「名ばかり管理職」 収入増えず
その会社では、最下位のヘッドチーフに始まり、ゼネラルチーフ、サブマネジャー、マネジャー、ゼネラルマネジャー、ディレクター、プロデューサーまで7段階の管理職がいた。
ブラック企業 見抜け 「大量採用」のワナ
7年前、浩太郎さん(30)は福岡県内の大学から新卒で量販店に正社員で採用された。入社2年後、ある店舗の売り場全体を統括するヘッドチーフに昇進した。本部の上司から「頑張れよ」と肩をたたかれたが、「管理職になるから残業代はでない。月給32万円ぽっきり」と告げられた。浩太郎さんは昇進前、基本給に残業代を加えると既に32万円程度もらっていたので、収入は全く増えなかった。それでも「もっと上の管理職になれば給与は上がるぞ。がむしゃらに働け」とハッパを掛けられた。
.
「忙し過ぎて何も考えられない」思考停止状態へ24時間営業の店舗を任された。午後4時から翌朝の午前6時まで14時間ぶっ通しで働く毎日。会社が用意した店舗の目の前のアパートに住み、非番で寝ていても深夜に頻繁に呼び出しが掛かった。生活の全てが仕事で埋め尽くされた。食欲がなくなり、眠れない夜も続いたが「新卒採用だったのでそれが当たり前だと思っていた」。
ついに朝起きることができなくなった。「迷惑をかけるので会社を辞めたい」と告げると「辞めるな」と引き留められ、店舗替えが決まった。そこでも過酷な労働は同じ。「忙し過ぎて何も考えられなくなっていった」。辞めることができたのは、うつ病を発症した後だった。
.
「損害賠償請求」を使った手口まで
食い付いた「獲物」を逃さない。社員を思考停止状態に追い込み、辞めさせずに心身が壊れるまで使いつぶす-。こうした「ブラック企業」は最近、不当な損害賠償を請求し、弁償が済むまで辞められないと思い込ませる手口まで編み出している。
福岡市内のスーパーで店長をしていた翔平さん(28)は上司から「ノルマ達成まで家に帰れると思うなよ」と毎日怒鳴られた。深夜まで働いても残業代も出ない。「辞めたい」と上司に申し出ると、「おまえの教育にどれだけ会社が金を掛けたと思っているんだ!」と辞めさせてもらえなかった。
それでも辞表を提出し、出勤しないでいると…。「ノルマ未達」「仕入れで損を出した」「入社してから10年間の教育費」。いろんな理由を挙げられ、1千万円の損害賠償を求める請求書を送りつけられた。書面には弁護士の署名もあった。
「思考停止状態に追い込み、壊れるまで使いつぶす」 ブラック企業実談 「名ばかり管理職」の手口