怪物は普通の顔をしている
普通の生活をして
普通に暮らしている
怪物は優しく
物静かである
ゆったりとソファに身を委ね
左手は優雅に頬に添えられる
怪物は空想趣味があり
放浪癖がある
月夜の晩にふらっと出かけ
そのまま2、3日帰ってこない
怪物は情愛を知らず
暗黙裏に拒否する
情を前にしてうろたえまごつき
時として非情になる
怪物は憎しみの産物である
怪物は悲しみを知っており
情愛に飢えている
しかし情愛の与え方を知らない
怪物は自分が怪物であることを
知っている
しかし怪物はその出口を知らない
彼は白く眩しい牢獄の中で
狂おしい日々に囚われながら
図らずもその怪物ぶりを発揮する
~拙書「屋上の幻想」より~