、木造住宅は随分と強く、ネバリのある建物となりました。

基本は、柱と梁・スジカイの力の掛かり具合で、耐力の異なった金物を使い分けバランスを保ちます。

この補強金物、1棟の家(30数坪)に大体10数万円~20万弱位の金額が掛かります。家が強くなったから、対価としてはマズマズと言って良いでしょう。

と思っていたら・・・、そういう人達ばかりではありません。どうやって、金物代を少なくするか?と考えるのです。

スジカイの力の掛かり具合で金物の耐力を決定する事がカギでした。スジカイが集まる所は大きな金物が必要だったのです。???そこでスジカイをメクラメッポウに入れたのです。どう言うことかは前回の「スジカイの秘密」を参考にして下さい。

スジカイの力をバランスよく分散したかに見せかけて、力を伝えなくしたのです。特に、外周部に配置するよりも内部に入っているほうが、力が掛からなくなるカラクリがそこにはあります。

こうすることで、確実に金物代は安くなります。そして、建物は確実にネバリを欠きます。

さてさて、補強金物=丈夫という事も如何やら当てにはならないようです。

次回は、「通し柱の伝説」です。


スジカイの秘密

2007-05-25 06:37:23 | 家づくり

5-18:スジカイの秘密

耐震性能を語る上で、木造住宅にはスジカイを避けて通ることは出来ません。震災以後、スジカイの量が少なすぎるとか、バランスが悪いとか・・・一般向けの誌上では大体のところこういったゴシップが目に付くのです。

それでは、「スジカイの秘密」に迫ります。

先ず、スジカイの量は、建築基準法により地震力や風圧を考慮した計算式により定め、定められた量以上のものを施工することになっています。

次に、バランスよく配置する訳ですが、最近では剛心(強さのバランス軸)と重心(建物の面積的な中心)が出来るだけ近い事がバランス具合を探ったり、建物をタテヨコ4分割しそれぞれのスジカイ量を満足させる方法などがあります。

この2点で、表向きは何にも問題は無いのです。それでは秘密って何でしょう?

これまでの、量とバランスの計算は1階と2階がバラバラに考えられたことに問題があるのです。というか、別物として考えれることに問題があるのです。上下階のつながりの無いスジカイは一部の材に負担をかけたり、効果の薄い無駄なものであったりします。

たとえば、下階に柱が無いのにスジカイが上階にあり、梁に余計な荷重をかけるもの・・・頭つなぎ(梁と梁をつなぐ短い梁部材)の小さく短いものにスジカイを入れる・・・ようは、縦方向にスジカイを見ることが出来ていないのです。

計算上、同じ量でも耐震性能には大きな違いがある訳です。

今日の住宅現場では、お構いなしに施工されている事実を知らなくてはなりません。パソコンに頼る計算と未熟な現場施工者が多いためと思われます。そして、スジカイが入っているから大丈夫というものでもない事実を・・・

工事現場で、スジカイを見るだけで大工さんや会社の質が垣間見れます。

次回は、「補強金物のカラクリ」について話しましょう。