動産鑑定会社(福島県郡山市)の仙台支社に勤務していた男性(48)=仙台市青葉区=が東日本大震災後、がんになった高齢の父を介護するため休業を申請したところ、退社を促された末、解雇されたことが23日、分かった。不動産鑑定業界は震災後、住宅の高台移転などで業務量が急増しており、男性は「繁忙期に『労働者の権利』を主張する自分が疎まれた」と憤る。会社は「解雇には合理的な理由がある」と反論している。
【福島】介護施設足りぬ人手 原発事故負担増に拍車
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男性は2008年4月、不動産鑑定士の資格を得た後、東京で独立開業していた。震災をきっかけに、80代の両親が老老介護をしていた仙台市の実家に戻った。11年9月、同社の仙台支社に就職し、官公庁が発注する不動産鑑定評価書の作成などに携わっていた。
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宮城県内の不動産鑑定業界は当時、空前の復興特需に沸き、業務量は最大で震災前の約3倍に上っていた。行政が沿岸部の災害危険区域を買い取る際の鑑定評価や高台移転先の買収価格調査など、膨大な依頼を仙台支社に勤務する同僚4人とこなしてきたという。
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会社は就職当初から、男性に「残業代は出せない」と通告。男性は反発を覚えつつ、早出をして膨大な量の仕事をこなしてきた。就職から約1年後の12年8月、父=当時(83)=が肺がんで余命3カ月と告知されたことを受け、育児・介護休業法で定められた上限の93日間の休業を申請した。
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仙台支社長からは「あまりに身勝手だ。93日間、ずっと介護しているのか。それなら独立すればいい」と告げられ、両者の対立は決定的となった。
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男性は介護休業中に父が死亡したため、約1カ月後に復職した。会社はその後、退職勧奨を繰り返し、「事務所内で歯を磨いた」「私用電話をした」「誤字脱字が多い」などの理由を付け、13年8月、解雇を通知した。
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男性は同年9月、解雇の無効などを求め、仙台地裁に提
介護休暇取得後に解雇 震災で多忙「疎まれた」
過労死や働き過ぎなどが原因となる自殺を防ごうと、遺族や弁護士らが今春立ち上げた「過労死防止京都連絡会」の本格的な活動の第一歩がスタートする。過労死防止に関する国の大綱案について、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表=京都市伏見区=を招いた学習会を25日に中京区で開く。
国は、過労死や過労自殺をめぐって、民間団体への支援などが盛り込まれた過労死等防止対策推進法を昨年11月に施行し、具体策をまとめた大綱づくりを進めている。一方、一部の労働者を労働時間規制の対象から外す法改正案など、遺族から「過労死を増やす」と批判を受ける労働法制の見直しも進んでいる。
連絡会は今年4月、京都の遺族団体が、法制定を機により幅広い活動を展開しようと関係団体に呼び掛けて発足させた。
会長に就任した中嶌清美さん(64)=右京区=は25年前、病院の事務長だった夫の友利さん(当時41)を過労による心筋梗塞で亡くした。当時は労災申請で過労死が認められるケースは全国でも数十件程度。それでも「過労死社会を告発し、病院のために働いた夫のことを認めてほしい」との思いで申請に踏み切り、2年後に認定を受けた。
法制定を求める運動にも関わってきた中嶌さんは「連絡会では、市民と一緒に過労死ゼロに向けた取り組みを進めたい」と話す。事務局長を務める古川拓弁護士(38)も「遺族に寄り添うことを出発点とし、企業経営者も交えて問題を考えられれば」と意気込む。
学習会は午後6時半から京都市中京区のラボール京都で行い、国の大綱案策定の審議過程で、遺族の立場で意見を述べた
過労死防止へ連絡会が本格始動 京都の遺族や弁護士
国は、過労死や過労自殺をめぐって、民間団体への支援などが盛り込まれた過労死等防止対策推進法を昨年11月に施行し、具体策をまとめた大綱づくりを進めている。一方、一部の労働者を労働時間規制の対象から外す法改正案など、遺族から「過労死を増やす」と批判を受ける労働法制の見直しも進んでいる。
連絡会は今年4月、京都の遺族団体が、法制定を機により幅広い活動を展開しようと関係団体に呼び掛けて発足させた。
会長に就任した中嶌清美さん(64)=右京区=は25年前、病院の事務長だった夫の友利さん(当時41)を過労による心筋梗塞で亡くした。当時は労災申請で過労死が認められるケースは全国でも数十件程度。それでも「過労死社会を告発し、病院のために働いた夫のことを認めてほしい」との思いで申請に踏み切り、2年後に認定を受けた。
法制定を求める運動にも関わってきた中嶌さんは「連絡会では、市民と一緒に過労死ゼロに向けた取り組みを進めたい」と話す。事務局長を務める古川拓弁護士(38)も「遺族に寄り添うことを出発点とし、企業経営者も交えて問題を考えられれば」と意気込む。
学習会は午後6時半から京都市中京区のラボール京都で行い、国の大綱案策定の審議過程で、遺族の立場で意見を述べた
過労死防止へ連絡会が本格始動 京都の遺族や弁護士
試用期間が終わって、勤務態度が悪い・・・と言われてしまった
相談者は、IT関連会社勤務する30歳のOLのようこさん。
