5-18:スジカイの秘密
耐震性能を語る上で、木造住宅にはスジカイを避けて通ることは出来ません。震災以後、スジカイの量が少なすぎるとか、バランスが悪いとか・・・一般向けの誌上では大体のところこういったゴシップが目に付くのです。
それでは、「スジカイの秘密」に迫ります。
先ず、スジカイの量は、建築基準法により地震力や風圧を考慮した計算式により定め、定められた量以上のものを施工することになっています。
次に、バランスよく配置する訳ですが、最近では剛心(強さのバランス軸)と重心(建物の面積的な中心)が出来るだけ近い事がバランス具合を探ったり、建物をタテヨコ4分割しそれぞれのスジカイ量を満足させる方法などがあります。
この2点で、表向きは何にも問題は無いのです。それでは秘密って何でしょう?
これまでの、量とバランスの計算は1階と2階がバラバラに考えられたことに問題があるのです。というか、別物として考えれることに問題があるのです。上下階のつながりの無いスジカイは一部の材に負担をかけたり、効果の薄い無駄なものであったりします。
たとえば、下階に柱が無いのにスジカイが上階にあり、梁に余計な荷重をかけるもの・・・頭つなぎ(梁と梁をつなぐ短い梁部材)の小さく短いものにスジカイを入れる・・・ようは、縦方向にスジカイを見ることが出来ていないのです。
計算上、同じ量でも耐震性能には大きな違いがある訳です。
今日の住宅現場では、お構いなしに施工されている事実を知らなくてはなりません。パソコンに頼る計算と未熟な現場施工者が多いためと思われます。そして、スジカイが入っているから大丈夫というものでもない事実を・・・
工事現場で、スジカイを見るだけで大工さんや会社の質が垣間見れます。
次回は、「補強金物のカラクリ」について話しましょう。