「ヘッドハンティングされて、8年間勤務した広告代理店を辞めて、IT関連会社に転職しました。年収は200万円増、ECサイトのブランディングが仕事です。
しかし、勤務開始から半年、突然、社長に呼び出され、人事担当の役員から「試用期間満了による雇用契約終了通知」という書面を渡され、一方的に解雇を言い渡されました。理由は、私の勤務態度が悪い、とのことですが、遅刻は1回もしていないし、人間関係も良好とはいえないまでも、努力してきました。実は、会社の業績悪化がうわさされていて、それが本当の原因ということもわかっています。確かに、試用用期間は半年、と説明されましたが、これって法律的にアリなんですか? 正社員採用されたいのですが、どうすればいいのでしょうか」
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会社側にも“解約権”がありますが、それを行使するには正当な理由が必要です
弁護士・柳原桑子先生に伺いました。
「試用期間満了後の本採用を拒否されたというのが、法的にはどういうことなのか、ということから説明しましょう。
試用期間といっても就労開始当初から通常の労働契約が成立しているのです。ただ、試用期間をもうけられたということは、試用期間中の労働者(ここではようこさん)の勤務状態等により、能力や適格性を判断され、労働契約を継続することが適当でないと判断される場合もあります。すると、本採用拒否という方法で会社側の“解約権”が行使されます。
この背景には、採用時だと、労働者(ようこさん)の能力や適格性の有無に関連することについて、十分な判断ができないということがあります。だから、採用後の就労状況をみて、その判断に基づく最終的な決定を留保するための試用期間が設けられているのです。
とはいえ、ようこさんへの本採用拒否という会社側の解約権の行使にあたっては、解雇にほかなりませんから、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として認められる場合のみ許されます。
ようこさんは、業績悪化が本採用拒否の理由のようだと述べられています。
つまり、業績悪化による整理解雇が実情なのだとすると、判例で確立されている整理解雇の要件を充たしていない限りは、違法な本採用拒否とななります。ただ本採用労働者の解雇と比べると、試用期間の特性
【法律相談】試用期間後に、まさかの本採用拒否。どうすればいいの
入社直後に面接官上司が退職
今なら理解できる。そのときは意味が分からなかった。
3年前、不動産会社に転職した貴弘さん(42)=仮名=は、入社1週間後に開かれた退職者4人の「合同送別会」の席上、自分を面接した当時の男性上司からひたすら謝られた。
トランスジェンダー(心と体の性が異なる人)実談 仕事を転々と
「ごめんね、ごめんね。僕が辞めることができる条件が、同業他社から5人引き抜くことだったから…」
妻と幼い子ども3人を養うため、より良い条件を求めて10年以上勤めた不動産会社を依願退職。当時の年収は約580万円。「条件を満たす求人はハローワークにはないだろう」。キャリアを生かせる同業で給与水準が下がらないことを条件にインターネットで検索した。「スタートは月給25万円だが、力を発揮すればどんどん上がる」。面接での誘い文句を信じ、転職先を選んだはずだったが…。
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「公休だから昼から出てきていいよ」「まさか労災って言い出すんじゃないよね」
配属された支店には約50人の営業マンがいたが、机は30席ほどしかなかった。業務で使うパソコンは当初は支給されなかったが、離職者が出ると回ってきた。最初は不思議だったが、次々に誰かが辞めて誰かが入社してくる。出入りが激しいのでこれで事足りることが次第に分かってきた。
仕事は過酷だった。深夜、未明までの残業は当たり前。たまに午後9時ごろ帰ろうとすると上司から「みんながいるのに何で帰るんだ! 仕事がなくてもみんなと一緒にいろ!」と叱責(しっせき)された。休日も「公休だから昼から出てきていいよ」と平気で言われた。なのに、勤務表は定時の午前9時~午後6時に入力しないとはねつけられた。
営業車は4台しかなかった。私用のミニバイクで営業に回っていたとき車との接触事故を起こした。救急車で搬送された病院で、鎖骨を折っていると診断された。上司に報告すると「休みの日にプライベートで事故したことにしといて。まさか労災って言い出すんじゃないよね」。辞職を決意した。
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大量採用 大量退職者が典型パターン
異常な長時間労働や残業代未払いなどで、主に若者を使いつぶす「ブラック企業」。大量に採用し、大量の離職者を出すのが典型パターンだ。入社の際には、月収の誇張や虚偽の条件での募集など、わなが仕掛けられている。
貴弘さんの場合も正社員で募集されながら、実は契約社員だった。「半年の試用期間が終われば正社員になる」と言われたが辞めるまでの2年間、契約社員のままだった。月給25万円には月30時間の残業代が含まれていることも後で知らされた。「残業は30時間を超えることはない」と説明されたが、ゆうに月100時間は残業させられた。
「募集内容は何もかもがうそだった。なぜ、気付くことができなかったのか。歯がゆい」。貴弘さんは今、自分を責める毎日を送っている。
人口減少や少子高齢化で人手不足が深刻化する中、過酷な労働条件で働く人を使い捨てるブラック企業が、法の網をかいくぐり、はびこっている。その巧妙な手口を紹介しながら、今後も登場するであろう新たな手法への防衛策を考えたい
「まさか労災って言い出すんじゃないよね」ブラック企業 退職者実談 採用に仕掛けられるワナ